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海外と日本の視察ツアーから見るこれからのプレイスメイキング《Session2》レポート

2022年12月15日に開催された、対面+オンラインのハイブリッド開催イベント「最新事例から解説!~海外と日本の視察ツアーから見るこれからのプレイスメイキング~」では、公共空間を活用したまちづくりが活発に行われる札幌市と、世界最大のプレイスメイキングの祭典・Placemaking Week Europeから、プレイスメイキングの最先端を紹介するとともに、国内外からゲストスピーカーを迎え、これからのプレイスメイキングについて徹底議論しました。
《Session1》では、札幌市でプレイスメイキングの活動をしている林匡宏さんをゲストに迎え、札幌の事例を見てきましたが、 《Session2》 では、海外ゲストとしてマルタ・ポピオエク:Marta Popiolek(Placemaking Europe)さんを招き、Placemaking Week Europe2022の紹介や、これからのプレイスメイキング実装について話してもらいました。

本記事では、《Session2》Placemaking Week Europe報告! ~世界のプレイスメイカー像と最新トピック~ を紹介します。

CoverPhoto by岩田耕平


世界最大のプレイスメイキングの祭典・Placemaking Week Europe

《Session2》では最初に、Placemaking Week Europeに参加した田邊優里子さん(オンデザイン、Placemaking Japan)から、現地での様子が報告されました。

2022年のPlacemaking Week Europeは、スペイン・ポンテべドラで行われました。コロナの影響で2021年までリアルな現地開催が難しくなっていましたが、ようやく3年ぶりの対面参加型屋外セッションが開催ができるようになりました。

主催都市|ヨーロッパのポンテベドラ

ポンテベドラは紀元前から存在するともいわれる歴史的なまちで、現在は観光地としても有名です。

人口約8万人の小さなまちの中には、サンタ・マリア・ラ・マヨール教会や、サン・フランシスコ修道院をはじめ、歴史ある建造物を感じさせる一方で、瀟洒で美しい街並みと、日常的な生活感が同居しています。

海外と日本の視察ツアーから見るこれからのプレイスメイキング《Session2》レポート1ポンテベドラの旧市街地の街並み

ポンテベドラは、20年以上も前からまちなかを歩行者空間化するなど、市の政策としてウォーカブルなまちづくりが進められていました。

長年にわたりウォーカブルなまちづくりに取り組んできたポンテベドラ以上に、今回のPlacemaking Week Europeの開催地としてふさわしい場所はないといえるでしょう。

海外と日本の視察ツアーから見るこれからのプレイスメイキング《Session2》レポート2旧市街エリアの過去交通量

参加者もまちを使いこなす!

今回のPlacemaking Week Europeは、2022年9月27日〜30日の期間中に50以上のセッションとワークショップが実施されました。8つの会場はまちの中に散りばめられており、参加者はまちじゅうを歩いてセッションに参加するという斬新な設定でした。まちの美術館や教会の中、なかには広場に野外会場を特設した場所もありました。

海外と日本の視察ツアーから見るこれからのプレイスメイキング《Session2》レポート3Placemaking Week Europeの野外特設会場

また、Placemaking Week Europeの期間中に開催された屋外ワークショップも、ルールにとらわれず結果にこだわらず、自由に、幅広い人々が参加できる工夫がされていたそうです。

Placemaking Week Europeに実際に参加した田邊さんは

今回のPlacemaking Week Europeでは、まちを使いこなし、とにかく楽しみ、交流する中で知見をシェアしようという、マルタ・ポピオエクさん含めたPlacemaking Week Europeを運営する人達の想いを感じることができました。

と話します。

世界のPlacemaking Week Europeの裏側を公開|マルタ・ポピオエクさん

ここからは、Placemaking Europeのマルタ・ポピオエクさんをオンラインゲストに迎え、Placemaking Week Europeについて、深堀りしていきました。

マルタ・ポピオエクさんは、都市計画が専門で、ポーランドで勉強を始め、ストックホルムにあるスウェーデン王立工科大学(KTH)で博士号を取得しました。他にも、経済学の定量的手法の学位も取得しており、今回のPlacemaking Week Europeのデータ分析についても担っていたそうです。

海外と日本の視察ツアーから見るこれからのプレイスメイキング《Session2》レポート4Placemaking Europeのマルタ・ポピオエク:Marta Popiolek(Placemaking Europe)さん(右側)

マルタ・ポピオエクさん:

今回のPlacemaking Week Europeでの我々のミッションは、多くの人にポンテベドラに実際に訪れてもらい、プレイスメイキングされたまちを知ってもらうこと、また、今でも存在するまちの課題について考えてもらうことでした。

ポンテベドラというまちは、プレイスメイキングにおいて素晴らしいストーリーを持っています。

このまちが経験したこと、難しい課題があったことを知ってもらうことで、他の国やまちに対するインパクトにつながると考えました。

また、参加者がPlacemaking Week Europeの間、ポンテべトラで過ごし、まちに対して何か気づきがあればシェアしてほしいという思いもありました。

Placemaking Week Europeで会議を開催し、主催都市であるポンテベドラにおける課題を、そこで議論しました。

と話します。

Placemaking Week Europeの参加者400人!多様な業種の参に集結

今回のPlacemaking Week Europeには、世界40カ国から400人の参加者が集まったそうです。

そのうち全体の17%が自治体関係者で占められ、過去に行われたPlacemaking Week史上もっとも多い比率だったことは、自治体にプレイスメイキングの価値を説くアプローチをしていたマルタ・ポピオエクさん達にとって嬉しい数値でした。

