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リバー・ウォーターフロント|水辺

東京の近代化を支えたまち。生まれ変わった豊洲の水辺の楽しみかた

みなさん豊洲というと何を思い浮かべますか?

高層マンションが立ち並ぶ新興住宅地、あるいは最近築地から移転した水産卸売市場の豊洲市場を思い浮かべるかもしれません。多くの東京の湾岸地域(ウォーターフロント)と同じように、豊洲が埋立地であることは、みなさんご存じでしょう。

豊洲は、造船業や都心へのエネルギー供給によって東京の近代化を支えたまちです。

ららぽーと豊洲を中心に高層マンションが広がり、水辺が美しく整備された現在の豊洲。その水辺を歩いてみると、単なる新興住宅地ではない、豊洲の「歴史」を感じることができます。

今回はゆりかもめの豊洲駅から市場前駅にかけて、豊洲ならではの水辺の楽しみ方を紹介したいと思います。


工業地・豊洲の歴史とは

浅瀬で土砂の多かった東京湾岸地域では、船が入って来られるように海底からすくい取った土砂を使って江戸時代から埋立地が作られていきましたが、豊洲は主に1923年の関東大震災のがれきを埋立てに使用し、1931年に完成しました。

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1930年の東京南部。黄色塗りした場所が現在の豊洲の一部で、「埋立地」との表記がある。(国土地理院ウェブサイトより)

当初は1940年に開催を計画されていた日本万国博覧会の開催予定地となっていましたが、日中戦争の激化等を理由に中止に。その後戦時中という当時の世相を反映した造船所や鉄工所として使用されるようになります。

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造船所時代のなごりの係留ビッド

戦後は焼け野原となった東京の復興のために、都心部の近いところにエネルギー基地を作る必要があったため、発電所とガス工場用の用地として豊洲埠頭はさらに埋め立てられていきます。

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1960年の東京南部。豊洲は現在に近い形になっている。(国土地理院ウェブサイトより )

東京電力新東京火力発電所が1955年に、翌年には東京ガスのガス工場が東京都心部へエネルギーを供給するため操業を開始。 その稼働は1980年代まで続きます。 

まさに豊洲のおかげで、東京は戦後の復興と経済発展を果たすことができたのです。

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火力発電所跡地のテプコ豊洲(通称「ビッグドラム」)。地下には新豊洲変電所が入っている

豊洲の5つの水辺の楽しみかた

ガス工場と火力発電所の操業停止後、跡地が再開発され整備されていった、現在の豊洲の水辺。

その楽しみかたを見ていきましょう。

1. 海風を感じながらランニング

都内で一周できるランニングコースと言えば1周約5kmという距離もちょうどいい皇居外周が人気ですが、実は豊洲の水辺にもランニングコースがあります。

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豊洲ぐるりジョギングコースマップ (江東区のHPより)

コースの長さは4.8kmで皇居とほぼ同じ長さですが、皇居が反時計回りで走ると決まっているのに対し、豊洲はどちら周りでも走ることができます。 また皇居周辺のように、ランナーで混みすぎて走れないというようなこともありません。

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高低差もなく込み合っていないため、犬の散歩やウォーキングにも最適

幹線道路から少し離れた海沿いにランニングコースが設置されているため車の排気ガスも気にならず、埋立地ならではの海風と景色を楽しみながら走るのは爽快です。

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東京湾岸の夜景を楽しみながら走ることもできる

2.海を眺めながらベンチで一休み

豊洲の水辺沿いには多くのベンチが設置されており、ランニングや散歩中に疲れたら一休みしたり、海を眺めながら読書したりすることもできます。

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木製のベンチが海に面して置かれている

豊洲だけでなく天王洲など東京の湾岸地域の水辺には階段状のベンチも多く、高い位置から海や夜景を眺めることができるのですが、残念ながらあまり活用されていないようです。

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階段状のベンチ

同じく埋立地であるシンガポールのマリーナベイ沿いのウッドチェアには観光客を含めて多くの人がマリーナ湾の景色を楽しんでいます。

将来的に豊洲市場が築地市場のように観光地化したり、建設中の先客万来施設がオープンすることで、もっと多くの人が豊洲の水辺の景色を楽しむようになるかもしれません。

3.都心でらくらく海釣り

豊洲の水辺では釣りが許可されている区域があり、週末は多くの人が海釣りを楽しんでいます。 

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護岸で釣りを楽しむ人たち

よく釣れるのはセイゴ/フッコ、マハゼなどのようですが、クロダイやカサゴが釣れることもあるとのこと。

都心の海というだけで水が汚れているのではないかと思っていましたが、様々な魚が釣れる水質のようです。

自転車で釣りに来ている人も多く、都心に住む海釣りが好きな人にとって、身近に釣りが楽しめるのはよいことではないでしょうか。

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釣った魚を近くのベンチで食べることもできる

4.見る場所によって変わる、湾岸夜景鑑賞

豊洲の水辺からは、台場方面のレインボーブリッジ、晴海方面の高層ビル群、ららぽーと豊洲裏のクレーンのモニュメントなど、さまざまな夜景を見ることができます。

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ライトアップされたクレーンのモニュメント
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晴海のビル群

春海橋公園やららぽーと豊洲の裏にはベンチが多数設置されており、晴海のビル群を間近に、レインボーブリッジを遠目に楽しめます。

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夜景を楽しむ人々

5.造船地・ 豊洲の歴史散歩

 すっかり生まれ変ったように見える豊洲地区ですが、かつて造船所だったことを感じることができる、さまざまな産業遺構を見ることができます。

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ららぽーと豊洲裏の産業遺構 造船所は2002年まで稼働していた

その多くが旧石川島播磨重工業(現・IHI)の東京第一工場跡地に建設されたららぽーと豊洲裏の水辺にあります。

造船工場で使われていたものがアートやオブジェとなっていたり、ベンチとして再利用されており、普段なかなか見ることのできない造船グッズを間近で楽しめます。 

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椅子や遊具として実際に触れることができる

豊洲の水辺の楽しみかたを見てきましたが、いかがでしたでしょうか。

豊洲は豊洲市場だけでなく、東日本大震災の被災地復興支援のためにつくられたライブハウス「豊洲PIT」や、期間限定ですが世界で2番目の360度回転する円形劇場である「IHIステージアラウンド東京」、そしてチームラボプラネッツ「TOKYO DMM」 など、文化施設も多くあります。

豊洲に対し、私は最初「埋立地につくられた新興高層マンション地域」という印象がありました。

しかし、今回水辺を改めて歩いてみることで、実は東京の発展を支えた歴史のあるまちであり、新しい文化や生活が出来上がりつつある地域だということがわかりました。 

実際に自分の足で訪れ歩くことによって、広告やマスメディアによって伝えられる側面だけでなく、その土地の歴史や本当の姿、そこに集う人々の生活を知ることができます。

工業地から商業地・住宅地へと生まれ変わり、また文化都市へと発展していく豊洲。是非みなさんも豊洲の水辺に足を運んでみてはいかがでしょうか。

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新豊洲駅からテプコ豊洲ビルへの渡り廊下に書かれたメッセージ 「都心の水辺」

All photos by Yuko KATORI

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