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歩行者利便増進道路とストリートプレイスの可能性PWJ2021 #16 後編

3月12日~3月17日にかけて行われた『Placemaking Week JAPAN 2021』

セッション16「ストリート×プレイスメイキング ー歩行者利便増進道路とストリートプレイスの可能性ー」では、一般社団法人ソトノバ共同代表理事 泉山塁威さんがコーディネーターとなり、国土交通省道路局環境安全・防災課 坂ノ上有紀さん、株式会社地域計画建築研究所(アルパック)都市・地域プランニンググループ チームリーダー 絹原一寛さん、京都大学・准教授 山口敬太さんの3名をスピーカーに迎え、2020年に制定された歩行者利便増進道路(通称:ほこみち)の実践と可能性、そして世界のシェアードストリートなどの事例をシェアしながら、豊かなストリートプレイスの可能性について迫りました。

ソトノバでは、前後編に分けて、この回のレポートをお届けします。後編では、山口さんによるシェアードストリートの紹介をお届けします。

*Placemaking Week JAPAN 2021の情報は、こちらからご覧ください。

*当日のTwitter中継の様子はこちらからご覧ください。

世界のシェアードストリートについて紹介

山口さんは、土木の分野で景観デザインを専門としており、様々な地域で実際の道路空間再編に携わっています。コロナ前は、海外の多様なデザインのリサーチなどを行っていたそうです。

今回は、世界のシェアードストリートから何が学べるのかということを軸に、「ほこみち」に関連した話、さらに将来的な話にも触れながらお伺いします。

山口さんは

「日本の道路空間活用には4つ大きく可能性がある」と言います。

①一般道のまま利用規制をかけるもの

②広場/公園型の空間整備を行うもの

③歩道拡幅やコミュニティ道路にしたもの

④歩行者専用道路

特に③や④は海外の事例が参考になるとのことで、それぞれ見ていきます。

①一般道路そのままで、ホコ天を提案をする場合

丸の内仲通りがイメージに挙げられますが、道交法的には歩行者用道路の場合、国家戦略特区などを適用して活用していく、いわゆる一般道路のままイベント的に進めていくような考え方があります。

1日本の道路空間活用 4つの可能性

山口さんは大阪の船場や、2020年度に泉山さんと共に、京都三条通りの無電柱化の整備に合わせてその後の活用をどのように整備に生かしていくのかといったビジョン作りを行いました。

②広場・公園型の空間整備

このような事例が挙げられる一方で、車道供用の廃止をし、広場や公園として管理していくような形での道路の活用も進んでいます。例えば札幌の北三条通りなどです。認定道路を廃止する場合もありますが、地下の埋設物や側道条件とかの関係で認定道路を維持したまま供用を廃止するだけして、管理していくというような考え方での道路の活用も増えています。

大阪の中之島通りも2021年3、4月に整備・供用開始がされ、そういったところも一つの新しい道路空間のあり方になってくると、山口さんはいいます。

この中之島の歩行者空間整備は、山口さんの研究室もデザイン検討に関わっていて、調査や活用の協議を進めているところです。

道路としてどういうふうに整備していくのかが課題であり、ハードルになったところを乗り越えていく特有の問題がある。

と山口さんはいいます。

③歩道拡幅やコミュニティ道路にしたもの

ほこみち制度が定着すると、歩道拡幅の方法についてどうするかが議論になってきます。単一断面なのか、それとも少し凸凹をつくって、コミュニティ道路のように滞留空間と通行空間を配置するのかで、歩道の様子は一変するでしょう。デザインによって視覚的に一体化するなど、道路のデザインのあり方が変わっていくだろうと山口さんは言います。

例えば防府市の事例では、車道と歩道が一体になっていて、歩道も南北の幅員を変えて一方に割り振ることで、クランクのように車両の減速にも機能を果たしています。このような道路構造と歩道のデザインの検討も重要です。

しかしこれは、日本で事例が少なく、海外のシェアードスペースの事例が参考になると山口さんは言います。

2防府市の歩道拡幅

④歩行者専用道路

「商店街型」と呼ばれる歩行者専用道路では、時間帯で自動車の侵入に規制をかける例もあり、山口さんはこの活用に非常に期待しているそう。

例えば福山のとおり町。元々ここはアーケードがあり今も商店街の場所でした。警察協議で4mの通行空間を開ける必要がありますが、基本的にはこの道路に車両が入ってくるような状況はなく、緊急車両のためには空けていますが、にぎわいの空間として使えるようになっています。

