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Park‐PFI制度を活用した福岡のセントラルパーク・大濠公園!

Park-PFI制度を活用した福岡のセントラルパーク・大濠公園!

九州最大都市でもある福岡市。近年では、国家戦略特区にも指定され、天神ビックバンや博多コネクティッド等の規制緩和による都市再生プロジェクトが動き始めている都市です。以前にはソトノバでも天神ビックバンの最初のプロジェクトである水上公園を紹介しました。

その一方で、同じ福岡市の中央区に位置する大濠公園では2020年にPark-PFI制度により大濠テラスが開業しました。この大濠公園は、以前から設置管理許可制度により、スターバックスなどの民間施設の導入を行い、民間事業者の力を活用していた公園でもあります。2020年に大濠テラスが新たに開業したことで、「設置管理許可制度」と「Park-PFI制度」、2つの異なる制度を活用した公園となりました。そこで、本記事では、異なる民間活用導入制度を活用し、さらにアップデートをした福岡大濠公園と公園内の民間施設について紹介していきます。

Cover Photo by Taiga Ichinose

福岡のセントラルパーク

福岡市中央区に位置する大濠公園は、昔は福岡城を建設する時に外堀として利用されており、その後造園工事が行われ、総面積が約398ha、そのうち約226haの池を有した県立公園です。園内には、本記事で紹介するボードハウスやカフェのほかに、福岡市美術館や日本庭園、武道館などがあります。また、周辺には、陸上競技場や福岡城の天守閣跡地がある舞鶴公園もあり、福岡県の代表的な公園といえます。

2_上空からみた大濠公園上空からみた大濠公園(出典:大濠公園公式サイト)

2014年には、「福岡県総合計画」と「福岡市総合計画」、2つの総合計画が目指す姿の実現に向かうひとつの取り組みとして、大濠公園と舞鶴公園の一体的な活用を図り、県民・市民の憩いの場、また、歴史、芸術文化、観光の発信拠点として、公園そのものが広大なミュージアム空間となり、人々に感動を与えるような公園づくりを目指す、セントラルパーク構想が策定されましたので、以下に簡単に紹介します。

基本的な方向性

①大濠公園・舞鶴公園一帯の空間をつなぎ、一体感のある緑地空間づくり
②福岡にしかない重層的な歴史資源を活かし、福岡二千年の時をたどる空間づくり 
③観光集客機能の向上によるにぎわいをつくり、都市の活性化につなげる拠点づくり 
④「まちの公園」から「公園のまち」へ展開し、みんなで育てる公園づくり 

二つの公園を一体的に活用し、時・人・まちをつなぎ、福岡の 都市と文化を物語る場所へとしようとする構想です。
そして、その構想に沿う形で大濠公園の整備が進められてきており、その一環で民間のノウハウを活用するためにも「設置管理許可制度」と「Park-PFI制度」が用いられました。

3_セントラルパーク構想で示されている将来像(出典:福岡市 『セントラルパーク基本計画』)セントラルパーク構想で示されている将来像(出典:福岡県・福岡市 『セントラルパーク基本計画』)

セントラルパーク構想実現に向け、導入された3ヶ所の民間施設

ここからは、セントラルパーク構想実現のために、導入された3つの民間施設の概要などを紹介していきます。

①ボートハウス  大濠パーク

ボートハウス大濠パークは、大濠公園内のスターバックスコーヒーに引き続き、2015年に設置管理許可制度を用いて設置された2つ目の施設です。施設内には、レストランやカフェ、ショップ、レンタルボートハウスなどの4つの店舗が入居しています。設置管理許可制度が用いられる以前からこの場にはボートハウスがありましたが、以前のボートハウスよりも、2017年には来店者数、売上高がともに約1.5倍になっており、官民連携手法を導入した効果もあらわれています。設置管理許可制度を用いたことにより、訪れた人たちの憩いのスポットになっています。

4_ボートハウス大濠パークボートハウス大濠パーク(出典:大濠に暮らす )

前述したとおり、この大濠公園では設置管理許可制度が活用される以前から、池を活用した貸船事業が行われていました。その歴史は古く、大濠公園が開業した1929年から貸船事業が行われていました。1934年には公園管理者である福岡県によって貸船事業の施設が買収され直営となりましたが、経営が難しくなったために財政支出が困難になり、大濠観光会館から建設費の寄付を受けて、ボート発着場、土産品売店、食堂からなるボートハウスをリニューアル整備したうえで、福岡県から大濠観光会館へと営業許可が与えられました。その後、2011年頃に老朽化が問題となり、新たに施設整備や運営を行う民間事業者を募集するために設置管理許可制度が活用され、現在のボートハウス大濠パークへとなりました。

