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滞在時間が2倍に!松山・商店街プレイスメイキング社会実験(ソトノバ・アワード2017一次WEB投票記事)

いつもの商店街が、何か違う。
ベンチやテーブル、プランターが歩道に並べられ、座っている人がいる。新しいお店?では無いみたい。
談笑している若いカップル、本を読む年配の男性、女子高生は紙に何か書いてボードに貼っている。
看板には「いつでも 誰でも ご自由に」の文字。

ここは、カフェでもなければ広場でもありません。道路を活用してつくられた自由に使える憩いの場icotoco(イコトコ)です。

まちの衰退を道路の活用で解決できないか?

松山市を代表する二大商店街「大街道」「銀天街」。城下町として古くから栄えたこの商店街も、大型商業施設の郊外進出やネット販売の影響か、以前に比べると歩行者の数は減り、まちは危機感を募らせていました。

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平日午後の銀天街

賑わいを再生するための手法は様々ですが、松山市では数年前から空間デザインによって賑わいをつくることはできないか?と考えてきました。
2014年から始まった、まちなかの駐車場を広場に整備する社会実験(みんなのひろば)もその一つ。2015年には、大街道商店街に休憩、読書、おしゃべり などができる憩いの場をつくる社会実験を行いました。

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人工芝のシートにクッションを。子ども利用はもちろん、休憩中のサラリーマンが寝転ぶ姿も。「まちなかで寝転んだのは初めて!」と楽しそうに話していました。

突然現れたリビングのような空間に、道行く人は驚きながらも、少しずつ利用者は増え、老若男女が思い思いに過ごす光景が広がりました。
この社会実験を経て、現在は商店街沿いの店舗と商店街組合が協力し、自主的に管理・運営しています。

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社会実験中に賑わう様子を見て「まちのために、この取組を続けたい!」という熱い思いをもった店舗オーナーが運営者として名乗りをあげ、2016年から常設されました。

そしてその後、自然な流れで「大街道の次は銀天街でも」と話が進みます。

公地と民地の一体活用!歩道と店舗部分を使って、憩いの場をデザイン。

大街道の道路幅は15mあったのに対し、銀天街はその半分の7.5mしかありません。道路を使う以上、緊急通行車両が走行する3mは空ける必要があります。
そこで考えたのは、公民一体の空間活用。民地である店舗部分と公地である歩道を一体的に使って、憩いの場を2タイプ、デザインしました。

1つ目は、商店街組合が運営する無料休憩所の内外を活用するものです。休憩所の店舗部分と店前の道路、さらに隣接する空きビル前の道路を一体的に使った拠点タイプ「まちなかラウンジ」をデザインしました。

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店舗部分から道路部分にわたって一体的に活用した「まちなかラウンジタイプ」

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広いスペースを使って、コカリナ(楽器)のイベントが開催されました。優しい音色に多くの歩行者が聴き入っていました。

2つ目は、服飾店のセットバック部分とその前の道路を使った小規模な「とまりぎプロトタイプ」です。店先のちょっとした空間を活用するこのタイプは、商店街全体に波及することを前提にデザインしました。

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他所での展開を見据えて、セットバック部分と道路を活用した「とまりぎプロトタイプ」

シャッター前に人が集まる!2つの仕掛けとは?

社会実験の場所となる無料休憩所の隣には、売り物件のビルがありました。せっかく憩いの場ができても、目に映るものが灰色のシャッターというのは味気ないものです。
そこで、ビルオーナーに活用を提案。パブリックマインドの高いオーナーは、シャッターの活用を快諾してくれました。

横幅6.5mの巨大なシャッター。実験前には周知の場として、実験中には憩いの場の背景として活用することにしました。

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実験開始前。ブラックシートを何枚も貼り合わせて社会実験が始まることをPR。突然デコレートされたシャッターに、道行く人が二度見していきました。

