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ソトノバ・ラジオ#20 | 深澤幸郎さん|コトブキ

ソトノバ・ラジオ#20を紹介します。

ソトノバ・ラジオ#20のゲストは、株式会社コトブキ 代表取締役社長の深澤幸郎さん。
2007年株式会社コトブキへ入社。保守点検サービスを担う株式会社タウンスケープサービスを立ち上げ、スマートフォンでの遊具点検システムを構築。営業、商品開発・設計等のタウンスケープ・サイン事業統括を経て2012年より代表取締役社長(現職)。
2014年には福島工場と情報技術を活用し公園や広場などのパブリックスペースを賑やかにする株式会社コトラボを設立。ハード・ソフト・サービスの三位一体の事業構築により、100年老舗製造業の変革をすすめていらっしゃいます。
これからのパブリックスペースについて深澤さんにお聞きしていきます。

パーソナリティは、オンデザインの西田司さん 。

ラジオの様子は、YouTubeの「ソトノバ・チャンネル」でもご覧になれます。この記事では書き起こしをお届けします。


YouTube:「ソトノバ・チャンネル」

以下は、書き起こしです。当日の様子をお伝えします。

西田
始まりましたソトノバラジオです。本日のソトノバラジオはゲストにコトブキ代表取締役社長の深澤幸郎さんに来ていただいています。深澤さんよろしくお願います。

深澤:
よろしくお願いします。深澤です。

西田:
今日は都市と、深澤さんはもちろん公園とか詳しいと思うんですけど、これからのパブリックスペース全般がどうなっていくのかということを、ゆるく30分ぐらいかけて話していきたいと思っています。

深澤さん、このコロナの時期に少し働き方とか、都市の見方って変わったと思うんですけど、深澤さんの中で感じ方とか最近こんな感じだったっていかがでしょうか。

深澤:
最近でいくと、実は緊急事態宣言が出て以降は全然出社もしてなくて、全社完全に1回休業2週間っていう、全国の支店営業所も含めて2週間休業、っていうのををやらせていただいたりして。その瞬間に働き方としては変わったなと思っていて。2週間あるといろいろマインド変わるので、みんな休んで変えましたっていうところはすごく変化の仕方はあったなと思って。

ただ都市どうなのよって言われると、コロナなので本質は何か変わったかってあんま変わってないような気もしていて。元々あった人と繋がりたいとかっていう気持ちやら、もっと豊かにしたいよねみたいなところが加速したとは思ってるんですけど、本質的には変わってないけど、ソーシャルディスタンス取らなきゃなあっていう1点だけは制約条件として加わったなぁみたいな風には思ってます。って感じですかね。

西田:
2週間休業ってすごいですよね

深澤:
けっこうシビれますよね。

西田:
経営者としてはシビれる決断だなと思って。

深澤:
誰が決めたんだろうって自分で思っちゃうぐらい、若干他人ごとになりかねないぐらいシビれました。

西田:
ちなみにその働き方をそこで1回ちょっとリセットしようというか、2週間止めようって思ったのは、そのコロナに対する感染対策みたいな感覚だったんですか。

深澤:
コロナに対しての感染対策…そうですね。リモートで働かなきゃいけなくなりますっていうところが当然あるんですが、それがもうマストなので。やらなきゃいけないって話になってるので、それはもう当然やりましょうといった時に、僕個人はこの判断に対して「すごいですね」っておっしゃっていただける方がいるんですけどなんとも言えなくて。

本当はパッと切り替えて全部やれればいいんですけど、社員いっぱいいろんな人がいるので、それに対応しきれなくて。人によって2週間ぐらい休養とって体制整えないと、いきなり切り替えようとしてもできない社員がいっぱいいるので、なので2週間休業っていう風に。単純に危ないから家に入ってくれっていうことではなくて、いきなり切り替えるとけっこう社員の数もまあまあいるので、多様な社員を抱えてる会社として対応仕切れなかったので、2週間休業したっていう。

じゃあよかったの?って言われると、恥ずかしい話だなと半分くらい思ってますね。

西田:
準備期間というか、バッファーみたいな感じですね。

深澤:
個人の環境が多様なので、「働き方も多様だよ」って言ってるので。その割には「突然切り替わったから、多様だからあとよろしくね」って言って、でも共働きで、子供を俺は見てて、奥さんが銀行員なんで銀行行かなきゃいけなくて、とかって詰んでるじゃないですか。そういうこともいろいろ考えると、”整える”っていう時間もいるねっていうことで、2週間。

