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「パブリックスペースで稼ぐ」を一から考える|ソトノバ・オープンゼミ#02レポート

7/30(月)にソトノバ・オープンゼミ第2回が開催されました。ソトノバ学生ライターの熊澤による発案で始まった当ゼミですが、第2回は、第1回のゼミで今後パブリックシーンについて議論したいテーマとして参加者たちから出されたものの中から「経済・収益性・稼げる公共」について取り上げました。参加者は第1回から継続して来られた方、新しく加わった方合わせて、20人程集まりました。

当ゼミでは、各回のテーマに特に興味を持ったメンバーが企画メンバーとして、ゼミの準備をしていきます。今回は、須田さん(東大総合文化研究科文化人類学研究室M2)、片山さん(早稲田大学建築M2)、小林さん(HATCH)の3人が企画し、発表スライドを準備しました。

また、ソトノバ・オープンゼミについての詳細は第1回のレポート記事をお読みください。

この記事では、熊澤とともに運営をしている松本が第2回のゼミの大まかな流れと自分なりの総括をまとめていきます。

ゼミのテーマと構成

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パブリックシーンについて考えを深めていくために、初回で挙げられた今後のテーマ案。(Figure by Suzuna MIKURINO)

今回のゼミのメインテーマは「経済・収益性・稼げる公共」です。今日、様々なパブリックシーンにおいて多くのイベントが行われ、経済性を生み出している事例も多くあるようです。そういった利活用が注目を浴びています。では、パブリックスペースで稼ぐということはどういうことなのでしょうか。そういった単純な疑問から出てきたのが今回のテーマです。

ゼミは2部構成で行いました。

第1部は「どういったパブリックシーンならどういった経済的な価値を生み出せるか」というテーマのもと、4~5人のグループ(A~E)に分かれてディスカッションをしました。

第2部は事例として出てきた道路と公園の2つのグループに分かれてそれぞれの特性を考慮しつつ、具体的に稼ぐということがどういうことかをディスカッションしました。

このレポートでは、第1部と第2部を通して、共通して出てきたキーワードや論点から6つの重要な項目を抽出し、それぞれの視点から総括していきます。

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企画メンバーの須田さん(左)と片山さん(右)。

まず、第1部のオープニングとして、企画メンバーから「パブリックスペースで稼ぐ」ということが具体的にどういったものかを国内・外の事例を企画メンバーが発表。

Ⅰ パブリックスペースで稼ぐ「理由」と「意味」

まず、大事な論点として、なぜパブリックスペースでイベントを行ったり、稼いだりする必要があるのか、どういった理由や意味があるのかをもっと議論するべきだと思います。

ゼミ内でのディスカッションでも数人からこの理由や意味という点についての指摘が見られました。そういった指摘は大きく分けて3種類見受けられました。

稼ぐ理由や目的とは

1つ目は、そもそもなぜパブリックスペースで稼ぐ必要があるのかという指摘です。
一般に考えられるのは、その場所を維持管理するための費用を捻出するということ、その場所を所有する自治体の財政をサポートするためという理由がありそうです。

2つ目は、そのパブリックスペースでのイベントや活用が地域のためになっているのかという指摘です。これは、地域にとって本当に意味があるのかという指摘ともとれると思います。

そもそも地域に望まれているのか、稼ぐとすれば地域に還元されているのか、そして最低限そのパブリックスペースが果たすべき役割を損なってはいないかという点について前もって考えるべきです。

パブリックスペースの最低限果たす役割というのは、例えば公園であれば、市民の憩い・レクリエーションの空間になっていること、緑を感じる場所であること、防災のための空間であることなどが挙げられます。たとえ、稼げるパブリックスペースが実現したとしてもこれらの最低限の役割を失ってしまっては意味はないと筆者は考えます。

また、こうした問いを持つことで、地域が望んでいない、とりあえずイベントをしておこうとか公園でなにか売ってみようという安易な発想はなくなるはずです。

パブリックスペースそのものの「価値」

3つ目は、パブリックスペースでやることにどんな魅力(意味)があるのかという指摘です。この魅力を上手く見つけ、引き出すことが出来たらその活用の仕方はより良いものになるでしょう。そして、パブリックスペースでやるからこその意味が見つかるはずです。

ゼミ内で出た魅力の例としては、外部のパブリックスペースで行うことで、音やにおい、光、活気などが周囲にあふれ出るということ。また、偶発性を生むということです。特定の人間だけを集め、室内で行っている場合と比べると、偶発性を伴った人、コト、場所との新し出会いの可能性を秘めていると言えるかもしれません。

