「パブリックスペースのアクティビティのはかりかた」ソトノバTABLE#11 & ソトノバ忘年会、公式レポート

11回目となるソトノバTABLEのテーマは「アクティビティデザインリサーチ」。パブリックスペースのアクティビティを観察・記録・視覚化するその調査手法は、デンマークの都市デザイナー、ヤン・ゲール(Jan Gehl、Gehl Architects創設者)さんの長年の活動により世界中に広まりました。

彼にゆかりのあるお2人をゲストを迎え、これからの日本のパブリックスペースのアクティビティのはかり方について議論した、2016年最後のソトノバTABLE。その様子をレポートします。

まずは恒例のソトノバ・イン!

最初は周りの人との自己紹介タイム、ソトノバ・イン。今回も行政や民間、大学関係など様々な立場の人が集まっていました。ちなみに参加者の皆さんに挙手アンケートをしたところ、ソトノバを知っている人は100%、毎日見ている人は4人程度と、とてもありがたい結果に!

世界に衝撃を与えた王立芸術アカデミー時代

プレゼンの先攻は、フロントヤード代表の長谷川隆三さん。2000年、デンマーク王立芸術アカデミーに研究生(ゲスト・ スチューデント)として1年間留学し、ゲールさんの元で学びました。「アクティビティが都市を魅力的にする〜コペンハーゲンの物語〜」と題した発表で、当時の体験を振り返ります。

長谷川さんとゲールさんとの出会いは、1990年代に遡ります。最近のパブリックスペース活用の機運の高まりに伴って、日本でも頻繁に取り上げられるようになってきたヤン・ゲールの研究。実は1998年頃に名古屋市が実施したオープンカフェの社会実験の際にも、ゲールさんは来日していました。そこでの出会いがきっかけとなって、彼が当時所属していた王立芸術アカデミーへの留学が実現したそうです。

ゲール門下で学んだ経験を持つ、長谷川隆三さん(写真左)

ヤン・ゲールの最大の功績は、都市部の歩行者空間化の進展に合わせて、継続したアクティビティ調査を実施したこと。

そう長谷川さんは語ります。コペンハーゲン市は当時、段階的に歩行者空間を広げる整備を進めていましたが、寒い気候というのもあって、歩行者空間が増えてもまちなかでのアクティビティは増えないと考えていました。世間一般も都市計画業界もほとんど期待はしていなかったのです。そんな中、ヤン・ゲールは1968年、86年、95年と継続的なアクティビティ調査を実施。歩行者空間が増えるとアクティビティも増える、ということを証明して世界に衝撃をもたらしました。

彼の下に留学した長谷川さん。なんと、着いた翌日にはアクティビティシートを持って調査に加わることに。このアクティビティシート、非常にアナログでざっくりとした調査シートで、そのフォーマットは昔も今も変わっていないそうです。

人のアクティビティが第一。とにかく街にいなさい。

ゲールさんからのアドバイスです。この教えに従い長谷川さんは、連日10時から22時までの間、15分間の交通量計測と15分の休憩、その後歩き回ってアクティビティを記録するという一連の調査を12回(1時間で1セット)繰り返しました。

アカデミーでの授業で印象的だったのは、当時一般的だった人の写っていない建築写真と、アクティビティのある写真を学生に見比べさせ、アクティビティのある空間の方がいかに豊かに感じられるかを学生に説いていたことだそう。王立芸術アカデミー時代のヤン・ゲールの実像が垣間見える、貴重なプレゼンになりました。

インターンから見たゲール事務所の今

次のプレゼンターは、慶應義塾大学大学院修士課程の宮武壮太郎さん。理工学研究科の開放環境科学専攻ダルコ・ラドヴィッチ研究室に所属する宮武さんは、2015年にデンマーク・コペンバーゲンのゲール・アーキテクツ(現在は事務所名が変更しGehlに)へのインターンを経験しました。「How to study public life in Japan、アクティビティの測り方とコペンハーゲンでの経験」というタイトルでの発表です。

インターンのきっかけは、ゲール・アーキテクツとラドヴィッチ研究室が2014年に実施した、東京・自由が丘での社会実験の共同調査。ゲール・アーキテクツでクリエイティブディレクターを務めるデヴィット・シム(David Sim)さんに出会い、半年間の武者修行を決めました。

留学する前、ヤン・ゲールは気難しい人と思っていたという宮武さん。実際にはユーモアたっぷりのお茶目な人で驚いたそうです。インターンを通して気付いたことは、実はゲールさん、「プレイスメイキング」という言葉をあまり好んでいないということ。その理由は、非日常的で特別な場をつくることよりも、街の人々の日常を充実させること自体を大切に思っているからなんだとか。(その様子はビデオメッセージ全文書き起こしをご覧ください)

