レポート
ソトノバ・ラジオ#03|佐藤留美さん|NPO法人Green Connection TOKYO代表理事
ソトノバ・ラジオ#03を紹介します.
ソトノバ・ラジオ#03のゲストは、NPO birth 代表兼NPO法人Green Connection TOKYO代表理事の佐藤留美さん。2つのNPOの主宰を通じて、緑を媒介として人と人をつなぐ活動を展開されています。コロナ禍により顕在化した都市の自然が持つ価値について、緑をマネジメントしてきた経験をもとにお話していただきます。
パーソナリティは,東京大学の山崎 嵩拓さん.
ラジオの様子は,YouTubeの「ソトノバ・チャンネル」,Spotifyのポッドキャスト,この記事では書き起こしをお届けします.
YouTube:「ソトノバ・チャンネル」
Spotify:ポッドキャスト
以下は,書き起こしです.当日の様子をお伝えします.
山崎:
第3回のソトノバ・ラジオ配信させていただきたいと思います 。本日のパーソナリティーはわたくし山崎がお送りさせていただきます。まず初めにソトノバ・ラジオとは、パーソナリティーが今気になる人とのトークやトピックについてゆるくオンラインで聴くラジオです 。ソトノバ・コミュニティという、ソトノバの中のクラブ活動としてやっております。平日の夜にパーソナリティーそれぞれが企画し、ゲストと共に今気になる話やトピックについてお話しするラジオです。パーソナリティーは泉山、西田、田村、山崎の4人の交代でお送りしています。本日はわたくし山崎がお送りします。私は都市におけるランドスケープの研究に取り組んでおり、都市の自然、アーバンネイチャーというものを探求して行くようなラジオにしていけたらというふうに思います。そこで私にとっては本日が第一回ということでとても素敵なゲストの方をお招きしてお送りさせていただきます 。佐藤留美さんです。よろしくお願いします 。
佐藤:
佐藤留美です。よろしくお願いします。
山崎:
留美さんに自己紹介していただくんですけれども、自分は昨年の一年間、留美さんと一緒に大学とNPOの立場でお仕事させていただきました。では留美さんから今どういう意識でどういうことを考えながら活動をしているのかお話していただきたいと思います 。
佐藤:
画面共有していただいているのが、まちに地みどりマップというマップなんですけれども 、私たちが目指している街の姿ですね。私はNPOのbirthという団体とGreen Connection TOKYOという二つのNPOを主宰しております 。緑を軸にした自然とともにある都市のあり方を考えて、実践している団体です 。birthという団体はもう20年以上前の1997年に仲間と立ち上げたのでもう長いですね。私もともと自然が大好きで物心ついた時から地面を掘って虫を探していました 。私は仙台の生まれで、材木屋さんの娘だったんですね。仙台で過ごしてたんですけれども 、大学の赤本を高校の時に見た時に昆虫研究会というマニアックなサークルのある大学を見つけてその大学に入ろうと思って東京の大学に来ました。
山崎:
なかなか昆虫研究会目当てで大学を決める人っていうのは多くないような気がしますね (笑)
佐藤:
そうなんですよ。でも東京っていっても武蔵野とか多摩とか呼ばれるわりと西側のエリアだったんですね。自然があって街中に畑とか林があって虫もいろいろいて、ここ東京!?っていうような印象で。東京都といったら西新宿のようなイメージがあったので本当にびっくりしたんですよ。
山崎:
確かに自分も3年前から東京に住んで、多摩エリアを初めて歩いたとき、小さな農地がたくさんあること、街の暮らしと一緒にあることにすごく驚きがありました 。
佐藤:
本当にびっくりして、もともと私がいた西側の武蔵野エリアというのは人があまり住んでいない薄原だったところで、そこに玉川上水が通ってから人が住み着いて、人が自然に手を入れることで自然が豊かになって虫だとか生き物とかタヌキがいるわけですけれども、豊かになって行くというのがすごく魅力的で面白いなと思っていました。だけど気付いたらどんどん宅地になって駐車場になって昨日まで畑だったのにこの間まで雑木林だったのにみたいなところに何とかしたいなとすごく思いました。そういう思いをずっと未だに続けてライフワークになっています。
