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ヌマベの10個のハマり方を紹介!テガヌマウィークエンドVol.2」レポート前編

皆さん、「ヌマベ」と聞いてどのような空間を頭に思い浮かべますか?

近年、ミズベリングなど日本各地で水辺空間の活用が進んでいますが、その多くは河川沿いであり、ヌマベにはピンとこない方も多いのではないのでしょうか。

先日、千葉県手賀沼の堤防を降りた場所、通称ヌマベのパブリックスペースを活用したプレイスメイキングが行われました!ヌマベでできること、そのポテンシャルを十分に引き出す社会実験イベントが「ヌマベ・ビラキ」と名付けれられ、2日間に渡り手賀沼のヌマベが魅力的な空間に設えられ、多くの方がヌマベを楽しみました。

今回は、このテガヌマウィークエンドVol.2 ヌマベ・ビラキの企画・運営を行った手賀沼プロジェクトの一員である東京大学都市デザイン研究室に所属する筆者が企画と当日の様子について前編・後編に分けてレポートします!


どんな企画?

実は、テガヌマウィークエンドは今年で2回目の開催となります。昨年の同じ時期にテガヌマウィークエンドVol.1『ヌマベ・ザシキ』を同じく都市デザイン研究室が中心となった手賀沼プロジェクトが行いました。(昨年のレポート記事参照

昨年から引き続き、第2弾としてテガヌマウィークエンドVol.2 ヌマベ・ビラキが企画されました。ヌマベというパブリックスペースを地域の人々を中心に、手賀沼に訪れる人たちに開いて、楽しく使ってもらおうという意味が込められたタイトルです。

ヌマベは普段は行政が管理しており、市民が自由に立ち入ることは禁止されています。手賀沼の写真を撮るために堤防近くに立ち寄る人もいますが、ヌマベ空間が開かれているとは言えないでしょう。

水質が26年連続ワースト1だった手賀沼が、徐々に綺麗になり、かつてのイメージを払拭している今、どのように手賀沼の魅力を知ってもらい、もっと手賀沼のファンを増やしたい、ヌマベを地域に開きたいという大きな目標を掲げたイベント兼社会実験となっています。

Vol.1に引き続きヌマベに着目するとともに、ヌマベに隣接していて都市デザイン研究室が改修設計に携わった手賀沼フィッシングセンターの施設内も当イベントの会場としました。それによって手賀沼湖畔の「場」をより多様に展開することが目的でした。今回は、2日間限定でヌマベ空間の使用許可を柏市から得て開催することとなりました。

手賀沼アグリビジネスパーク事業推進協議会を主催者として、東大の都市デザイン研究室・空間計画研究室のプロジェクトメンバーが企画・運営をしました。さらに、手賀沼プロジェクトの普段の活動の中で出会った様々な地域の方々(手賀沼まんだら、手賀沼パドルクラブ、ヨガのインストラクター、写真家、漁師さん、ボート屋さんなど)も企画メンバーに巻き込んで、Vol.1よりも地域との関係を強めたイベントとなりました。手賀沼フィッシングセンターにてカフェなどを展開するEDGE HAUS、柏市・我孫子市からの後援も頂きました。

会場は、手賀沼東端に位置する手賀沼フィッシングセンター内とその隣接地のヌマベ。

航空写真ひき
我孫子市と柏市の境に位置する手賀沼(Figure by GoogleMap)
航空写真アップ
手賀沼フィッシングセンターとヌマベ(Figure by GoogleMap)

手賀沼フィッシングセンターと千葉県(柏土木事務所)が管理するヌマベを横断して会場としていたため、分かりやすい会場とするため案内サインもデザインしました。

会場案内図
ヌマベ・ビラキ会場案内図(Figure by 手賀沼プロジェクト)

「手賀沼ファン」を増やす

テガヌマウィークエンドは、2018年のVol.1と2019年のVol.2に共通して手賀沼周辺に住む日常的に手賀沼に近い、地域の方や少し遠方から週末にレジャーとして訪れる方などをターゲットにしています。その目的の1つは、そういった人たちに手賀沼のファンになって欲しいということです。

手賀沼の長い歴史の中で、高度成長期に周辺でベッドタウンとしての宅地開発が進み、生活排水などによって水質汚濁が著しかった時期に、次第に手賀沼と人との距離は遠くなっていました。

