レポート
エリアマネジメントの女子会! 女子から学ぶまちづかいの秘訣
12月17日、日本ビルヂングの3×3 Laboにて行われた、「エリアマネジメント女子会」。全国各地の道路やオープンスペースをつかい、街に彩りをつける彼女たちの発想の根源と戦略とは?
エリアマネジメントネットワーク設立準備委員会主催のもと開催された今回のトークセッション。その名の通り、登壇者すべてが全国各地のエリアマネジメント組織で働く「エリマネ女子」ということで、ワイン片手に華やかさありつつも、女子のパワーみなぎるエネルギッシュなひと時となったトークセッションの様子をレポートします! エリマネ女子だけでなく、働く女子、男子も必見です!!
ちなみに参加は、男性もOKということで、会場の男女率は半々といったところでしたね。
女性が兼ね備える「聞く力」「共感する力」という強み
まずは、銀座街づくり会議の竹沢えり子さんによる基調講演から。
大学を卒業し最初に就いたという編集者時代から今に至るまでの経緯を、まちづくりの話から女性としての働き方の話まで幅広くお話しいただきました。「女性は、仕事に対して真面目で責任感を持ちすぎてつぶれてしまう。」と話す竹沢さん。んー、わかる!!なんてつい同感してしまう場面も。
自身の経験から「スタッフを雇うときは自分より少しできる人を雇うこと」なんていう仕事の流儀についてもお話しくださいました。
さてさて、話はエリアマネジメントから少々それましたが、竹沢さんは、「地域というのは平等で、いろんな価値観が存在することが魅力」と語る一方で、やはり「地域に入ることは大変。聞く力、共感する力を兼ね備える女性はそういった意味でエリアマネジメントの仕事はむいているのかも」と話します。
エリアマネジメント成功のカギ、人と人とのつながりにあり
さて後半は、保井美樹氏(エリアマネジメントネットワーク設立準備委員会)をモデレーターに、内川亜紀氏(札幌駅前通まちづくり株式会社)、佐伯恵氏(名古屋駅地区街づくり協議会)、中嶋美年子氏(NPO法人大丸有エリアマネジメント協会)、藤原志帆氏(梅田地区エリアマネジメント実践連絡会)、松本久美氏(⼀般社団法⼈淡路エリアマネジメント)5人の現場で働くエリマネ女子による登壇。各地のエリアマネジメントの事業概要を紹介した後、ラウンドテーブルが行われました。
エリアマネジメントについてはもちろん、仕事のやりがいやプライベートのお話しまでかなりつっこんだ話をしてくださいました。
■5地区のエリアマネジメントの概要
エリアマネジメント組織 | 主な活動内容 |
札幌駅前通まちづくり株式会社 | 駅前通地下歩行空間及び広場(チ・カ・ホ)、北3条広場(アカプラ)の運営・管理、 地下歩行空間の壁面を活用した広告事業や活用事業(イベント、ストリートライブ、ワゴン販売 等) |
名古屋駅地区街づくり協議会 | マップ作製、 セミナー・ワークショップ、美化活動 公共的空間の活用した社会実験(工事用仮囲い広告、歩行者案内板の設置、 マルシェ、名古屋駅地区打ち水大作戦 等) |
NPO法人大丸有エリアマネジメント協会 (リガーレ) |
地区内の美化・緑化、 セミナー、モニター事業 等 パブリック空間の活用(移動式店舗・オープンカフェ、 丸の内ラジオ体操、打ち水 等) |
梅田地区エリアマネジメント実践連絡会 | オープンカフェ、バナー広告、梅田スノーマンフェスティバル、梅田ゆかた祭 等 |
⼀般社団法⼈淡路エリアマネジメント | 地域交流活動、学生居住推進活動、地域連携活動、 環境共生・美化活動 |
札幌駅前通まちづくり株式会社の立ち上げ当初からのメンバーである内川亜紀さんは、活用当初から現在に至る経験から、今後の課題として、(1)地域の方にイベントの趣旨をしっかり伝えること、(2)まちづくりのパートナーづくり、(3)第三の事業づくりをあげられました。
名古屋駅地区街づくり協議会・佐伯恵さんは、特に仮囲い広告事業の話から、「ルールを守りながらも実績を積み重ね、緩和を得られたことがやりがい」と述べたうえ、「地権者との合意形成が大切」と語ります。さらにこれまでの経験から「おじさんばかりのなかで若い感性を活かしたまちづくりをしていきたい。お祭り以外でも道路を使っていきたい。」と女子パワーを活かした抱負を掲げられていました。
続くNPO法人大丸有エリアマネジメント協会・中嶋さんからは、マスコットキャラクターのマルケンなど、女子ならではの視点を活かした取り組みをいろいろと紹介してくださいましたが、中でも「丸の内ラジオ体操」についてのお話が印象的でした。丸の内の主役ともいえるオフィスワーカーに向けたこの取り組みは、彼らの限られた休み時間に目をつけ、気軽に負担なく楽しんでもらうための緻密な配慮のもとの仕掛けがされています。そんな彼女のモットーは、ずばり“サプライズ&エンターテイメント“。パワフルで元気な印象の中島さんですが、「まちのシーンをたくさん作っていきたい」という言葉からは、まちに対する、そしてこの地に関わるひとりひとりに対する愛を感じることができました。
