多摩ニュータウンをちょっと楽しくする実験? DIYでまちを変える「首都大学東京参加型デザイン実習」

まちなかや住宅街にある公園や街路空間。もう少し楽しく使いこなせないかな、と思ったことはありませんか?

特にまち自体が緻密に計画されたり隅々までデザインされている場合、快適に過ごせる反面、完成から時間が経つと当初のデザイン通りでは使いにくくなっていることもよくあります。

そういった都市のソト空間をちょっとだけ良くする実験を首都大学東京の「参加型デザイン実習」という授業でやってみました。

参加型デザイン実習とは?

この授業は、首都大学東京で都市計画やまちづくりを専門としている饗庭伸准教授のもと、2015年から開講しています。筆者もこの特任助教としてこの授業を担当しています。非常勤講師に、ハンズオンアプローチ(手を使って考える)を設計プロセスに取り入れる建築家・アラキササキアーキテクツ(A+Sa)の佐々木高之さん、佐々木珠穂さん、荒木源希さんの3人を迎え、まちづくりと建築の視点両方から授業を組み立てています。

自分たちで都市のソト空間を観察し、そこに何を加えると良くなるか(使いやすくなるか)ということを利用者目線で考え、それを具体的に設計してDIYで製作します。作るだけで終わらず、実際に敷地に2週間設置して、通りがかる人に使ってもらって反応を聞き、さらに改良していくところまで行っています。

建築・都市計画を専攻する学生のほかにも、文系やプロダクトデザイン、都市政策の学生も履修して、デザイナーとしてだけでなく、企画を考えるプランナー、運営を指揮するマネージャーとしての役割も学んでいきました。今年は23名が参加しています。

2016年度参加型デザイン実習は、多摩ニュータウン

今年の参加型デザイン実習は、多摩ニュータウンの中ほど、多摩センター駅から北側に広がる豊ヶ丘地区の遊休施設や商店街の通路、公園などの一画を敷地として住民の方々に利用してもらうことを想定して実施しました。多摩ニュータウンは1960年代、あふれる都心の人口を受け止めるために多摩市や稲城市の丘陵地帯に計画、開発されました。

豊ヶ丘地区と、隣接する貝取地区は第7・8住区と開発期には呼ばれ、1976年に第二次入居がスタートしています。この地区は住宅・都市整備公団(現在のUR都市機構)の集合住宅が特に多く、中低層の団地やタウンハウス、斜面地住宅など、ニュータウン開発の変遷を見て取ることができます。

そこから約40年が経ち、住宅地としては成熟してきましたが、緻密に設計されている計画都市である分、オープンスペースや商業空間のほころびが目立ってきています。

今回、豊ヶ丘地区での拠点として使わせていただいたのは、UR住宅の管理を多く担っている日本総合住生活株式会社(通称JS)の元ショールームで、数年来、遊休施設だった「八角堂」という建物です。

今年の9月から近隣に住む主婦の方がパン屋さんを始める予定になっていて、建物を再び地域にひらこうとしているタイミングということもあって、この授業の発表や作業で使わせていただくことができました。
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前半はまちづくりゲームワークショップ、後半はDIY製作

この授業の前半は、まちづくりゲームを用いたワークショップ形式で、利用者像を想定した計画づくりと、どんな装置をつくるべきかという企画提案をベースに進めました。まず個人で提案づくりをし、学生同士で投票をして選ばれた5案を実際につくることになりました。

後半では、それぞれの案の提案者をプロジェクトリーダーとしてDIYで製作を進めました。製作フェーズでは大工さんの指導も受けながら、ほぼ素人だった学生が自分たちの手で提案を具現化していきました。
公園や公道上への設置に関して、多摩市や所轄の警察署への相談と許可をとり、いよいよ敷地での実証実験です。

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製作1:八角堂万華鏡広場

さて、少し前置きが長くなってしまいましたが、5つの作品を紹介していきましょう。

ひとつ目は、八角堂の軒先と前庭を使った「八角堂万華鏡広場」です。この作品は、八角堂の八角形の平面を万華鏡に見立てた所から着想しています。これから豊ヶ丘地区の地域拠点として再デビューしていくこの建物を、地域の人々に改めて知ってもらい親しんでもらいたいというプロモーションすることを意図しています。

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前庭と歩道の間にある生け垣を乗り越える階段状の橋でアプローチをしやすくし、軒先にはミラーを貼ったプランターを吊るしています。ミラーに映る豊ヶ丘の風景が万華鏡のように変化します。この班は独自にバンド演奏やマジック演技などのイベントも開催し、八角堂の広報に一役買っていました。