しかし、近年は北千葉導水の導入や住民運動によって水質汚濁はかなり改善しており、手賀沼でマリンスポーツやトライアスロン大会なども行われるようになってきています。さらに、以前に筆者の記事でも紹介した手賀沼まんだらのように、子どもたちの遊び場・家族の遊び場として手賀沼を使いこなすといった動きも見られます。

河川法の緩和などを皮切りに、水辺の活用が全国的に盛んになっている昨今の波に乗って、手賀沼でもヌマベの活用、手賀沼自体の活用に可能性があるのではないかという思いが手賀沼プロジェクトにはあります。

ミズベリングをもじって、ヌマベリングとしてこういったヌマベの活動が広がっていってほしいというビジョンも描いています。

今後、手賀沼とその周りの街にとってどのように手賀沼と関わって暮らしていくのかということは非常に重要なテーマだと考えています。そこでまず、手賀沼のファンになって、各々の手賀沼との関わり方を考えるきっかけを作ってもらいたいと考えました。テガヌマウィークエンドというヌマベのパブリックスペース活用実験がその良い機会になるのではないでしょうか。

そんな観点から、Vol.2『ヌマベ・ビラキ』では手賀沼のポテンシャルを存分に体験し、知ってもらうためのコンテンツを用意しました。

ヌマベの10のハマり方

ヌマベのポテンシャルを存分に発揮できるようなコンテンツを以下のように10個企画しました。これらのコンテンツは、手賀沼プロジェクトが動き出してからの3年間で出会った柏や我孫子の地域の人々の協力によって実現しました。

このように人と人を繋いでくれる「場」であるのもパブリックスペースの力だとひしひしと感じています。

【ヌマベの10のハマり方】

  • ①ヌマノウエ・ギャラリー
  • ②ヌマSUP
  • ③ヌマ・ハマリ
  • ④ヌマベ・ヨガ
  • ⑤ヌマベ・カフェ
  • ⑥ヌマベ・フォト
  • ⑦みんなでつくるヌマベ模型
  • ⑧漁具づくり
  • ⑨ヌマ・シラベ
  • ⑩ヌマベ・ツアー

ここからは写真とともに、それぞれのコンテンツについて簡単に解説していきます!一体どんなポテンシャルがヌマベには潜んでいるのでしょうか。

①ヌマノウエ・ギャラリー

ヌマベの桟橋に停泊する遊覧船の上をギャラリーに設えました。手賀沼の昔の写真や手賀沼に関する本を並べ、船上でのんびりとコーヒーを飲みながら、手賀沼について知ることができました。

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漁協の桟橋に帰ってきた遊覧船は手賀沼について学べるギャラリーに(Photo by 手賀沼プロジェクト)

②ヌマSUP

手賀沼で普段からSUPを実践している手賀沼パドルクラブさんにご協力いただき、実現しました。ヌマベの桟橋から実際に手賀沼へとエントリーできる非常にエキサイティングな楽しみ方でした。

日頃からこのようなアクティビティが楽しめる手賀沼は非常に豊かな地域資源ですね!

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桟橋からエントリー(Photo by 手賀沼プロジェクト)

③ヌマ・ハマリ

ヌマベには、手賀沼の中に実際に足を踏み入れられる場所があります。ハマってみると手賀沼で暮らす生き物や植物を観察することができます。汚い・臭いと避けられていた手賀沼ですが、胴長を着用すれば、問題なく入ることができました。生き物の専門家の方にもご協力を頂き、詳しい手賀沼の生き物の解説をして頂きました。

生の自然を感じて、はしゃぐ子どもたちにはとても貴重な経験になったのではないでしょうか。一緒にはまっていたお父さんやお母さんも童心に帰ったように楽しんでいたのも印象的です。子どもも大人も関係なく、手賀沼から学ぶこと・感じることはたくさんあるようです。こういった自然教育的な観点からも非常にポテンシャルに富んでいると言えるでしょう。

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こどどもも大人もヌマにハマる(Photo by 手賀沼プロジェクト)

④ヌマベ・ヨガ

Vol.1でも来てくださった山下先生のヨガ教室をヌマベに敷いたザシキ(ウッドテラス)で開催しました。両日とも朝10時スタート。朝日を浴び、ヌマベの爽やかな風を受けながら、しっかり汗を流していました。皆さん、とっても晴れやかな表情でソトでのヨガを楽しんでいる姿には通りがかる人も興味津々でした!

