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今年も全国から「まちなか広場」に関心を持った人々が集結!「第4回全国まちなか広場研究会」レポート

1年に1度、全国からまちづくりの専門家や行政、現場で活動するプレーヤー等、広場に関心をもったあらゆる分野の人々が集結する全国まちなか広場研究会。昨年姫路で行われた第3回はソトノバでもレポートでお届けしました。

今回で4回目となるまちなか広場研究会が7月2日、札幌市市民活動サポートセンターで開催されました。今年も、全国で勢いあるまちなか広場の事例が集結し、共有されたまちなか広場研究会。午前中に行われた「まちなか広場賞授賞式」の模様と併せてレポートいたします。

 

共通するのは広場にコミットするプレーヤーの存在。「第2回まちなか広場賞授賞式」

まずは、昨年に続き第2回となる「まちなか広場賞」の授賞式が行われました。この「まちなか広場賞」は、「一般社団法人国土政策研究会 公共空間の「質」研究部会 公共空間評価指標分科会」が主催する取り組みの一つで、暮らしを豊かにする広場を全国から公募し、表彰するものです。同分科会が審査員となり、分科会で研究している評価指標に基づき審査しています。

今年は、全国9つのまちなか広場の応募があり、以下の7つの広場(大賞1件、特別賞4件、奨励賞2件)の授賞式が行われました。さらに各受賞事例の関係者による事例紹介が行われ、全国各地の参考にすべきまちなか広場やそのスキームなどの事例が共有される時間となりました。
※審査講評の詳細は、こちらから。


大賞
もぶるテラス・みんなのひろば(愛媛県松山市)


特別賞
HELLO GARDEN(千葉県千葉市)
三軒寺前広場(兵庫県伊丹市)
ベルテラスいこま「ベルステージ」(奈良県生駒市)
御茶ノ水ソラシティ ソラシティプラザ(東京都千代田区)


奨励賞
まちなか防災空地(兵庫県神戸市)
ハピテラス(福井市にぎわい交流施設屋根付き広場)(福井県福井市)


それでは受賞した9つのまちなか広場の事例紹介の模様をダイジェストで紹介します!

 

大賞:もぶるテラス・みんなのひろば(愛媛県松山市)

以前ソトノバでも取材し、レポートさせていただいた愛媛県松山市の「もぶるテラス・みんなのひろば」が大賞受賞です。

2014年、社会実験として始まった「もぶるテラス」と「みんなのひろば」は、元々コインパーキングとして使われていた土地を暫定的に整備したもので、いずれも松山アーバンデザインセンターにより運営がなされています。

「みんなのひろば」、「もぶるテラス」では、市民や民間によるイベントやワークショップが開催されており、その効果検証や利用促進をすることで、このまちの方向性が模索されています。「みんなのひろば」は、芝生の上に土管が一つあるシンプルな空間となっており、このようにつくりこみ過ぎない自由な設えすることで段階的整備を行う手法をとっているのだそうです。
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特別賞:HELLO GARDEN(千葉県千葉市)

こちらも先日レポートさせていただいた HELLO GARDENは、特別賞受賞です。仕掛け人である株式会社マイキー・西山芽衣氏によるプレゼンは、HELLO GARDENを始めるに至った経緯から今に至るまで、「豊かな暮らし」を目指す彼女自身の思いが詰まったお話しでした。

「まちづくりってなんだ?」、「豊かな暮らしって?」など彼女自身が抱えていたもやもやを「実験」というキーワードで解決しようと始まった空き地を活用したHELLO GARDENのプロジェクトは、まちで暮らすみんなが能動的に活動する広場となっています。「コミュニティは目的ではなく手段だった」と空き地から生まれるコミュニティが豊かな暮らしのきっかけになることをお話ししてくれました。
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特別賞:三軒寺前広場(兵庫県伊丹市)

「三軒寺前広場」は、その名のとおり北側に3軒の寺がある場所に位置する落ち着いた広場です。この広場は道路敷きであることから、その設えはシンプルですが、その分イベント時はテントが張られ、装飾がされるなどインパクトが大きいのだとか。

この広場の特徴は、使い手(市民)の声を聴きながら、つくり手である市が道路敷きでもできる整備を段階的にしていくということです。運営はまちづくり会社によりなされ、市民・行政・まちづくり会社による役割分担で「つくるとつかう」を実践しています。伊丹市都市活力部参事・綾野昌幸氏によれば「民間事業者と公共施設の連携として映像利用など新たなジャンルのつかいかたも模索中である」とのことで、地域拠点としてのさらなる挑戦に期待です。
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特別賞:ベルテラスいこま「ベルステージ」(奈良県生駒市)

「ベルステージ」は、生駒駅前北口第二地区第一種市街地再開発事業の一環でつくられた広場です。計画段階からワークショップやオープンハウスを開催することで、市民の意見が組み込まれ完成した広場となりました。プレゼンでは、完成まで市民の方が毎日撮り続けた写真の動画も流され、使い手である市民の意識の高さが伺えます。