なのでそれ以降僕は、やっぱり言い訳無用であとはがんばろうっていう、腹を決めようぜっていう2週間なので。本当は腹なんて決まってなきゃいけなくて、本当はもっとやれたらなとは思います。

西田:
今はおっしゃっていただいた”整える時間”っていうのって、実はそのまさにその公園とかとして、パブリックスペースの使われ方とかにも言えることなのかなと思って。

いきなり家の近くの公園とかに、ステイホームで、リモートで、って言われるとみんながブワって殺到するじゃないですか。そういうことじゃなくて、人はいきなり変われないから、ちょっとずつ慣らし運転っていうんですかね、なんかその少しNew nomalって言われて「生活が変わる」っていきなり言われても、できない事をできるようにする時間が必要なんじゃないかっていう、その目線は長期的に見たらすごい必要なことなのかなって、まさに多様な人がいるからこそ必要なことなのかなって思いました。

深澤:
今回はコロナっていう、突然実質的にシャットダウンというか、家にいなきゃいけないとかっていう急激な変化だと思うので、急激な変化であればあるほど、毎日のレベルで状況の変化をつぶさに見る姿勢がいるのかなと、個人的には思っていて。

なのでちゃんと見るとかちゃんと分かるとか、事態をもう少し分けてみる。もちろん全体観を見る・持たなきゃいけません、みたいな総論もあるんですけど、全体観を持つためにも、細かい詳細な事実がどうなってんのっていうところを、総論そのままじゃなくてちゃんと分けて考えるってことが、視座としては必要なのかなって個人的には思うんですよね。

西田:
当たり前ですけど、今までこういう風にやっていた、毎日ルーティンでやってた、ってことが変わっていく時に、本当に個人のレベルでも変われないし、企業のレベルでも変われない、仕組み全体でもやっぱいきなりは変われないっていう、そのマインドセットっていうんですかね。

それってやっぱり最終的には、全体が決定するのは国かもしれないけど、一人一人がかなり意識しないとできないことですよね。

深澤:
そうですね。一人一人が意識するし、たぶんそれは働き方自体が変わると思うし、変わんきゃいけないと思うんですよね。たぶん欧米だとそうでもないんじゃないかなと思いますし。

日本ってやっぱりどうしても、会社側がやってくれることをやめたいって人も多いと思っていて。なんかそれは最低限やってあとはがんばろう、みたいなところのある種の健全な突き放しっていうのは、親離れ子離れみたいなもんだと思って、それいるよねって。じゃないと成長しないよっていう話は社内でも結構していて。自分のことでしょって。

西田:
なるほど、おもしろいですね。そういう目線で深澤さんがどんどんいろんなものを改革しているのかって思うと、ちょっとめっちゃ興味ありますけどね。

深澤:
いやあ、そんなでもないんですよ。けっこう地味な経費精算を承認したりとか、そんなことで1日終わってったりしますから、僕も。

西田:
いやいやいや…それはまあ、それですごい大事なファイナンスの目線だなあと思うので。

西田:
じゃあちょっと今日は深澤さんに何枚か写真持ってきていただいたんで、それを画面共有しながらご紹介しつつ、都市とかパブリックとか、公園とかどう捉えてるかっていうのをご紹介いただければと思います。まず一つ目はこれですね。

radio20-1浜松町から新橋に向かう途中にある横断歩道

深澤:
これはうちの会社の近くの交差点ですよね。横断歩道があって。会社が浜松町にあるんですけど、浜松町から新橋に向けて歩いてくとある交差点で。虎ノ門ヒルズとかから環状二号線と合流するような場所なんですけど。
最近なんとなく街をなるべく歩くようにはしていて。その中でやっぱふと思うのが、コロナの感染症対策っていうところについて、けっこういろいろ総論ありますと。

で、病院側は病院側でバシバシといろんな手立てを打っていて、どうやってキャパを上げるのかとか緊急搬送どうするんだってことを、現実の問題として解決していく中で、そもそもコロナになんかなんないに越したことはないよねっていう観点で見ると、色んな打ち手はあるんですけど、そもそもコロナの感染ってどういう分け方があるんだろうって考えていて。

