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【速報翻訳】PPSが推奨するパブリックスペースのための7つのCOVID-19対策
感染の勢いが全世界に拡大するCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)。
日本ではイベント自粛や東京オリンピック・パラリンピックの延期など経済への影響の懸念から今後の方針をどうしていくか、先の読みにくい状況にモヤモヤとしているパブリックスペースの関係者も多いと思います。
自宅待機などの措置を打ち出す都市が増えているアメリカで、プレイスメイキングの先駆けであるNPO組織Project for Public Spaces (PPS)が、パブリックスペースの管理者に向けた7つの留意点をリリースしました。
日常生活に様々な制約が出ている今だからこそ、改めてパブリックスペースの役割やそこでの振舞いを考える機会だと思います。
ソトノバではPPS発行記事の抄訳をお届けしますので、ぜひ参考にしてみてください。
Contents
はじめに
アメリカではCOVID-19に対して、保健機関が人との接触を避ける “social distancing” (社会的距離)を推奨しています。
これはまるで奇妙な社会実験でもしているかのような状況で、都市生活に関して様々な問いが浮かんでいます。
パンデミック(世界的な大流行)は都市生活とコミュニティにおけるつながりを脅かすものです。
このような状況でパブリックスペースの管理者のための実用的な手引きが十分になく、急激に人がいなくなったところがある一方で、事態を気にしない人が集まっている場所もあります。まちなかの経済活動にも影響が出ています。
いま、パブリックスペースの管理者には何ができるのでしょうか?
地域の健康のために、責任をもってパブリックスペースを開けることを選択した管理者のために、プレイスメイカーとして状況を乗り切るための7つの戦略をまとめました。
人がいないサンフランシスコのユニオンスクエア Photo by Bryan Meadows.1.政府機関の要請には従い、必要な時は閉鎖しましょう
政策や対応は地域で異なりますが、国のイベント主催者に対するガイドは、開催判断に迷っている方の参考になるでしょう。
パブリックスペースで、人がよく触れるところは特に清潔度を高めるべきでしょう。ファニチャーの出し入れを限定的にすることは、作業量の軽減になるかもしれません。
集まりをキャンセルすることで、逆にインフォーマルな集まりが出てくるのではと、難しい判断に迫られることもあるでしょう。
ただ、クリエイティブに状況に対応する希望もあります。
イタリアではバルコニーにメッセージを掲げたり、スペインでは中庭を囲んだエクササイズクラスをやったり、イスラエルでは距離を取りながら結婚式をやったり、ご近所さんや商店が買物困難者を見つけたり、ということが起こっています。
時には、パブリックスペースのスタッフは国や広域レベルの指示の範囲を超えた決断をするのがよい場合があるかもしれません。
パブリックスペース管理に関する決断は、地域の公衆衛生状況に沿って、少数の楽しみより多数の健康を優先したものでなければなりません。
消毒作業を行うニューヨーク市地下鉄のスタッフ Photo by Marc A. Hermann / MTA New York City Transit.2.すべての来訪者が他者への責任ある行動をとるよう促しましょう
開いたままであるパブリックスペースは、衛生の重要性を教える機会を提供します。
マネージャーは体調が悪い人の自宅待機を促すなど、予防情報の案内を出すことなどから始めることができます。可能であれば、消毒液などを用意しましょう。
パブリックスペースの管理者は、既存のものであれ新しいものであれ、地域のサポートネットワークを注視するとよいでしょう。
また、そのような支援グループの声に耳を傾け、つながり、適切に場所や資機材を提供するのもよいでしょう。
そうすることによって、努力を集約し、地域レベルで必要なものへのアクセスを高められるでしょう。
フロリダの公園におけるsocial distancingのサイン Photo by Jordan Hopkins3.1日の中で利用のピークを分散させましょう
パブリックスペースの管理者は、デザインとコミュニケーションによって、1日あたりおよび1週間あたりのピーク時間の人の数を減らすことを目指すべきです。
ニューヨーク市長が不要不急の地下鉄利用を控えるよう呼びかけたことで、自転車通勤が増えたという例や、コロンビアのボゴタのように、混雑したバスの代わりに自転車道を一時的に拡大したという例もあります。
「成功するパブリックスペースをつくるには?」の考え方を逆手に取ってみることもできるでしょう。
