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レポート

アクティビティ調査から水辺、そして都市の音など最前線のソトの知見報告!ソトノバTABLE#13「パブリックスペースプロジェクト・論文発表会」レポート(後編)

昨年に引き続き、ソトノバ主催の「パブリックスペースプロジェクト・論文発表会」を2017年3月4日に開催しました。

この日は全国から11組の報告者が参加。「アメリカのパブリックスペースとタクティカルアーバニズム」、「オープンストリートとオープンカフェ」、「パブリックスペースのファーニチャー」、「アクティビティリサーチ研究最前線」、「水辺とサウンドスケープと保育パーク」という5つのテーマに沿って、日々の研究や実践を発表しました。会場のダーウィンルーム(東京・下北沢)にはパブリックスペースに関心を持つ専門家や実務家、およそ35人が集まり、熱い議論を交わしました。

本記事では第4部「アクティビティリサーチ研究最前線」と第5部「水辺とサウンドスケープと保育パーク」をご紹介します。

前編はこちら

都市での人の動きに着目!

第4部:アクティビティリサーチ研究最前線

【都市空間に置ける個人的対流に関する研究ー都心三区の民間開発により生み出された公的な空間に着目してー】
発表者:砂塚大河(東京大学大学院)

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昨年に引き続き登壇してくださった発表者の方もいました。砂塚さんもそのお1人です

都内の民間開発により生み出されたパブリックスペースが複数人からなるグループよりも個人により使われていることに着目した修士論文からの発表です。

特に平日のオフィス街ではお昼を食べたり、読書をしたり、パソコンで仕事をしたりと滞留空間を1人で使用することを現代社会が許容していることを指摘しました。対人ではなくパソコン上で仕事を行う機会が増えたことなどの時代背景を踏まえた、都市空間と人間の行動の社会学的解釈も興味深かったです。

また会場からは「オフィス街と商業施設ではどうなんだろう」「一個人がたくさん集まる姿も都市のにぎわいの姿ではないか?」という意見が上がり、発表から新たな議論へと発展していったことも印象的でした。

【アクティビティリサーチ最新動向ーアクティビティをはかるツールの可能性ー】
発表者:三浦詩乃、石井友里香、泉山塁威、宮武壮太郎、原万琳(ソトノバ・ラボ アクティビティリサーチラボ)

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ソトノバ・ラボ アクティビティリサーチラボ代表の三浦さん

近年のテクノロジーの発達は、今まで難しいとされていた人や都市の観察にも大いに役立っています。ソトノバ・ラボ アクティビティリサーチラボの発表は、アクティビティ調査をする上でのテクノロジーの応用方法をゲール事務所の発行する「Public Life Diversity Toolkit(都市生活の多様性を探るもの。)」の解釈と、三浦さん自身の過去の研究を照らし合わせた成果発表となりました。

なかでもPublic Life Diversity Toolkitに紹介されていたFlickrやInstagramなどのSNSの一般ユーザーから投稿された写真をマップ化し、都市を見る際に新たな視点を発見するツールとして適応する手法が注目を集めました。会場からは、他にも撮った写真を角度などを基に3D化して復元する方法があるという情報も出てきました。

両者の発表から、人間のアクティビティ調査をする上での定義を明確にする難解さとリサーチの手法の研究の重要さが伝わりました。だからこそ、テクノロジーを駆使したアクティビティ調査の発展に今後とも注目していきたいです。

新しいソトづくり

第5部:水辺とサウンドスケープと保育パーク

【河川空間の利活用に向けた諸制度の検討】
発表者:佐々木和之(水色舍)

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最新の河川空間での取り組みを発表する佐々木さん。はるばる滋賀県からの参加です

河川空間における包括占用許可制度と河川協力団体制度について、現状を実例とともに発表。これらの法律の施行によって、それまで占用主体になれなかった民間事業者や特定非営利活動法人、権利能力なき社団などにも河川の占用が認められるようになったことから、河川空間づくりの取り組みが一層アクティブになってきています。

佐々木さんの発表では、明治38年完成の旧瀬田川洗堰を活用したオープンカフェイベント「洗堰レトロカフェ」が注目を集めました。このイベントでは毎月1回、普段は立ち入り禁止の洗堰をカフェとして開放します。2009年に開始した当時から、「琵琶湖河川レンジャー」と呼ばれる地元市民の任意団体が運営に携わり、佐々木さんもその一員です。