都市の中で人は結局半径2mと言わずに、10mみんな常に必ず距離取ってれば、だいたい大丈夫なんでしょっていうんだったら、まあそうだなあと。ただそれすら距離を取るにしても何にしても、時間軸の短・中・長みたいなのあるなってすごい感じていて。

分かりやすく長期っていうのでいくと、事前の告知から何から含めて意図的に人を集めるようなイベント。これはたぶん明確な予約システムやその後のトレーサビリティって形で、システムやソフトウェアがある程度担保してる部分と、現場の対応ってところがあると思います。
中期に関しては、これがたぶん本来一番難しいところで、どうあるべきかを今後議論しなきゃいけないところ。

ただ忘れちゃいけないし、今この瞬間手を打てるよねで行くと、さっき写真シェアいただいたような”交差点の密集”っていう事態があると思っていて。本当に瞬間瞬間、数秒の間の密集。見てると交差点を赤信号で待ってる時はみんな距離を置いてるんですけど、パッと青になった瞬間わーって動き出して、(対角の)2つの流れがちょうどぶつかる瞬間って猛烈に密になるんですよね。

西田:
確かに確かに。

深澤:
言ったら、横断歩道も左側通行なんです。ざっくり真ん中で分けて。1本線引いてくれと。「1本線引けば左側通行って分かんじゃん。これそんなコストかかんないよね」って正直思うんですよ。
そんなことなのかもしれない。もちろん道路に何かを貼るっていうことって決して簡単じゃないとは思うんですけど、そういった事ってルールベースで解決することもあるよな、なんて思っていて。

短・中・長、いろいろな人がいろいろな形でコロナ感染症拡大をどう予防するか防止するかって観点で見た時に、打てる手はいっぱいあるけど、ぼんやりと皆があれがいいこれがいいじゃなくて、「これは短期のこういうことに対する施策です」「これは中期のこういうことに対する施策です」「これは長期のこういうことに対する施策です」っていうことを明確にした方がいいと思ってる。

ただ直近で結構気になってるのは短期っていう部分、そして中期っていう部分だと思っていて。長期はイベント主催者側の責任だと思うので、イベント許可した側、それはなんかやるでしょうと。
中期はたぶん街中でパン屋さんが「パン焼けました」って言って、人がちょっと集まりだしたら、集まっちゃったから集まっちゃって…みたいな群集心理になるような「不定期・不確実かつ、今の時点では予測がかなり難しい形の群衆」っていうものの発生。

横断歩道は横断歩道で起きるってまだ分かってるんですけど、なんとなく日向に人が集まっちゃうことも含めた「人が集まっちゃう」っていう、なんとも言えない流れ。あれは制御の仕方は別途考えてるんですけど、まだちゃんとした場でお話しするには自分の中の構想が正しくそっちなのかっていう確信がないので、なかなか難しいなと思うんですけど、ここがたぶん直近一番難しい気がします。

西田:
今例えで出していただいた、パン屋で「焼きあがりました」みたいな瞬間って、フワってなりますからね。

深澤:
フワッてなる。しかも、パン屋さんだけならいいんです。パン屋さんが努力するから。お店の外に列が並ぶ時に、足跡のマークを1m、1.5mとか2m刻みに置いときますみたいなことをやっていくって可能だと思うんですね。なのでそこは、それとしてやりゃいいというふうに思うんですけど、それ以外に集まってるからなんとなく集まる、までいくと、パン屋さんのせいじゃもうない。

ましてや「日向に人が集まる」は、もう誰のせいでもない。これって本来もともと僕らがやりたかった、まちが賑やかになる本質部分なので、否定ももちろんできない。

西田:
いやー面白い。ほんとそうですね。

深澤:
抑制ではなくてコントロールだと思っていて、視座としては。ある程度「集まる」ことに対してダメって言うよりは、「もうちょっとこっち寄ってもらっていいですかね」みたいな、柔らかいナビゲーションみたいなのが社会実装される世界を、僕はなんとなく今考えていて。それはなんだろうっていう方法論まで考え抜かないと、やっぱり元々メーカー出身なので、僕は。実装できないものは嘘だと思っていて、うちの会社においては。

