「ストリート・ピクニック」で神田の路地を遊び場に! 身近な場所で起こす小さなアクション

私たちが普段生活していく上で、当たり前のように受け入れていることに対して疑問を投げかけ、例え小さなことでもアクションを起こしていく。もっとこうできたら面白い、楽しくなるということに積極的に挑戦し、自分のものにしていく。

人間のための「場」づくりを目指す建築家として活動している私が、<都市を遊ぶ>ためのそんな思いから提案したのが、今回の「ストリート・ピクニック」です。

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普段は自動車や自転車がいたるところに並ぶ路地空間ですが……

都会のど真ん中でも気軽にピクニックがしたい

ピクニックとは、屋外で簡易的に食事を楽しんだり遊んだりする社交場です(参考:公共空間を遊び尽くそう! ピクニックのススメ)。

昨今では都心部でピクニックといっても、大きな公園や川沿い、山といった自然あふれる場所まで遠出しないといけないという方々が多いのではないのでしょうか。なぜなら、街なかではシートを広げて座りこんだり、飲食したりすることを禁止されている場所が多く、なかなか気軽にレジャーというわけにはいかないからです。

そんな中、「ストリート・ピクニック」は東京都心の千代田区・神田界隈に張り巡らされた路地に注目して、非日常的な「場」をつくることを意図しました。

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1階には食事処やお菓子の出店があるクリエイティブ・シェアオフィス「FUTURE HOUSE lab.」

ピクニック会場に選んだのは、千代田区内神田にあるクリエイティブ・シェアオフィス「FUTURE HOUSE lab.」の前面道路です。

私はこのシェアオフィスの2階に入る「つばめ舎建築設計」で神田を拠点に活動しており、場づくりや都市のあり方を日々模索しています。そこでまずは自分たちの身近な範囲で遊んでみることにしたという次第です。

この道路は私道であり、厳密には一時的な使用であっても行政の許可が必要となるところ、今回は、住民が自主的に実施している、というスタンスで実施しました。すなわち、会場を建物のオーナーが所有する敷地の前面に限定し、かつ近隣住民の方々にも趣旨を説明してピクニックにお誘いするという、ご近所を巻き込んだイベントに仕立てました。使用時には全面をふさぐのではなく、道路上に通行可能な幅員を残すという配慮もしています。

開催日は7月8日。近隣の企業が休みで実施しやすい土曜日を狙いました。

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ストリート・ピクニックを盛り上げるロングテーブルと人工芝

今回使用したピクニック・ツールは大きく2点です。

1つは人工芝(2m×4m×4本)、もう1つは組立式のロングテーブルです。当テーブルは「つばめ舎建築設計」デザインによる、DIYを前提としたものです。ホームセンターで取り扱っている3×6板規格のポーランド産OSB(t=11mm)を3枚重ねたものを脚と梁に使用し、それらをソーホースブラケットで接合しています。また、テーブルの天板は3×6板を半分にカットした450mm幅のものを二重にしています。

1台あたりの横幅が1820mmとなっており、それを横に連結していくことでどこまでも拡張できるようになっています。今回は敷地に合わせて3台使用しています。

周囲には普段オフィス内にある植栽を持ち出してレイアウトしたり、1階の和食割烹「優和ぎ」さんにご協力いただいて、同店で提供しているドリンクの看板を掲示したりといった風に演出しました。

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ピクニックを彩るために、身の回りにあった緑を活用しました

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割烹「優和ぎ」さんのオシャレな看板も使わせていただきました

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テーブルを囲んで、多世代の人々が触れ合えるピクニックの場に

このロングテーブルは、対面して談笑するのに程良い親密さのある距離感を狙って設計しています。見ず知らずの人々が離れることなく、隣り合って座ることができるようになっています。

流しそうめんで会話が弾む

ピクニックにおいて大事なのは、みんなで一緒にごはんを食べたりお菓子をつまみながら話したりすることです。コミュニケーションをとるためのつながりをつくるうえで、「食」は重要な役割を担ってくれます。

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ロングテーブルがつくるソトの食卓

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流しそうめんは、誰でも参加でき盛り上がることができる

ストリート・ピクニックのメインは流しそうめん。直線状のレーンと道路は相性が良く、テーブル上部の梁からレーンを吊り下げることで、テーブルを囲みながら安全に実施できるようになっています。

また面倒な給水はホースのノズルを固定することで、排水はボウルからホースでポンプアップして排水溝に接続することで、それぞれ自動化。手間をかけない工夫も凝らしています。こうした少しの工夫が、なるべく多くの方がコミュニケーションに集中できる環境を整えることにつながります。

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肉そば屋「まる文」さんから頂いたそばとラーメンも流してみました

建物の裏手にある肉そば屋「まる文」さんからはそばとラーメンをいただき、流しそうめんならぬ「流しそば」や「流しラーメン」にも挑戦! 近隣との日頃のコミュニケーション次第で、こういった形でもつながりが生まれます。

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ボードゲームにみんな熱中しています

夕方になり落ち着いてきたあたりで、今度はスイーツやボードゲームの出番です。どちらも当シェアオフィスのメンバーが手掛けたものです。見ず知らずの人々をつなぎ合わせる媒体として、「ゲーム」も有効な手段の一つと言えるでしょう。

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通りすがりや馴染みのない方々が満喫してくれる姿は、うれしいものです

自分たちだけでもピクニックを楽しむことはできますが、知らない人がふらっと立ち寄って気軽に参加できるような雰囲気づくりも街なかでは必要でしょう。

この日も突然いらしてくれた方々が沢山おり、新しいつながりの場になりました。お互いがどんな人か知らずとも、ひとまず食べて、その後でゆっくり触れ合う。それが自然に出来る環境が、街なかにもつくれるようになるかもしれません。

非日常を繰り返して日常に

非日常的な憩いの時間を過ごそうと思っても、現代都市の規制や近隣住民との関係性、周辺環境といった様々な要因から、難しい現状があります。

そのハードルの高さにあえて挑戦し、たとえ小さなアクションだとしても徐々に浸透させていくことで、将来的に当たり前の光景にできるかもしれません。そのためには、この始めたばかりの「ストリート・ピクニック」も、毎月1回定期的に開催したり、近隣住民とだけのピクニックをしてみたりすることが必要になってくるでしょう。

大々的なイベントだと、アクションを起こすのはとても大変です。大事なことは、個々人が自分のできることを、自分のできる範囲で、遊んでみることではないでしょうか。「ストリート・ピクニック」はその一例でしかありません。

もし1人では難しかったり恥ずかしかったりするときは、誰かを巻き込みましょう。そんな人が周りにいない時は、どこかに混ざってみましょう。

一点だけ注意。遊ぶときでも責任は付き物です。周囲の方々にご迷惑をおかけしない準備や配慮を怠らないようにしてください。

もし、身近な場所でできる小さなアクションを連鎖することができれば、都市の風景はこれまでとは全く違ったものになるかもしれません。そんなことを夢見ながら、まずはその第一歩を着実に進めていきたいと思います。

(今回ボードゲーム「TOKYO HIGHWAY」「ハツデン」を提供してくれたittenのウェブサイト)

All Photos by Takuya WAKABAYASHI

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若林 拓哉

若林 拓哉

建築家/ウミネコアーキ代表/つばめ舎建築設計(パートナー) 1991年神奈川県横浜市生まれ。芝浦工業大学大学院西沢大良研究室にて港湾都市や都市の建築について学び、卒業後すぐにフリーランスとして活動を始める。主に建築設計を行う傍ら、様々なヒト・モノ・コト・バを「島」と捉え、越境的に活動・実践している。