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ソトノバTABLE

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無音ディスコに路上ラグビー! 初のアクティビティ系企画で開催したソトノバTABLE#12レポート

毎回、ソトに関するさまざまなゲストを迎えてお届けしているソトノバTABLE。これまではどちらかというと、都市計画や建築分野寄り、研究色強めの人選が目立っていました。そこで今回、12回目にして初めてアクティビティ系のテーマでお送りしました。題して、「パブリックスペースを舞台に生まれる新たな体験! 〜ソトを使った新アクティビティ〜」です。

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お招きしたゲストは2人。1人目のゲストは、どんな場所でもフェス会場にしてしまう「サイレントフェス」を企画・運営する、Ozone合同会社の雨宮優さん。そしてもう1人は、道路に敷いた人工芝上で誰でも楽しめる「STREETRUGBY(ストリートラグビー)」の普及に努める大西一平さんです。

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会場の様子。参加者はおよそ15人と程よい規模感でした。今までのソトノバTABLEでは珍しい、音楽系やスポーツ関係の方もいらっしゃいました。

場とコンテンツの組み合わせで「バズる」

まずは雨宮さんの話からスタートです。

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雨宮 優(あめみや・ゆう) 1992年横浜市生まれ。ソーシャルフェスの開発・運用を手掛けるOzone合同会社代表社員。大学在学中にファシリテーターの資格を取得。大手人材会社を経て、サイレントディスコをプロデュースする「Silent It」を個人事業として立ち上げる。クラウドファンディングで資金を確保し、2015年に代々木公園でサイレントフェスを開催。メディアの注目を集める。

「好きなものは、音楽、量子力学、独り旅、ヒッピーカルチャー、浄土真宗」という自己紹介から入った雨宮さん。学生時代はワークショップやチームビルディングに興味があり、教育の場を広げていくために学校をつくろうと思っていたそうです。ただ、学校というもののイメージがあまりにも固定化してしまっていたため、違うアプローチを求めてエデュケーションとエンタテインメントをあわせた「エデュテインメント」にたどり着いたと話します。

2015年からワイヤレスヘッドホンを使った活動を展開し、これまでに屋内はもちろん、公園や森、海、展示場など様々な規模のイベントを開催。その数はすでに50回を超えました。いろんな場所で経験を重ねる中で確立してきた、体験のハードルを下げるためのポイントを、実例を交えて説明していきます。

たとえば、目を引くように場所を光らせてみたり、パレードしながらヘッドホンをシェアして巻き込んでいったり。「外国人は面白そうと思うと近づいてきますが、日本人はまず遠巻きに怪しむ」(雨宮さん)。そうした怪しさを解消してポンと背中を押すために、ビジュアルを格好良くする、サクラを仕込んで盛り上げるなど「やさしい詐欺」しかけるそうです。また、場作りのために「誰かと目が合ったら“ほんのり”笑う」、「頭より心に従う」など、ファシリテーターである雨宮さんらしいルール設定をするそうです。


サイレントフェスのプロモーション映像(動画:Silent It)

そして場所とアクティビティの関係を読み換えるセンスが、雨宮さんの真骨頂です。

たとえば、今年1月に東京・台東区の銭湯で開催したイペント『ダンス風呂屋』では、ライブハウスと銭湯の共通点──ロッカーがある、場を温めることで人がつながりやすくなる──を発見。音楽との掛け合わせで、大勢の集客を実現しました。「場とコンテンツの組み合わせに必然性がある企画は、“バズり”(ネット上で拡散し評判を呼ぶ)ますね」と、雨宮さんは振り返ります。

地域と連携、街に繰り出すラグビー

続いて大西さん。ラグビーファンなら知らない人はいない、1980〜90年代の日本社会人ラグビー黄金期を支えた立役者です。

その大西さんが現在、最も力を入れているのが「ストリートラグビー」の普及活動。依頼があれば全国どこにでも、人工芝を持って駆け付けます。2019年にラグビーワールドカップの日本開催を迎えるにあたり、大勢の人にラグビーボールに触れてもらい、認知を広げていくのが大きな目標です。