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製作2:ハニカムメイロ

八角堂から医者村橋(医院が計画的に集積していることから医者村と呼ばれています)をわたって豊ヶ丘商店街の手前に「ハニカムメイロ」があります。

これは、3枚一組の木枠を開いて六角形平面上に組み合わせて迷路を作っています。木枠にはオーガンジーや黒板や座面を取り付け、子どもたちが自由に付け替えたり、絵を描いたりして毎日遊んでいました。

はじめから子どもたちを主な利用者として想定したので、出来る限り丁寧にヤスリがけをするなど、仕上がりの完成度も高い作品でした。また、この場所は東屋やベンチなどが設えられているのですが、経年でところどころ傷んでいることもあります。利用している人が少なかったのですが、この展示期間に子どもたちが遊んでいると地域の人もベンチに座って眺めるなど、元々の設えの利用率も上がるなど発見がありました。

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製作3:はしやすめ

そのまま商店街を進むと、隣の貝取地区につながる橋が現れます。その手すり部分にカウンター・テーブルや日除けのタープなどを取り付けた「はしやすめ」が3つ目の作品です。

彼らは、橋とその手前の通路の広さと、手すりの未利用状況に注目し、そこがバーカウンターのように使えるよう改良しました。昨年度の作品である「古書書庫」も改めて活用することで、いっときのオープンカフェのような空間を作り出しています。

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9月に八角堂に開店する「moiベーカリー」さんや近隣のクロネコヤマトさんもパンの出張販売やフォトブースを設けてくださり、賑わいに一役買ってくれました

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製作4:コクーン

4つ目は、豊ヶ丘南公園の池のほとりに設置した「コクーン」です。

このチームは公園の緑の豊かさや池のある眺めを、もっとゆったりと感じられるようなデイキャンプサイトをつくることを考えました。そこから、ただタープを張るだけでなく、農業用のべたがけシートという素材を使って、繭のようなチューブを木の間に張り巡らせることで、虫などに悩まされず、くつろげる空間を作りました。

ただ、完成してみると、落ち着きのある場所というよりも、子どもたちが中を駆けまわって何周もするような遊び場になっていましたが(笑)

ときどき、近所のお年寄りが訪れては中に入ってこの地域の思い出話を聞かせてくれるなど、普段だったらそんなに滞在しないような時間の過ごし方が生まれていました。

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製作5:ナイトフラワーパーク

最後に紹介するのは「ナイトフラワーパーク」というプロジェクトです。

この作品だけは展示期間が4日間、しかも夜だけでした。というのも、ペットボトルでつくった500個の花に蓄光塗料を塗り、懐中電灯で照らすことで花が光る、というコンセプトだったからです。

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多摩ニュータウンの、とくにこの住区は歩車分離が徹底しており、街灯の設置計画もきちんと決まっています。それ故、あまり人が通らないところは街灯が少なく、夜は暗い道もあります。

そういった暗い夜道を楽しく安全な道に変える、というある種もっともソーシャル型のプロジェクトでした。

夜間のリサーチの結果、最終的には歩道ではなく豊ヶ丘第五公園を敷地にしましたが、チラシを見てきてくれた親子が三世代で散歩のついでに遊んでいってくれるということが多かったです。

蓄光塗料の強さなど課題はあるものの、これからブラッシュアップを重ねていけば、帰り道に光る花が咲いていて帰宅の安全度が増すというようなプロジェクトに変わっていく可能性があると思わせるものでした。

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いかがでしたでしょうか?

地域の方々からは、片付け時の残置物についてのご指摘があったりと、100点満点ではありませんでしたが、おおむね良い反応をいただけたと思います。

2週間の実験展示のあいだ、一番使ってくれたのは子どもたちでした。突然自分の住む街に現れた家具のような遊具のモノたちを先入観なく遊んでくれました。

それでも、「子どもが集まると大人たちも自然と集まる」というテッパンどおり、遠巻きながらも地域の方々が集まって見てくれ、いくつかおほめの言葉もいただけました。

計画的につくられたまちだからこそ、ライフスタイルや時代の変化にあわせて、ちょっとずつ自分たちで楽しく変えてみる。やってみてから利用者の声を聞いてそれを改善にいかす。DIYでつくれば修正することも自分たちでできます。そうやって少しずつ自分たちのまちの可能性を広げていくことができるのではないでしょうか。

Photo by 参加型デザイン実習

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小泉 瑛一

小泉 瑛一

こいずみよういち 1985年群馬県生まれ愛知県育ち。横浜国立大学工学部建設学科卒業。オンデザイン所属。2015~16年首都大学東京特任助教。宮城県石巻市の草の根的復興まちづくりプロジェクトISHINOMAKI 2.0の立ち上げに参画。まちづくりや参加型でつくる建築のプロジェクトに携わっている。