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特設ザシキでソトヨガ!(Photo by 手賀沼プロジェクト)

⑤ヌマベ・カフェ(常設)

こちらも昨年のVol.1に引き続き、地元のお店にご協力にご協力頂き、実現しました。numa cafeのハンドドリップコーヒーを中心にPaisibleのパン&吉岡茶房の焼き芋がコラボ!

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ハンドドリップコーヒーとパンと焼芋の特設カフェ(Photo by 手賀沼プロジェクト)

⑥ヌマベ・フォト

持ち寄り形式の野外写真展。手賀沼をテーマにした写真を持ち寄って頂き、ヌマベに展示しました。会場となったヌマベの堤防は、実は手賀沼のサンセットを撮影するための人気スポットとなるくらい、夕陽が綺麗に見える場所で、週末の夕方には多くの人が集まる場所でもあります。

手賀沼は野鳥の観察スポットとしても有名で、プロアマ問わず多くの写真家が活動しています。そんなポテンシャルを活かすためにVol.1に引き続き、野外写真展として魅力的なヌマベ空間づくりの一部として開催しました。

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展示された写真と設えられたファニチャー(Photo by 手賀沼プロジェクト)

⑦みんなでつくるヌマベ模型

柏の葉に拠点を持ち、最先端技術を使ったモノづくりなど、子どものためのクリエイティブスペースを運営する「VIVITA」と一緒に、模型でオリジナルのヌマベを作ってみるコンテンツが実現しました。

子どもたちと一緒にヌマベを探検し、その未来について考え、模型で表現するというクリエイティブなコンテンツとなりました。真剣な表情で、手賀沼とヌマベについて考え、楽しんで自らのアイデアを形にする子どもたちの姿が印象的でした。

こういった経験から自らの街に興味を持ったりしてくれるととても良いなと思います。

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みんなで作り上げられた未来のヌマベ模型(Photo by 手賀沼プロジェクト)

⑧漁具づくり(常設)

手賀沼で実際に使える漁具を手作りするコンテンツ。手賀沼の漁師さんからアドバイスを頂きながら、実際に使っていた漁具について勉強したり、手作りで学生メンバーと一緒に作り、使ってみることに挑戦しました。

2011年の東日本大震災による放射能の影響でしばらく出荷ができない状況が続いている手賀沼の漁業ですが、かつては大きな産業でした。今後、手賀沼の漁業がどうなっていくかは分かりませんが、子どもたちにもそのポテンシャルを楽しみながら知ってもらおうと企画しました。

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手網を自作する子どもたち(Photo by 手賀沼プロジェクト)

⑨ヌマ・シラベ

前述した手賀沼まんだらと一緒に行った生き物観察会。手賀沼フィッシングセンター内の観察池でいろいろな生き物に触れ、観察しました。手賀沼まんだらの我孫子のママさん方の協力で実現したコンテンツとなりました。

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捕まえた生き物について勉強する子どもたち(Photo by 手賀沼プロジェクト)

⑩ヌマベ・ツアー

手賀沼でボート業を営んできたボート屋さんにご協力頂き実現できた、遊覧船で手賀沼を巡るコンテンツです。実際に手賀沼の水面を体験でき、船頭さんの解説付きで手賀沼のことを知ることができたようでとても人気のコンテンツとなりました。昨年のVol.1でも、遊覧船を出して欲しいという要望が多く聞かれて実施に至りましたが、やはり手賀沼のポテンシャルを引き出せるコンテンツなのだと改めて実感しました。

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遊覧船で手賀沼を楽しむ(Photo by 手賀沼プロジェクト)

これらの10のハマり方を手賀沼のヌマベを中心に展開することで、多様な人々による多様なアクティビティをヌマベに誘発することができました。手賀沼のポテンシャルを存分に引き出すことができたのではないでしょうか。遊び・教育・憩う、どの観点においてもポテンシャルに溢れたヌマベは子どもも大人も楽しむことができるのです。

手賀沼のポテンシャル、いかがでしたでしょうか。

前編では、10のハマり方を紹介しました。

後編では、今回のテガヌマウィークエンドVol.2 ヌマベ・ビラキがどのような意図で実施されたのか、アンケートから何が明らかにされたのかなどその裏側について詳しくレポートしようと思います!

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