直近だと公園に、ご存知の方もいるかも知れないですけど、2m距離離れましょうみたいな実際2mの原寸のソーシャルディスタンスの赤いバナーがちょろちょろ日本中に貼られているのを。

西田:
あれ速かったですよね。ほんとに速かった。

深澤:
とりあえずなんかやらないと、公園ロックダウンされちゃうんじゃないかなと、ちょっと思っていてですね。割とそこはちゃんとやろうかなと思ってやりました。そんな感じですかね。

西田:
なるほど。今ちょっと言われてたのは、それがちゃんと作用するように、例えばお互いグワってなるけど距離取ろうよね、みたいなのが個人のマナーの問題もあるけど、もしかしたらサービスとかアプリとか、そういうことでも可能なんじゃないかっていうことを考えているってことですかね?

深澤:
僕個人的には、是非これは西田さんはYESって言って欲しい質問があって。だから信じて聞きます。これにNOって言われるとキツいんですけど。厚生労働省が配布している濃厚接触になってるかなってないかのアプリってあるじゃないですか。あれ、入れてます?

西田:
入れてないです(即答)

深澤:
…笑。あの、そういう人がやっぱ多いんです。

個人デバイスに、この前別のところでお話しさせていただいた時に、見ていただいてるzoomで協議する、みたいな場で、アプリどれぐらい入れてますかねって言ったら、半分いってないんですね。なので、個人デバイス側に何かを強要するって現実的にはかなり不可能っぽくて、無理だと思っているんです。

なので、そこについては正直難しいので、社会というかインフラ側がどのようにしてリアルな人をコントロールするか、っていうことをやらなきゃいけないんだろうなと思っていて。なので、システムとかITっていう総論ももちろんそうなんですが、アプリではない。アプリでは解決しない、今回は。じゃなければ、立法で”スマートフォンには必ずこれを入れろ”っていうところまでをやりきる。ただそれは時間がかかるので意味がないと思ってて。

社会の側がいち早くどう変われるかって文脈で、アプリっていう手段は僕は取り入れないんじゃないかなってちょっと思ったりして。もちろんこれはまた違うテクノロジーであったりとか、素晴らしい何か開発があるかもしれないので、僕が知らなこともいっぱいあるんですけど、何となくそっちじゃないんじゃないかなって、アプリを別途グループでつくる側とすると思ったりする。

西田:
インフラ側って呼んでるのは、もうちょっと社会システムに乗っかってる側にそれをインプットできるような仕組みを考える必要があるじゃないか、ということですよね。

深澤:
アプリを配布しますっていうよりは、簡単にいうとカメラなのか何なのか分かんないですけど、もっと分かりやすく言えば、”ソーシャルディスタンス取り入れましょう”のバナーだってインフラ側だと僕は思っていて、あれはゆるやか〜な啓蒙だし、あれが狙ってるのって、別に実際子供はあれで離れるなんて思ってないんですけど。

僕は親が、親同士が良識がないとか、民度が低いとかっていう言葉が Twitter 上で散見されたってことに、すごいヤバイなって思っていて。子供同士が接触するっていった時に、親が相手の親を拒絶するためには、「こうしてほら、ソーシャルディスタンスを取らなきゃいけない、子供同士も取ってくださいって言われてるので、ちょっと離れようね」って親が言いやすいんですよ。別にあれは子供なんか見てないのは百も承知でいいんだと割り切ると、僕らはしていて。

そういう実際に離れるためにどうあるべきかっていうことを議論と実験、したいなと思っています。実験会社なので、やってみよう精神なので。

西田:
啓蒙っていう言葉、啓発って言い方が正しいですかね。啓発していくと、実際2mがどのくらいかって知らない人多いじゃないですか。建築とかにいると”なんとなく2mこのぐらいかな”って目で見てわかるけど、なんかかなり個人レベルでわかんないのが、ああいった赤い、かなり分かりやすい看板で「2mです」と言われると、「あ、これちょっと取った方がいいかも」っていう、そういう意識へのマインドセットが起こるって事ですよね。

深澤:
裏話があって、バナーは。あのデザインの総監督、僕なんですけど、社内的には相当抵抗があってですね。「ダセェ!」と。

いやだって、赤字に白抜きで矢印があって、みたいなのってデザインとして見るとどぎついので、やっぱり嫌なんですよ。景観を明確に乱してると思うし。だけど乱すもんなんだと、これは。そういうお洒落とかカッコイイとか可愛いじゃもはやない、と。

西田:
これですね。

はなれてあそぼう2mソーシャルディスタンス啓発バナー ©︎2020Kotobuki Corporation. All rights reserved.

