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ストリート|道路空間

宇都宮の中心市街地が自分の居場所になる道路空間活用社会実験「馬車道ヤード」

北関東最大の都市である栃木県宇都宮市。その中心市街地では、LRTの導入を見据え、まちなかを「車中心」から「人中心」の空間への転換を図るウォーカブルなまちづくりが行われています。

本記事では、栃木県宇都宮市・東武宇都宮駅の北に位置する東武馬車道通りで2022年3月24日〜27日に実施された社会実験、「馬車道ヤード」を紹介します。この社会実験は、ウォーカブルなまちづくりに向け、居心地の良い空間づくりを行い、その効果や実現性を検証するための社会実験です。

また、本社会実験の概要は宇都宮市のHPからも確認できます。

公民学連携で「人中心」の道路空間へ

今回紹介する社会実験の舞台は東武馬車道通り。東武宇都宮線・東武宇都宮駅と大通りをつなぐ交通の結節点であり、車が往来し、広めの歩道が整備されているものの,人がのんびりと滞留できるような空間はありません。そんな馬車道通りを人々が想い想いに過ごせる空間へと変える取り組みが、宇都宮大学と宇都宮市の主催で実施されました。空間の設計は地元の設計事務所である株式会社ビルススタジオが担当しており、公民学の連携で取り組みが進められていました。普段何気なく通り過ぎる道路を人中心の空間へ変えることで人々の居場所ができるだけでなく、沿道の店舗にも様々な効果が期待されます。 

41469B5C-7262-45D5-8BC8-6E2C5107B801_1_105_c「当日設置された社会実験の看板」

憩いの場となるデザイン

馬車道通りの片側車道に人工芝が敷かれており、その上には木製のボックスが組み合わさったベンチが設置されています。また、樹木が設置されることで日中でも日陰が確保されており、滞在しやすい空間が創出されています。

519A1DA7-E8BC-4F12-9FA5-5D31ADA3961D_1_105_c「木製のボックスが組み合わさったベンチと木陰」

木製のボックスの組み合わせのため、ただベンチとして利用されるだけでなく、子供たちが登ったり、駆け回ったりと利用者の想い想いの使われ方がなされていました。筆者が訪れた際には、男の子がボックスの上を駆け抜けたり、会場で行われたワークショップに参加した親子が,風船と紙コップで糸電話ならぬ風船電話を作って遊んでいる和やかな光景が見られました。

IMG_5240「風船電話で遊ぶ家族」

交通に配慮したデザイン

社会実験中も、もう片方の車線は交通整備が行われながら車が通行していました。そのため、車道との境目となる部分には木製のカウンターを設置することで、安全を確保していました。 道路に人の居場所を創る時には、やはり交通への影響を抑えながらも、人々の安全性を確保する必要があります。カウンターとしてバリケードを設置することで温かみのあるデザインとなっています。

5443E1E0-13A8-4D88-929F-ED6156F01E66_1_105_c「車道との境界に設けられた木製のカウンター

「人中心」の馬車道通りへ向けて

社会実験では、 来訪者や周辺店舗へのアンケート、来訪者の行動調査が実施されました。実施中も沿道の飲食店の方から「もっと早くやって欲しかった!」という声が挙がっていました。一方で、「通りが東西で分断されてしまう」「お店への荷物の運搬に影響が出る」といった声も寄せられたとそうです。

魅力的な空間が生まれる一方で、道路の持つ従来の交通ネットワークや安心・安全な空間の確保が必要です。人々にとって居心地の良い空間のデザインと交通への影響や安全性をどちらも考慮して計画しなければならない点が、道路での社会実験の難しいポイントであると感じました。

社会実験の実施、調査を行った前田啓さん(宇都宮大学大学院建築計画研究室修士1年)は、

中心市街地の道路の中に歩行者のための居場所が生まれるということは、車社会の地方都市に新たな発展の可能性を示してくれ、とても期待されることだと思います。商店街を通る人が利用し始め、徐々にその輪が広がっていき、中心市街地全体の活性化につながっていけばと思います。

と話していました。確かに人が行き交う空間だからこそ、通る人々が次々に巻き込まれていくという可能性を道路は持っていると言えます。

今回の社会実験の評価・検証結果、地元の人々の意見を基に、課題や改善点などが抽出され、馬車道通りをはじめとしたまちなかを「人中心」の空間へと変えていくさらなる取り組みが宇都宮では行われていきます。 

馬車道ヤードのようなまちなかでの取り組みから、まちの持つ可能性や新たな課題が見えてきます。そのような取り組みの積み重ねが、中心市街地の活性化、ウォーカブルな街並みという大きな変化へと繋がっていくはずです。「人中心」の空間がさらに生み出されることに期待し、今後の宇都宮の取り組みに注目していきましょう。

テキスト:福井勇仁(日本大学理工学部建築学科4年 都市計画研究室(泉山ゼミ))

写真:一般社団法人ソトノバ

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