5_設置管理許可制度により整備される以前のボートハウス設置管理許可制度により整備される以前のボートハウス(出典:旧聞since2009)

施設内にある飲食店では、屋外テラス席も設けられており、大濠公園の象徴でもある池をすぐ近くで眺めながら、食事や休憩などができるような空間となっています。

6_施設内のテラス席から眺められる池施設内のテラス席から眺められる池(出典:ぐるなび)

②スターバックス コーヒー 大濠公園店

スターバックスコーヒー大濠公園店は、2010年に設置管理許可制度を用いて、公園内で初めて民間の力を活用した施設となっています。昼夜を問わずジョギングや散策などを楽しむ市民の憩いの場となるよう建てられたそうですが、店内外問わず、店舗を中心に市民の方々がくつろいでいる姿も見受けられました。公園立地の特性を活かしてテラス席を多く配置し、外部テラスには購入者限定ではあるもののランナーのための休憩スペースや手洗い場、愛犬との散歩の途中でも立ち寄れるようにリードフックも設置するなど、公園に立地しているからこその機能も備わっています。

7_目的地となり、行列のできる店舗目的地となり、行列のできる店舗(Photo by Taiga Ichinose)

外のテラス席は、店舗で商品を購入後に大濠公園の代名詞でもある池を眺めながめることもできるようになっており、大濠公園にあるからこそ体感できる空間となっていました。

8_池を眺めながらテラス席でくつろぐ人々池を眺めながらテラス席でくつろぐ人々(Photo by Taiga Ichinose)

③大濠テラス

公園内にある日本庭園の整備に伴い、Park-PFI制度を用いて、大濠テラスは2020年に開業しました。

9_Park-PFI制度を用いられた大濠テラスPark-PFI制度を用いられた大濠テラス(Photo by Taiga Ichinose)

Park-PFI制度により、以下のことが期待されています。

○公募対象公園施設として八女茶をテーマとした飲食店の整備・管理運営を行うと伴に、特定公園施設として 日本庭園西門への園路、日本庭園の案内サイン、日本庭園券売所を民間活力(資金)を活用して整備。
 ○日本庭園西門からの入退場も可能となり、来園者への日本庭園の認知度向上及び利便性向上が図られる。

大濠テラスでの収益により日本庭園の整備をすることを大きな目的としていることがわかります。

10_大濠公園に用いたPark-PFI制度の概要大濠公園に用いたPark-PFI制度の概要(出典:国土交通省 九州整備局『九州における官民連携の取組状況について』)

大濠テラス内の1階には、日本庭園の整備に伴い関係性を強めた八女茶をテーマとした飲食店が、2階はレンタルスペースとなっていました。また、施設内は、テーブルや椅子などの家具から柱などの構造まで、主に木を材料としており、日本庭園や公園の景観との調和も図られていました。

11_家具から構造まで木が使われている家具から構造まで木が使われている(Photo by Taiga Ichinose)

また、建物全面を大きな窓にしており、天気の良い日は窓を全開にし、池を体感しながらくつろげる空間となっていました。

12_晴れた日には大きな窓をオープン晴れた日には大きな窓をオープン(Photo by Taiga Ichinose)

大濠公園を訪れる人々

ここまで、大濠公園内にある民間との連携により開業された3つの施設を紹介してきました。3つの施設により、大濠公園の空間の質は大幅にアップデートされ、訪れた人々の公園内での滞在行動の質も向上したと考えられます。また、スターバックスのように注目度の高い店舗が入ることや大濠テラスのような公園内の日本庭園と連携した店舗が施設内に入ったことで、大濠公園への注目度も一段と上がり、以前までは訪れないような世代の人々も訪れるような公園へと変化していったのではないでしょうか。そして、セントラルパーク構想にも描かれているような「都市の活性化の拠点」へと、民間施設の導入や公園の整備により、着々と向かっているように感じられました。

今後、さらに発展していく天神や博多と合わせて、大濠公園が福岡のセントラルパークとして位置付けられていくのではないかという期待を含め、福岡の発展が楽しみです。

参考文献

大濠公園公式サイト , (最終閲覧日:2022年8月1日)
福岡市 (2014)『セントラルパーク構想』(最終閲覧日:2022年8月1日)
大濠に暮らす 『ロイヤルガーデンカフェ大濠公園』(最終閲覧日:2022年8月1日)
国土交通省総合制作局(2016)『民間収益施設の併設・活用に係る官民連携事業 事例集』(最終閲覧日:2022年8月13日)
・国土交通省 九州整備局(2020)『九州における官民連携の取組状況について』(最終閲覧日:2022年8月1日)

テキスト:一之瀬大雅(日本大学大学院理工学研究科 博士前期課程建築学専攻1年 都市計画研究室(泉山ゼミ))

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