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Society5.0時代における都市とテクノロジーが共存する政策とアーバニズム

一般財団法人日本規格協会のWebdeskに寄稿しました。テクノロジーとパブリックスペース、アクティビティについては重要なテーマだと思うので、ソトノバで転載します。


Society5.0時代における都市とテクノロジーが共存する政策とアーバニズム-テクノロジーと都市・パブリックスペースのアクティビティに関する考察-

都市とテクノロジーの融合・共存の議論の中で

最近では、Society5.0 に代表されるように、スマートシティ、ビッグデータ、IoT、センシング、自動運転など、テクノロジーの進化とそれに伴う社会対応の議論が多くみられます。都市やパブリックスペースが専門の自身の周りでも、テクノロジーの議論を多く聞くようになってきました。しかし、法制度はもちろんのこと、テクノロジーと共存した都市や社会のあり方は未だ議論半ばの状況です。

自動運転社会の都市とストリートのあり方:Blueprint for Autonomous Urbanism

先日、アメリカから、ニューヨーク市元交通局長のジャネット・サディク=カーン氏が来日し、セミナーシリーズが 行われました。

ジャネットさんは、ニューヨークで、タイムズスクエアの広場化(一部車道を歩行者専用広場へ)に貢献した行政側の功労者の一人です。ジャネットさんは、現在、NACTO(National Association of City Transportation Officials:米国自治体交通局職員協会)の議長を務めています。NACTOでは、自動運転社会におけるストリート(街路)のあり方の議論をまとめた、 Blueprint for Autonomous Urbanism(自律的アーバニズムのための青写真)を発行しました。

Autonomous(オートノマス)は、自律的な、自主的なという意味がありますが、自動運転車なども、Autonomous Carと使われ、自分自身で判断して自分をコントロールしているものを指します。このブループリントで示されているのは、自動運転社会に変わった時の都市やストリートのあり方の一例を示しています。自動運転社会に変わると、様々な変化が予想されますが、輸送用トラックや自家用車のルートが適正化され、人々の移動のためのモビリティは、LRTなどの公共交通と、シェアカー、LIMEやLIFTなどのシェア電動スクーターなどのライドシェアが普及し、モビリティのシェアは一層進むと考えられます。

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自動運転社会の青写真、データ社会によるLRTなどの公共交通と多様なモビリティの進化
出典:Blueprint for Autonomous Urbanism, NACTO

ジャネットさんは、日本の講演の中で、問題提起をしたのは、

「自動運転社会になっても、車であることは変わらない。人と車の関係を考えなければならない」

とありました。自動運転が進むと、車の中で、コーヒーを飲んだり、映画を見るなど、楽しむことができます。都市の中で、人が歩くということが減ってきます。そうなれば、SF映画などでも描かれているように、都市の中で、人が誰も歩いていない、モビリティだけが動いているイメージが、想像されます。

機能重視の都市づくりは、これまで私たちが自動車社会(モータリゼーション)で経験した二の舞になりかねません。これまでの日本の都市づくりは、主に戦後に、土地区画整理事業や市街地再開発事業などで、自動車中心や機能重視に再開発され、結果、まちの個性や都市の魅力を失ってきました。これからのテクノロジーと都市の融合・共存の議論は、いかに都市の魅力やまちの個性と、テクノロジーを共存させるかでもあり、手段であるテクノロジーを人がどのように使っていくかでもあります。

グーグルが手がけるテクノロジーを生かした進行中の都市開発プロジェクト:トロント市・Sidewalk Tronto

具体的な事例を紹介しましょう。現在、カナダのトロントでは、テクノロジーを都市へ導入した都市開発プロジェクトが進行中であり、同時に議論が沸き起こっています。グーグルの親会社・Alphabet Inc.の子会社である、Sidewalk Labsと、行政であるWaterfront Torontoの共同プロジェクトとして、Sidewalk Tronto が立ち上がりました。2017年10月、Sidewalk Labsがトロントのイーストベイフロント周辺にある4.9ヘクタールの敷地であるQuaysideを開発すると発表しました。Waterfront Torontoが主催するコンペを勝ち取ったものです。

ここでは、住民と情報管理について議論が一つの問題になっています。スマートシティでは、センシングなどあらゆる手段で、都市内のデータを取得し、それを都市マーケティングや都市開発に生かすとされています。そのデータ公開や個人情報・プライバシーをセキュア(安全に)に守ることが欠かせません。プロジェクトの目的としても、

「多様な住民、労働者、および訪問者の生活の質を向上させる完全なコミュニティを確立します。」

と謳っているだけに重要な課題です。

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グーグル傘下のアルファベットが手がけるトロントのウォーターフロント開発
出典:Sidewalk Tronto

テクノロジーでストリートはこう変わる!:トロント・Dynamic Street

Sidewalk Trontoの資料によれば、テクノロジーを使った新しい形のストリートの提案があります。その名もダイナミックストリート(Dynamic Street)。

Modular Pavementと呼ばれた、正六角形の新しいモジュールを舗装にし、歩行者や自動運転車、LRTなどの公共交通のピーク以外の時間帯を歩行者優先に変更するというのがダイナミックストリートです。2018年にモックアップワークショップ も行われています。また、合わせて、1階をアクティブにする取組み(Active Ground Floor)も並行して、パブリックスペースのアクティビティを創出しようとしているところにも注目です。

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データによって、交通ピークを感知し、ピーク以外は歩行者優先のストリートに転換するDynamic Street 出典:Sidewalk Tronto

データを取得して、都市政策につなげる:メルボルン市・Pedestrian Counting System

オーストラリアのメルボルン市では、Pedestrian Counting System(歩行者交通量測定システム)を導入しています。

これは、まちなかに、センサーを導入し、メルボルン市のオープンデータ原則に則り、個人情報や商業の機密情報などをセキュアに守った上でデータを無料で公開するというものです。メルボルン市のロビン氏へのインタビューによれば、

「データがなければ、都市戦略は描けない」

と、データの重要性を指摘しました。

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Pedestrian Counting System 出典:メルボルン市・WEB

人のための居場所・パブリックライフを都市につくる:メルボルン市・Places for People

このようなデータ取得は、パブリックスペースの専門家:ゲール氏(Jan Gehl)が非テクノロジー手法でも、メルボルンのパブリックスペースの調査をしてきました。

メルボルン市では、パブリクライフ調査(Public Space Public Life surveys)を、1994、2004、2013年にゲール事務所が実施しています。その調査結果を踏まえ、Places for Peopleという政策調査レポートを1994、2005、2015年に発行しています。

それは、メルボルン市のFuture Melbourne 2026 Planの目標にも掲げられています。その一つとして、パブリックスペースのデザイン基準を定め、デザインの統一されたベンチ(シティベンチ)がまちなかに設置されています。これにより、オープンカフェとは異なり、無料で、誰もが休んだり、休憩したり、まちなかの居場所を提供し、パブリックライフを過ごす場所を提供しているのです。

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メルボルンのシティベンチ 写真:泉山塁威撮影

テクノロジーはあるべき都市やパブリックスペースをつくるための手段

このように、テクノロジーは、あくまで手段であり、手段先行であってはならないと思います。

なぜ?(WHY?)が非常に重要で、手段が目的化してしまうのは誰もが本意ではないです。テクノロジーの開発や実装は、一つの手段であり、私の場合、「テクノロジーによって都市やパブリックスペースはどう変わってしまうのか?」よりも、「こんな都市やパブリックスペースをつくって行きたいから、このテクノロジーを使っていく」という思考でいたいと思います。

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