3

https://fukuyama-space.jp/

ただ、この例のようにすでに商店街として歩行者専用道路になっているケースでは楽ですが、新しく歩行者専用道路に指定したり、今まで道路だったところの供用開始はハードルが高く、あまり事例がありませんでした。最近では、熊本の花畑地区や大阪などで事例が増えてきているそうです。

ボンエルフでは解決できない歩行者のための場所作り。シェアードスペースが生まれた背景

歩行者専用道路をつくるうえで、シェアードスペースが参考になるだろうと、山口さんはいいます。シェアードスペースとは、道・歩道一帯舗装や幅員の視覚的狭窄、人の存在などにより、車の速度の低下、事故の軽減と、商業活性化を図るものです。

オランダにおいては、かつてよりボンエルフなどを利用した交通静穏化への取り組みが進められてきました。シェアードスペースはその延長上にあります。

交通と場所作り、この両立をするにあたっては車通りとか人通りの条件がいろいろ満たないと、なかなか機能が発揮できないということもあって、かなり慎重にいろんな各国で進められいるようです。

と山口さんは話します。

舗装デザインで分ける、オランダ ナールデンのシェアードスペース

例えばオランダのナールデンは典型的なシェアードペースが設置されていますが、ボンエルフ型からの延長という風に見ていくと非常に面白い、と山口さんは言います。

交通標識や区画線も設置されていますが、殆どが舗装デザインで対応していて、軒先と歩行空間としても使える場所と活用空間と車両走行空間が分けられています。

例えば下図のように、道幅を狭く感じるように見せた舗装デザインで、車の動きをコントロールするというような事例も多く見られます。

4小さいオープンカフェなどが軒を連ねている

自動車が通らなくなった、イギリスのシェアードスペース

イギリスでは、オランダとは異なるシェアードスペースが見られます。ヤンゲールの「New Road」は、非常に有名な事例ですが、これはある種のマイルストーンとして、世界的に大きな影響を与えたと山口さんは言います。

5ブライトン「New Road」

実際に今日までその効果も様々に実証され、歩行者が多いため自動車がここを通らなくなる、避けるようになった言われています。

技術的には、速度制限をかけて路面の一体性と歩行者の存在を強調し、あえて信号を設けないことで、自動車や自転車のスピードを遅らせているのだそう。

山口さんは、

非常に明確にデザインされた事例で、これがいろんなところに波及していくだろう。

と言います。

6ブライトン「Exhibition Road」

人と車のスピードが対等のオークランド

つづいてオークランドでの事例が紹介されました。オークランドの中心市街地の、真ん中から外れた商業エリアでは、2009年ぐらいからずっとシェアドスペースの整備が面的に行われてきました。

7オークランド中心市街地

ここでは、リンクアンドプレイスという考え方が導入されています。場所として重要でかつ通行量もそんなに多くない、人がたくさん歩いてて賑わいのあるようなところに、シェアードストリートを積極的に導入していくという方針です。

例えば以下の写真はElliott streetのかつての姿です。

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これが整備され、歩車分離をやめて一体化すると、このようになります。

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標識にはシェアードゾーンと書かれています。ここでは、人と車が対等に扱われるそうです。車が通行する際、もし前に人が歩いていれば、同じぐらいのスピードでゆっくり、対等で動く必要があります。

このシェアードゾーンは、道路を「歩行空間ゾーン」と「車両通行ゾーン」に分け、その間を「活用ゾーン」としています。ここに照明や木などを配置してアクセシブルゾーンに車が侵入しないような配置計画になっています。

10シェアードゾーンの標識とElliott street

歩車共存で自動車のスピードが遅くなる

以下はFort streetのbefore とafterです。2つは同じ場所ですが全然違うような印象を与えます。右側にオープンカフェ、レストランのテラスがあります。

図30オークランド フォートストリート before 図31オークランド フォートストリート after

O’ Connell Streetでは大理石のモニュメントが固定されていて、車がぶつからないように工夫されています。このように道路付属物で人を防御するというような考え方が一般的に定着しているようです。

また、歩行者密度が高いと自動車の速度が遅くなることがわかっています。

自動車の平均速度は、大体昼頃の人が多い時間帯には遅くなり、大体20km/h以下、15 〜16 km/h になるというデータが取られています。

また、歩車共存することによってスピードが遅くなるので、事故数が相当減少しており、近年積極的に受け入れられているそうです。

感想とまとめ

ここまで、3名のお話をお伺いしてきました。

ほこみちは、単に道路の利活用という視点だけでなく、まちづくりや新たなビジネスへの展開、人と人との繋がり、働き方と言った広いところまで可能性を秘めている事がわかりました。山口さんの海外の事例では、具体的なハード面の整備に関してとても参考になるのではないでしょうか。

テキスト:秋元友里(Farmers Market .Inc)

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