山崎:
素晴らしいですね。
佐藤:
それは同じ思いを持っている仲間の方々がいらっしゃったので、みんなと一緒にそういう団体を立ち上げました。自然保護団体は当時から色々あったんですけれども、私たちがやっているのは自然保護というよりも「自然と人の関わりを繋いでいく」という事をやろうと思っていました。15年位前から東京都の70くらいある都立公園とか市立公園とかを民間団体で管理しているというのがbirthの仕事でやっています。
山崎:
70ってなかなかすごい数ですよね。
佐藤:
すごい大きい200haくらいの都内最大の都立公園もあるのですけれども、15平米の長机だと三個分くらいの公園まで色々な公園の管理をしています。 公園の管理といったら植栽の管理とか植え込みや施設を掃除するというイメージがあると思いますけれども、私たちがやっているのは地域の方々と一緒に緑を楽しむようなイベントをしたり、絶滅しそうな 動植物を一緒に守ったりとかしています。
山崎:
中でも人と自然をつなぐこと、自然を守るだけではなく人も一緒に考えるというところに肝があるのですね。
佐藤:
そうですね。見えないものなんですけれども、なぜ自然がなくなっていくかというと自然そのものがなくなっていくというよりも、自然と人の関係がなくなっていくから自然がなくなっていくなという風に考えています。都市の自然というのはまさに必要でなければなくなっていくし、必要であると戻ってくる。その必要性というものを感じられるか感じられないか、そこに価値を見出すか見出さないかというのが非常に大きな点です。間にあるものをどうつなぐかというものをやっています 。
山崎:
まさに、人との関わりがなくなっていくところに注目して活動されているというのが印象的です。
佐藤:
ちなみにbirthという団体は『池の水を抜く』というテレビ番組にレギュラーで出ているので、それを知ってそれで知っている方もいらっしゃるかもしれません。
山崎:
自分もbirthっていう名前をテレビで見て驚きました。活動の幅が広いと感じました。
佐藤:
マスコミとかテレビの力が大きくてずっと私たちも外来種は言っていたんですけれど今みんな知ってくれている問題になりました。
山崎:
そして東京の緑を守る団体を二つやっているというところが、留美さんを紹介する上で欠かせないポイントだなと思っています。これも凄いことですよね 。
佐藤:
もう一つの団体が Green Connection TOKYOと言って、緑をコネクションする、人と緑をコネクションする人と人をコネクションする、まだ2年前に生まれたNPO団体です。東京というとビル街というイメージがあってコンクリートばかりというイメージがある人が多いと思いますけれども、実はすごく素晴らしい緑があって実際都心には皇居のようなグリーンスペースもあれば大きな庭園や公園もある。江戸東京野菜など、伝統的な農業も非常に盛んです。かつ東京は横に長くて、そこに崖線があってそこから湧き水が湧いて小さな流れが大きくなって、多摩川に合流したりします。もっと西側行くと丘陵地があって、雲取山は2000メートル級だし 、あと小笠原とか伊豆七島とかもある東京ってやっぱり凄いなと思って ます。
山崎:
こんな豊かなメガシティは、世界広しと言えどなかなか無いですよね。
佐藤:
江戸時代はエコシティだったし、緑がたくさんあって、それをなんとか生かしてみんなで一緒にもっとサステナブルな町ができるんじゃないかと思っています。そういう想いを持つ方々をつないでいくようなプラットフォームが必要だなと思って立ち上げたのが Green Connection TOKYOという団体ですね。
地みどりマップ山崎:
それで二つの団体で取り組みをされているんですね。そして、画面に表示しているまちに地みどりマップは、街のビジョンを示すものなんですね。
佐藤:
実はこのマップに書いてある内容の8割ぐらいが本当の事例なんですね。本当の事例をパッチワークのように繋げている絵です。東京都内で行われているいろいろな緑と関連した活動です。右下の方にはテレワークしている人がいますね 。駅前で花を植えていたり広場の芝生でファーマーズマーケットとかマルシェとかやっていたり、芝生を楽しんでいたり、コミュニティガーデンと言って空き地を畑にしたり、農園があったり、かなり古い屋敷があったり。お屋敷に森があって、その森を活かした環境共生住宅とか、商店街とかにも緑が配置されていたりします。別にマニアックな人だけではなくて、誰もがちょっと緑の活動をするとこんな街が出来てしまうと、こういう目標を持ってやってきたのですが、実は今回のコロナで私たちがやってきたことってコロナに強いまちづくりじゃないかなって思いました 。
山崎:
まさにその点についてもお伺いしたいなと思います。自分も含めコロナによって多くの人が、自宅とその周辺に留まりなさいと言われたわけですよね。その中で、ここには公園があったんだとか、散歩を通じて身近な場所に対する発見があったと思うんです。つまり、自分の町は今までよりもよく見られちゃうわけですよね 。なのでより注目される町が、コロナの後にはどういう街とか都市になって行くのが良いのかということを緑とか自然の視点から考えていて、その点についてもぜひお話を聞きたいと思います 。
佐藤:
緑が非常にキーになるなと思っています。ただ緑があるだけではなくて、緑が人と人を繋げる媒介になるんですね 。人と人も繋がるし人と生き物たちも繋がるみたいなそういうつながりを作る緑という視点で、都市の自然というものを考えています 。
山崎:
実際公園に訪れる方も増えたという話を聞いて驚いたんですけども結構増えたんですか?
佐藤:
凄かったですね。私は公園にいて現場を毎日見ているんですけれども、去年の同じ時期と比べて、1.5倍から2倍来ています。しかもバーベキュー広場とかスポーツレクリエーション、テニスコートは全部閉めてしまっているのにそれだけ来ています。一方で公園が二密になっていてクレームもありました。その後、利用ルールをきちんとしてソーシャルディスタンスを守る等の対策をしたんですが、あんまり人が集まるからやっぱり公園を閉めて欲しいという声もありました。公園があるって、ものすごい最後の砦みたいな。コロナだけではなくて色々な大変なニュースが入ってきて健康を害したり。あとはメンタルヘルスですよね。DVの問題とかも取り上げられていて、ちょっと自分たちの家の周りに少し気が抜ける場所とか、それも自然があってホッとする場所とかそういうものがあるというだけでかなり違うなと思いました。自然のゆらぎと言いますけれども、それは生き物のリズム、体のリズムを整えてくれる働きがあってそういうことも含めて今回は本当に色々感じましたね。
10 Green Power山崎:
自分も緑を研究していますが、こんなに緑が注目されることがあるのかという驚きがありました。あらためてどういう効果があるかということを留美さんに紹介していただきたいと思います。この10Green Powerという図は、改めて自然の色々な価値を持っているんだなということを実感させられましたね 。これはコロナの前に作ったものですか ?
佐藤:
そうですね。私たちは緑の力を引き出して行くということで、10個イラストにまとめました。他にも、いくらでも出てくると思います 。やっぱりこの中で、コロナのような感染症が蔓延してしまった背景には、大きな環境破壊があって、生き物の多様性の問題が外せないと思います。あとはコミュニティーを活性化するというのはこの後お話したいんですけれども、やっぱり緑が媒介になるということで 大きな力になると思います。また今回のように世界同時に発生して鎖国状態みたいになった時に、食べ物の供給場所としても凄い重要だなとか。ここに書いてあるものだけではないんですけれども、緑の力をコロナをきっかけに再認識したと思います 。
山崎:
これはコロナ前に作った図ですが、ほぼ全ての効果を以前より感じられるようになったというところに驚きもあります。
佐藤:
家が帰って寝るだけの場所だったのが、そこにずっといると、周りの環境がすごく気になって、身の回りに何があるかとか。あとちょうど春だったので、社会・経済がストップして、自分も家にいなきゃいけなくて 、みんながストップしているのに季節や自然が巡っていて、それにすごく安心する、励まされたという人も多いんじゃないかなと思いました 。木々は芽吹きし花は咲くし 。
山崎:
そんなコロナの中で留美さん自身も自然の中で過ごされてたんですか?
