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都心ではないヌマベに何が起こる!?「テガヌマウィークエンドVol.2」レポート後編

前編では、テガヌマウィークエンドVol.2 ヌマベ・ビラキで行われた10のハマり方を紹介し、ヌマベのポテンシャルの多様性を明らかにしました。

後編では、前編で紹介しきれなかったヌマベ空間を都心のパブリックスペースとの違いを伝えながら、都心ではないパブリックスペースにおいて、テガヌマウィークエンドVol.2という社会実験イベントを実施することの意義について考えてみました。

ヌマベを開いたことで地域や人々が手賀沼に対してどのように感じているのかが明らかになりました。その内容について詳しく解説していきます!


居心地の良いヌマベ空間

前編で紹介したような10のハマり方として、ただ様々なコンテンツを準備しただけではなく、ゆったりとした居心地の良い時間を過ごすための快適な空間がヌマベに実現していたこともパブリックスペース活用の大切な要素だと思います。

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気持ちよさそうにヌマベ・ザシキでくつろぐ大人たち(Photo by 手賀沼プロジェクト)
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夕暮れ時にはザシキがバイオリンのコンサート会場に(Photo by Atsushi Kawasaki)

手賀沼を吹き抜ける風や太陽の光を浴びられることもヌマベ空間ならではの環境です。そういった環境を活かすようにデザインされたザシキはヌマベで憩う人々が思い思いの過ごし方ができる空間になっていました。

憩いの場であるザシキを中心に様々なアクティビティがその周りで展開されることで、その場にいる人々の「楽しい」という感情が連鎖していくように、ヌマベ全体が楽しそうな空間となっていた様子が印象的でした。

ヌマにはまって大きな声で騒ぐ子どもたち、ザシキの上でコーヒーを飲みながら読書をする大人、サイクリングの途中に自転車を止めて一休みするご夫婦など多様性を共存させる広々とした空間が居心地のよいヌマベのパブリックスペースとしてのポテンシャルなのかもしれません。

夕焼け時には、普段都心では見られないような綺麗な光景が見られることもヌマベのポテンシャルの1つです。週末に訪れて、美しい自然の景色を眺めていると心が洗われるようにすっきりとします。「都心ではないパブリックスペース」には、都心にはない居心地の良さを生み出すポテンシャルが眠っているのです。

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夕陽が沈んだ後の幻想的な景色(Photo by Atsushi Kawasaki)

継続して取り組むということ

ここからはテガヌマウィークエンドの取り組みについて書いていきたいと思います。

まず、手賀沼ファンを増やしたいという大きな目的をもったパブリックスペース活用実験としての重要な点は「継続する」ことです。テガヌマウィークエンドは2018年のVol.1からちょうど一年後に今回のVol.2と二年連続で行うことができました。

一度のイベントはある週末の2日間だけの小さなアクションなのですが、普段入ることのできない堤防の下のヌマベを使ってアクションを継続して行ったことに活用実験としての意味があると思います。

2018年のVol.1において来場者の方にアンケートを取り、手賀沼への関心やパブリックスペース活用についての意見を調査し、それらを受けてフィードバックをVol.2に反映することができました。また、Vol.1においてヌマベを使ってみることの楽しさや人々の関心が目に見える形で行政の方や関係者の皆さんに示すことが出来たことも、Vol.2を実施する上で良かったことだと思います。

浸透していくヌマベの楽しみ方

さらに継続することで、手賀沼周辺の地域の方々で協力してくださる人や自らアクションを起こしたいという人を巻き込んでいくことができました。最終的には、地元の方々が手賀沼を地域資源として利用したい、楽しみたいとファンになり、ヌマベのパブリックスペースを日頃から使ってみようというアクションが小さくても、どんどん増えていって欲しいです。

実は来場者も2018年の250人から、2019年は500人を越えました。とても多くの地元の方にテガヌマウィークエンドを知ってもらえたことが大きな成果だったと言えます。

こうした大きなイベントは企画や運営が大変ですが、疲弊してしまっては意味がありません。小さなアクションでもよいので、協調して参加してくださる方が増え、継続的にヌマベを活用していくことが、手賀沼ファンを増やしていくという長期的な目標のためには必要でしょう。

二回続けられてテガヌマウィークエンドが、手賀沼のヌマベの楽しみ方を地域に浸透させる1つのきかっけになり、多くの共感を得られていれば、成功といえるでしょう。

当日訪れた方々が楽しんでいる様子を見たり、

『楽しかった』・『手賀沼でこんなことができるとは思わなかった』

という声が聞かれたことはとても印象的でした。

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ヌマ・SUPの協力をして頂いた、てがぬまパドルクラブさん(Photo by 手賀沼プロジェクト)

タクティカル・アーバニズムとして

2019年12月の1週目にタクティカル・アーバニズムジャパンとして、ソトノバでも大きく取り上げているタクティカル・アーバニズムという考え方が、このテガヌマウィークエンドにも当てはまるのではないかと考えています。

まちづくりを主導する団体や行政との連携、整備すべき空間などがない状況で、自らが発見したヌマベのパブリックスペースを実験的に使ってみるという小さな取り組みから、手賀沼をまちづくりに活かしていきたいという大きな目標につなげようとしている点が、まさにタクティカル・アーバニズムだといえるのではないでしょうか。

手賀沼の周囲の方々もまだその課題やポテンシャルに気づいていない中で、実験とはいえ楽しめる空間を一度実現してみて、市民や地域コミュニティ、行政などからの反応を観測し、次にフィードバックしながら進めていこうという方法です。

Vol.2でも来場した方にアンケートをとり、データを集めました。得られたデータの一部を紹介していきます。

ヌマベに求める価値は?

