BOOKS

Books

BOOKS

ニュース

【Book】「Global Street Design Guide」米国発・次世代のストリートデザイン・ガイドライン出版へ!

アメリカの街路構造ガイドラインを策定する組織National Associaton of City Transportation Officials (NACTO)から、世界中の街に向けた新たなガイドラインが出版されました!あなたの街のストリートを見直すきっかけになる一冊です。

via   NEXT CITY|New Guide for Planners Offers Advice on Building Safe Streets OSCAR PERRY ABELLO | OCTOBER 17, 2016

global-street-design-guide-cover

「この一世紀以上の間、アスファルトと自動車交通の下で、根強く育ってきた賑わい・住まいやすさ、つまり「Street Life」が舗装のひび割れから芽吹いてきた。人々が生き生きとしたStreet Lifeを送れるような新たなデザインが必要である。」 by Jan Gehl

歩行者空間されたタイムズスクエア Photo by Shino Miura

歩行者空間されたタイムズスクエア Photo by Shino Miura

ブルームバーグ氏が市長に就任して以来、数々の変革がニューヨーク市にもたらされてきましたが、国際的に最も影響を与えてきた政策の一つとして、街路行政が挙げられます。

彼の政策を象徴するのは、歩行者空間化されたタイムズスクエアですが、一時期、パフォーマンス行為による治安悪化への懸念を理由に、現市長のデブラシオ氏と前警察署長のブラットン氏によって、再度自動車を通すという案が掲げられました。しかし、この案は世論に一蹴されることとなったのです。

「自動車が王様ではない」、新しい都市の時代が到来していると、改めて実感させられるエピソードとなりました。

さて、ブルームバーグ市政の間、交通局で活躍したサディカーン氏が会長を務めるNACTOとGrobal Designing Cities Initiativesから、歩行者・公共交通・持続可能なモビリティを優先した街路へのリ・デザインのための、ガイドラインが出版されました。

本著は、世界標準となることを意図し、42か国72都市の情報から成る21の街路類型、50の断面・交差点のレイアウト案を、3Dビジュアルと共に紹介しています。

歩行者再優先のストリート

根底にあるデザイン理念は、歩行者再優先、その次に自転車、公共交通利用者、ベンダーや公共サービス提供者といった事業者への配慮です。そして、自家用車利用者については、明確に、優先順位を最後とすると位置付けています。また、15年間 NACTOが蓄積してきたデータから、自動車中心の街路の容量が12300人/時であるのに対し、マルチモーダルなデザインでは30100人/時であるとする算出結果を提示した上で、交通安全性と効率性の面を根拠とした「マルチモーダル」な街路空間コンセプトを貫いています。

事例の一つとして挙げられているのはコロンビアの首都ボゴタ市。

世界有数のBRTシステム「トランスミレニオ」を備え、12路線が144の停留駅、100㎞の専用路線(400万トリップ/日、64%のモーダルシェア)を結んでいます。市行政がBRTの計画・建設・運営マネジメントを担い、民間事業者は市の方針に従い運行するという官民の役割分担がなされているのが、成功の要因の1つです。

キーマンのPeñalosaボゴタ市長は「街路は、どこかに向かう、働く、住まう、消費する、遊ぶ・・・といった人々の生活を担う、街の社会構造の基盤である。」と述べ、本著について「このガイドによってようやく、各都市において、あらゆる街路利用者に資する空間を創造していくための、国際的な情報リソースが得られた。」と語っています。

ボゴタ・トランスミレニオ  via The City Fix (http://thecityfix.com/) Photo by RonaldHV/Flickr

ボゴタ・トランスミレニオ  via The City Fix (http://thecityfix.com/) Photo by RonaldHV/Flickr

住環境とストリートスケープ

また、世界人口の32%がスラムに住まう国際的背景から、本著ではインフォーマルな住環境内の街路空間に対しても空間像を示唆しています。

例えば、ナイロビの‘Korogocho’スラム高質化プロジェクトでは、市民団体、NPO、デザイナー、エンジニア、行政が連携し、住民の意見を取り入れたプロセスでの事業実施がなされています。

結果として、ただ安全になるだけではなく、人々を惹きつけるビジュアルの街路、コミュニティと周辺地域を結びつけるオープンスペースが創出されているとのことです。

UN-HABITAT ‘Korogocho’プロジェクト  via issuu.com

UN-HABITAT ‘Korogocho’プロジェクト  via issuu.com

こうした世界の魅力的なストリートの事例が、専門家でなくても読んで楽しめるようにまとめられています。

世界の街を眺めながら、自分の街ならではのストリートの魅力、次世代に向けたデザインの可能性について思いを巡らす…、そのきっかけになる一冊です。

ちなみに日本の事例は、横浜市・元町ショッピングストリートと東京都内の裏道の商業利用についてのみ。もっと、日本のストリートの良さを発信していきたいですね。

[amazonjs asin=”1610917014″ locale=”JP” title=”Global Street Design Guide”]

Twitter

Facebook

note