深澤:
よくご存じで!もうとにかく情報落とせ、と。

西田:
めっちゃわかりやすいですよね。

深澤:
「2mなんです」って。遠くから「あっ!!」って「赤!!」って、景色に溶け込むなと、悪目立ちだって今回は言っていて。これが景観上にいいなんて1ミリも思わないですけど、今回必要なのは”明確な悪目立ち”だと、僕らやっぱり思いますし。

西田:
それもかなり迅速に動きましたもんね。

深澤:
そうですね、けっこう。でも今回は本当に自治体さんにも、いりますか?って聞いた時の反応も、差はあったんですけど、速かったですね。自治体さんも「くれ!」って。俺らあるからとりあえず送れ、というのはすごいあって。

もちろん僕らがやったことの措置としては、このスポットで今まで普段公園お世話になってお仕事させていただいてる側として、ロックダウンは市場全体がクラッシュするので、公園をもう閉じろってなっちゃうとやばい、っていうところももちろんあって。

当たり前にもう今回は予算措置もない中で、行政からの発注なんて待てないので、”つくったんでまいてくれ” みたいなので、何千枚まいたのかな。けっこう大量にブワッてつくったので貼りましょうー!って言った時の自治体の皆さんの、職員の方々の猛烈なスピードは、プロジェクトX的にかっこいい感じでした、皆さん。

際立ってたのは、あんまり特定の市は挙げないですけど、中部地方のでっかい市とかはもう何百枚単位で「すぐ持ってきてくれ。貼るわ!」みたいな。そこは本当にいいですね、緊急事態ではあったんですけど。

西田:
なかなかあのスピード感であれをつくって配れるって、本当に他なかったので、迅速なんだなって思ったんですけど、今の話を聞いて、本当に待ったなしな感じで動いたのか、すごい分かりました。そしてめっちゃ目立つっていう。笑

深澤:
赤いものに白を塗るだけですから、もう。サイン屋さんなんで、もともと。

西田:
深澤さんのデザインだって聞いて、また納得しました。

深澤:
雑なデザインですよ、雑な。笑

西田:
続いて、別のパートで持ってきていただいたやつを紹介します。

radio20-3国内新規感染者数の棒グラフ

深澤:
これはコロナ禍を受けて、まあまあけっこう大変な時代だと思うんですけど。議論を聞いてると、パブリックスペースあるあるだと思うんですけど、自分が見えてる景色がパブリックスペースだと思ってる人って、やっぱり多いなって率直に感じていて。もちろんみんなが見てるパブリックスペースももちろんパブリックスペースなんですけど、それが全てではない。なので冷静に見ましょう、っていうことをずっと僕は姿勢として持つべきだと思っていて。

今映していただいている通り、こんな感じで経時で事態の把握をしてたんですね。書き出しの方にこんなことがあったよ、緊急事態宣言あったよとか、緊急事態宣言解除って書いてあって。時間軸が左から右に流れていて、棒グラフが感染者数です。

その間に緊急事態宣言が発令されてすぐは動けなかったんですけど、翌週ぐらいから公園が、人が集まってるぞっていうのを受けて、パパッて動こうかっていうので、各公園課の方々に「どのような措置をしてますか」とか「どんな感じに今なってますか、現場」みたいなことをご負担にならない範囲で電話とかで聞かせていただいてっていうのを、おおよそ全自治体の内の20%いかないぐらいのところをサンプルで、情報取らせていただくこととともに、他の市で「こういう取り組みされてますよ」とか、やっぱり横で連携が瞬間とれなくなるので。

情報のプラットフォームとして横軸で繋げるみたいな形で、他の自治体こうですよっていうのを、サマリーも含めてアンケート、サマリー、っての繰り返しやったんですね。4月の20なんぼから始まって6月の頭まで。