一方で、参加者の年齢は、16歳から70歳までと幅広いものの、ほとんどの人が30代でまちづくりのプロフェッショナルだったことから、学生などの若い層やさまざまなバックグラウンドもつ人たちの参加が次回の課題だそうです。

海外と日本の視察ツアーから見るこれからのプレイスメイキング《Session2》レポート5今回のPlacemaking Week Europeにおける人口動態的分析 資料提供:Marta Popiolekさん

世界のPlacemaking Weekの評価・統計について

マルタ・ポピオエクさんは、Placemaking Week Europeの評価についても話してくれました。

5点満点中、会場の評価は4.2点、セッションの内容については4.2点、知り合いにPlacemaking Weekへの参加を奨めるかという評価は4.5点、Placemaking Week全体の評価は4.5点でした。

また、経済的な影響では、およそ400人が5日間過ごし、まちに約30万ユーロのお金を落としたそうです。

Placemaking Week Europeにおける直接的な支出額は約50万ユーロ(2023年3月10日のレートで7,200万円ほど)だったそうですが、1ユーロの投資に対しては、4.2ユーロの投資効果が得られたという結果が算出され、費用対効果の大きな投資であったことが発表されました。

海外と日本の視察ツアーから見るこれからのプレイスメイキング《Session2》レポート6アンケート調査の分析 資料提供:Marta Popiolekさん

多様な人を呼ぶためには、分野を「つなげていくこと」

その後は田邊さんと田村 康一郎さん(一般社団法人ソトノバ共同代表理事/株式会社クオル・チーフディレクター)による質疑とオンライン参加者から質問にマルタ・ポピオエクさんが答える形でクロストークが行われました。

ー(田邊さん)Placemaking Week Europeでは、開催4回目にして400人という多様なアーバニスト達を集めることができたのは何故でしょうか?

マルタ・ポピオエクさん:

フェスティバルが大きくなっていけば、人も自然に増えていきます。プレイスメイキングを広め、知ってもらうために、まずは、組織の中で同じプロセスを持っている人や個人的にプレイスメイキングをしたい熱のある人をつかまえて、どれだけプレスメイキングに価値があるのか、公共空間に価値があるのかを伝えています。

海外と日本の視察ツアーから見るこれからのプレイスメイキング《Session2》レポート7プレイスメイキングに関わる多彩なアーバニストについて話すMarta Popiolekさん

ー(田村さん)分野をこえて、協力しながらプレイスメイキングをすることが価値につながる、ということを伝えていくには、工夫が必要だと思います。マルタ・ポピオエクさん自身、どのように考えていますか?

マルタ・ポピオエクさん:

プレイスメイキングは専門分野ではなく、まち街の価値を高める多様な分野を見つけ、つなげていくための1つの手段です。

ですから、私たちがプレイスメイキングのアクションを提示し実行するのではなく、地域の人々や行政の方と一緒に学んでいき、まちに何が必要なのかを考えていくことが大切です。

ー(田村さん)話を聞いている中で、ヨーロッパのなかでもまちや地域によって受け止められ方が違うと感じました。これからプレイスメイキングを行っていこうという日本に対して、何かアドバイスがあれば、お願いします。

マルタ・ポピオエクさん:

プレイスメイキングは、小さな行動から戦略的レベルまで段階的に引き上げていくことが必要になります。そのためには、小さな行動から得られた結果を、実際に人々の目で見て感じてもらい、信頼に繋げていくことが大切になります。

海外と日本の視察ツアーから見るこれからのプレイスメイキング《Session2》レポート8次回のPlacemaking Weekへの参加を促され、嬉しそうな表情を浮かべる田邊さん(左側)photo by 岩田耕平

世界のPlacemaking Weekのデータ統計や、特徴、多様な人に参加してもらうためのアクションや大切にしていることについて話してくれたマルタ・ポピオエクさんさん。

自分たちのまちの課題に対してどのようにアプローチするのか、多くのプロセスがある中で、自分たちの文脈のなかでどのように運用していくのか、その新しい方法論がプレイスメイキングです。

という言葉が印象に残りました。

イベントが終わった後も、交流会の場でプレイスメイキングについての意見が交わされました。登壇者もオーディエンスも分け隔てなく、今回のPlacemaking札幌やPlacemaking Week Europeついて議論しながら懇親しました。

プレイスメイキングの認識がより深まり、最新事例からの刺激を受け幕を閉じた「最新事例から解説!〜海外と日本の視察ツアーから見るこれからのプレイスメイキング〜」。Placemaking Japanはこれからも、プレイスメイキングについての情報やネットワークを広めるための参考情報を提供し、国内のプレイスメイキング普及啓発を促進していきます。

海外と日本の視察ツアーから見るこれからのプレイスメイキング《Session2》レポート9ケータリングは「ひなや」さんによる、主菜やおばんざいなどが色鮮やかに盛られたお弁当に加え、ご飯や汁物をいただきました。 photo by 岩田耕平

2022年12月15日に行われたPlacemaking Week JAPANの様子

Graphic recording by 千代田彩華 photo by 岩田耕平
Graphic recording by 千代田彩華

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