リバー・ウォーターフロント|水辺
レポート
え?まちなかを船で移動できるの? 水辺活用の可能性を探る横浜駅西口テストクルーズ・レポート!
近年、水上バスなどの河川や港湾を走る水辺の公共交通が増えてきています。
そのなかでも古くからの港町であり水辺の都市である横浜では、JR横浜駅東口から山下公園までを結ぶシーバス(ポートサービス)や、象の鼻と運河パークを結ぶ水上バス(京浜フェリーボート)など、様々なルートがすでに定期便となっており、水辺の賑わいは街の風景にもなっています。
今回、そんな横浜で新たなルートの可能性を探るべく、《tvkハウジングプラザ横浜と横浜駅西口桟橋を結ぶテストクルーズ》が5月20日、21日に実施されました。お手伝いとして参加してきた筆者が、その様子をレポートします! なお、この実験は発着場を2カ所用意したおかげで、1カ所しか発着場がない場合と比べて、周遊だけなく移動手段としても船を楽しめることが個人的にポイント高いです。
Contents
横浜駅西口・帷子川初の移動手段にもなるクルーズコース
このテストクルーズは、西口舟運社会実験コンソーシアムという横浜駅西口に関わりのある任意の民間団体が主催しており、協力団体には一般社団法人横浜西口エリアマネジメントといった地元のエリアマネジメント組織も加わっています。
現在、横浜駅西口ではエリアの価値向上を目指して街の維持管理や再整備を検討しており、今回はその一環。水辺を街の魅力にしていくための足がかりとして、横浜市が整備した浮き桟橋を試験的な発着場として使用して実施しました。
ただ、河川での舟運やクルーズの面白いところは、単なるレジャー要素ではなく街なかの移動手段にもなりうること。そのポテンシャルを引き出すため、このイベントでは帷子川のちょっと上流にもう一つ発着場が用意されました。
その場所は、ちょうどこの時期に都市緑化フェアで盛り上がる横浜イングリッシュガーデン近くのtvkハウジングプラザ横浜。tvkハウジングプラザは帷子川に隣接する総合住宅展示場ですが、敷地と川の間にはしっかりした堤防があり、その好立地を活かしきれていませんでした。今回、水辺をエリアの魅力として活かせないかと考えていたtvkハウジングプラザとコンソーシアムの担当者が運よく出会い、この実験が実現に至りました。
帷子(かたびら)川の横浜駅西口川から、上流のtvkハウジングプラザに設けた特設桟橋まで、およそ1.2km、10分の船旅です。
はしごと浮き桟橋を使って、いざ繁華街から川へ!
ここからは実際の現場をご紹介。私は横浜駅西口の桟橋に常駐していたので主にそちらについて説明します。
発着場は横浜市が整備した浮き桟橋なので水面にゆらゆら浮いています。また浮き桟橋に降りるには、はしごで2m近く登り降りしなければなりません。
これは実験とはいえ、運営側もお客さん側もなかなか大変でした。意外にも、年配の方でも問題なく登り降りしたり、スカートでも気にせず登り降りする方もいることが分かりましたが、やはり日常的に使うとなると発着場の整備は必至のようです。
そして、浮き桟橋には東京ベイガードのベネチア号が横付けされ、船長と船員、浮き桟橋にいる筆者の3人でお客さんを船に乗せます。繁華街の川にゴージャスな船が停泊するという非日常感ある風景がしびれますね。
ただ、バスであれば運転手のみで乗降と輸送ができるのですが、舟運では最低3人(さらにいえば陸上に受付2人)が必要となるので、その点で運営コストがかかってしまうのが難点。
また、この日は快晴で日中はかなり日差しが強かったこともあり、日陰が全くない船上で全員の乗船を待つのはなかなか辛そうでした。
川から見えるのは、意外な生き物や風景の数々!
大都会のど真ん中の川なので、船に乗っても面白いものは特に見られないのでは?と思う人もいるかもしれません。でも、浮き桟橋や船から水中を見てみると、意外と色んな生き物を観察することができるんです!
しかもこのあたりは水の流れが緩やかなせいか、川面近くは淡水、深くなるにつれ汽水(淡水と海水が混ざり合う)となっており、コイやボラ、クラゲ、ハゼなどを同時に見ることができる不思議な川になっています。これはなかなか面白い体験!
また、ふと橋の上に目を向けるとびっくりするくらいの見学する通行人の数! これはこれで面白い体験といえるでしょう(笑)。
他にも、船から眺める横浜はどこかのんびりした風景に感じられたのも印象的でした。これは筆者が普段使っているSUP(スタンドアップパドルボード)よりも船の方が目線が高いため、周囲のマンションの生活風景を垣間見ることができるからなのかもしれません。
そんなことを考えているうちにtvkハウジングプラザの特設桟橋に到着。こちらは高さのある堤防を乗り越える形になっていますが、川側が浮き桟橋ではない分、安定感があって安心して降りることができました。
こちらは陸側から桟橋を見たところ。秘密の場所への入り口っぽさが良いですね(笑)。以上、無事事故もなく実験を終えることができました。
テストクルーズの結果は街全体へフィードバック
今回実施して分かった運営上の課題や乗客へのアンケート結果は、今後コンソーシアムでの水辺活用の検討材料とするとともに、民間主導型の水辺活用の可能性を示すものとして横浜市に報告するとのこと。
また、こういったエリアの価値を上げる取り組みや検討過程をより多くの地権者や来街者に知ってもらうため、5月21日にオープンした横浜駅西口の未来を考え実験する拠点《FUTURE PUB’LIC(フューチャー パブリック) ヨコハマニシグチ》に展示することも考えているそうです。
2つのエリアに発着場を用意して実施した今回のテストクルーズ。周遊することで見えてくる発見や、エリア同士の心理的距離を縮めることにもつながるので、これから船を使った社会実験を考えている方はぜひ同じ流域内で仲間を見つけてコラボしてみると良いかもしれません。
All photos by Tsubasa ENDO
【イベント概要】
実施日 | 2017/5/20(土)〜21(日) |
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運行本数 | 両日合わせて全24便 |
乗船場所 | 横浜駅西口桟橋、tvkハウジングプラザ横浜特設桟橋 |
料金 | 無料 |
主催 | 西口舟運社会実験コンソーシアム |
協力 | 一般社団法人横浜西口エリアマネジメント、一般社団法人水辺荘、株式会社東京ベイガード、ミズベリング横浜西口会議 |
事務局 | 株式会社水辺総研 |