河川レンジャー制度は2009年に策定された淀川水系河川整備計画の中で位置付けられた枠組みで、行政と住民の間の橋渡しをする団体です。しかし河川レンジャーは原則2年任期。再任は認められるものの、活動の持続性に不安がありました。

そこで佐々木さんは、任意団体としての洗堰レトロカフェを河川協力団体とすることで、河川レンジャーの有無にかかわらず開催できるように体制を整えました。2016年に河川協力団体の指定を受け、それまでは難しかった固定の看板もつけられるようになりました。

【都市を読む行為としてのサウンドスケープ・プロジェクトー『オオミヤ・サウンドスケープ』レポート】
発表者:鷲野宏(都市楽師プロジェクト)

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五感でまちを感じることについて紹介する鷲野さん

サウンドスケープとは「音=sound」と「景= scape」を組み合わせた造語で、社会的・文化的アプローチから五感の中の聴覚を使い音で都市を”聞き解く”手法です。鷲野さんは大規模な都市開発が全国の駅前広場や駅前商店街を均一化させており、それによって「その都市らしさ」が失われていることを課題に挙げ、彼の埼玉県さいたま市大宮でのサウンドスケーププロジェクトについて報告をしました。

プロジェクトでは参加者の方々と音を色に例えて街の地図をつくったり、商店街のスピーカーを止め、パイプオルガンなどのルネサンス期の電源を使わない楽器を使ったりして、鉄道や人のにぎわいの音を表現。市民が普段耳を澄ませて聞くことのなかった、都市の音を聞く機会をつくり上げました。

【Learning from Un-institutionalized Childcare – Study on Childcare Environment Utilizing Surrounding resources -(非施設型保育から学ぶ周辺環境を活用した保育環境に関する研究】
発表者:泊絢香(明治大学大学院建築学専攻国際プロフェッショナルコース I-AUD)

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泊さんは自身の修士制作を発表しました

従来の既存の建物の中で保育をする施設型保育に対し、子供のふるまいから環境を設計する非施設型保育に着目し、実際に子供の9つの本質的要素を基に保育施設を設計した泊さん。「箱があるだけにならないように」と入り口を増やす工夫や、人間の動作に影響を与える素材のテクスチャーを組み合わせ、子供達の遊びの空間を作り上げました。

また現在実際に行われている非施設型保育には「原宿おひさまの会」や「森の保育園」といった自主保育や野外保育があるそうですが、これらは女性の社会進出も関係があるといいます。女性の社会進出と待機児童の問題に加え、創造性や自主性を重んじる最近の育児の需要も重なり、非施設型保育園は今後更に注目されていくのではないでしょうか。

市民団体の力による水辺の発展、サウンドスケープというユニークな都市を見る手法の提唱、非施設型保育の紹介と今後のソトの空間について新たな気づきが生まれた第5部。3発表とも今後更に社会に認知され、実際の制度改革や研究に適応されていくべきアイデアだと思います。今後の普及が楽しみです。

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アクティビティ調査の手法、河川の諸制度、サウンドスケープ・非施設型保育という空間の捉え方など、パブリックスペースを活性化する最新の動向に着目をした後半の発表。普段の仕事やアクティビストとしての活動から、パブリックスペースに関心の高い会場からの質問やうなずきも増えていたように見えました。

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約4時間の発表会の後は参加者全員で乾杯!

11の発表が終わり、パブリックスペースという共通のパッションを持って約半日を共に過ごした会場はとても熱い空間となりました。各発表の持ち時間は1人7分。発表者としては、日々の研究をまとめるには短すぎる時間のようにも感じました。

「第一線で活躍している方のご意見・ご指摘もいただけて、発表してよかったです」という感想も出てきたように、会場全体で意見交換ができることはこの会の魅力の一つです。

次回の発表会にも皆様ふるってご参加ください!

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前編はこちら

ソトノバTABLE#13「パブリックスペースプロジェクト・論文発表会」
日時:2017年3月4日(土)14:00-20:00
会場:好奇心の森「ダーウィンルーム DARWIN ROOM」(東京都世田谷区代沢町5-31-8)
主催:ソトノバ|sotonoba.place
運営:一般社団法人パブリック・プレイス・パートナーズ

All photos by Tomoyuqui HIGUCHI

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