「人々のアクティビティ」があふれる場を生み出すために──「パブリック・プレイス・カンファレンス2」レポート

7月30日、一般社団法人国土政策研究会「公共空間の『質』研究部会」(以下、「質」研究部会)が、「パブリック・プレイス・カンファレンス2」を開催しました。昨年に続き2回目となる今年のテーマは、「アクティビティデザインがもたらすパブリック・プレイス」。この「質」研究部会は、都市計画や建築などを専門とした若手のメンバーが中心となり、「暮らしを豊かにする質の高い公共空間」をテーマに研究活動を進める組織です。

今回のカンファレンスでは、これまで「質」研究部会で議論されてきた以下3つのパートの成果発表に加え、それぞれにゲストを迎えたインスパイアトークという構成で進められました。

  • セッション1:TACTICAL URBANISMと戦術的アクティビティデザイン(公共空間活用マネジメント分科会)
  • セッション2:オープンカフェとアクティビティデザイン(公共空間活用アイテムデザイン分科会)
  • セッション3:アクティビティファーストの評価指標(公共空間評価指標分科会)

それでは早速、セッション1の様子から順番にレポートしていきます!

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「タクティカルアーバニズム」を日本に導入するハードルとは?

公共空間活用マネジメント分科会の発表テーマは、「TACTICAL URBANISM翻訳と見えてきた日本の適用可能性」。タクティカルアーバニズムについては、これまでもソトノバで取り上げてきましたが、注目の話題は「日本にどう適用するか?」という点。プレゼンターはソトノバライターでもある荒井詩穂那さん、トークゲストには遠藤新さん(工学院大学建築学部まちづくり学科教授)、松井明洋さん(メディアサーフコミュニケーションズ代表取締役)を迎えました。

荒井さんの発表。「最初は個人が始めた行動を行政が認め、バックアップするようになる動きもムーブメントで終わらないポイントのひとつ」

荒井さんの発表。「最初は個人が始めた行動を行政が認め、バックアップするようになる動きもムーブメントで終わらないポイントのひとつ」

タクティカルアーバニズムの視点に基づくと、日本でもその方法論に当てはまる事例がいくつかあるそうです。例えば、表参道の「COMMUNE246」や池袋の「GREEN BLVD MARKET」、西千葉の「HELLO GARDEN」、横浜の「パークキャラバン」など。底本の翻訳を通して見えてきた、海外の取り組みに比べ日本に欠けているポイントは、以下の2点に集約されるとのことです。

(1) マニュアル作成などによるノウハウの体系化
自分たちの取り組みの成果をマニュアル化し、共有すること。マニュアルを作成する際に重要なのは、親しみやすいデザイン、分かりやすさ、多言語化すること。

(2) 情報共有をするためのプラットフォームづくり
例えばウェブサイトで公開し、様々な人にマニュアルを共有すること。同じ方向性を向いている人たちが良いところを真似たり、情報交換できる場をつくること(ウェブも含む)。

インスパイアトークでは、遠藤さんからサンフランシスコのパークレットについて、松井さんからは表参道のCOMMUNE246の取り組みについてお話がありました。トークセッションでは、各事例ともに、ボトムアップのスタンスで進めていくこと、様々な人が関わっていくことが共通項としてあり、またコミュニケーションの技術やスピードが変わったことで、ビジネスとしての広がりよりも世論のサポートが、各事例やタクティカルアーバニズムのムーブメントを後押ししているという気付きがありました。

工学院大学の遠藤さんのプレゼンテーション。「パークレット普及の動きは、道路を人にとって居心地のいい場所にかえていこうという問いの共有である」

工学院大学の遠藤さんのプレゼンテーション。「パークレット普及の動きは、道路を人にとって居心地のいい場所にかえていこうという問いの共有である」

メディアサーフコミュニケーションズの松井さん。同社は「WIRED CAFE」を運営するカフェ・カンパニーや、ラジオ局のJ-WAVEほかの協力の下、COMMUNE246の運営委託を受けています。

メディアサーフコミュニケーションズの松井さん。同社は「WIRED CAFE」を運営するカフェ・カンパニーや、ラジオ局のJ-WAVEほかの協力の下、COMMUNE246の運営委託を受けています。

ディスカッションの様子。「ボトムアップでどんどん進め、随時起動修正していく」というのが各活動の共通項として挙がりました。

ディスカッションの様子。「ボトムアップでどんどん進め、随時起動修正していく」というのが各活動の共通項として挙がりました。

オープンカフェの可能性を探る

セッション2は公共空間活用アイテムデザイン分科会の成果発表から。プレゼンターは佐藤春樹さん(横河建築設計事務所)、トークゲストは水代優さん(グッドモーニングス株式会社)、櫻井藍さん(株式会社タカハ都市科学研究所)でした。

オープンカフェというのは、実は和製英語。欧米では、オープンカフェの文化が根付いていますが、日本ではまだまだ少ないのが現状です。そこでこの分科会では、道路上にオープンカフェを設置するための道に関するデザインや事例を調査し、オープンカフェを始めてみたい人に向けたガイドラインを作成しているそうです。

佐藤さんの発表。オープンカフェに関する事例を調査・研究・分析して「オープンカフェガイドライン」を作成しています。

佐藤さんの発表。オープンカフェに関する事例を調査・研究・分析して「オープンカフェガイドライン」を作成しています。

ゲストの水代さんからは、浅草の「まるごとにっぽん」内のカフェなど、グッドモーニングスが手掛ける様々な業態のカフェ事業の紹介があり、カフェを通じてまちづくりを手伝うという視点を提示しました。行政や消防と敵対関係になるのではなく、うまく間合いを計りながら、「あらゆる壁と思われるものを扉に変えていこう」という考え方で進めてきた、というお話しが印象に残りました。