そんな「ベルステージ」は、活用段階になった今、生駒のママと子どものためのこだわりマルシェ「いこママまるしぇ」や若者たちのダンスイベント「フラッシュモブ」等、市民が主体となったイベントが多く企画・実施されているのだとか。今後、この広場をきっかけに拡がる市民の動きが楽しみです。
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特別賞:御茶ノ水ソラシティ ソラシティプラザ(東京都千代田区)

日立製薬所本社跡地に再開発事業により建てられた「御茶ノ水ソラシティ」にある「ソラシティプラザ」は、地上と地下の2層の広場です。3つの路線が交差し、かつ斜面地である当該地区は、「歩行者のための駅前空間の再生」や「15mの高低差をつなぐバリアフリー動線の確保」が大きな課題であったようです。15mの高低差については、同時期に計画がされていた「ワテラス」とをつなぎエスカレーターやエレベーターを使ったバリアフリーの動線を確保したとのことでした。

また、広場については、「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」のまちづくり団体に登録することで、有料でのイベント開催を可能にし、公開空地の幅広い活用がなされています。

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奨励賞:まちなか防災空地(兵庫県神戸市)

「まちなか防災空地」は、古い木造住宅が密集する地区で取組まれています。もともとは阪神淡路大震災をきっかけに、平成10年時点であった10,000件の空き地を適正管理し住民に使ってもらうため、神戸市によりはじまった事業でした。しかし、近年、全国的課題でもある空家に関して何とかしたいという地域の声をキッカケに、これまでの空き地の借り上げ制度と空家の除却をセットにした取り組みとして展開されたのが「まちなか防災空地」だそうです。所有者から市が借り上げ、住民が管理をするという仕組みのもと進められ、これまで3年間で40件が整備されたそうです。

地域おじさんがベンチを置き、子どもが宿題をする姿がみられる広場もあれば、近くで活動するアーティストとタッグを組み、落書きができる広場にするなど、地域の事情に応じていろんな広場がつくられており、ただの防災空地ではなく日常も地域のたまり場となっているのです。お話しいただいた神戸市住宅都市局まち再生推進課の本田氏は「これから人口が減少していく時代、空いた土地を少しずつシェアしていくことが、これからの住環境の新しい動きとなるのではないか。」と話されていました。
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奨励賞:ハピテラス(福井市にぎわい交流施設屋根付き広場)(福井県福井市)

今年4月にオープンしたばかりの「ハピテラス」は、大屋根とガラスの壁で囲まれた空間が特徴の広場。今回の受賞に関して、応募者である株式会社アール・アイ・エーの担当者は、「今後、計画以上に使いこなされていくことへの期待と感じている」と話します。

「ハピテラス」は、鉄道駅舎・バスターミナル・路面電車に隣接していることから、待合の空間・賑わいの空間・憩い安らぎの空間をコンセプトにしているとのこと。週末は多様なイベントで利用されており、コンサートや飲食イベント等ができるよう音響設備や給排水設備などのインフラも充実しているようです。

また、施設設置も特徴的で、隣接するビルを民間再開発、広場を市が整備しており、前者は広場を敷地として利用、後者はビルの一部を占有利用する相互に借り合う関係で成り立っています。つまり本来ならば、互いに賃料が発生するものの、相殺する形で費用の負担なく一体利用することが可能になっているとのことでした。
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ハード・ソフト・担い手を一体で考える。札幌都心部における人のための広場展開の裏側にあるスキーム。

午後の部はまず、過去に行政として札幌都心部のまちづくりに従事されていた工学院大学建築学部まちづくり学科の星卓志教授による基調講演「札幌都心における公共空間拡充の戦略的展開」から行われました。

講演ではまず、大通公園にあるイサム・ノグチの「ブラック・スライド・マントラ」について取り上げ、この彫刻設置に際し、当時公園を分断していた道路を廃止し、のちに公園として整備した背景こそ札幌で人のための広場を整備する萌芽であったと星卓志教授ははなします。

その後、話題は加速的に進むこととなった広場整備の背景にある行政計画や各プロジェクトの紹介へ。整備背景や仕組みや機能に関して詳しくご説明いただきました。

各プロジェクトの背景にある「都心まちづくり計画」(札幌市、2002年)でも示されているように、札幌都心部の特徴である碁盤の目の都市構造において、4本の骨格軸と3つの交流拠点を中心に、メリハリを付けた整備がなされているのが印象的です。各プロジェクトは立地の性格も異なれば、かかってくる制度も異なり、その空間設計や整備手法は広場により多種多様です。

また、駅前通と札幌大通に関して、まちづくり会社が設立され、その運営を担っていることからもわかるように、点としての広場整備をするのではなく、その広場を契機に周辺の建物の機能更新や担い手づくりを視野に入れ、ガイドラインの策定やイベントの開催することで、周辺のエリアまで拡がりをみせています。

