パブリックスペースを「人の居場所」に変えていく! J・ジェイコブズから脈々と続く「プレイスメイキング」前編

2014年に国土交通省主催で行われたシンポジウム以降、よく耳にするようになった「プレイスメイキング」。時流もあり、現在は公共空間活用の文脈で語られることが多くなりましたが、プレイスメイキングの概念って一体何だろう?と感じている人も多いのではないでしょうか?

アメリカで生まれたプレイスメイキングは、直訳すると「居場所づくり」。その言葉の意味合いには様々な解釈があり、実は定義もひとつに限られているわけではありません。更に言えば、その場所に関わる人自身が、その場所のプレイスメイキングを定義づけることだってできるのです。パブリックスペースを、プレイス=人の居場所に変えていくとはどういうことでしょうか?

そこで今回は、プレイスメイキングの概念を紐解く第一弾として、その実践者の代表格ともいえるProject for Public Space(以下PPS)のウェブサイトから”What is Placemaking?”を参照してみましょう。

PPSとは、1975年に設立された非営利組織で、米国ニューヨークのブライアントパーク再生計画にも携わった団体です。PPSはプレイスメイキングを彼らのミッションとして掲げ、世界中のコミュニティと協働して地域再生プロジェクトのための計画、教育支援を行なっています。また、パブリックスペースを人々のコミュニティづくりの場、地域のニーズを満たし、元気にするための地域資源と位置付けています。

今回は前編として、プレイスメイキングの基本概念と、その系譜についてご紹介します。

公園にチェス台があるだけで小さなコミュニティができあがる(Photo by Mayuko Mitani)

公園にチェス台があるだけで小さなコミュニティができあがる(Photo by Mayuko Mitani)

PPSの「プレイスメイキングとは?」

(以下訳文)

─もし、私たちがある場所を中心としてコミュニティをつくったとしたら?─

プレイスメイキングは、ご近所周りや、都市、地域を改善するために誰もが取り組むことができるアイデアであり、直接参加できる方法です。それはパブリックスペースをすべてのコミュニティの中心として、人々が一緒に想い描き、一緒につくり直すための勇気と自信を与えてくれます。

プレイスメイキングは、人々自身と人々が共に使う場所とのつながりを強化し、私たちがその場所を一緒に利用する価値を最大化することを目的としたパブリック領域(Public realm※)を形づくる共同作業の過程を示してくれます。そして良質な都市デザインを推し進めることに留まらず、場の創造的な利用形態を生みやすくし、物的・文化的・社会的な独自性に対して特別の関心を払っています。

その独自性は、その場所を特徴づけ、継続的な発展を支援するものです。コミュニティを基本とした参加活動を中心として、効果的なプレイスメイキングの過程は地域コミュニティの資産、発想の源泉、可能性を資源とします。その結果として、人々の健康や幸福、快適な満足感に寄与する良質なパブリックスペースを創造するのです。

※Public realm:あらゆる公有の街路・小道・道路・公園と、一般の人が自由にアクセスできるオープンスペースやあらゆる公的で市民のための建物や施設(私有の場合も含む)

場所と使い手のつながりを強めるプロセスが重要

PPSがウェブサイトの訪問者に対して、「プレイスメイキングが意味することは?」ということを調査した時、人々の生活の中でその場所とのつながりを親密に感じるために必要不可欠で、かつとても大事な過程があることを私たちは発見しました。

プレイスメイキングは、人々が共に思い描くビジョンがいかに力強いものになり得るか、ということを人々に示しているだけなのです。それは人々が毎日を過ごす空間を改めて想像し、公園、まちなか、水辺、広場、近隣地区、街路、マーケット、キャンパス、公共の建物などの可能性を改めて見返すことの手助けをします。

プレイスメイキングは最も小さなスケールから始める(Photo by Project for Public Space Website)

プレイスメイキングは最も小さなスケールから始める(Photo by Project for Public Space Website)

J・ジェイコブズ、W・ホワイトの理論から続く系譜

プレイスメイキングは新しい考え方ではありません。けれども、PPSはそのアプローチを表現するために、1990代半ばから一貫して「プレイスメイキング」という用語を使い始めました。

当時を振り返ると、プレイスメイキングは1960年代に、PPSの指導者であるジェイン・ジェイコブズやウィリアム・H・ホワイトが車やショッピングセンターのためだけではない、人のための街のデザインについて先駆的なアイデアを紹介したことで普及し始めました。彼らの功績は、生き生きとした近隣地域と、人を惹きつけるパブリックスペースの社会的で文化的な意味合いに重点を置いたことです。

ジェイコブズは常に、今では広く知られている「街路に向けられる目」を通じて市民が街路利用の主導権をとることを推奨していました。一方でW・ホワイトは、パブリックスペースでの生き生きとしたとした社会生活を実現する、重要な要素の概要を示しました。

「手順であり哲学」

これら都市論の先駆者の知恵を応用して、1975年からPPSはだんだんと総合的なプレイスメイキングの方法を開発してきました。

米国の50すべての州、43の国で3000以上の地域コミュニティとともに働いた経験を通じて、PPSは協働型の地域づくりのプロセスをどう取り入れるかという事例を示し続けています。それはパブリックスペースを創造し、そして生き返らせるための最も効果的なアプローチです。私たちにとって、プレイスメイキングは一連の手順であり、哲学です。

それは特定の空間で暮らし、働き、遊ぶ人々を観察し、その声に耳を傾け、問題点を尋ねることを中心とすることです。その空間と、彼らのコミュニティ全体に向けて必要性のあることと彼らの願望を理解するために行うのです。

この知見をもって、私たちはその場所に向けた共通のビジョンを作り出すため団結することができるのです。そしてこのビジョンは迅速に実施戦略として展開することができます。それは小さな規模で始める「手軽で、素早く、安く」できる改善のことであり、空間とそこを使う人々両方にとって直接的に利益をもたらします。

翻訳:著者
監修:渡 和由(筑波大学芸術系准教授)

*   *   *

プレイスメイキングの概念やPPSのアプローチは、正にいま、日本のまちづくりの流れに有効な手立てとなりそうです。

後半では、上記の概念を基本としてPPSが独自に行っているプレイスメイキング手法についてご紹介します。後編もお楽しみに!

(Cover photo:米国ニューヨークのブライアントパーク by Kazz Watari)

The following two tabs change content below.
三谷 繭子

三谷 繭子

ソトノバ副編集長/修士(デザイン学)/広島県福山市出身 パブリックスペースを媒介としてまちなかで様々な人が居場所を感じられる場と魅力ある都市空間をつくりだすため、地域支援やプレイスメイキングの実践を行う。地元孝行プロジェクト「備後のギフト」事務局。