西田:
これ第1回第2回とか書いてあって、ここですね。

深澤:
はい、3回やってるという感じになっていて。ちょろちょろっとめくって次のページ行っていただくと、他のデータもあるんですけど、市の名前が特定できたりとか傾向値があんまり見えちゃうっていうのがこの場での話題として適切かが僕には何とも言えなかったので、すごく抜粋の抜粋なんですけど、ざっくり言うとこんな措置よ、というところなんですね。

radio20-4コロナ禍における国内街区公園等の対処法

深澤:
これ映していただいてるのが小さい公園、いわゆる大規模公園って言われるような都市公園の中でも大きいものではなくて、街区公園等って呼ばれているような小さい公園を対象に、「どんなことやってますか」みたいな話をしてたんですね。1回、2回、3回と右に向けて情報としては流れていて。

それで行くと遊具の(利用)停止って51、40、23、で、全体がだいたい260〜270ぐらいから毎回お答えいただいてるので、それでいくと、なんとなく都心部に住んでいると、僕も都内に住んでますけど、公園の遊具一斉に停止してるとか、使用禁止のが印象としてすごくインプレッシブな感じというか、すごく強いですよね。

西田:
報道されてましたしね、それがけっこう。

深澤:
そうするとすごくそう感じるんですけど、これって1/5だよね、って。もちろんこれは自治体数なので都内は、23区はどうなのっていうと「23区の内ほとんどが〜」みたいなのは当然あるんですけど、議論は全国の人が参加すると思うんです。このコロナにおいてどうする、って。でもその前提条件が各地でそもそも全然措置が違ってるっていうこのズレを、全く前提を整理しないまま、議論するのってかなり無駄が多いなと思っていて。

逆に言うと、我々が送ったバナーも含めてなんですけど、このバナーが、効果があったわけではないですけど、”看板もしくは貼紙の設置”っていうところが圧倒的に円として大きくて。

西田:
圧倒的に大きいですよね。

深澤:
なのでだいたい60〜70%ぐらいは、何かしらの張り紙とかバンバン貼ってったんですよね。それはやっぱ自治体の職員の方々の努力だったと、やっぱり思いますし、なんかこういった実は一部だよねとか、エリアによる偏りや都市の大きさによってどう偏るのかっていうことを議論の前提条件として整理しないと、コロナ禍において公園ってどうあるべきなのとか、コロナをwithコロナでどういう風に考えていけばいいのっていうことの議論って、かなり不毛だなって思っていて。

西田:
なるほど。今これ見せていただくと、感覚でけっこうみんな話しちゃうっていうことを言ってるんですよね。
で、自分の身の回りの公園で見た風景とか、なんとなくテレビとかの報道で見た風景が公園の全体像のように感じてしまうと。

深澤:
なので、行政のみなさんが我々とズレるのって、ユーザー目線がないってことな一方で、こういったことを議論する瞬間はユーザー目線でやっちゃだめだと僕は思っていて。
ユーザー目線じゃないんです。なので一回行政目線に僕らが今度なるっていうことをベースに議論しないと、”エモい会話が繰り広げられて終わる”と。

西田:
わかりますわかります。そういう感覚って、今深澤さんが見せてくれたんで、意外に遊具停止停止って言われてるけど1/5ぐらいなのかなとか分かるんですけど、なかなかこう自分で把握しに行かないで議論になっちゃうこと多いですね。

深澤:
そうですね。そこってやっぱりそもそも取ってないってことから始まると思っていて。なので、今回必要だったのは黙ってアンケートをまず始めようと。黙ってバナーもそうですけど、議論をする気が今回はなくて。

本当だったらそれこそ西田さんとか有識者の皆さんに、どういうアンケートでっていうのをやりたかったんですけど、何ぶん一企業の社長というところもあって、そこそこ忙しかったっていうのもあって。ま、これ完全な言い訳なんですけど。議論をして深めちゃうと走れなくなっちゃうので、ここは考え抜いた奴が先に走る、と。

もし仮に別の主体が正しくアンケートとかをして、議論の前提条件を整えたりってことをやっていれば、僕らがやる必要もないと思っていて。持ちかけて合意してお金の処理をどうしてって、これをやる時間は今回は許されてなかったと思いますし、それはやっぱり時間の経過とともにどう変わったかを見るって言うことももちろんそうですが、なによりもこれを始めた時のきっかけが、行政の皆さんがどのようにこの事態に対して対処するかっていう方法論や判断の基準が何なのかを知りたかったんです。そこだと思います。そんな感じですね、今回。