狭山公園から眺める東村山(東京)佐藤:
そうですね、私は東京の中でも西側の東村山と言う場所に住んでいます。志村けんさんの東村山です。よくよく見ると緑が多いですよね 。ちょうど写真の右側に立っている大きなビルが東村山駅の駅ビルなんです。あとこれ、私たちが管理している狭山公園という公園から撮っていて、トトロの映画でモデルになっている八国山というところだったりします。そして建物の間には畑や農地があるんですよ。今回散歩してみてこんなに畑があるんだと思ってビックリしました。
山崎:
これ東京の話ですからね 。凄いことだと思います。
佐藤:
東京は結構、無人販売が多いんですよね。これが今回、大人気だったんですよね。この写真も東村山の無人販売所なんですけれども、実は地元の相羽建設さんという建設会社が 作っていて 相羽建設さんは住みびらきという住宅を作っていて、住まいを開こうということをやっています。こういう場に緑が加わることで媒介になって、どんどん繋がっていくというのが本当に面白いなと思っています 。
山崎:
この無人販売機自体はもともとあったんですか ?
佐藤:
これは農家の方々がいらっしゃって、相羽さんたちが人をつなごうというコンセプトのもとにこういう無人販売所を作って、一緒にコラボして野菜を売っています 。
山崎:
ちょっとしたデザインに可愛いげがありますよね 。面白いなと思います。
佐藤:
地元の会社さんとか、いろんなアーティストさんとか、いろんな方が町にいらっしゃっています。ソトノバさんはそういう方々をつなごうとされていると思うんです。そこにさらに食べられる緑があるという安心感すごかったですよね 。
山崎:
日本だとそこまでニュースになってはいませんでしたけれども、国際的には自国の消費を優先させて輸出を抑えようという動きもあったようなので、日本も輸出が止まってしまったらいろいろなものが食べれないとか可能性もありますよね。
佐藤:
そうなんですよね。今回テレワークに慣れて、このままライフスタイルやワーキングスタイルが変わった時に、街中に残っている畑や後継者がいない空き畑で、兼業農家や半農半X、農家さんに援農に行く、そんなことをしたら街の姿が変わるんじゃないかと思います 。
山崎:
そうですよね 。その風景はまさに人が見える風景ですごく温かみを感じます 。このような都市の中に緑がある状態とか、緑が人と自然をつなぐという状態というのをどう作っていくとか?どう実現するか?というところで留美さんは二つの団体で活動されいて、様々なお考えがあると思います。コロナによってライフスタイルの変化が加速して行く中で 、どういうことをすべきとか考えられてますか ?
