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実践者に聞く!全国中心市街地再生ケーススタディ!PW宇都宮2022 #2

2月17日に国内のプレイスメイカー12名を迎え、中心市街地活性化に向けた3つのプログラムを展開するオンラインイベント「Placemaking Week 宇都宮 2022」が開催されました。本記事では、Session2にあたる「全国中心市街地再生ケーススタディ」の内容についてレポートします。
本セッションは、苅谷智大さん(株式会社 街づくりまんぼう 街づくり事業部)、宝楽陸寛さん(特定非営利活動法人SEIN コミュニティLAB)、宋俊煥さん(山口大学大学院 創生科学研究科)の3人の登壇者に自身の取り組みを紹介していただく「ケーススタディプレゼン」、その後に3人の登壇者にの荒井 詩穂那(ソトノバ理事)さんを交えての「クロストーク」といった流れで進行しました。当日の様子は、Twitterテキスト中継からも確認​​​​できます。

石巻市の中心市街地におけるまちづくり|苅谷 智大さん

はじめに登壇したのは、苅谷智大さん(株式会社 街づくりまんぼう 街づくり事業部)です。苅谷さんには、宮城県石巻市の中心市街地におけるまちづくりについて紹介がありました。
石巻市は、震災時の津波により海に近い地域や中心市街地が浸水したことや、郊外に大型の量販店が進出したことにより、中心市街地周辺の住民が内陸部へと移転することとなってしまいました。このような中で、中心市街地の元からの魅力であるマンガや川を活かし、震災後移住してきた人々の新たな取り組みを魅力として、中心市街地に人を集める取り組みが行われています。
1つめの取り組みとしては、商店街のビジョンをつくること。商店街そのものがどういう街を目指すのかを明確にしなければ、外の人々はまちづくりに入って来れず、地元の人々も移住者の取り組みをどのように評価していいかわかりません。ビジョンをつくる際のポイントとして、

「地元に寄り添う姿勢が最も大事!これがなくてはどんな良い提案をしても一蹴されてしまう。」

と話していました。
2つめの取り組みは、新規事業者の誘致・出店支援です。津波によりできた街なかの空き地に、新規事業者を誘致するために、まちづくり会社で空き地を借りて事業を始めたい人が安価で事業を始められるキッチンコンテナなどを並べる取り組み、橋通りCOMMONが行われました。

IMG_4136橋通りCOMMONの紹介

3つめの取り組みとしてはイベント企画。空き地や空き店舗などの余白をゲリラ的に使い、「楽しい・儲かる」をモチベーションにしたイベントが行われました。

スクリーンショット 2022-03-01 13.11.48河川で映画を上映する屋外イベント

泉北ニュータウン つがるDays|宝楽 陸寛さん 大阪府堺市泉北ニュータウン

次に登壇したのは、宝楽陸寛さん(特定非営利活動法人SEIN コミュニティLAB)です。地域住民のエンパワメントをキーワードに、泉ヶ丘駅前のいずみがおか広場で行われた「つながるDays」の活動について紹介がありました。
つながるDaysは、いずみがおか広場が、様々な人々が集い、チャレンジすることができ、常に新しい出会いや気づきが生まれる広場となるために行われた取り組みです。
場を使いこなすための取り組みとして、ベンチを置くだけでなく、勉強会を開いたり、本を置いて図書館をつくるといったイベントで様々なコミュニティづくりが行われてきました。

スクリーンショット 2022-03-01 15.10.05広場を使いこなすための取り組み

360度接客できる広場の長所を最大限活かす、テナントの配置がなされています。みんなが気持ちよく利用できる空間づくりをすることで、より多くの滞在時間を獲得できるような工夫が施されています。

スクリーンショット 2022-03-01 15.09.46テナント配置の工夫

このつながるDaysでは、広場で出店を行う出店者を、企画・立案者「ひろばプランナー」として募集し、選定から実施サポートまでおこなっています。

「まちの中にはつながりがあるようでない。そこに横の軸を通してあげることを大事にしている。」

と宝楽さんは話します。

スクリーンショット 2022-03-01 16.12.17ひろばプランナーの紹介

若者クリエイティブコンテナYCCU|宋 俊煥さん 

最後に登壇したのは、宋俊煥さん(山口大学大学院 創生科学研究科)です。山口県宇部市における学生と共にまちづくりを行なっている事例について紹介がありました。
宇部市は炭鉱の街で工業都市ですが、低未利用地が多くまちなかに人がいないという課題がありました。そこで低未利用地を行政が能動的にコーディネートし、周辺公共空間の創出と官民連携による都市機能マネジメントが行われました。
取り組みとしては、危ない空き家の撤去と低未利用地の整備をし、芝生の広場をつくるところから始まりました。この広場をとりあえずイベントで使ってみることで、共にまちづくりを進めていくチームの形成と、市民との対話を行なっていきました。
盆踊りイベントなどイベントでは大いに賑わいを見せています。
イベントなどの活動を各地で行い、それぞれの活動を点から線へ、回遊性へつなげる取り組みが進められました。その過程で協力者が増えたり、学生が提案を繰り返していくことで、それぞれの活動が線から面へとつながっていきます。
イベントを行いたい人々が柔軟に実施できる仕組みづくりとして まちなかイベント実行委員会が設立されました。これにより様々な主体が協力しやすくなるだけでなく、SNSで仲間が集ってきて地域の課題が多くの人々と共有できるようになります。