このように札幌市が展開する人のための広場づくりの裏側には、ハード・ソフト・担い手を一体的検討がなされているという特徴がありました。

また、星卓志教授は、最後に自身も室長を務めた札幌市の都心まちづくり推進室について、札幌市役所の中で唯一「仕事ではなく場所を所管」する課であると話し、都心まちづくりの総合調整役として、都心のことであればなんでもやる窓口が市役所のなかにあることの重要性をお話しいただきました。
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3つの立場から語られる広場。シンポジウム「公共空間の果たす役割と、まちなか広場の個性」

後半のシンポジウムは、株式会社KITABA神長敬氏をコーディネーターに、星卓志教授に加え札幌市まちづくり政策局都心まちづくり推進室室長・高森義憲氏、札幌駅前通まちづくり会社・白鳥健志氏、NPO法人コンカリーニョ理事長・斉藤ちず氏、札幌オオドオリ大学学長・猪熊梨恵氏を迎え、行政にマネジメント、それに実際の使い手である民間の3つの立場からのトークセッションで、現場の声と仕掛けた側の想いが一堂に会する場となりました。

ここでも話題は、プレーヤーの意識づくりや人材育成といった議題を中心に盛り上がりました。

白鳥氏は、札幌大通地下歩道空間「チ・カ・ホ」でのマルシェを例に挙げ、「マルシェがはじまったころは段ボールの上で野菜を売る人もいた。しかし今は、道路は公平な立場で貸すことが大前提のも一貫した公平性を保ちながら、デザインされた什器を用意し、こういうふうにやるときれいにみえるといった下地を仕込んでいる。」とマネジメントの立場から、プレーヤーが広場を使いこせるための仕掛けについて話します。

一方、現場の立場から猪熊氏は、「まちを使っている人間もまちのにぎわいの一部になれる。人がなんかしら動かないとにぎわいは生まれない。」と話し、ハードや仕組みの整備だけでなく、そこを実際に使うひとの使いこなしについてお話しされました。

また、同様に現場の立場から斎藤氏は、実際に広場を使い活動するパフォーマーについて、回を重ねていくうちにパブリックなスペースでありながらも広場に対する権利意識や、自分たちの勝手にあったハード整備を求めてきたりと甘えてくる人も出てきてしまっている実態を指摘し、「クオリティのレベルと一緒に彼らの意識も引き上げていくことが大切。パフォーマーがまちづくりの担い手になるともっと発展する。そのための階段づくりが重要」といいます。

このようなお話を受け、高森氏は行政の立場から「ひとつひとつの広場のコンセプトや管理、クオリティコントロールをはっきりとさせ、重層的なエリアマネジメントを展開させたい」とお話ししてくださいました。

広場づくりというのは、人があつまる「空間づくり」やそれをまち拡がりをみせていくための「仕組みづくり」が大切であるのに加え、実際にそこで活動し、広場に彩りを与えるプレーヤーの「人づくり」が同時に求められるのだと強く感じるシンポジウムでした。
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最後はみんなでフィールドワーク

札幌の広場事情をたくさん習得したところで、研究会はいったん幕を閉じ、懇親会場まで3つテーマに分かれてのまちなか視察を実施しました。

土曜日の夕方、チ・カ・ホはかなりの通行量でした。各所で催しが展開され、人の溜まりができており、札幌市民のまちなかの居場所として確立されている印象を受けました。筆者は、テーマ「備品・イベント(ソフト運用)のコツ」のグループに参加してきましたので、最後に少しだけ紹介します!
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チ・カ・ホで使う備品がおさめられている倉庫。ここには窓口の方が常駐しており、貸し出し手続きもこの倉庫内で行われています。1ヶ月に1度、備品整備をしているとのことですが、稼働率が高いチ・カ・ホではそれでもメンテナンスが追い付くのがギリギリなのだとか。
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巨大な広告。周辺企業による広告も多くみられます。というのも、地下ということから、チ・カ・ホからダイレクトにアクセスしないような建物だとアクセスがわかりづらいということもあり、そのような企業や店舗は看板代わりに広告を使っているんだとか。実際に札幌駅前通から一本裏手にオープンした施設の広告は、地図やアクセスなどが掲載され案内板としての役割も担っていました。
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最後は、大通交流拠点。駅のコンコースという人通りが多い場所でありながら、滞留空間をつくるというのは相反するものでありながら、動線がうまくすみ分けされ、まちなかの居場所がつくられていました。
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そして最後は、懇親会。今回も全国の広場に関心ある人が交流し、新たな取組が生まれる良い機会となったのではないでしょうか。
次回の開催地は大阪。また来年までに全国各地でどんな取り組みが展開され、豊かな広場が紹介されるのか楽しみです。
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Photo by ShionaARAI

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