こういった魅力があれば周囲の地域にも良い影響を与えるという意味も生まれるかもしれません。

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本棚のあるオープンカフェ。傍を歩く通行人にその様子があふれ出ている。ローマ・バチカン市国近くの川沿い遊歩道(phoyo by Daichi Matsumoto)

 

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企画メンバーからの事例紹介をきっかけに、参加者から質問や他の事例の紹介などがあがり、議論が広がっていきます。

Ⅱ パブリックシーンにおける「規制」

もう一つ議論で出てきたのは、パブリックスペースで稼ぐ場合には、規制という話が必ず絡むということです。

どう規制と向き合っていくか

特に日本では、商業についての規制は厳しく、たとえば道路の場合、行政と警察という2つの壁を乗り越える必要があるという話が出ました。

一方、興味深い国外の話もありました。アメリカでは、パーキングデイなどのハウツーに代表されるように、民間でできることを調べ、実践して、問題提起、普及啓発する傾向があるということです。日本では、民間企業から許認可を受けることが難しく、行政か商店街、最近ではエリマネ組織が申請し許可を受けることが可能になってきています。

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路上にオープンカフェを出すのにも、諸条件をクリアした上で、様々な手続きが必要。(パリ・モントルグイユ通り:Montorgueil Street)

規制の厳しい日本の現状においても、国外の例のように個人や企業に関わらず民間がパブリックスペースで出来ることを調べ、新しい活動を始めてみるという動きも必要だと思います。もしくは、話題のソニーパークのように、パブリックスペースではなくまずは民間のオープンスペースで新しい動きを試してみるという動きもじわじわと出てきているように思います。

そうした動きを見て、行政が新しいルールを作るなど変わっていく可能性があるかもしれません。新しいルールが出来れば、パブリックスペースで稼ぐということの敷居も低くなるかもしれません。

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学生と社会人を交じえてグループごとにディスカッション。

ここまで話したⅠとⅡの2つの視点は、パブリックスペースで稼ぐという行動に移す前の段階として論ずるべきものだと考えます。
この2つの点を乗り越えることが、パブリックスペースで稼ぐために必要最低限な要項ではないでしょうか。

そして、この後話す残り4つの視点は、ⅠとⅡを乗り越えて、実際にパブリックスペースで稼ぐということを具体的に考える際に持つべき視点だと思います。つまり、実行に移す具体性を持たせる視点だということです。

Ⅲ「評価」する方法

パブリックシーンにおける経済性をどのように評価するのかという指摘がゼミの中でも何度かありました。

たとえば、パブリックスペースで稼ぐという場面が実現したとして、果たしてその経済的な価値は何であろうか、そしてどのように評価すればいいのかという問題です。

単にイベントがもたらした集客量や売上ではないのではないかという意見がありました。というのは、それ以外にも周辺地域にもたらすプラス効果もしくはマイナス効果もあるでしょう。

また、経済的な指標だけでなく、外部経済のことも考慮にいれるべきではないかという指摘もありました。

パブリックシーンの経済性を測るKPIの視点が必要かもしれませんが、そういった視点はまだ確立されていないといえるでしょう。

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入り組んだ現状の制度について、ソトノバ編集長から説明が入るときも。

Ⅳ パブリックスペースを「峻別」する

具体的にパブリックスペースで稼ぐ計画を立てていく上で考えなければならないのが、果たしてそのパブリックスペースで稼ぐことは可能なのかということでしょう。

ゼミ内の議論では、特に公園についての話で出てきた意見ですが、稼げる公園と稼げない公園が存在しているというものです。稼げるか稼げないという言い方は先ほども述べたように、一概にお金を生み出せるかどうかという話ではないかもしれません。

勝てる公園と負ける公園

そこで、勝てる公園と負ける公園という捉え方も指摘されました。この捉え方はこれからの日本の公園の在り方について論じる際に不可欠なものだと思います。

負ける公園というのは、小さな街区公園で地方都市の、もはや遊具やベンチさえも必要のない原っぱになっても良い公園もあるだろうということです。

その公園の立地条件や規模などがその「勝敗」を分ける大きな要因になることは言うまでもないでしょう。

ここで重要なことは、すべての公園が同じような方法で稼ぐことが出来るはずがなく、公園ごとにその将来を地域の住民とともに考えていかなければならないということです。
つまり、公園を峻別して、各々について考えようということです。

