ソト事例

Example

プラザ|広場

「うめきた2期」のトライアル!実証実験を繰り返す「うめきた外庭SQUARE」

大阪駅・梅田駅の目の前で進んでいる大規模開発で何ができるのか知っていますか。うめきた2期地区における暫定活用の広場「うめきた外庭SQUARE」は、開発によって生まれるまち、うめきた地区のトライアルとして、小規模ながらも様々な、そして最先端の技術を用いた実証実験の場となっているのです。

本記事では、そもそも「うめきた2期地区開発プロジェクト(以下、うめきた2期)」とそれによって生まれる「(仮称)うめきた公園」とは何なのかを簡単にご紹介します。そのうえで、「(仮称)うめきた公園」のトライアル的位置づけである「うめきた外庭SQUARE」の取り組みや魅力を、大学院で都市計画を専攻し、実際に訪れた筆者の視点からご紹介します。

この広場は、まちの人に開かれた空間としてだけでなく、将来うめきた地区に誕生する公園、「(仮称)うめきた公園」での活動を見据えた実証実験、タクティカル・アーバニズムの実践の場としての役割を持っています。

Cover Photo by 独立行政法人都市再生機構


「うめきた2期」とは?大阪駅・梅田駅前で何が起きているのか

大阪駅・梅田駅前では、「うめきたプロジェクト」と称し、2002年からJR西日本の貨物ヤード跡地の再開発が始まりました。

そのうち、1期にあたる「うめきた先行開発区域地区」は約7haを有し、2013年に「グランフロント大阪」としてまちびらきがされました。

一方「うめきた2期」は、1期を超えた約17haの開発面積を有する大規模複合再開発です。大阪都心では最大規模の開発事業として、2024年の先行まちびらき(一部民間宅地及び一部都市公園)やその先、2027年のうめきた2期地区全体開業に向けて推進されます。

鳥瞰東うめきた2期完成イメージ(提供:うめきた2期開発事業者) *2022年5月時点のイメージパースであり、今後変更となる可能性があります。

「うめきた2期」のコンセプト・計画概要

「うめきた2期」は、「みどりとイノベーションの融合」をコンセプトに掲げています。また、活力に満ちた創造的なライフモデル“Osaka MIDORI LIFE”の創造により、多様性を受け入れ、知恵を分かち合い、Quality of Life(QOL)の向上を感じられる社会づくりへの貢献が目指されています。

そのための施設開発として、オフィス、商業施設、中核機能、ホテル、住宅、都市公園の建設が予定されています。

大阪・梅田駅直結の都市公園「(仮称)うめきた公園」

様々な機能の配置が計画されている「うめきた2期」の中でも特徴的なのが、敷地面積約45,000㎡と、大規模ターミナル駅直結の都市公園としては世界最大級の規模となる「(仮称)うめきた公園」です。

2025年の大阪・関西万博に先立つ2024年の先行開園、2027年の全体開園に向け、うめきた2期開発事業者によって推進されています。

「(仮称)うめきた公園」の取り組み

「(仮称)うめきた公園」では“Osaka MIDORI LIFE”の実現のために、うめきた2期開発事業者によって以下のような取り組みが計画されています。

➀環境配慮(サステナビリティ)・防災(レジリエンス強化)に関する取り組み
②イノベーション創出に資する公園施設の整備
③パークマネジメント・エリアマネジメント

「(仮称)うめきた公園」には、人々の憩いの場やにぎわいを生み出す場となる仕掛けが様々ある一方で、地震などの災害に備え、周辺施設と連携した防災機能、生物多様性など環境に配慮した機能が、計画段階から考えられています。

公園鳥瞰 (仮称)うめきた公園完成イメージ(提供:うめきた2期開発事業者)  *2022年5月時点のイメージパースであり、今後変更となる可能性があります。

壮大な開発計画を実現に導くタクティカル・アーバニズム!「うめきた外庭SQUARE」

これまで、先端技術や広大な自然を取り入れ、まるで街を創ってしまうかのような「うめきた2期」の壮大な開発計画をご紹介してきました。これが実現すれば、大阪市だけでなく、関西地方、そして日本を代表する次世代まちづくりのモデルとなることが期待されると考えます。

