プラザ|広場
福岡の伝統と市民活動の発信拠点 ふれあい広場
福岡市一番の繁華街である天神に広大な広場があることをご存知でしょうか。
広場を初めて訪れた人は、「天神の中心に何でこんなに広い広場があるの?」と思うかも知れません。
この広場は、普段は広大なオープンスペースとして解放されていますが、市の広場を代表して福岡の伝統を受け継ぐという重要な役割を果たしています。
本記事では、筆者が実際に見に行って感じた市庁舎広場(通称:ふれあい広場)の魅力と可能性についてレポートします。
市民活動にもってこいの立地
ふれあい広場は福岡市内天神地区に位置する市役所と一体の広場です。
福岡市で最もにぎわいのある街「天神」の中心部に位置し、天神駅から徒歩4分と、主要駅からのアクセスが良いという特徴があります。その利便性の高い立地と広大な芝生を活かし、イベントやマルシェなどの活用が行われており、イベント時には市内から様々な属性の人々が訪れます。
公民連携で行う開かれた広場の管理手法
ふれあい広場では、様々な活用が行われています。それを支えるのが広場の特徴的な活用手法です。
広場の整備は福岡市によって以下三つの理念のもと行われました。
①市政の拠点にふさわしいシンボル性をもつとともに、市民に親しまれるゆとりやうるおいのある開放的な広場とすること
②活力ある都市づくり、市民交流の場としてイベント等に利用できるものとすること
③天神中央公園、福博プロムナード等周辺環境との調和を図ること
これらの整備理念のもと、福岡市役所庁舎と一体のものとして、管理・運営・活用されています。
つまり、市の代表的な広場として、市民に開かれた公共空間として位置付けられていることが分かります。
また、ふれあい広場の管理・整備・運営は、基本的に福岡市役所財産管理課が行っています。
市が広場を利用しない期間は民間事業者に貸付け、民間事業者がイベント利用者との間に入って協議・調整等のコーディネート的な役割を担い、イベント事業を実施する形で利用しています。(ただし、福岡市によると2021年以降は新型コロナウイルス感染症の影響により民間事業者への貸付を一時中断しているそうです)
このように、日常時とイベント時、それぞれ異なる方法を用い、公民連携で活用を行っています。
夏場も気分はひんやり!?市民の休憩場所
ふれあい広場は、高層建築物の立ち並ぶ福岡都心部に位置する貴重なパブリックスペースという役割を果たしています。
普段はオープンスペースとして市民などに開放されており、昼間から広場に設置されたオブジェの周りで人々が座ってくつろぐ姿が見られます。
広場の大きな特徴は、青く広大な芝生です。この芝生はヒートアイランド対策として導入された人工芝で、通称「よかしば」と呼ばれています。この名称は2009年8月に市民からの公募で決まりました。
この芝生では、広場の気温を下げるという設置目的があり、過去に温暖化対策として芝生の取り替えや実験等が行われています。2008年には天然芝と人工芝を組み合わせて作成された特殊な芝を一時的に設置していました。その際行なった実験では、広場の気温が通常に比べ2~3度下がり、過ごしやすくなる効果もみられた。
(天神経済新聞2009.07.07引用)
現在の芝は2019年に更新されたため実験時のものと同一ではありませんが、当時からさらに質の良いものに更新されており、天神を訪れる買い物客やオフィス勤務者の憩いの場となっています。
芝生でくつろぐ人々 (Photo by 森本あんな)景色が変わるイベント活用
ふれあい広場では、3000㎡の広大な空間を生かし、「都心の賑わいづくり」として福岡市主催・共催の行催事や観光PRイベントや物産展、一方で、「天神地区のまちの魅力向上」を目的とした民間事業者主催のフードフェスや演奏・発表会など多様なイベントが様々な人の手で年間あわせて約30件実施されています。
広い敷地を使い、人々が思う存分交流、活動する風景には圧倒されます。なかでも特に有名なのが「博多どんたく」のフィナーレ会場としての活用です。
これは、個性あふれる多彩な「どんたく隊」が、パレードや舞台上のパフォーマンスを披露する伝統行事です。1179年(治承3年)から840年間続いています。
「どんたく」とは、オランダ語の「ゾンターク」からきている言葉で、日曜日や休日を意味します。博多ではお祭りの名前として定着し、今では「博多どんたく」の名称が全国的にも有名になりました。
ふれあい広場では、どんたくのフィナーレを飾る飛び入り自由の「総おどり」が行われ、感動的な光景を作り出します。
市のシンボルであるふれあい広場は、どんたくのメインステージに最もふさわしいといえます。
おわりに
ふれあい広場は、市民の日常生活に欠かせない憩いの場であるとともに、イベントで伝統を繋ぐことで市に対しても大きな役割を果たしています。
どの都市にもシンボルとなるような広場はありますが、市と事業者、住民様々な立場の人による活用の工夫や、芝生の実験・更新など人々が広場でのびのびと過ごせるための取り組みが、ふれあい広場の価値を唯一無二のものとして高めていると考えます。
今後はイベント時に加え、日常においてもより多彩な活動のできる交流拠点となることを期待します。
テキスト:森本あんな(日本大学大学院理工学研究科建築学専攻修士1年 都市計画研究室(泉山ゼミ))