西田:
すごい面白いですね。今言われるように、それを取りに行くのかっていうこととか、何を取ったらいいのかっていう話をし始めちゃうと、その議論がどんどん深まるだけで、実際の走れるっていう部分が遅れて行っちゃうから、とりあえずやったっていうのが、その感覚がすごい面白いですね。

もうあっという間に30分過ぎちゃったんですけど、せっかくなんで最後ちょっとネタ的に、深澤さんに持ってきてもらったもう1枚、写真紹介していいですか?

radio20-5           深澤さんの知人が所有するエヴァンゲリオン初号機バイク

深澤:
僕の大好きな、知人のバイクなんですけど。完全に知人のバイクです。で、エヴァの初号機バイクなんですけど、そもそも日本でまず売ってなくて、台湾で売っているのの逆輸入みたいな形で買ってきたとおっしゃっていて。

単純に置いとくと、いろんな人が写真撮ってくんですよ。僕はこれ隠し撮りじゃなくて本人の許可をもらって写真撮ってますけど、いいなって思うんです。これも当然バイクもそうですし、なんか僕らの業界、っていう言い方が最近もだんだん嫌いで、でもなんていうんですかね、別にもういろんな産業やいろんなところと関わればいいんじゃないって思っていて。日本って「コンテンツだよね〜」とか「漫画文化〜!」とかって言ってる割に、”パブリックスペース×漫画” って誰が考えてんだろうな、みたいなことをちょっと思ったりもしていて。

もちろん考えられてる方がいらっしゃるってこともあると思うんですけど、なんかすごく大きい産業だったり、ゲームとか、いろんなものがあるはずなのに、実はもう僕らも壁をつくってんじゃないかなって。僕らの”僕ら”って誰を指してのがわかんなくて、西田さんは”僕ら”の中に入ってくれると信じてますけど。

西田:
入ってます入ってます、もちろん。笑

深澤:
産業の壁みたいな所って、やっぱおっかなびっくりでもぶっ壊していきたいなっていうのが正直あって。なのでコンテンツって呼ばれるもの、ましてや今これがエヴァの、エヴァパークが20年間残るものとしてやりますって言ったら、相当な覚悟と公益性って出ますけど。別に今の時代って、テンポラリーにパブリックスペースって整備されたりいろいろされているので、だったら全然いいんじゃないって、瞬間的にやってみてって。

深澤:
よく引き合いに出されるニューヨークとかも、1個1個の例えば「アート作品やろうよ」とかで「この後はダメだね」って市民がめちゃめちゃ言うみたいなのとか含めて、トライアンドエラー。いっぱいやることだと思うので、そういったことってなんかもっとやりたいなと思っていて。

その最たるもんって、もっと美しい形でやんなきゃいけないですけど、一企業の好き勝手にやれるってことじゃないと思うんですけれども、もっとコンテンツとかそういったものがパブリックスペースにくると素敵だなっていう風に、ちょっと思ってるっていう、そんぐらいです。

西田:
でもまさに今いろんな産業と関わった方がいいっていう風に言ってましたけど、そういう風になると、下世話な言い方ですけど、お金が動くから、お金が動くってことはいろんな人がそこにキャッチアップする空間が生まれるってことだと思うんで。今までパブリックって、ビジネス目線では道路をどう工事するかとかそういう話だったんですけど、もっと違う関わり方が生まれますよね。

深澤:
お金のデザインを提案しないとね、今の時代なので難しいと思いますし。やっぱり、お金、大事ですからね。予算つけてくださいつけてくださいってだけじゃないと僕は思っているので。

もちろんやるべきことは行政が予算付けなきゃいけない、これも事実ですけど。基本企業姿勢が「まあ大きい方向こっちなんで、後はいろいろやろうぜ」、ドラクエいうところの「いろいろやろうぜ」っていう作戦をとりがちな会社なので、そこは1つ大きく意識してるところだったりする、そんな塩梅ですかね。

西田:
最後のその感覚って、さっきご自身でもチャレンジングなというか、実験的なって言い方をされてましたけど、その実験的に行かないと見つけられないところがあるから、実験的にあえてやってるとこもあると思うんですよね。