実験中には、木製の単管で棚をつくり、自由に本を交換できるポップアップライブラリー(本棚)や「まちなかでしたいこと」を書いて貼る意見交換ボードをつくりました。この棚は、民地上に設置しているので、夜間に撤去する必要はありません。

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皆さん、シャッターが気になるようです。

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意見交換ボードは週に一度クリアにしていますが、土日の間に埋め尽くされ、隣のブースの木に貼られていることも。

憩いの場の利用を促すコンテンツとしてつくった2つの仕掛け。
ポップアップライブラリーは単独利用のきっかけに、意見交換ボードは女子中高生を中心にヒットしました。

市民がデザイン!ワークショップを通してまちなか空間を考える。

市民のニーズにマッチした居心地のいい空間をつくり、利用者に使いこなしてもらい、憩いの場がまちの価値を高めることができるよう、市民自らがアイディアを検討・提案し、実行するワークショップを開催しました。デザイナーや飲食店オーナー、雑貨屋オーナー、建築関係者をファシリテーターに迎え、銀行員や大学生、主婦、市職員など30人ほどが参加し、グループに分かれて検討を重ねました。

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ワークショップの様子。幅広い年代・職種の方が集まりました。

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ネーミングとロゴマークを考え中。憩いの場のネーミングは「憩うところ」という意味合いから「イコトコ」になりました。

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完成したデザインはこちら。ワークショップで考えたロゴで看板やパンフレットを作りました。

他にも、憩いの場に設置する家具、照明、植栽などのデザインを提案するなど、魅力的な空間づくりのための活動が行われました。

滞在時間が2倍に!効果が値で証明された

効果検証として、アンケートやヒアリング、滞在時間分析、動線トレース調査を行いました。
まず、利用者アンケートの結果によると、利用者の9割以上が「とてもいい・いい」と回答。継続的な実施や各所への展開を望む声が多く寄せられました。
周辺店舗へのヒアリングでは、ヒアリング対象の16店舗のうち6店舗が「とまりぎプロトタイプ」を自ら設置・管理することに前向きな意向を示しました。
飲食店と相性が良いことは想定していましたが、物販の店舗からも、近隣でそのような場があればベンチなどの出し入れに協力したいという回答があったことは、思わぬ収穫でした。

次に、滞在時間分析です。
実験場所を含む20mのエリアを対象に、実験前と実験中の滞在時間の変化を分析しました。
実験前の平均滞在時間は平日・休日ともほぼ同じで、18秒~19秒でした。人の歩く速さを勘案すると、平常時はただ通過しているのに近い状態です。
実験中の平均滞在時間は、実験前より大幅に増加し、平日は2.5倍、休日は1.6倍、トータルで2倍以上のびていることが分かりました。
これを総滞在時間(歩行者数×滞在時間)に換算してみると、平日で9時間、休日で7時間の滞在時間が新たに生み出されている計算になります。

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定量評価で効果を「見える化」

最後に、動線トレース調査について。
実験後は、憩いの場に興味を持って近づく・眺める・座るといった立ち寄り行動が多くみられ、歩行者の誘因機能を果たしていることが分かりました。
また、歩行者密度の変化を検証した結果、道路幅は狭くなっても通行に支障は無いことが確認できました。

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立ち寄り行動が見られた歩行者の動線のみを抜き出し。憩いの場に引き寄せられている様子が伺えます。

「憩いの場」常設化の道筋

社会実験は2017年5月~6月の1ヶ月間で終了しましたが、現在は商店街組合が中心となって常設化の検討をしています。松山アーバンデザインセンター(UDCM)などの関係者がデザインや道路占用の手続き等のフォローを続け、まちなかの憩いの場をつくりあげます。

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社会実験で使ったベンチやテーブルは、常設されるまで無料休憩所の中で活用します。

社会実験中に「オシャレな設えで商店街が明るくなった」「休憩場所が増えて、安心して外出できる」という声を頂きました。空間を活用した賑わいづくりの効果を実感した人は多いはず。
今後もまちなか空間を活用して賑わいを生み出していきますので、ご期待ください!

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