佐藤:
セーフティネットと言われるんですけれど、いざというときにみんなが繋がれる関係づくりを普段からしておくために緑を使うというのは、非常に有効だと思います。国分寺が良いモデルなので事例をお見せします。ぶんぶんウォークという街歩きのイベントがあるんですね 。ぶんぶんウォークのパンフレットには、一個一個の○○タウンという名前など、これらは市民の方々が純粋に国分寺って素敵な街だからみんなに知ってもらいたいという気持ちから、街歩きを促すイベントなんです 。パンフレット裏面に地図があるんですけれども、国分寺は国分寺崖線があって湧き水が湧いているんですけれども、みんなが楽しみながら歩けるような場所を作っています。この地図の真ん中の緑の線が崖線で斜面林になっています。国分寺は史跡があったり、大きな公園があったり日立さんの大きな研究所があるんですけれども、こういったところがずっと繋がって、そこをみんなでぶらぶら歩こうというものです。もう十年目なんですけれども2日間で一万五千人ぐらい 公園だけでも集まってくれていました 。面白いんですよね、街の姿が変わってきてみんなの散歩道が決まってきたのでその散歩みち沿いにお店が出来てくるんです。住宅地の住宅の1階を改装してカフェをやったり蕎麦屋やったりとかそういう場がいっぱいできています。
山崎:
ではイベントも継続されているし、更にイベントだけではなくて日常の風景の変化にもつながってきているというのはすごい事例ですね。
佐藤:
これをきっかけにしてまちの色々な人たちがつながっていきました。農家や私たちみたいの公園の管理者、いろいろなことをやっている学校関係者などみんながつながっていく。今回コロナでは、国分寺って小さなお店も多くて危機的な状況だったんですけれども、みんなで知恵を出し合ったり、みんなでそのセーフティネットが機能したという感じがありました。クラウドファンディングをしたとか、みんなで情報回したりということにもつながってきました。
山崎:
普段から緑を介して人と人が繋がっていたことが、有事の時に効果を発揮するというのが、国分寺ではモデルのようにできていたんですね。
佐藤:
そうですね。つなぐ役割の人がすごく必要で、市民の人にも繋いでいただきましたし、私たちも公園側ではパークコーディネーターという人が人をつないでいったり、レンジャーという役職が緑をつないだり、そういうつなぐ役割というのが、アフターコロナの都市にはとても必要だなと思っています 。
山崎:
ありがとうございます。もう一つイベントを行っているんですよね?
「あったらいいな」をみんなでつくる公園プロジェクト佐藤:
ぶんぶんウォークで色々な方と繋がっていくと、みんないろいろなことを公園とかオープンスペースでやりたいとなってきました。この写真に写っているのは全て市民企画ですね 。例えばパパさんたちが子供達と一緒に 公園でご機嫌な音楽聴きながら 生ビール飲みたいみたいなピクニックヘブンとか 、お母さんたちが育児で煮詰まっちゃうからみんなで外で遊ぼうというフェスとか、アーティストさんがいろいろ集まってのてのわ市とか。あとは毎週 sunday parkcafeというのをやっていまして、地元のカフェがケータリングを出して 、地元のアーティストさんたちがワークショップをするみたいな、みんながあったらいいなと思っているものをみんなで作ろう そういうプロジェクトですね 。
佐藤:
これは去年の ピクニックヘブンの様子なんですけれども 、今年は残念ながらイベントがみんな中止になってしまいました。やっぱりこういう繋がりを持っているのが重要だと思っているのと、都市は三密から逃れられない中で、緑の空間を持っている都市が優先されていくんじゃないかなと 。そういうところでみんなが繋がっていくというような、新しい文化を創っていくという方向性に着実に近づいたことを、今回のコロナで確認しました 。
山崎:
コロナの前から取り組んできたことがたくさんある中で、誰も予想していなかったアクシデントに見舞われた時に、その前に培われていたネットワークとかコミュニティというのがこんなに効くんだと感じました。そしてそれだけではなく、そもそも都市の公園とか緑ってこんなに役に立つんだとか 、そういうことを感じさせてくれるお話をたくさんいただきました。自分も都市の緑を考えていく上ですごく勇気付けられると、いろいろなヒントをもらえました 。質問がいくつか届いております。まずはなぜNPOという形で団体を立ち上げようと思ったのですか?という質問です。
佐藤:
私たちがやろうと思った活動に合う組織形態って何かな?と思ったときに、ちょうど1995年にNPO法ができたんです 。ノンプロフィットのオーガニゼーションは私たちにぴったりだと思ったのが一つ、あと若くてお金がなくて、思いと勢いしかなかったので、 0円で始めて助成金を取ったりできることが一つ。あとは、NPOの経営を考えるためにアメリカのサンフランシスコやバークレーにインターンに行ったのが大きかったです。あっちで、なぜNPOが市民社会に必要か?というのを徹底的に叩き込まれてきたのでそれがNPOを続けている理由です。
山崎:
次の質問ですが、NPOの中で相当の数の公園を管理されていると思いますけれども、それってどういうオペレーションで実施しているんですか?