これは公園に限った話ではないでしょう。パブリックスペースで稼ぐことを考える際には、まずパブリックスペースを峻別して、稼げる・稼ぐ必要があるものだけを扱うべきだと思います。

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ゼミの後半では、道路/公園の2つのグループに分かれて、パブリックスペースで経済的な価値を生むことが「なぜ」必要なのか、「どうやって」生み出すことができるのかを議論しました。

Ⅴ 「組み合わせ」で稼ぐ

更に具体的にパブリックスペースで稼ぐことを考えていくと、どうやって稼ぐのかという論点が出てきました。

まず、パブリックスペースを選ぶ必要があります。今回のゼミでは、公園と道路が主に扱われました。公園と道路も峻別すれば、様々な種類があるでしょう。
また、その他のパブリックスペースも多く存在します。

これらの中から、場所が選定されたとすると、その場所にあった稼ぎ方があるはずだというのがこの組み合わせという考え方です。

パブリックスペースごとに最も適合する稼ぎ方は異なるということです。当然のことと思われるかもしれませんが、この点について熟慮せず失敗してしまう事例もあるのではないでしょうか。

この組み合わせを考えるところが企画者・運営者のアイデア勝負なのではないかという意見もありました。

筆者もその通りだと思います。一つ一つのパブリックスペースに稼ぎ方の最適解を探ることが重要であり、その組み合わせが成功か失敗かの分かれ道になるでしょう。

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グループディスカッション「公園」班。

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そして、「道路」班。この後に、全体でお互いの意見を共有しました。

Ⅵ パブリックシーンへの「お金のまわり方」

最後は、パブリックシーンに関連するお金のまわり方についての視点です。

ある参加者の発言がとても印象的でした。それは、

「パブリックスペースが、世間のお金のが回る流れの中に入れていないのではないか」

という指摘でした。

この指摘は非常に重要だと思います。この現実の裏には、特に近年の日本では公の場であるパブリックスペースにおいて特定の民間がお金を稼ぐということに抵抗を示してきたという時代の流れがあると思います。

パブリックスペースでお金を稼ぐということ自体を見越した制度や方法論が確立されてこなかったために、こういった多くの問題を抱えていると言えるかもしれません。

実際にパブリックスペースで稼ぐためには、パブリックシーンが上手くお金のまわる流れの中に巻き込まれる仕組みを、様々な面から作り上げていくことが必要なのではないかと感じました。

このⅢ~Ⅵで述べた視点が、実際にパブリックスペースで稼ぐことに具体性を持たせるために必要なことだと思います。

「稼げる公共」から新しい視点へ

以上のように、ソトノバ・オープンゼミ#02を総括してみると、パブリックスペースで稼ぐということに関して様々な視点を持つことが出来ました。

ゼミの議論の中では、印象的な発言がとても多く、参加者にとってはかなり有意義な時間になっているのではないかと実感しました。

この総括もあくまで、筆者自身の視点の分類になっています。参加者のそれぞれが独自の切り口で総括することが重要だと思いますし、そのフィードバックを共有することで思考が深まっていくはずです。

また、TwitterやfacebookなどのSNSを介したフィードバックもお待ちしております!(#ソトノバオープンゼミ をお忘れなく!)

次回は8/23(木)の夜開催、テーマは「コンテンツと稼げる公共」!

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(Figure by Ayano Kumazawa)

次回のテーマは「コンテンツと稼げる公共」です。
組み合わせについての話も出てきたように、稼げる公共を実現するために、どのようなコンテンツが有効と言えるのか、コンテンツを用意する目的など、今回のテーマから関連する部分を引き継ぎながら、より議論を深めるべく、現在学生メンバーが中心となって企画を進めています!

8/23(木)19:00-22:00、場所は東京大学の先端科学技術研究センターにて。
現在、参加応募受付中です!

facebookイベントページはこちら

それではまた次回、さらにより深まった内容でお送りできたらと思います!

【イベント概要】

イベント名: ソトノバ・オープンゼミ#02 パブリックシーンをどうつくるか 視点①「経済・収益性・稼げる公共」
日時: 2018年7月30日(月)19:00-22:00
場所: 東京大学先端科学技術研究センター4号館412
主催: ソトノバ
facebook:  https://www.facebook.com/events/194223667911087/

(Cover photo by Daichi Matsumoto)

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