昨年、ゲール・アーキテクツで半年間のインターンを経験した慶應大学大学院の宮武壮太郎さん

宮武さんは、インターン時に学んだゲール・アーキテクツの最新の調査手法を説明しました。とは言っても、アクティビティ調査は未だに人力・目視で実施しているとのこと。人のアクティビティと空間の関係を読み解き記録するのは、最新の科学技術を持ってしてもまだ難しいようです。

交通量計測は、昔から変わらない手法で、歩行方向で分類したりせずに、単純に属性別にカウント。アクティビティ調査では、定点ではなく記録者が歩き回り通り過ぎた瞬間に、その横で行われていたアクティビティだけを記録するんだとか。

ただ、そこからがゲール・アーキテクツの面白いところ。アクティビティを詳細に分類します。例えば、座るためにつくられた場に座っている場合と、そうでない場合は区別して記録。こうすることで、人々が本当に座りたいと思っている場が分かるようになるのです。

こぼれ話ですが、ヤン・ゲールが日本でアクティビティ調査をするにあたって新しくつくったカテゴリーは、なんと「スマホを見る」! 彼にはスマホを見る日本人が興味深く見えたのかもしれません。日本人は世界に比べ特にスマホを持っている人が多いそうです!

また、街自体のデザインや環境についても評価できる指標をつくり、各地で街の豊かさを読み取っています。

例えば、建物の1階部分のデザインが人の気配を感じられたり、食べ物の匂いを感じられたりするのかを指標に組み込み記録する。こういった考え方やその結果を、行政や民間事業者に示すことで、豊かなパブリックスペースをつくるきっかけを与えているということです。

これから日本で求められるアクティビティデザインリサーチとは?

最後に、泉山編集長が日本のアクティビティリサーチの現状について報告しました。

ヤン・ゲールさんは、日常的なアクティビティを調査対象としているのに対し、日本は非日常的な社会実験中の計測に終始している点を指摘。これに対し長谷川さんは、「そもそも日本のパブリックスペースが貧弱だから、日常的なアクティビティが生まれていないのが原因。歩行者空間のネットワーク化や面的な整備がされないと、これ以上アクティビティは生まれない」と答えました。

また、宮武さんは「社会実験する際は質の高い空間づくりをしないと、良い結果が得られず社会実験で終わってしまう。ゲール・アーキテクツでは、社会実験の空間はその国ごとのデザイナーに依頼し、その街にマッチした質の高い空間を作ることを意識している」とコメント。パブリックスペースを積極的に使いたくなる文化醸成も含めた、社会実験の必要性を指摘しました。

最後はみんなで交流! ソトノバ忘年会

といった感じでだんだん議論が白熱してきて時間も押してきたので、そのまま美味しいご飯とお酒を加えて、ソトノバ忘年会に突入! 議論の尽きない夜となりました。



今回のソトノバTABLEはヤン・ゲールさんを中心とした話題で、アクティビティデザインリサーチについて考える場となりました。参加者の皆さんのお話を聞いていると、さらにその先のリサーチの仕方や、実際にどのように都市整備に落とし込んでいくかまで射程に含めたプロジェクトもちらほら動き始めているようです。アクティビティデザインリサーチについて、まだまだ話は尽きない様子。今後、また同じようなテーマで開催できたらと思う年の瀬でした。

All Photo by Tsubasa Endo

ソトノバTABLE#11 & ソトノバ忘年会!
日 時:2016年12月9日(金)19:00〜22:00
会 場:代官山Bird(東京都渋谷区代官山町9−10 Sodacco 2F)
主 催:ソトノバ|sotonoba.place
運 営:一般社団法人パブリック・プレイス・パートナーズ
企 画:ソトノバ・ラボ「アクティビティデザイン・ラボ」
ゲスト:
長谷川 隆三(フロントヤード) ※元デンマーク王立芸術アカデミー研究生
宮武 壮太郎(慶應義塾大学大学院) ※元Gehl Architectsインターン

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遠藤 翼

遠藤 翼

柏の葉アーバンデザインセンター[UDCK] ディレクター/栃木県出身/自由奔放な家族と自然に囲まれて育つ。大学にて建築学・都市計画を専攻し漁村の空間やコミュニティについて研究。前職では住民参加のまちづくりや公共空間活用を支援、現在はUDCKにて施設企画・地域連携を担当。休日はハンモックとSUPを持ち歩いて、公園や水辺の可能性について模索中(チームメンバー絶賛募集中!)。