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レポート
貸はらっぱ音地の取り組みから見えてきた「長続きする居場所づくり」のための4つのヒント「ソトノバLOCAL@みなまきラボ#3」レポート
新たにアクションを始める地域に訪問・密着し、ソトを楽しく豊かに使いこなすためのアイディアを発信していく「ソトノバLOCAL」
ソトノバでは、昨年オープンした横浜市旭区・相鉄いずみ野線の南万騎が原(以下、みなまき)にあるまちづくり拠点「みなまきラボ」の運営パートナーとして参画しスタートアップのお手伝いをしてきました。そして3回目の「ソトノバLOCAL@みなまきラボ」が3月8日に開催されました。
今回お話してくださったのは、東京都台東区谷中にある空き地「貸はらっぱ音地」運営者の牧住敏幸さん。10年以上にわたり「貸はらっぱ音地」の運営を続ける牧住さんご自身の経験談には、居場所づくりを長続きさせるヒントが隠されていました。
長続きする居場所づくりを導くための4つのヒント
まちなかの居場所づくりについて、ほかのまちからアイディアやノウハウのヒントを知ろうと開催してきた「ソトノバLOCAL@みなまきラボ」。これまで西千葉「HELLO GARDEN」より西山芽衣さん、JR南武線・稲城長沼駅「くらすクラス」より鈴木萌さんにお越しいただき、広場の使い方や地元主体の運営づくりについてお話しを伺ってきました。
そして「みなまきみんなのひろば」オープンから1年以上が経ち、みなまきに暮らす人にとっても日常の風景となってきた新たな南万騎が原駅前。みなまきラボも、今後さらに地域のひとの居場所として定着していくことが大切となってくるなかで、持続可能な運営は大きな課題となってきます。
そんななか、今回ゲストにお招きした牧住さんは、2006年9月から10年以上にわたり自身が持つ空き地「貸はらっぱ音地」をイベントやマーケットなど開けたイベントが行えるレンタルスペースとしての地域の人に提供しています。多い時では年間100を超えるイベントが行われてきたというから驚き。
>>取り組みの詳細は過去のレポートをご覧ください!
ソトノバLOCALではそんな10年間で行われてきたイベントの数々をそれぞれのエピソードとともに紹介していただきました。そのお話しからは、長続きする居場所づくりを導くための4つのヒントが見えてきました。
1.屋号をつける
空地を買って牧住さんがはじめにしたこと。それは普通ではなんでもない空き地に屋号「貸はらっぱ音地」を命名したことでした。牧住さんはそれについて、「屋号をきっかけに日常が創造の場に変換し、まちなかの気軽な自由空間になった」と話します。
「開けた場」といえども、なんとなく近寄りがたかったり、入るきっかけがなかったりと地域に浸透するのが難しいという悩みを抱える例を耳にすることもあるなかで、「貸はらっぱ音地」では「屋号」というなのいわゆる愛称を付けることで、暮らす人の目に留まり関心を抱いたり、街の目印として記憶に残るきっかけを与えたのです。
2.住宅地×アートという異種結合
貸はらっぱ音地のイベントで多いのが、アーティストによるギャラリー利用などアートにまつわるもの。谷中という土地柄でしょうか、貸はらっぱ音地の噂を聞き付けやってくるアーティストや芸術系の大学生が多いのだとか。
とはいえ、貸はらっぱ音地があるのは、住宅地の一角。普段はアートに触れることのない住民の目に突然飛び込むアートは、普段の生活では体験できない刺激を与えているに違いありません。ギャラリーに行かないおじいさんがアートに触れられることに面白さと可能性を感じたと話す牧住さん。住宅地だから住宅地にあるべきコンテンツという方程式を破り、普段では考えないようなコンテンツ同士を組み合わせてこそ、新しい発見があるのかもしれません。
3.時には一緒にまちを盛り上げる仲間をスカウトする
レンタルスペースということで空き地の貸し出しを基本としています、過去には、牧住さん自らイベントを仕掛けたこともあるのだとか。骨董好きという牧住さんが、他のまちで訪れた骨董市で気に入った作家さんを招き行ったというフリーマーケット「音地祭り」。ただ使い手を待つのではなく、時には自らこの街を一緒に盛り上げたいという人をスカウトし街を盛り上げるプレイヤーを招くことで、活動の幅が一気に広がるということもあるのかもしれません。実際、そこで出展した作家さんが、次は自らイベントを企画するという展開が起きたそうで、そんな連鎖反応が街へ関わる人の幅も広げています。
4.ゆるい関係からはじめる
「貸はらっぱ音地」を訪ねる様々な借り手と牧住さんとの絶妙な関係もあの場の魅力を高める秘訣なのではないでしょうか。「貸はらっぱ音地」を借りるのに形式ばった申し込み書類などはないようで、みんなメール一つでゆるく集まってきた人ばかりなんだとか。そんな彼らに共通するのが、まちの人とすごく仲良くしてくれるということ。牧住さんは「与えられるのでなく自分からやる人が「貸はらっぱ音地」には合っている」と話します。そんな借り手の人たちによる活動の重なりが自ずと「貸はらっぱ音地」の場の性格を整え、本当にここでやりたいという熱い想いを持った人だけが知らず知らずのうちに集まる場へとしているように感じました。
豊かに生きていくための道具として考える家・土地・まち
牧住さんはこれまでの活動を振り返り「まちなかに個人サイズの自由空間がなかった。家も土地もまちも豊かに生きていくための道具なのだと思う。せっかく家や軒先を持っている人も、それを道具にすると面白いのでは」といいます。
当たり前を少し視点をかえるだけで、まちを豊かにする場となることを教えてくれた「貸はらっぱ音地」の取り組みでした。
<What is みなまきラボ>
report1:みなまきラボとは?郊外住宅地の次世代を考える駅前拠点と駅前広場【ソトノバLOCAL@みなまきラボ】
report2:ソトで開催!自分たちでやってみる『場』の運営とは?【ソトノバLOCAL@みなまきラボレポート】
report3:「くらすクラス」からまなぶ、地域の運営が可能にする活動のバッファー【ソトノバLOCAL@みなまきラボ#2レポート】
<みなまきラボ概要>
アクセス:相鉄いずみ野線南万騎が原駅より徒歩1分
所在地:神奈川県横浜市旭区柏町127 相鉄ライフ南まきが原内
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運営事務局:オンデザインパートナーズ
運営パートナー:横浜国立大学、横浜市、相鉄ビルマネジメント、
ハマのトウダイ、山手総合計画研究所、横浜コミュニティデザイン・ラボ、
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