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都市計画学会誌「都市計画」の特集が「使われる公共空間」
2015年10月29日発行の都市計画学会誌「都市計画」の特集が、
「使われる公共空間」だ。
公共空間に関する圧巻の年表や、
Open Aの馬場正尊氏、水都大阪、横浜みなとみらい、ピクニッククラブなど
名だたる事例や執筆者の寄稿が集約されている。
編集長・泉山も「お茶の水の事例を交えたパブリックスペース論」を寄稿している。
ぜひ、学会員の方は、熟読してほしい1冊だ。
317号|使われる公共空間
海外,特に欧米では公共空間が身近な生活空間の一部として認知され,自然に浸透しているように感じられる。これに対して,我が国では,人がいなくて空間を持て余している公園や公開空地など,十分に活用されているとは言い難い公共空間の存在が目立つ。もちろん,我が国と欧米では,気候条件や歴史的背景などが異なるため,日本において屋外での時間を堪能するという習慣が長い間根づかなかったことがこの理由の一つといえる。しかし,それだけではなく,公共空間のデザインや利用を阻害する規制,ソフト的な問題等,多くの要素が絡み合っているものと思われる。 我が国は現在,人口減少期に突入し,量的な拡大を求めるのではなく,既存ストックを有効活用することによって生活の質的向上を実現していくべき時代を迎えている。このような時代背景を受けて,近年,公共空間の利活用の自由度を広げる規制緩和が進んでおり,より多くの人に使われるように工夫された公共空間の運営形態が見られるようになった。また,利用者サイドからも積極的に公共空間と関わり,思い通りに活用しようとする試みが生まれてきている。こうした理由から,公共空間に賑わいが創出されているケースが増えている。 例えば,富山の「グランドプラザ」や新潟の「アオーレ長岡」等,「使われること」の価値を重視して生み出された公共空間が街の活性化に大きく寄与している事例が出てきている。こうした公共空間で発生する様々なアクティビティは,都市の印象を大きく左右し,都市のアイデンティティの形成につながる。すなわち,公共空間における魅力的な過ごし方を体験できる人々は都市に対して誇りを持ち,ここから発信されるライフスタイルは都市文化の創造につながるものと思われる。 本特集では,我が国の公共空間を取り巻く状況を概観し,公共空間の利活用を推進していく上での課題や可能性を明らかにしたい。近年,その利活用を促す制度や運用の展開,新しい試みの事例を取り上げ,公共空間の利活用が進むことによりもたらされるものについて考えたい。 (担当編集委員:塚本 敦彦) |
目次地図の中の風景クライシスマッピングと学生のチカラ 私が出会ったまちDijon(フランス) 特集論文:使われる公共空間【総論】 「公共空間」整備の潮流と変遷/公開空地・有効空地等を伴う都市開発の変遷 生きた公共空間を求めて-街路的空間の活用の可能性 日本の公共空間の実態と可能性 柔軟性のある公共空間の活用の方向性-「公益」と「私益」のマッチング 都市における脱公共化の傾向について 公開空地等の公共空間ストック形成の潮流と変遷 【公共空間の活用を支える制度・システム】 エリアマネジメント活動における都市の公共空間の活用 公開空地のまちづくりへの活用 BID制度の活用-大阪の挑戦 【公共空間の活用に関する新しい試み】 公共空間を使いこなすプラットフォーム:社会問題をクリエイティブに解決する活動を支えるしくみづくり 水辺の公共空間を活かした賑わいづくりによる水都大阪の実現-水都大阪パートナーズの取り組み報告 みなとみらい21地区公共空間賑わい利用の仕組み: ピクニックで公共空間を切り拓く 【利活用を促す公共空間のデザイン】 移行帯のデザイン:都市におけるオープンスペースの生態学的類推 公開空地の評価と改善策 「公共事業」から「共有の場所づくり」へ: 歴史的施設を中心とした回遊型広場空間~道後温泉広場の造形 まちと川との関係の再構築~津和野川景観整備 【公共空間で過ごすという文化の醸成】 使い手視点で使いこなすパブリック・プレイス文化のマネジメント: プレイスメイキングによる街中の居場所づくり-米国のサードプレイス事例 パブリックスペースとパブリックライフの呼応-シビックプライドを育むための都市へのアプローチ 編集後記 |