来場した方に、今後ヌマベで体験したい価値を聞いてみました(図1)。ヌマベのポテンシャルとして実際に訪れる方が何を求めているのか・何をポテンシャルとして感じるのかを明らかにしたいという意図の問いです。

生き物と触れられる、子どもと遊ぶ・学ぶというような子どもと一緒に家族で楽しめて、教育的な点に価値があるという回答が多くありました。次にスポーツ、特にSUPやカヌーなどのマリンスポーツに価値があるという回答が得られたのは手賀沼ならではの特徴と言えるでしょう。

新しい手賀沼ファンを発掘

今後のテガヌマウィークエンドにどのように関わってみたいかという問いに対しては、来場者として訪れたいという回答が突出して多く得られました(図2)。少数ですが、運営の手伝いをしてみたい、企画を一緒に考えたいという回答が得られたことはとても重要です。こういった方々と連携することで、より継続的なヌマベ活用に繋がっていくと考えられます。出会いの場をつくることもパブリックスペースの力だという事がひしひしと感じられる結果となりました。

環境整備が必要なパブリックスペース

そのような価値を潜めたヌマベですが、より日常的に使えるようにするには草刈りや掃除といった簡単な整備・管理が必要となります。ヌマベの環境整備についても質問をしました(図3)。行政が日常的に環境整備をすべきという意見も多かったですが、自分たちが環境整備に協力してみたいと答えてた方が6割弱見られたことがとても有意義な結果です。環境整備に関心のある方がこれだけ手賀沼周辺に既にいるということもポテンシャルだと考えられます。

どんな人が訪れた?

では、どんな人たちがヌマベに訪れたのでしょうか。

居住地は手賀沼を挟む我孫子市と柏市で7割弱を占めており、その他の千葉県内を加えると来場者の8割を千葉県内の方が占めていることが分かります。その他、我孫子市に隣接する茨城県の取手市なども多く見られました。手賀沼に近い所に住む人が多く訪れていることが分かります。一方で、東京から訪れた方も1割弱おり、週末に都心部ではない場所で自然豊かな環境を楽しみたいというニーズがあることも示されたといえるでしょう。

テガヌマウィークエンド_来場者居住地マッピング_アートボード 1-min
図4 『来場者の居住地』のマッピング(Figure by DAICHI MATSUMOTO)

来場者の年齢は、アンケートの回答者の年齢となっており30代・40代の親世代が7割を占め、多くなっていますが、その多くが子どもと一緒に来ていた事が別の質問から明らかになっています。

実際に訪れた人の声

これらの定量的なデータとともに自由記述として来場者の生の声を聞くことが出来ました。印象的なコメントを紹介します。

『今後の展開について、魚に関することならなんでも、環境に関係するなら私自身も参加したい。』

『こんないい自然があるのに、住んでいてもなかなか遊ばない。40 年近く住んでいるが船に乗ったのは初めてでした。』

『子供の教育にも最適と思っています。季節を通した生息する生き物の変化などが学べるといい。』

『通りがかりに見つけました。子供が魚を捕れて喜んでいました。なかなかできない体験ができて良かったです。』

ふらっとヌマベを通りがかった人にも「イイね」と共感を得て立ち寄ってもらえるシーンをつくれていたのだと思います。やはり都心のパブリックスペースとは異なり、自然や生き物に実際に触れられるという点に価値を見出した声が聞かれました。

他にも手賀沼のヌマベがこのように楽しく活用できることに驚いたり、自身も参加したり、関わってみたいという声が聞かれたことは今後のプロジェクトにとっても有意義なものとなりました。

アンケートによって得られたデータから、また継続的にテガヌマウィークエンドのようなヌマベ活用を展開していくためにフィードバックしながら、協力してくださる方々と連携していこうと思います。

より日常的なヌマベ活用へ

今後はテガヌマウィークエンドのような大きなイベントだけでなく、一日だけ使ってみたい、生き物観察をしてみたい、ヨガをやってみたい、SUPをやってみたいなど小さなヌマベの活用も続々と自然発生的に起こっていくのが理想だと考えています。将来的にヌマベを日常的に使えるようにするには、草刈りなどの整備・管理がある程度必要になることも事実です。先ほどのアンケートにもあったように、ヌマベの整備方法に関しても地域の方や行政の関わり方を考えていく必要があるでしょう。

何か手賀沼を使ってやってみたい!という気持ちがあれば、体制が整っていれば意外と簡単に今回のヌマベのような空間の使用許可は取れるものです。一方で、勝手に釣りをしたり、桟橋からボートを出したりということは禁止されている場合があるのも事実です。何かやってみたいと思ったら、まず使うための仕組みについて調べてみましょう。今回の会場のヌマベに関して興味のある方は、手賀沼プロジェクトへご連絡ください。

読者の皆さんも是非、一度手賀沼のヌマベを体験してみてはいかがでしょうか。きっとそのポテンシャルに驚き、あなたも手賀沼ファンになってしまうと思います!手賀沼の可能性は底なしです!

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