日本代表はあの遊具! 60カ国の住民に開かれた交流を生む公園「スーパーキーレン」

ソトノバ、コペンハーゲン支部の矢野です。前回の記事(デンマーク発、ホームレスと社会を結ぶ緑のパブリックスペース)に引き続き、現地の気になるパブリックスペースをレポートしていきます。

コペンハーゲンには、ちょっとした都市のスキマを利用してデザインされた大小のパブリックスペースが無数にあります。その中でも最も大きな公園の1つが、ノアブロ地区にある「Superkilen(スーパーキーレン)」。住宅街の間を縫うように南北に広がっています。周囲の環境に埋もれることなく異彩を放つこの公園には、その見た目に負けないほど大胆で夢のあるデザイナーの思いが込められていました。

60カ国の多様な文化を3つのゾーンで受け入れる

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スーパーキーレンのゾーニング Edited by Takumi YANO beasd on Archdaily

住宅街の隙間に詰め込まれたようにつくられたスーパーキーレンは、2012年にオープンしました。全長約700m、南北に伸びるこの公園は、建築デザインオフィスのBIG、ランドスケープデザインオフィスのTopotek 1、アーティスト集団のSuperflexが協働でデザインしています。

この地域には様々な人種が暮らしており、国籍の数は60に上ります。多様な文化が混在するエリアの中で、誰もを受け入れてくれる1つの公園としてスーパーキーレンはデザインされました。

ユニークなデザインとそのコンセプトは世界中から注目を集めており、2013年にはAIA(アメリカ建築家協会)が主催するAIA最高賞に地域都市デザイン部門で選出されました。2016年にはAKND(アガカンネットワークディベロップメント)が主催する、イスラム教が深く関わりかつ社会のニーズに答えた建築プロジェクトに与えられるアガカン賞を受賞しています。

スーパーキーレン最大の特徴は、空間が3つのテーマに分かれており、テーマごとにはっきりと色分けされていることです。それぞれ、どのような役割を持ってデザインされているのでしょうか。

建物と公園を色と素材でつなぐ

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レッドゾーンに隣接するオープンカフェ

街のメインストリートに面したレッドゾーンのテーマは、「マーケット、カルチャー、スポーツ」です。

パークには、カフェなどの店舗やノアブロホールというホールが隣接しており、パークにそのアクティビティがはみ出して風景の一部となっています。ゾーン内の赤褐色のペーブメントは、ノアブロホールのファサードと同化させるように配色され、ペーブメントの素材はホール内と同一のものを使用することでホールとパークを一体化させています。

3つのゾーンを通じて最も大きなスペースの取れる広場は、普段はスケートボードを楽しむ若者が集まります。イベントも頻繁に開催され、異老若男女様々な人が集まります。イベントは地元住民で構成する管理委員会が、住民からの提案を取捨選択したり、自らが企画することで運営されています。

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レッドゾーンに配置された遊具で遊ぶ地元の子どもたち

広場の脇には様々な種類の遊具が設置され、常に地元の子どもたちでにぎわっています。地元の子どもたちが遊具で共に遊ぶ姿を、親はオープンカフェでくつろぎながら見守ります。遊具と広場の間には自転車レーンが通っており、公園内を自転車に乗って横断することができます。公園に遊びに来た人のみでなく、毎日の通勤通学に使用する人からも親しまれている様子が伺えます。

ゆるやかな丘のベンチでくつろぐ「都市のリビング」

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ブラックゾーンのベンチでくつろぐ人々

3つのゾーンの中心に位置するブラックゾーンのテーマは、「アーバンリビングルーム」です。

ゾーン内に配置したベンチやテーブルには様々な種類があり、人々は好みの場所でくつろぎます。バーベキューグリルも用意されており、みんなで集まって食事することも可能です。

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丘の上からブラックゾーンを望む

もともとあった高低差を利用してつくられた丘からは、ゾーン全体を見渡すことができます。前後のゾーンとの連続性を意識させるように南北に走る無数の白いラインは、設置されたストリートファニチャーや設備を避けて描かれており、ゾーン内の各エレメントを強調しています。

スポーツと遊びで国籍や宗教を超える

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様々なスポーツ施設が配置されている

パーク最北端のグリーンゾーンのテーマは、「スポーツと遊び」です。

スポーツや遊びは、国籍に関係なく誰もが決められたルールの中で楽しむことができるものとして、様々なスポーツ施設や遊具が設置されました。一般の住民だけでなく、隣接した学校の生徒が休み時間に遊ぶ場所としても機能しています。

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ゾーンの中を走る自転車レーン

3つのゾーンのうち最も大きな面積を占めるグリーンゾーンでは、歩行者用通路とバイクレーンが蛇行しながらゾーンを幾つかの島に分けてリズムを与えています。夏場はピクニックや日光浴をする人であふれます。

各国からストリートファニチャーをお取り寄せ

スーパーキーレンの中には遊具やテーブル、樹木など多種多様なエレメントがありますが、これには仕掛けがあります。これらのエレメントはすべて、近隣に住む住民の国籍に従って、約60カ国から各国のプロダクトを取り寄せているのです。

すべてのエレメントの近くにはステンレスのプレートが埋め込まれており、プレートにはエレメントの名称と、そのエレメントがどこの国から来たのかが、デンマーク語と現地の国の言葉で刻まれています。

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グリーンゾーンに配置されているプロダクト

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デンマーク語と、原産国の言語の両方で製品名が書かれたプレート

ちなみに、日本人もこの地域に住んでいますので、日本のプロダクトも取り寄せられました。取り寄せられたものは…タコの遊具です!

日本人として見慣れてしまっているこの遊具ですが、改めて考えるとタコをモチーフに遊具をつくるという発想は、海外の人からするととてもユニークに見えるかもしれません。ムスリム系の親子と北欧系の親子が日本の遊具タコで遊ぶ様子は、まさに世界がぐっと近く縮まったかのようでした。

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日本からの遊具「タコ」

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デンマーク語と日本語で「タコ」書かれたプレート

スーパーキーレンは「庭」からコンセプトを得ています。日本庭園のように、庭はある風景の理想版や解釈版あるいは縮小版として表現されることが多々あります。スーパーキーレンは、グローバル化が進む世界の、またはノアブロ地区の縮図として、多様性をありのままに表現していると言えるでしょう。

All photos by Takumi YANO

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矢野 拓洋

矢野 拓洋

建築家/研究者/renu+設立者/IFAS設立者/修士(建築工学) デンマークで建築を中心に活動中。立ち上がった建築単体のみでなくそのデザインプロセスやデザイン教育のあり方、建築周辺の環境について研究しています。