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レポート
ひとにやさしい交差点へ!ロンドン交通局による新たなラウンドアバウトに迫る
ロンドン東部・ハックニー(Hackney)とイズリントン(Islington)の境に位置するオールド・ストリート・ラウンドアバウト(Old Street Roundabout)。1960年代に生まれたこのラウンドアバウトは、IT系企業が集中しているロンドン東部(“Tech City”)にあることから、「シリコン・ラウンドアバウト(Silicon Roundabout)」とも呼ばれています。
ラウンドアバウトとは、環状の交差点で車両が一方通行で通行するのが特徴。そんなラウンドアバウトが、対面通行方式に転換され、歩行者、サイクリストに優しいパブリックスペースへと生まれ変わる計画が進行しています。
オールド・ストリート・ラウンドアバウトとは
筆者がイギリスに来て驚いたことのひとつに、ラウンドアバウトの多さがあげられます。日本ではまだあまり目にすることのないラウンドアバウトですが、イギリスでは全国各地の交差点で使用されています。
そのなかでも、オールド・ストリート・ラウンドアバウトは、その大きさに加え、サークルの中心である「半島(peninsula)」にはルーフトップ・バー、その地下にはロンドン地下鉄(London Underground)・オールド・ストリート駅(Old Street Station)があることから、非常にユニークな存在として知られています。
多発する交通事故
しかしながら、近年、オールド・ストリート・ラウンドアバウトでは、自転車が巻き込まれる交通事故が多発しています。ロンドンをサイクリストにとってよりよい環境にするために活動する団体“London Cycling Campaign(LCC)”によると、2010年2月から2013年1月の間に、オールド・ストリート・ラウンドアバウト付近での人身事故は44件発生しており、うち80%以上が、歩行者もしくはサイクリストを巻き込んでいたとのことです。
またオールド・ストリート・ラウンドアバウトの通勤時間帯の利用者は、3分の1近くがサイクリストであり、LCCは
現在のオールド・ストリート・ラウンドアバウトは、歩行者、そしてサイクリストにとって好ましい環境であるとは言い難い
と述べています。
ラウンドアバウトの転換に向けた議論が開始
この状況を受けて、ロンドン交通局(Transport for London, TfL)は、オールド・ストリート・ラウンドアバウトの対面通行方式(two-way traffic)への転換、自転車レーンや自転車駐輪場の新設、不要なストリートファニチャーの撤去などを盛り込んだプロポーザルを発表しました。
2014年11月から2015年1月には、プロポーザルに対するオンライン調査を実施。1,300名が回答し、うち87%が
(ロンドン交通局のプロポーザルは)歩行者とサイクリストにとっての環境を改善すると思う
と回答しました。
2017年12月、ロンドン市長、ロンドン交通局、ハックニー・カウンシル、イズリントン・カウンシルは、デザインの公募を実施しました。2018年1月29日の締切までに120作品もの応募があり、うち39作品が最終選考に残りました。
エキシビション、オンライン投票を経て
2月12日~3月2日、オンラインによる一般投票が行われたほか、オールド・ストリート・ラウンドアバウトのすぐ隣にあるビル“Old Street Yard”にて、この39作品が展示されました。
その後、一般投票の結果を受け、審査委員会による選考が実施。以下の4作品に絞られました。
審査委員会は、これら4作品が選ばれた理由として、
(“Tech City”のゲートウェイとして)象徴的な存在となれるデザインであると同時に、十分な実現可能性も兼ね備えている(その二つのバランスがとれている)
歩行者とサイクリストを優先したフレキシブルで開放的なスペースを創造している
サイクリストが歓迎されていると感じられるデザインを実現している
の3点をあげています。
今年7月~11月には具体的なデザインが決定し、早ければ年末に工事が着工、2019年には“Tech City”の新たなゲートウェイが誕生する予定です。
歩行者とサイクリストにやさしいロンドンへ
ソトノバレポートでも紹介したオックスフォード・ストリートの歩行者天国化(Oxford Street)など、ロンドンのストリートは転換期を迎えています。
またイギリスでは日本同様、自転車は専用レーンがない場合、車道を走行するのが基本です。セントラル・ロンドンでは、あちこちにレンタサイクルステーションが設置されていますが、自転車専用レーンがある場所はまだまだ少なく、安全にサイクリングが楽しめるとは言い難い状況です。
オールド・ストリート・ラウンドアバウトの転換は、ロンドンの交通事情にインパクトを与えるものとなるでしょうか。オックスフォード・ストリートの歩行者天国化とともに、今後の展開に注目していきたいと思います!
【Old Street Iconic Gateway Public exhibition】
日時:2月12日(月)~3月2日(金)12:00~18:00
会場:2- 4 Old Street Yard, First Floor, Building 3, London EC1Y 8AF
参考URL:
Four winning concepts in Old Street roundabout contest announced
Have your say on transforming Old Street roundabout
Old Street Iconic Gateway
Old Street plans don’t deliver for cycling and walking, say LCC
Old Street roundabout
Shoreditch Day Party
TfL Image – Old Street Roundabout | ©Tom Eames | Transport for London | Flickr
カバー写真出典:
https://www.flickr.com/photos/tflpress/24960670548