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ソトノバ・アメリカ視察をふまえて、日本のタクティカル・アーバニズムを語る!ソトノバTABLE#15レポート

満員御礼大盛況!

やはり「タクティカル・アーバニズム」というキーワードがホットになりつつあるようです。

今回のゲストは、建築家あるいはリサーチャーの榊原充大さん、そして、ソニーコンピュータサイエンス研究所から竹内雄一郎さんです。おふたりとも、今後の都市のありかたや都市での生活を考えるにあたって、建築からすこし離れた専門分野から出発してタクティカル・アーバニズムという概念にたどりついたのがポイント。

ソトノバは2月にアメリカでタクティカル・アーバニズムの先進事例を視察してきました。その報告もふまえて、建築のみを専門としない視点を取り入れつつ、日本のタクティカル・アーバニズムについて語ります。

会場は青山のカフェIKI-BA

話題の”チル”スポット「COMMUNE 2nd」内にあります。このCOMMUNE 2ndの前身が、暫定的な空地の利用事例「COMMUNE246」です。

COMMUNE246およびCOMMUNE 2ndについての記事はこちら

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photo by Suzuna Mikurino

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photo by Ayano Kumazawa

ゲスト紹介1 榊原充大(写真左)

建築家とリサーチャーの間を揺れ動きながら活動中。リサーチプロジェクトRADに参加。グランフロントうめきた広場社会実験調査分析提案、江の子島文化芸術創造センタードキュメンテーション編集、オランダ雑誌翻訳誌「LOG/OUT」出版など。建築やまちづくりに関し、企業、行政、キュレーターからリサーチや相談を請け負う。WEB

ゲスト紹介2 竹内雄一郎(写真右)

ソニーコンピュータサイエンス研究所研究員。デジタルメディアの持つ特徴的な性質が付与された住環境「ハビタブル・コンピューティング」によって、携帯電話の待ち受け画面のようにカスタマイズ可能な未来の建物や、Wikipediaのように皆で編集・改良できる未来都市の実現を目指す。WEB

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photo by Shihona Arai

新たなアクションは、インタラクティブな場づくりから

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photo by Ayano Kumazawa

立見席もでるほどの盛況ぶり。たくさんのご来場、ありがとうございます! はじめは、初対面の方ばかりで表情も硬くなりますよね。 まずは恒例の「ソトノバINN」で場の緊張を和らげます。 「どこからきたの?」「どうしてこのイベントに興味をもったの?」「たとえばソトで、どんなことがしたい?」

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photo by Ayano Kumazawa

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photo by Ayano Kumazawa

2,3人ずつ、お互い自己紹介を交えながら意見を交わしあうことで、会場は一気にインタラクティブな雰囲気に。 「タクティカル・アーバニズム」というキーワードに惹かれ、さまざまな分野やバックグラウンドをもつ方々が集まってきています。この場が新しい出会いをもたらし、なにか面白いことが生まれるきっかけになれたら、それこそ企画側の私たち「ソトノバ」にとっても大変嬉しいことです。

アメリカのパブリックスペース最新事情

会場がほどよくあたたまったところで、まずはコーディネーターの泉山塁威から、2月に訪れたサンフランシスコとニューヨークのパブリックスペース最新事情を報告。

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photo by Suzuna Mikurino

ソトノバアメリカ視察のおもな目的は以下の3点。

・日本でのパブリックスペース・プレイスメイキングの議論の論点整理、混沌の解消 ・パブリックスペース利活用の国際ネットワークの構築 ・日本での常設的パブリックスペースのあり方を考える上でのリファレンス採集 パークレット発祥の地であるサンフランシスコに赴き、パークレットやオープンカフェなど道路空間の活用事例が実際にどのような仕組みで機能し、どのように使われているのか、市役所や住民、企画者、出資者などにインタビューして回りました。

視察報告では、サンフランシスコ市都市計画局やGehl Architects SF studio(元REBAR)、PPS(Project for Public Spaces)、Street Plans Collaborativeなど、アメリカのパブリックスペースに関わる専門家たちにインタビューをしたり、パークレットなどのパブリックスペースの調査をしました。

パークレットについて、詳しくは、ソトノバTABLE#16で!