佐藤:
今は造園会社さんと組んだり 、公園によってはミズノスポーツサービスさんとか 水野グループの会社さんとか、いろんな会社と一緒にJVでやっています。 自然が多い公園ですと私たちのレンジャーや環境保全部のような部署があったり、共同部といって地域連携を促進する部署、造園会社さんのほうは維持管理をして行くとか、そういう体制です。すごく重要だと思っているのが、私たちのようなノンプロフィットというかまちづくりの価値観を持っている団体が公園の管理に入るのが重要だと思っていて、NPOの意味として価値観を変えていくことってすごく大事で、人々の価値観を変える場作り、まさにソトノバさんのようですけれども、その場づくりにミッションのある個人や団体が関わることが大事だと思っています。
山崎:
なるほど 。次に、birthさん自体が公園を取り巻く色々なご相談を受けていると思うんですけれども、birthさんが持っている強みとかどういうところが注目されているのかなという認識ってありますか?
佐藤:
実は最近ぐんぐん増えてきたのが、企業さんからのご相談なんですね 。私たちも市民団体とか 学校や福祉団体とかそういうところこの連携というのはずっと つないでいるんですけれども、やっぱり SDGsの流れが非大きいと感じています。あとは企業の中にも緑地や生物多様を研究する方々とか、今まで表舞台にはなかなか来なかったけれども長年やっている方々が明るみに出てきているという感じがあります。そういう方々とタッグを組んで相談を受けたりご相談しながら進めており、やっぱり企業が変わると都市は大きく変わると思いますね。企業さんが持っている非常に大きい土地にはフリースペースもありますし 、そこが生態系としても、人が集まるコモンスペースとしてもそうですし、そういう場になっていったら凄いと思っています。今はコロナで経済的に大変な状態になってはしまってはいるんですけれども 、皆さん価値観はどこかで変わっているはずですし 、今まで連綿とやってきた方々の流れがこれから合流すると、大きな時代のパラダイムシフトが起きるのではないかと予感しています。
山崎:
まさに経済が強い東京だからこそ企業との連携というのがより意味があるでしょうし 、多くの人が住んでいる東京だからこそ人のライフスタイルの変化がよりダイレクトに都市の自然にも返ってくるのかなというのを思いました。最後に、今コロナでが外出自粛中で、学生さんが都市の自然に関心があるけどどういう勉強をしたらいいのかが分からないっていう方々に、おすすめの本がありましたら紹介していただけますか?
佐藤:
これは山崎先生と私両方からのお勧めになります 。『都市の自然史』という、品田穣先生という非常に大御所の先生が書かれた本です。実は birthができたのも、品田先生が後押ししてくださったというのが大きいです 。都市の自然史は 1974年に先生が書かれている本で、山崎先生はまだ産まれていない・・・?(笑)
山崎:
全然産まれていないです。こんな見た目なんですけれども平成生まれです。
佐藤:
生まれていそうだけど産まれていない (笑)。この本は、人間と自然との関わり合いというのをテーマに しているんですね 。まさに都市の自然が人の生活との関わり合いの中で育まれてきて、その関係性の中で姿を変えてきています。この本はこれからも私たちにとって都市と自然を考える上でバイブルになると思っています。山崎先生からもひとことどうぞ!
山崎:
僕もこの本には本当に驚きました。自分がぼんやりと考えていたことが何十年も前にものすごく明快に書いてあって、こんなにセンセーショナルな本はなかなか無いと思っています 。もちろん都市の自然に関しては色々な方が本を書かれているので、他にも色々な本があるんですけれども、これは中でも一推しです。手に入れるのは難しいかもしれないですけれども、品田先生の他の本にも注目していただけたらと思います。
佐藤:
そうですね 。
山崎:
ということで今日お話を聞かせていただいて、自分なりに5個のポイントにまとめさせていただきました。中でもソトノバに期待していただいてありがたいと思います。自分たちも人のつながりをつくってたり、場づくり 取り組むメンバーもいるので、今日の話を参考にさせていただきながら、これからの取り組みに繋げていきたいと思います 。それでは今日のゲスト佐藤留美さんでした 。ありがとうございました 。