スクリーンショット 2022-03-04 16.04.59広場などを活用したさまざまなイベント

学生などが実際に手を動かして、豊かな都市空間を創出するために活動しています。
宋さんは締めとして、

「実際に地道に現場で動いている人たちが重要で、そういった人たちが空間づくりを行うというのを大事にしなければならないと思っている。」

と話します。

スクリーンショット 2022-03-04 16.37.09「ときわに、いこっと。」での学生の活動の様子

クロストーク

3人の登壇者の方々に事例紹介の後、登壇者にソトノバ理事の荒井さんが加わり、リアルタイムで募集する質問に答える形でクロストークが行われました。
ここからはその内容についてレポートします。

・分析の仕方としてはどのようなことがあるの?

宝楽さんは、

「定量的なデータを見ることもするが、実際に広場に来て欲しい人の跡をつけてみて、どのように駅前で過ごしているのかを観察するようにしています。」

宋さんは、

「パーキングデーだと滞在時間と来訪者の不満をクロス集計してみると、滞在時間が増えるほど飲食への不満が増えているという結果が得られました。滞在時間と行動など複数の視点から分析するのは面白いです。」

と話します。
定量的なデータだけを根拠にするのではなく、人の行動、感じ方など実際に観察、聞いてみてわかることを分析するのが最も重要なのかもしれません。

・アーティストや学生などのすぐいなくなる人の活動はまちに根付くの?

宋さんは、

「いなくなることは大した問題じゃない。そのような人々の活動によって得られたノウハウが蓄積し、継承されていく環境づくりが大事。いなくなるからこそ飲食店と絡めるなど、定着してもらえるような場所を作っています。」

 苅谷さんは、

「​​すぐいなくなってしまう人の活動でも、それが地元にとっての新たな気付きに繋がる。そこから地元の人々が新たな取り組みを行えばいい。外からのアクションを地元にとってのきっかけとして捉えられるとまちづくりはスムーズに進んでいくのではないか。」

と話します。
アーティストや学生などがいなくなったとしても、その人たちの活動は決して無駄ではない。すぐいなくなってしまう人の活動を受け入れられる環境、その活動から次の誰かがアクションを起こしていける環境を作ることが重要であるといえます。

・予算がない中取り組むためにはどうすればよい?

泉北ニュータウンのつながるDaysに対してお金がかかってそうと意見が寄せられました。これに対し宝楽さんは、

「実際はそんなにお金かかってないです。何回も使えば一回あたり数千円程度、机にも布を引くだけでおしゃれになる。お金の問題を考える前に自分達がどんな空間をづくりたいのかを考えた方がいい。」

と話します。
確かにお金が前提にあると自由な発想が制限されてしまう気がします。居心地がいい場所は豪華である必要はなく、たとえ裏側のような場所でも居心地の良い場所はあります。お金はひとまず考えずに目指す空間を考えてみるべきだといえます。

・最初の一歩をどう踏み出すべきか?

宇都宮では、これからプロジェクトがはじまっていきます。そこで出店者の募集、発掘でどのような工夫があったのか伺いました。

宝楽さんは、

「地元の広報誌や貼り紙、口コミが宣伝としては効いた。まちにプレイヤーとなる人は絶対にいる。そのような人たちと繋がっていくことが駅や広場をよくしていく上では重要だと思う。」

苅谷さんは、

「出店者の持っているビジョンと、自分達の持っているビジョンがどれだけあっているか、何回も話し合いを重ねて確認する必要がある。さらにいうと、この人が出店したとしてどれだけの人を集めて、どれだけ売るのか、数字で共有することが大事。すでに数字で見れる実績がある方をターゲットとするのが一歩めとしてはいい。」

と話します。
最初の一歩目としては、広く多くの人を募集するというよりか、確実に活躍しているイメージのできる人を探すというのが有効であるといえます。

おわりに

それぞれスタート時点で抱えている課題は違えど、3事例とも共通していえるのは、とにかく何かを仕掛けているということです。石巻であればゲリラ的なイベントの開催、つながるDaysでは広場を使いこなすための取り組み、宇部市であればできあがった広場を使ってみる。その取り組みに巻き込まれる、または興味を引かれるかたちで中心市街地を一緒に盛り上げていく仲間が集っていくのだと感じました。
これから宇都宮でプレイヤーを探していく際のヒントとなるお話を3人の登壇者から伺うことができました。まちの抱える課題を分析し、実行に移していく中で分析の仕方、どんなことを実行するのか、地域によって異なっていました。自分がまちづくりを行うとなったら「何かアクションを起こすとしたら何から始めるだろう?」と考えてみると良いかもしれません。そして思い立ったらやってみる!そうすると自然と次が見えてくるのかもしれません。

テキスト:福井勇仁(日本大学理工学部建築学科3年都市計画研究室(根上・泉山ゼミ))

グラフィックレコーディング:古谷栞(法政大学大学院)

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