パブリックスペース活用に関するアメリカの主流思想は3つ

アメリカでのパブリックスペース活用の主流思想は、以下の3つに分けられると分析されました。

Tactical Urbanism きめ細やかな戦術的アーバニズム。

長期的変革のために短期的アクション。実践を広めるために、オープンソースのガイド事例集やデザインガイドを用意する。アイデア構築、プロジェクト化、実験データの検証、学習、また実験…というサイクルを回していき、テストを重ねながらより効果が確実なハード整備やにつなげていく方法。

日本の都市計画はいきなり最後のハード整備から考えていきがち。アクションからはじめること導かれるビジョンがある。すでに数日間レベルの実験プロジェクトはたくさん重ねてきているので、長い実験に移ろうとしている段階ではないか。

Placemaking プレイスメイキング

コミュニティ主導でステークホルダーを作成、プレイスビジョンをつくったうえで実験する。 日本の「PLACE」とは違い、アメリカの「PLACE」は「目的のある場所」を指す言葉であり、意味性が付加されている。場所に目的を与えるプロセスがプレイスメイキングである。

Action Oriented Planning アクション志向のプランニング。

主にヤン・ゲール事務所の若手がこれまでのヤン・ゲールの手法にネーミングや体系化した手法。サンフランシスコのプロジェクトはこの思想で実施しているものが多い。

「メジャー」「テスト」「リファイン」の3ステップをまわすのが基本。まちの人々のニーズの抽出からはじまり、短期的な実験から得た情報を長期的な都市計画案に反映さえていく手法。

具体的な質問が飛び交う

「行政には駐車料金払っているの?(サンフランシスコのパークレットについて。駐車料金は行政が徴収している。)」「申請できる条件ってあるの?(地域の合意形成が条件になっている)」 具体的な質問がさらに具体的な質問を呼ぶように、次々と投げかけられて議論が展開していたのが印象的です。 それだけ実際に行動に移すことに意欲が高まっている現れではないかなと思いました。

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photo by Ayano Kumazawa

まちなかにアクションが広がる「拠点」をつくる

つづいてはゲストの榊原充大さん(建築家/リサーチャー)から、今まで実践してきた京都や乙川でのゲリラ的な活動の事例を紹介していただきました。 ニーズに引っ張られて空間が変わっていくために、アクションが広がっていく拠点をまちなかにつくることを提案。「実際に公共空間を活用するシーンが増やせば、まちの人にも伝わります。」

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photo by Shihona Arai

榊原さんは2009年にGraffiti Research Lab (GRL) Kyoto を企画、荷台にサウンドシステム搭載した遊び道具や、レーザータグなど、まちなかで遊ぶためにオープンソースを使った遊び道具を開発。2週間、トークイベントやパフォーマンス、ワークショップ、飲食店、書籍販売などを盛り込みました。パブリックスペースをハッキングするきっかけをつくりました。

つづく2011年のGRL Kyotoで、活動の拠点となるベースを設置。カジュアルな雰囲気で、いろんなひとがふらっと集まり、ときどき常連になって、次々と新しいプロジェクトが勝手に湧き起こっていくのが面白かったそうです。

アウトプットにまとめてネット上で拡散する

2012年のResearch Storeでは、1か月のあいだ実際に浜松市に滞在することでみえてきたまちの資源や課題を可視化してストック。拠点はややアカデミックな雰囲気で、イベントの際に、ときどきふらっと地元民が立ち寄る程度。主にコアメンバーが主導します。商店街の空き店舗に拠点をつってリサーチを行い、ISSU MAPをつくります。

ウェブサイト上で公開し、スポットをクリックすると、まちにすんでいる人や訪れた人の声がみえるというしくみです。プロジェクトをその場で実践するだけに終わらず、ソーシャルネットワーク上でもアウトプットすることで、効果や手法の拡散性が高まります。

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photo by Shihona Arai

タクティカル・アーバニズムは、個人の欲望から勝手に生まれる

京都には、お金払わないとゆっくりできないというフラストレーションを抱えたひとがたくさんいるそう。まちにいる個人個人が抱えている「やりたい!」という欲望を榊原さんは引き出します。 例えば、橋の欄干の上に天板を置くこの取り組みは、簡単なゲリラ的空間利用であるけれども、規制をクリアしてはいる、合法的な事例です。