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大西 一平(おおにし・かずひら) 1964年大阪府生まれ。一般社団法人STREET RUGBY ALLIANCE副代表理事。中学時代にラグビーを始め、留学を経て明治大学卒業、神戸製鋼に入社。キャプテンとしてチームの日本選手権7連覇に貢献した。引退後は日本初の「プロコーチ」となり、理論的で丁寧な指導を実践してきた。

ストリートラグビーの原型は、トレーニング手法として開発されたもの。プレイヤーは3対3、1分間ずつの前後半、芝生の片端に置いた1カ所のゴールエリアを目指して、攻守が入れ替わりながらプレイします。タックルの代わりに優しくタッチするなど、老若男女、初心者からプロまで一緒に楽しめるようなルールにしています。

2015年7月、東京・日本橋の八重洲さくら通りを会場にして、初めて開催しました。以来、全国各地で開催を重ね、去年末までの参加プレイヤーは延べ7200人以上に。そのうち未経験者は7割以上で事故件数0という実績を誇ります。


「日本橋桜まつり2016」でのストリートラグビー(動画:中央区社会福祉協議会)

開催に当たっては、地域との連携が欠かせません。イベントなどの開催主体からの依頼を受けて、出張するというスタイル。地域の学校をベースにして練習会を開催するなどすることで、イベント前はもちろん、イベントが終わった後もコミュニティが継続するといいます。

「大型グラウンドで構えて待つのではなく、にぎわいのある街に繰り出すことで、ラグビーを身近に感じてもらいたい。地域内のコミュニティを活性化することで、ソーシャルキャピタルの向上にもつながります」(大西さん)

大事なのは「ウェルカム感」

ゲストトーク終了後は、ソトノバから三谷繭子さん、荒井詩穂那さんの2人の副編集長を加えてクロストークです。

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ソトノバから荒井さん(向かって左端)、三谷さんを加えてのトーク。共通の悩みで話が盛り上がります。

個人として「パークキャラバン」の運営に参加する荒井さんは、「人工芝を置くことでテリトリー感が出て、入りづらくなってしまう」と、悩みを明かします。

それを受けて大西さんは、「ただ待っていてもダメ。こちらから働きかける。動物園でストリートラグビーを開催したときのこと、最初はラグビーができる子供たちがそろいのジャージを着てプレイしていたら、まわりの子供がなかなか入って来ない。そこでジャージを脱いで私服に着替えたら、みんな集まりだしました」と、体験談からアドバイス。

雨宮さんは、「パブリックの場所でのコンテンツは、開かれたインターネットみたいなもの。自分が呼ばれているかどうか分からない。こちらはみんなに来てほしいから、大事なのは呼びかけること。ウェルカムなんだよ、と態度で表し続けること」と、心構えを伝えました。

ヘッドホン装着でクラブ空間出現!

トークの後は、ドリンクス。Bird恒例のおしゃれな軽食をつまみながら、参加者同士の会話も弾みます。

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しばらく歓談タイムを過ごしたら、雨宮さんがおもむろにキャリーケースを持ち出しました。中から現れたのは、ぎっしり詰まったワイヤレスヘッドホン!

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キャリーケースに詰め込まれたワイヤレスヘッドホン

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ヘッドホンをつけた人だけ別世界に。機材はiPadに入れたDJアプリとワイヤレス送信ユニットのみ

カフェがあっという間にダンスフロアになってしまう体験に、参加者も盛り上がりました。

次回のソトノバTABLEは、打って変わって「論文発表会」。今後も研究系と実践系のテーマを両輪として、幅広い層にソト使いの楽しさを伝えていければと思っています。

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All Photo by Tomoyuqui HIGUCHI

「パブリックスペースを舞台に生まれる新たな体験! 〜ソトを使った新アクティビティ〜」ソトノバTABLE#12

日時:2017年2月14日(火)19:00-22:00
会場:代官山Bird(東京都渋谷区代官山町9-10 Sodacco 2F)
主催:ソトノバ|sotonoba.place
運営:一般社団法人パブリック・プレイス・パートナーズ
ゲスト:雨宮優さん(Ozone合同会社代表社員)、大西一平さん(一般社団法人STREET RUGBY ALLIANCE副代表理事)

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