深澤:
止めたいけど止まんない、っていうのはあるんですけどね、社員が。

西田:
どういうことですか?笑

深澤:
もともと結構暴れん坊な社員が事業つくったりとかっていうのと、創業以来の社長が鉈を振る、「こっちだ!」みたいなのをやる、っていうのを両方やるっていう会社なんですね。

なので、たぶんうちの一番最初のいわゆるパブリックファニチャーのど真ん中って、大阪の万博から始まってるんですけど、それ以降物件にちゃんとなっていったり、と。横浜の馬車道の、鋳物の通り。営業マンがどうしてもやりたいから、業者勝手に動かして「やりたーい!!」ってなって、会社がそれを「じゃあしょうがねえから、品質保証からちゃんとやるか」みたいになって事業が爆誕したっていう。

深澤:
人1人の気付きは大したことない、きらめきも大したことないと思っていて。それは僕が社長として個人的に意識してることは、いろいろやってるといろんなことが起きていて、当の本人が気づいてる場合もあれば気づいてない場合もあるけど、どちらにせよキラッと輝く何かっていうの見逃さないようにしてあげたいなとは思っていて。

けっこうそういうことっていっぱい起きてるので。そういう風にしたいって時は、社会的にリスクが大きいこととか、会社としてリスクが大きすぎることでなければ、「やってみたら」って言います。言った後にコストはちゃんと僕も見て詰めるんですけど。総論はやってごらんと。ちょっとこれ高くない?と。

西田:
そこも、知ってます。笑

西田:
今までやってきたことをどう継続するかっていう目線も、もちろん大事だと思いますし、それによって適正化が図られていくって部分、パブリックスペースって意味では、その安全性とかも含めてって大事だと思うんですけど。

それとはまたもう1個別の尺度で、チャレンジというか、先ほどニューヨークの後の例えとかされてますけど、全部合ってるわけじゃないけど、でもやっぱりやってみようみたいな、そういう感覚から見つけられる次世代のあり方っていうのはあるのかなと思うので。深澤さんがそういうことを社内で鼓舞してる感じはす、ごいなと思いますけどね。

深澤:
いやあ、もうぼんやりした社長で。よく叱られてます。笑

西田:
いやいやいや。
今日は本当にありがとうございます。

深澤:
ありがとうございました。

西田:
最後に、ちょっと僕がお話を聞きながら、すごい勝手に”西田まとめ”でToday’s perspective を作成したのでご紹介したいと思います。「Today’s perspective 〜これからの都市とパブリックを探る視点〜」 ということで。

1つ目はご自身の会社の話の中に出てたんですけど。
・急激な変化は毎日を丁寧に見ることから整える
これは「全体観を持つ定量化」ってあとで出てくるんですけど、非常に通ずるものがあるなと思っていて。変化してるからこそ、今全体としてどういうことが起こってるのかを丁寧に見ることからは、自分自身を整えていくということだったと思います。

・短期と中期と長期の都市の密集を考える
今ソーシャルディスタンスと言われている中で、ライブハウスどうするのかとか野球の試合どうするのかっていう、長期的な目線での話になりがちなんですけど、その次に出てくる。

・短期のまちなかの群衆の発生(横断歩道、日向etc)
そういうところにもまだまだ考えるべきものや、そこにむしろ仕掛けることによって起こることがあるんじゃないかと。その次の段にも通じますが。

・アプリではない、インフラ側のリアルな群衆の適正化
これは先ほどの赤いバナーの話と通じてると思います。

・全国の人が議論できる全体観を持つ定量化(行政目線)
これは一人一人が個人の目線、実感値だけじゃなくて行政的、国的に目線を持ったらいいんじゃないか。

あとこれ、意外に僕の中でけっこうヒットなんですけど、
・議論して深めると走れなくなる。走れる主体が走る。
できる人からやれ、ということでね。

で、最後の、
・色々な産業とパブリックスペースは関わると良い(アニメetc)
やっぱりこれからのパブリックスペースを考えていく中で、パブリックスペースが今まで組んできてなかった産業と、その掛け合わせが価値なんじゃないか。

ということで今日は非常にいいToday’s perspectiveをいただきました。

radio20-6「Today’s perspective 〜これからの都市とパブリックを探る視点〜」

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