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パブリックスペースにテクノロジーの波が!「Play(=遊び)」を切り口にした英国発プロジェクトPlayable City Tokyoとは<前編:プロジェクト紹介>
テクノロジーと聞くと少し遠い世界に感じる方も多いかもしれません。先日ソトノバのイベント情報で取り上げたPlayable Cityは、「Play(遊び)」をキーワードに、オープンイノベーションにより人と人、人と都市の新たな関係を生み出すクリエイティブなアイディアを創出する英国発のプロジェクトです。その特徴はテクノロジーを単に作品やエンターテイメントに用いるのではなく、実際のまちやパブリックスペースを対象に、都市で生活するさまざまな人々が参加し、都市の未来ビジョンをクリエイター、市民主導で描くところにあります。市民を巻き込みながら豊かなまちにしていこうという、まちづくりの仕掛けの意図が込められているのです。
そんなPlayable Cityの東京版Playable City Tokyoのトークイベントが2月20日虎ノ門ヒルズカフェで開催されました。英国Playable Cityのクリエイティブディレクターであるウォーターシェッドのクレア・レディントン氏が来日し、Playable City Tokyoのクリエイティブパートナーであるライゾマティクスの齊藤精一氏、そして、Wired編集長の若林恵氏とともに登壇・ディスカッションが行われました。これに加え本日2月26日(金)にMedia Ambition Tokyoの参加作品として虎ノ門ヒルズに設置されたPlayable City Award 2014最優秀賞作品「Shadowing」のデザイナーデュオ、チョムコ & ロジアも駆けつけました。約45人の参加者で満席となり、これからの東京についてワクワクする議論が展開されました。当日は「Shadowing」の先行披露も行われました。
日本のまちづくりにおいても注目が集まるパブリックスペースは、こうしたテクノロジーの波をどのように受け容れるのか。そしてどのようにコネクティングさせていくのか。これから重要なテーマとなってきそうです。
そこで今回は、そもそもPlayable Cityとはどんなプロジェクトなのか。まずは前編として、その内容について紹介したいと思います。後日後編にはトークイベントの内容を中心にレポートします。
(冒頭の写真:© British Council)
Playable Cityを立ち上げた英国ブリストル市にある「Watershed」とは
Playable Cityは、英国ブリストル市を拠点にするメディアセンターWatershedが2012年に立ち上げたイノベーションプラットフォームです。
Watershedとは一体どういう組織なのでしょうか。
Watershedは1982年にオープンした英国初のメディアセンターです。多様なアートフォームを横断的につなぎ、新しいアイディアの共有や発展を促進しています。ブリストルフェリー乗り場のすぐ近くにある建物に、3つのシアター、カフェバー、ミーティングスペース、イベントスペースがあり、その中にPervasive Media StudioというR&Dラボが併設され、テクノロジーに関する様々な研究・実験が行われています。ここには多くのアーティスト、テクノロジスト、研究者のネットワークがあり、様々なアイディアやプロジェクトが生み出されていくクリエイティブメディアセンターです。
2012年にPlayable Cityを立ち上げ
Watershedは、2012年都市の未来を作り出す新たなイノベーションプラットフォームPlayable Cityをスタートさせます。テクノロジーを用いて、パブリックスペースを舞台に、人と人、人々と都市が繋がる都市の未来を探求しています。2013年からは、Playable City International Awardを展開。世界中のアーティスト、デザイナー、建築家、テクノロジストなどからアイディアを募り、最優秀賞受賞作品には、Watershedに併設されているPervasive Media Studioのサポートのもと、プロトタイプを制作し、実際の都市空間で市民が参加できるように実装するのが特徴です。
2013年第1回の受賞作品は「Hello Lamp Post」という作品。テクノロジーを使い、郵便ポスト、電信柱、マンホールなど、当たり前にまちなかのパブリックスペースにある「モノ」と会話ができる作品です。「モノ」を介して市民同士が会話し、地域の記憶の発見と共有を実現。人々が自分の住む地域やコミュニティを見つめ直すプロジェクトです。
Hello Lamp Post(YouTubeより)
(動画公開日:2014年03月27日)
2014年第2回の受賞作品は、本日2月26日(金)から虎ノ門ヒルズに英国外で初めて公開される「Shadowing」というプロジェクト。先日ソトノバでも紹介しました。過去に同じ道を通った人が残した影と出会い、一緒に歩いたり、手を振って挨拶したり、踊ったりするなどをして交流することができます。
「テクノロジーが公共空間を変える!英国Playable City最優秀賞作品「Shadowing」が虎ノ門で体験できる!」
2015年第3回の受賞作品は「Urbanimals」という作品です。ポーランドの都市デザイン・建築シンクタンクLaboratory for Architectural Experiments(LAX)によるプロジェクト。街を歩いていると突然イルカやウサギ、カブトムシなどの動物や虫が姿を現し、道ゆく人々に遊びを仕掛けます。普段何も気を留めずに行き交う場所に「遊び」を取り入れることで、都市の隠れた価値を人々に再認識させる効果を狙っています。
Urbanimals, winner of Playable City Award 2015(YouTubeより)
(動画公開日:2015年09月12日)
Playable City Tokyoが昨年スタート
Watershedは、英国の公的な国際文化交流機関であるブリティッシュ・カウンシルと連携し、日本からはライゾマティクスの齊藤精一氏をクリエイティブパートナーに迎え、2015年よりPlayable City Tokyoをスタートさせました。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け大規模な都市開発が進む東京を舞台に、多様なプレーヤーが知識、アイディア、技術を共有し、「都市」と「人」を豊かにするクリエイティブなアイディアを創出・探索する新たなプラットフォームが作られました。「遊び」や「東京」をキーワードに、アーティスト、デザイナー、建築家、テクノロジスト、市民など多様な人々とともに東京の未来のビジョンを創出することを目指しているようです。
インスタレーションやワークショップなどでアイディアが膨らむ
Playable City Tokyoは2015年4月より六本木アートナイトを皮切りにスタートしています。広域プログラムの一環として、Playable City Award 2013最優秀賞受賞作品「Hello Lamp Post」が六本木のまちなかに展開されました。またアートナイト2日目には、デザイナーや建築家、技術者、学生など約30名が参加したワークショップも行われました。
2015年9~10月にはPlayable Cityの理解を深めるため、齊藤氏がファシリテータ―を務める全3回のワークショップ・フィールドワークが行われています。虎ノ門を舞台に約60名近いアーティスト、デザイナー、技術者、テクノロジスト、建築家、企業関係者、学生などが参加しました。そして10月にはクレア氏が来日し、2日間のアイディアラボを開催。こちらも多様で異業種の約20名が参加し、都市の未来を創造するアイディアをアウトプットしています。
昨年から動き始めているPlayable City Tokyo。これまでのWSでは様々なアイディアを蓄積しているようです。これからどのような活動を展開していくのでしょうか。次回のレポートは2/20トークイベントの内容を中心にお伝えします。本日2月26日(金)から虎ノ門ヒルズに公開された「Shadowing」のデザイナーも来日し作品内容について話しています。加えて、とても興味深い新しいプロジェクトの紹介もありました。次回をご期待ください!
Media Ambition Tokyo 虎ノ門ヒルズ展示体験イベント
Playable City Tokyo「Shadowing」
日 時:2016年2月26日(金)~3月21日(月・祝)
会 場:虎ノ門ヒルズ外構部 3ヶ所
主 催:ブリティッシュ・カウンシル
特別協力:ライゾマティクス、Watershed、虎ノ門ヒルズ
協 賛:株式会社アサツー ディ・ケイ