「使っていいのかな、というクリアじゃない場所で、こんなことをしても法律上とくに問題はないんだと明らかに示していけば、場所の使われ方が広がっていくんじゃないでしょうか。」

ほかにも、100円ショップで買えるかごをひっくり返してテーブルをつくり、ビール飲む「裏輪飲み」からも、「この場所をこうしたいからやっているんだ」という思いが根底にありました。 実際に公共空間でゲリラ的に発生するハッキングアクションのソースをたどっていくと、個人のニーズが見えてきます。

「パブリックスペースを使わなきゃいけない、というプレッシャーに対して、まちのひとで実際に使いたい、という人がいるでしょうか?でも、酒は飲みたいだろうし、体も動かしたいでしょう。そのような個人的な欲望も大事ではないでしょうか。」

一見「タクティカル(戦術的)」にみえる活動でも、発端はいたってシンプルで、アクティビス本人は、ただやりたくてやっているのだな、という大事な気づきがありました。

サンフランシスコだってIT都市

2人目のゲスト、竹内雄一郎さん(ソニーコンピュータサイエンス研究所研究員)は、ITの分野から未来の都市像を追う中で、タクティカル・アーバニズムという手法に興味を持ったそうです。 『TACTICAL URBANISM』を読んで、一見ただ遊んでいるだけのようにみえるけれど、そうではなく、その裏には公園不足や都市計画の問題など、だんだん大きなことにつながっていく理屈があるんだと気づき、もうこれは、まちづくりのくくりではないんじゃないか、と感じたそう。

「実際に、サンフランシスコだってITのまちです。サンフランシスコがパークレット発祥の地になったのにも、なにか理由なり繋がりがあるんじゃないでしょうか。」

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photo by Shihona Arai

アーバニズムのオンラインメディア化は当然の流れ

竹内さんはこれからのまちづくりのあり方を、Air BnBやUberなどのシェアリングシステムの事例と並べて、ツイッターやオンラインメディアのくくりではないか、と提案します。

「情報発信が特権ではなくなり、拡散する権限が個人に降りてきている時代です。参加型の仕組みが、社会の諸側面に実装されるのは当然の期待で、個人ができることが増えています。都市空間も例外ではなく、必然的にその流れの一端のように思えます。」

アクティビストと都市計画家が出会っていないことにも言及。IT以外にもアートなど、いろんな分野の人が、まちづくりのあり方や、パブリックスペースの使い方に興味を持ちはじめています。今後彼らが出会うきっかけをつくつこともまた重要ではないでしょうか。

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photo by Shihona Arai

パネルディスカッションのあとはソトノバ・ドリンクス

ソトノバTABLEは、パブリックスペースという共通の興味のもとに集まるフラットな場です。毎回、さまざまな業種の方々や意欲あふれる学生たちが集まっては、一期一会の出会いに交流を重ね、お互い刺激を与えあっています。 有意義なディスカッションはもちろんのこと、おいしい料理にも大満足の学生ライター熊澤でした〜。

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photo by Suzuna Mikurino

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photo by Suzuna Mikurino

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photo by Suzuna Mikurino

次回のテーマは「パークレット」

次回のソトノバTABLEは5/11(木)、今回のソトノバTABLEでもたくさんご質問がよせられた「パークレット」がテーマです。 日本でのパークレットのあり方とは何か? 日本らしい「パークレット」を考えるアイデアソンを実施します。 詳細はこちら

JSURPまちづくりカレッジ開講!タクティカル・アーバニズムを学ぶ!

タクティカル・アーバニズムの考え方や戦術などを講師によるレクチャーとグループワークから学び、モデル敷地で実験プログラム、アクティビティ調査を企画、実践を行い、タクティカル・アーバニズムの作法を学びます。タクティカル・アーバニズムスタジオを開講。 全5回とアクションを含めた一連のカリキュラムにより、タクティカル・アーバニズムのサイクル(BUILD-MEASURE−LEARN)を体感し、タクティシャン(タクティカル・アーバニズムを志向し、実践する人)を育てることを目的としています。 http://tacticalurbanism.jp/tustudio2017/ 申込締切は5/12(金)。こちらもふるってご参加ください!

【イベント概要】

期 間:2017年4月25日 19:00~ 会 場:IKI-BA in COMMUNE 2nd 主 催:ソトノバ

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