しかし、この先進的で大規模な計画を実現するためには、「小さな取り組みから大きな結果へ」とつなげるタクティカル・アーバニズムの考えが重要であり、UR都市機構やパートナー事業者が運営するうめきた外庭SQUAREではそれが実践されています。

「うめきた外庭SQUARE」の概要

「うめきた外庭SQUARE」は、「うめきた2期」の2024年先行まちびらきに先立つ「うめきた周辺地域への『みどり』の波及に関する先導的事業」として、事業区域内の土地を暫定活用して、2020年7月から2023年3月末までの1000日間限定で設けられた広場です。

本広場は、「うめきた2期」の主な取り組みの1つである、先進的なパークマネジメント・エリアマネジメントに向けたトライアルに位置づけられています。また、先端技術を活用した官民連携のスマートシティ形成や新事業創出のための実証実験フィールド実現を見据えています。

20220528_131454syusei うめきた外庭SQUARE(ノースラボ)(提供:うめきた外庭SQUARE運営事務局)

「うめきた外庭SQUARE」の基本方針、取り組み

本広場は、“「みどり」のリビングラボ”をコンセプトに、地域住民・行政・民間企業を巻き込み、未来のまちづくりのための実証実験を行う活動拠点であり、以下の基本方針を掲げています。

➀都市公園の先進的な管理運営、環境整備につながるトライアル
②持続可能なパークマネジメントに寄与する付加価値創出に向けた多様なアイデア・企業活動のトライアル
③都市公園におけるアクティビティ活性化、新たなコミュニティ形成に向けたトライアル

「できる」がたくさん!人々の活動を応援する広場

公園といえば「○○禁止、△△禁止」という張り紙が多い印象がありますよね。「うめきた外庭SQUARE」では「アクティビティ活性化」を基本方針に掲げるように、「○○ができます」という人々の活動を促す張り紙があり、基本方針である③アクティビティの活性化、コミュニティ形成に寄与していると考えます。

トライアルとしての位置づけから、暫定的な活用の中で変化・成長する空間・ルールづくりを利用者とともに作っていくことが、この広場の魅力です。

広場内には芝生空間だけでなく、テーブル、レジャーシート等の滞留空間も設置されており、老若男女、幅広い利用者が思い思いの時間を過ごすことができるのも魅力だと考えます。

S__24739847「できる」を教える看板(Photo by Takumi Esaka)「できる」を教える看板(Photo by Takumi Esaka)

おわりに

今回ご紹介した「うめきた外庭SQUARE」は、利用者にとって憩いの場となるだけでなく、これからできる「みどり」空間の利活用を想定した様々な先行トライアルが展開されています。これにより、この広場を訪れた人々が将来の大阪の姿に期待を抱くような魅力を持つ広場なのではないかと感じました。

今後うめきた地区は、タクティカル・アーバニズムの考えを用いたまちづくりにおいて、大阪、ひいては日本を牽引する先進事例になるのでは、と筆者は考えます。

大規模で新しいことに取り組むからこそ、小さなことから実験を繰り返し大きな結果につなげる、タクティカル・アーバニズムの動きが増えることを期待します。

参考文献

・独立行政法人都市再生機構・うめきた2期開発事業者(2020)「(仮称)うめきた2期地区開発事業」工事着手」(最終閲覧日:2022年10月30日)https://umekita2.jp/information/243/
・うめきた2期開発事業者(2022)「「(仮称)うめきた公園」工事本格着手」(最終閲覧日:2022年10月30日)https://www.hhp.co.jp/data/pdf/20220516.pdf
・うめきた2期開発事業者(2020)「「うめきた外庭SQUARE」での実証実験が本格始動」(最終閲覧日:2022年10月30日)https://sotoniwa-uk.com/pdf/release_1117.pdf

テキスト:
江坂巧(日本大学大学院理工学研究科 博士前期課程建築学専攻1年 都市計画研究室(泉山ゼミ))

Twitter

Facebook

note