アイデアソンで「日本らしいパークレット」を考えよう! 道路空間の未来を描くソトノバTABLE#16レポート

ソトノバが主催するリアルな交流の場「ソトノバTABLE」。

16回目となる今回は、昨年の企画をバージョンアップ! 「Public Parklet Japan2017 日本らしい『パークレット』を考えるアイデアソン」と題して開催しました。

米国サンフランシスコやオーストラリア・アデレードなど先行事例の研究が進み、日本での導入の議論も耳にするようになってきたパークレット。ですが、海外とは課題の背景が異なるので、そのまま輸入しても意味がありません。日本ならではのパークレットは、どういう形が考えられるのでしょうか? 参加者みんなでアイデアを出し合おうという趣旨です。ソトノバ・ラボ内に今年度から立ち上がった「パークレットラボ」部会が企画を担当しました。

さらに今回は、議論をその場でイラストにしてまとめていく「グラフィックレコーディング」を取り入れてみました。清水淳子さんが率いる「Tokyo Graphic Recorder」の協力で、各グループに担当者が加わって記録していきます。その成果は、記事後半をご覧ください。

パークレット命名の地、サンフランシスコの今

会場には都市計画分野の実務者や研究者を中心に、これまでのソトノバTABLEの集客記録に迫る50人が集まりました。ソトノバ副編集長の荒井詩穂那さんによるソトノバの紹介に続いて、パークレットについての最新情報の共有です。

最初の発表者は、ソトノバ編集長にして東京大学先端科学技術研究センター助教を務める泉山塁威さん。今年の2月下旬から3月頭にかけて米国を調査訪問した中から、サンフランシスコ市のパークレットの最新状況を発表しました。「Parklet」という語を都市政策上に初めて位置付けたのが、サンフランシスコ市。2010年から取り組みを進めています。

調査時点で66カ所にあると思われるパークレットのうち、半数の33カ所に足を運び、豊富な写真を交えながら現状を報告します。

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現地で撮影したパークレットの写真を説明する泉山さん。設置するオーナーの個性があふれています

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会場の奥の壁では、リアルタイムでグラフックを使ったまとめが展開

車社会の米国では、道路上の駐車スペースが自動車で埋まっています。そういった状況に対する抵抗として、コインパーキングにお金を入れ、車を停める代わりに人間が様々なアクティビティをする「PARK(ing) Day」というプロジェクトが2005年に始まりました。

これを取り入れて、常設化に向けて制度を整えたのがサンフランシスコ市です。

泉山さんは、そうやって民間のゲリラ的なアクションを取り入れて都市政策に転換していったパークレットを、タクティカル・アーバニズムの好例として位置付けます。

また泉山さんは、道路空間の利用に関する日米での許認可について、「日本では、商店街やエリアマネジメント団体などの半公共的な組織が間に入らないと、自治体が許可を出さない。一方の米国では、民間のカフェなどに直接使用許可を出す」と違いを指摘。日本では戦後闇市の時代から道路空間の民間利用を厳しく規制してきた歴史があり、店舗などが道路を自由に使うことに対して、管理側の根強い拒絶反応があると説明します。

実験から常設へ、神戸市が取り組むパークレット

続いての発表は、日本で初めて車道の停車帯をパークレットとして使用した「KOBEパークレット」。神戸市建設局道路部計画課で都心部の道路活用を担当する、大西一成さんと桝井敦さんの2人によるプレゼンテーションです。

実は昨年のパークレットをテーマにしたソトノバTABLEにもお越しいただきました。その後の社会実験を経て、今年4月から中心部の三宮エリアに3基のパークレットの常設を実現しています。

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「KOBEパークレット」の説明をする神戸市の桝井敦さん(写真左)と大西一成さん

そもそもは神戸市都心部の再整備の目玉として、三宮と名が付く6つの鉄道駅にまたがる一帯を、人を中心とした空間にシフトしていく基本構想に則ったプロジェクトとのこと。10年前ぐらいから、沿道のまちづくり協議会がオープンカフェの社会実験を重ねるなど、民間もにぎわいの創出に積極的な地域です。

市はこのまちづくり協議会と道路管理・活用協定を結び、清掃や植栽の管理などを依頼。2016年10月から社会実験を開始しました。ソトノバでの現地レポート記事はこちら(神戸のまち歩きがもっと楽しくなる戦術?! 日本初の車道に展開した「KOBEパークレット」現地レポート)です。

設置したパークレットでは、ベンチで家族連れが食事をしたり、カウンターでパソコンを使う人がいたり、小さな人工芝で子供たちが遊んだりと、思い思いのアクティビティが見られました。さらに神戸マラソンのときにはジャズバンドが応援の演奏。1月末に開催した「神戸ティーフェスティバル」というイベントでは、パークレット上で無料で紅茶をふるまい、2日間でおよそ3500杯が出たそうです。

3月末で社会実験は終了しました。利用者へのアンケート結果は概ね良好で、中でも「神戸の街にもっとあった方がよいか」という質問には、実に96%の人が「そう思う」と回答しています。

一方、沿道店舗へのアンケートでは、「道にあるのは良いが、自分の店舗の前だと店が見えにくくなる」などの意見もありました。4月からの常設化に際して1基を移設し、その際に車道側の外壁を15cmほど下げて見通しをよくする、などの改良も施しています。

環境にも配慮、名古屋都心のパークレット的空間

話題提供の最後は、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻の准教授、村山顕人さんです。村山さんは、前任の名古屋大学時代に関わったプロジェクトを紹介しました。名古屋駅前と栄という2つの繁華街に挟まれて地盤沈下が進む、錦二丁目・長者町が舞台です。