場を安全でアクセスしやすく保ちつつも、一時的に快適さや社会性、アクティビティの数を下げてみましょう。
ファーニチャーが必要な人に配慮しつつも、座席や滞留のためのアメニティを設けないことで来訪者間の距離をとることができます。
これはピーク利用を抑制しながら、オフピークや短時間の利用は許容するものです。
「成功するパブリックスペースをつくるには?」安全でないパブリックスペースの利用を抑制するため、いくつかの特性を逆手に取ってみましょう。場を安全でアクセスしやすく保ちつつも、一時的に快適さや社会性、アクティビティの数を下げてみましょう。
4.ホームレス状態にある人たちのために保護・啓発をしましょう
居住がどうであれ、多くの人が何かしらパブリックスペースに依存しています。
十分な衛生対策が難しい、住所不定でぜい弱な立場に置かれた人たちのことを考えるのは不可欠です。
清潔なお手洗いや清掃用具は、彼らの身を守るのに役立ちます。
悪いイメージを持たせないようにすることは、今までにも増して重要です。
パブリックスペースのスタッフはそのような人々と接する機会もあることから、地域の公衆衛生上の取り組みを紹介したり、様々なアプローチを啓発したりすることのできる立場にいます。
5.地域ビジネスをリソースとつなげ、支援しましょう
パブリックスペースと同様に、地域ビジネスの来訪者にもインパクトがあり、売上減や閉店の決断に苦しんでいるかもしれません。
資金支援プログラムやマーケティングキャンペーンなど、小ビジネスのためのリソースをシェアするといったことで、パブリックスペースは地域ビジネスとリンクできます。Main Street Americaは、商店街マネージャーが地元のビジネスと協働するためのリソースページを設けています。
Main Street Americaが提唱する、パンデミックの間、地域ビジネスを助ける行動(ギフトカードを買う、電話で買い物する、取り置きする、オンラインで買う、レビューを残す、ソーシャルメディアで宣伝する、サブスクリプションに入り続ける)6.スタッフと委託業者の面倒を見ましょう
消毒などの新たな業務のトレーニングをするほか、スタッフや委託業者が一貫した実施とコミュニケーションができるよう、すべての対応策を周知しておくことが重要です。
ユーザーのためだけでなく、被雇用者の健康のため、パブリックスペースの通常業務を取りやめることも検討すべきです。
閉鎖がベストな選択肢の場合もあるかもしれませんが、パートや契約労働者は収入の喪失などで大きな影響を受けかねません。閉鎖の間でも被雇用者が公正な支払いを受けられることが確かであれば、ストレスを軽減できます。
場をオープンのままにするのであれば、雇用者は在宅勤務や病欠などを使って出勤を避けることを考えましょう。また可能な限り、対面の接触の制限や、業務継続のためのデジタルツール利用などもできます。
7.耐え抜きましょう
他のことと同じように、私たちが愛する公園、広場、マーケット、ストリートにこれから何が起こるかは分かりません。
ですが、世界中で挑戦されているように、パブリックスペースは対策の場でもあります。
プレイスメイカーとして、新たな状況でも価値を持つ観察とコミュニティの巻き込み、そして対応力といったスキルを持っていることを忘れないでください。
すべてのパブリックスペースは、COVID-19ウイルスに異なる形で向き合っており、対応もそれぞれです。
しかし、できる限りお互いを助けるということがモチベーションであることは、皆に共通していることです。
翻訳あとがき:「社会的不況」とたたかうパブリックスペース
元記事のリリースに寄せて、PPSのCEOフィル・ミリクは、パンデミックによって経済的不況が起こっているとともに、孤独が広がる「社会的不況」が生まれる危険性を指摘しています。
そして、ミリク氏はこうメッセージを発しています。
「これから先は長いかもしれませんが、パブリックスペースは私たちがパンデミックから立ち直るのに重要な役割を果たすはずです。私たちには、すべての人のために歓迎感と活発さ、そして意味があるパブリックスペースに投資することで、コミュニティをより強靭なものに再建する責務があります。」
アメリカの状況は日本より深刻化しているように見えますが、日本の状況もいまだ流動的です。
世界の各地で、過去に直面したことのない状況にどう対応するか、手探りが続いています。
そのような状況だからこそ、各地で模索されている工夫から学ぶ重要性が高まっているのではないでしょうか。
本翻訳記事がその一助になれば幸いです。
※本記事は、YOU ASKED, WE ANSWERED: HOW CAN PUBLIC SPACE MANAGERS HELP FIGHT COVID-19?の邦訳記事です。