オープンスペース|空地
週末は外へ出よう。 ポートランド・ファーマーズマーケットから学ぶ都市生活のヒント

みなさんは普段、野菜をどこで買いますか?
家の近所もしくは駅前のスーパーなどで野菜を買うという人もいるかと思います。
中には「外食が多く、そもそも野菜をわざわざ買わない」「買い物は全てネットで購入し、自宅まで配送してもらう」といったように、外へ食材を選びにゆっくり買い物をする人は減っていると思います。
しかし、このままで良いのでしょうか。便利さを追求した結果、生活はネットで閉じきってしまい、リアルな空間が貧しくなってしまうのではと私は思っています。
一方で、ここ数年ファーマーズマーケットや野菜直売所の活動は注目されています。
毎週売るものが入れ替わり、「生きている」ような食材と出会うことで季節の野菜を知ることができるなど、地元食材を買い、食べることで発見できることが多くあるのです。
そこで、今回は生活と地元食材が密接に関連し、豊かな生活を送っていると話題になり続けているポートランドのファーマーズマーケットについて紹介します。ポートランド・ファーマーズマーケットについては以前ソトノバの記事でも紹介されています。
しかし、この記事では都市生活の視点では紹介されていないと考え、今回は屋外でモノを買い、食べ、休み、話すという様々な体験を持つファーマーズマーケットのあるポートランドの暮らしかたの魅力について、実際に筆者の私が2019年8月2〜13日にポートランドで生活してわかった経験をもとにご紹介したいと思います。
(ソトノバ・スタジオ|ソトノバ・ライタークラス1期生の卒業課題記事です。)
ポートランドにはファーマーズマーケットが多い
ポートランドは、アメリカ北西部に位置しオレゴン州最大の都市です。地元意識が高く環境先進都市であるポートランドには、ほぼ全ての地区にファーマーズマーケットが存在しています。
ファーマーズマーケットの中でもPSU Farmers Market(ポートランド州立大学・ファーマーズマーケット)は、1日約10000〜15000人の老若男女問わず多くの人が訪れ、人気を集めるまちの中心スポットです。ここではポートランド州立大学のキャンパス内で毎週土曜日に開催されており、周辺住民が新鮮な野菜にアクセスしやすい環境が整い、文化となっているのです。

ファーマーズマーケットでは色鮮やかで美しい花々を販売している店が多く目に止まります。PSU Farmers Marketは、以前の記事で「大学の入り口に壁はなく、気がつけば大学構内に入っています」とあるように、街の中に大学キャンパスが溶け込んでいることもあり、家から外に出て散歩をするだけで両手いっぱいに花束を抱えた人に出会えるのもなんだか嬉しくなりますね!

また、運営団体(非営利団体 Portland Farmers Market )へのヒアリングの中で、ポートランドのファーマーズマーケットの買物客は地元の人が多く、同じ顔の人が毎回訪れると話しており、生活に根付いたものになっていることがわかりました。
人気のお店は、すぐに売り切れてしまうこともあるため、欲しいものがある場合、地元の人々は朝早くから訪れるそうです。
ファーマーズマーケットの場所の使われかた
PSU Farmers Marketでは、敷地の中央にはステージが設置され、特定の時間になると地元の有名シェフによる料理のデモンストレーションや地元ミュージシャンによる音楽イベントが行われます。

さらに芝生のあるエリアでは、木陰の下で暑い日差しを避けて多くの人が休憩できる場所になっており、コーヒーを飲んだり、ご飯を食べたり、友人と会話をしたり、寝っ転がったり…と様々な活動が生まれます。ここでの使い方は本当に自由なのです。


さらにコミュニケーションを生む場所としても存在するファーマーズマーケットは、場所としての文化的な価値があります。
例えば、ファーマーズマーケットでは、一般の買物客以外にレストランのシェフが食材を買いに来ることもあるため、出店者にとっては、営業のチャンスの場でもあります。生産者自らが出店者となることでお客さんとの会話を大切にしながら、作っている場所やこだわりなどを、熱意を持って語りながら販売します。最近では、若い出店者も増え、地元産業は、維持継続され続けているようです。

さらに、私がポートランド滞在中にミルウォーキー市長の話を聞ける機会があり、そこで市長はファーマーズマーケットの役割について以下のように言及していました。
ミルウォーキー市長は
ファーマーズマーケットに自ら訪れ出店者と交流し、市議会に参加する市民委員をスカウトする場としても活用している
と話しており、ファーマーズマーケットは単に新鮮な地元の野菜の購入場として設けられているだけでなく、普段地元の農村地域で農業を営む出店者がまちと関わってゆく重要な拠点となっていることがわかりました。

ポートランドのライフスタイル、ソトに出向いて、買う
私がポートランド滞在中には、自分の庭を所有しているもしくは、コミュニティガーデンで野菜を育てている人が多く、それだけではまかないきれない食材をファーマーズマーケットに買いに来るというライフスタイルの人に何人か出会いました。
このようにポートランドでは、自分で育てるあるいは地元で育った野菜について興味のある人が多いです。そうした文化から、屋外に出向いて生産者と直接話すことで信頼できる食品を選び、買うという「外に出歩く行動」につながるのではないでしょうか。

ファーマーズマーケットや地元野菜を中心にした生活は、人と人の間でコミュニケーションを生み、空間としての文化的な価値があります。そのためファーマーズマーケットは持続し、人々に愛され支持され続けるのではないでしょうか。
【イベント概要】
期 間: | 毎週土曜日、年中(12月29日休業) 4月~10月:午前8時30分から午後2時 11月~3月:午前9時から午後2時 |
会 場: | South Park Blocks between SW College & Montgomery on the campus of Portland State University |
出 展: | 物販、飲食、音楽、アクティビティなど100を超える出店 |
プログラム: | イベントによって時間が異なります(詳しくはウェブサイトをご覧ください) |
主 催: 運 営: | 非営利団体 Portland Farmers Market |
ウェブサイト: | https://www.portlandfarmersmarket.org/ |