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発表する村山顕人さん

このエリアは戦後、繊維問屋街として発展を遂げましたが、近年は衰退し、老朽化したビルが立ち並んでいます。その状態をなんとかしようと地元のまちづくり協議会が立ち上がり、2011年にまちづくり構想を策定。2015年には、名古屋市の低炭素モデル地区の認定も受けました。

こうした街側の動きに先立ち、名古屋大学では農学部と工学部が共同で取り組みを進める「都市の木質化プロジェクト」が動いていました。そこで愛知県産の木材の利用を促進する企画として、海外のパークレットを参考にしながら「ストリートウッドデッキ」のプロトタイプを制作していったそうです。

本来なら車道上に設置したかったのですが、道路交通法で設置が認められている項目に「パークレット」はありません。結局許可は得られず、2012年にエリア内にある名古屋センタービルの敷地に設置しました。ビルオーナーと管理者にしっかり説明して、何か問題があったらまちづくり協議会が責任を持ち、メンテナンスも担当するという覚書を交わしての上です。

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道路上に置く許可が得られず、エリア内の民間ビルの敷地に設置した「ストリートウッドデッキ」

その後も木材を使った取り組みを進め、2016年開催の「あいちトリエンナーレ」では道路占用許可を取って、歩道上に木製のベンチを置きました。このプロジェクトは、ソトノバの記事としても紹介しています(木材活用とおもてなしの一石二鳥! 名古屋・錦二丁目長者町「都市の木質化プロジェクト」パブリックスペース・ベンチをご紹介)。

「関係者を巻き込み、まず実践してそこから学ぶ」と話す村山さん。その姿勢は、タクティカル・アーバニズムに通じます。

アイデア続々! 日本流パークレットはここから始まる?

それぞれ熱のこもったプレゼンテーションにより、この時点で予定より30分ほど押してしまっていましたが、続いて3組の発表者によるクロストーク。アイデアソンに入る前に、改めて論点を整理します。

泉山さんは、自身が関わった池袋のイベント(日本の道路空間でパークレットができないワケとは? 池袋・GREEN BLVD MARKETの経験から見えた日本の道路空間の課題)での経験を踏まえ、「置きっぱなしにできないのが、日本の道路の課題」と指摘。什器を出し入れできるように仕立てなければいけないことが、活動の足かせとなっていると続けます。

「パークレットは、道路空間に常設できるという象徴。ストリートで何をしたいかが先にあり、その実現手段の1つとして考えてほしい」(泉山さん)

神戸市の大西さん、桝井さんは、「道路部の中でのにぎわい担当(笑)。回遊性を高めるポイントを見極め、パークレットやその他の仕掛けを配置して、まち歩きを楽しんでもらえるようにしたい」と、今後の取り組みへの意欲をのぞかせました。

「歩道は歩くための空間。対して、パークレットは人が留まることを許す場所」と、プロジェクトを通じての気付きを説明したのは村山さん。街なかのコミュニティスペースとしての使われ方に、可能性を見出しているようです。

そしていよいよアイデアソンのスタートです。50人の参加者が5つのグループに分かれて一斉に議論。日本におけるストリートの課題を整理して、パークレット的な要素を取り入れた解決方法を探ります。アイデアをまとめ、そのネーミングまで考えていただきます。

各グループに1人ずつ、グラフィックレコーダーが加わってその場で記録していくという贅沢な状況で、話し合いは大いに盛り上がりました。

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議論がどんどん描きこまれていきます

そして最後に各班のアイデアを発表し、会場でシェアしました。参加者のみなさんの専門性や問題意識の高さを反映して、充実した内容になったかと思います。ご参加のみなさま、遅くまでありがとうございました!

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最初に発表したグループは、日本においてはパークレット化が公共性の向上と結び付かないのではないかと提議。公共的な要素を持つバス停留所を拡張した、「バースレット」を提案しました

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路地への愛着に注目したグループでは、みんなが「とんち」を効かせて、街なかの余白を使っていくというストーリーを発表

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狭い歩道に対し、道路側や私有地側に少しずつ幅を取ることで場を確保する「ハミダス」。コンビニの駐車場や再開発の公開空地への設置も検討しました

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空き駐車場などの街のオープンスペースに、実験的に用途を埋め込むアイデアです。「パークハック」、「スペースハック」、「空間占領」と命名

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道路への愛着を感じてもらい、自分のもののように大切にする。日本ならではの井戸端会議の場としての可能性も含めた、「スローライフロード ボチボチ」

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「Tokyo Graphic Recorder」代表の清水淳子さんによる、圧巻の全体まとめ

All photos by Tomoyuqui HIGUCHI

Public Parklet Japan2017 日本らしい「パークレット」を考えるアイデアソン ソトノバTABLE#16

日時 2017年5月11日(木)19時〜22時
会場 東京大学先端科学技術研究センター 4号館4F 412号室コミュニケーションラボ(東京都目黒区駒場4丁目6番1号)
主催 ソトノバ
企画 ソトノバ・ラボ|パークレットラボ(Public Parklet Japan)
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樋口 トモユキ

樋口 トモユキ

ソトノバ副編集長/修士(建設工学, 都市工学) 建築専門誌の記者から転身、ドラマチックに合流する。愛知県名古屋市出身、東京都中野区東中野在住。東大まちづくり大学院1期生。人々が集まり営む都市というものに対する飽くなき好奇心を胸に、新たな発見を求めて夜な夜な街に繰り出す。キューバ渡航歴6回、東京都公認ストリートライブのライセンスを持つラテンパーカッショニスト。座右の銘は「君子豹変す」。