「休みの日は一人カラオケに行くことが好きなんです!」と、冒頭から梅田のおすすめカラオケ店の紹介から始まった梅田地区エリアマネジメント実践連絡会・藤原さん。梅田地区エリアマネジメントでは去年に引き続き今年も「梅田スノーマンフェスティバル」と題し、まちなかにスノーマンを置き、わくわくするまちづくりを実践しています。フォトコンテストを開催するなど、梅田を訪れるひと誰もがまちに関われる仕掛けを提案しています。
最後は、⼀般社団法人淡路エリアマネジメント・松本さんよるワテラスの取組を事例にしたお話し。ワテラスでの活動は、何といってもそこで暮らす学生を巻き込んだ取り組みが特徴的。学生ならではのアイデアを強みに公共空間ではできない攻めの活動ができることや、地域の思い出づくりに貢献できることに仕事のやりがいを感じると話します。一方、やはり資金面での自立には至っていない点やこのような数値化しづらい取り組みに関する評価指標をどう打ち出していくかなどの課題をあげられていました。
それぞれの場所にそれぞれの戦略
北は北海道から、南は大阪まで全国5カ所の紹介を終えラウンドテーブルへ。
どの取り組みも、今までにないベクトルからまちを使っていこうとするのが印象的でしたが、そんな型にはまらない使い方に保田先生から「このような新たな提案を通していくための戦略は?」といった投げかけが。
この問いに対して「そのまちで抑えるべき人を抑える。そのためにも普段からまちの人と仲良くすること」(内川さん)、「地元の同意を得て一緒にやって、応援してもらう」(藤原さん)と話すように、皆さん共通していたのは、日ごろから地域の人とのコミュニケーションが密であるということでした。冒頭、竹沢さんのお話にもありましたが、コミュニケーションといった点はやはり女性が兼ね備える強みなのかもしれません。中嶋さんのずばり「自分のファンを増やす!」といった手法も、まさに普段のコミュニケーションあっての戦略なのです。
「地域の人とのかかわり」という話から、話題は担い手や仲間づくりといった話へ。保田先生から「仲間の作り方や引き込み方の秘訣は?」との投げかけがされます。
オフィス街・丸の内を拠点とする中嶋さんは、丸の内朝大学を例に「働く場所であり、サードプレイスともなればよい」と期待する一方、「いつも同じ人がやっている印象があり、次の世代を増やすにはまだ課題がある。自分の役割や特技を活かしていきたい人が、エリアマネジメントのキーマンとなるのではないか。」と指摘します。
一方、学生さんを巻き込み活動する松本さんは「ここで暮らす学生にとっては、地域活動がいわば義務となっているけれど、せっかく学生生活をこの場所で暮らすのだから、彼らにとって少しでも人生の身になればよいと思う」と話したうえ、「学生の満足度が充実すれば、神田のファンも増えてくるのだと思う」とはなされました。
さてあっという間のトークセッションは、国土交通省都市局・大井裕子氏よる締めのあいさつで閉会へ。
「地域とフラットに関わることが大切」と大井さんも話すように、今回のエリマネ女子の皆さんに共通したのは、自分も一当事者として地域に入り込み、まちの使い方を考えているということ。そのために、地域の人との仲を深め、情報を得て、一緒に活動していくサイクルをつくっています。
そんな彼女らの取組から、人と人とのつながりにエリアマネジメント成功の秘訣を見いだせた気がします。
今回、女子が主役となったトークセッション。「まち」の在り方について、エリアマネジメントといった一種の手法がどうこうではなく、現場にいる彼女らによるヒューマニティなスケールで語られたのが印象的でした。
エリマネ女子会、今後も目が離せません!!
【エリアマネジメントネットワーク設立準備会 記念トークセッション
エリアマネジメント女子会 ~仕事の流儀とワークライフバランス~】
https://sotonoba.place/erimanegirlstalk
日時:2015年12月17日(木)17時半〜20時半
場所:3×3 Labo
主催:エリアマネジメントネットワーク設⽴準備委員会
登壇者:
竹沢えり子(銀座街づくり会議)
内川亜紀(札幌駅前通まちづくり株式会社)
佐伯恵(名古屋駅地区街づくり協議会)
中嶋美年子(NPO法人 大丸有エリアマネジメント協会)
藤原志帆(梅田地区エリアマネジメント実践連絡会)
松本久美(⼀般社団法⼈淡路エリアマネジメント)
保井美樹(エリアマネジメントネットワーク設⽴準備委員会)
photo by Shihona ARAI