水代さんのプレゼン。カフェの企画・運営を通じて地域への経済効果に加え、新しいコミュニティを生んでいます。

水代さんのプレゼン。カフェの企画・運営を通じて地域への経済効果に加え、新しいコミュニティを生んでいます。

櫻井さんからは留学先のコペンハーゲンでのオープンカフェ調査や事例紹介がありました。コペンハーゲンでは調査当時、オープンカフェに関するルールは特段定められていなかったものの、ひとつひとつの店舗を市の職員がチェックしに行き、違反などがないよう市がマネジメントをしていたそうです。

櫻井さんのプレゼン。東京とコペンハーゲンで、椅子ではない二次的な空間としての公共空間アクティビティを調査した内容を報告しました。

櫻井さんのプレゼン。東京とコペンハーゲンで、椅子ではない二次的な空間としての公共空間アクティビティを調査した内容を報告しました。

ディスカッションでは、「オープンカフェで人の居心地のよい空間をつくるために屋外で工夫できることは?」という問いかけが出ました。水代さんの回答は、ハード的な要素として、「目線をずらすこと。緑や水辺などの周囲の環境をうまく使い、気候をポジティブに変えられる場所をつくること」。

セッション2のディスカッション。オープンカフェの鍵を握るのは、パブリックライフを楽しむ「時間」をいかに提供できるか、ということ。

セッション2のディスカッション。オープンカフェの鍵を握るのは、パブリックライフを楽しむ「時間」をいかに提供できるか、ということ。

パブリック・プレイスの評価は「活動の多様性」

セッション3は、公共空間評価指標分科会から園田聡さん(有限会社ハートビートプラン)によるプレゼンテーション。テーマは「まちなか広場賞と評価指標」です。今年7月に札幌で開催された4回目の「全国まちなか広場研究会」大会では、昨年から「質」研究部会の主催で「まちなか広場賞」を選定しています。その評価指標を作成しているのが、こちらの公共空間評価指標分科会です。

園田さんのプレゼン。「都市生活にとって、賑わい≠豊かさではない」

園田さんのプレゼン。「都市生活にとって、賑わい≠豊かさではない」

プレゼンターの園田さんは、これまでになかったアクティビティの多様性を主軸とした空間評価指標づくりのプロセスやポイントを発表しました。パブリックライフの豊かさを測る評価指標では、空間そのものよりも、「そこで何が起きているか」ということが重要。まちのひとたちに自分達の居場所であるという感覚をもってもらうこと、参加ではなく「協働」が大事であるという言葉が印象的でした。

暮らしの受け皿としてのパブリックスペース

西山さんのプレゼン。ここでどんなことが起きたら楽しく暮らせるのか?を試す実験場である「HELLO GARDEN」での実践を語ります。

西山さんのプレゼン。ここでどんなことが起きたら楽しく暮らせるのか?を試す実験場である「HELLO GARDEN」での実践を語ります。

ゲストは西千葉で「HELLO GARDEN」に取り組む西山芽衣さん(株式会社マイキー)。街区の角地にある私有地を開墾し、新しい暮らしの公開実験広場として活用しているHELLO GARDENは、今回の「まちなか広場賞」の特別賞も受賞しています。

自治会やファミリー層を巻き込み、どんどんプレイヤーを増やしていく西山さんのアプローチによって、今では週末にまちの人それぞれが食べたいものを持ち寄ってバーベキューをするようになったり、ピクニックをしたり、畑のものを収穫したりと、自分の生活を楽しくする場として使われるようになっているとの報告に、一同興味深く聞き入っていました。

ディスカッションの様子。「最初にやることを決めるのではなくて、やりながら考え、当事者を増やすことで周囲のマインドも変わっていく」と西山さん。

ディスカッションの様子。「最初にやることを決めるのではなくて、やりながら考え、当事者を増やすことで周囲のマインドも変わっていく」と西山さん。

西山さんが語った重要なポイントは、「まちにとって良いことかどうか」ではなく、「まちに暮らす生活者の『自分』がほしいかどうか」が大事だということ。今ではまちのみんなの場になっているHELLO GARDENも、最初は西山さん自身が欲しい暮らしをつくっていくために始めたそうです。それを地域に見せ続けることで、そのまちでの暮らしのマインドセットを変えていけるということが証明されているように思いました。

最後はプレイス・ドリンクス!

最後は全員で乾杯! パブリック・プレイス・カンファレンスのためのオリジナルのケータリングは、フードユニット「GOCHISO」さん。パブリック・プレイスを盛り上げていこうという若い力と勢い感じる1日でした。

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PUBLIC PLACE CONFERENCE2 ーアクティビティデザインがもたらすパブリック・プレイスー <概要>

日時:2016年7月30日(土)14:00-19:00
会場:Impact HUB Tokyo
主催:一般社団法人国土政策研究会 公共空間の「質」研究部会

(以下敬称略)
セッション1:「TACTICAL URBANISMと戦術的アクティビティデザイン」

  • 公共空間活用マネジメント分科会報告:「TACTICAL URBANISM翻訳と見えてきた日本の適用可能性」 荒井詩穂那(同分科会メンバー/首都圏総合計画研究所研究員)
  • インスパイア1:「サンフランシスコのparklet」 遠藤新(工学院大学建築学部まちづくり学科教授)
  • インスパイア2:「都市における余白 COMMUNE246の場合」 松井明洋(メディアサーフコミュニケーションズ株式会社取締役社長)
  • コメンテーター(同分科会メンバー):荒井詩穂那、泉山塁威、佐藤春樹、西大條晶子
  • コーディネーター:三浦詩乃(横浜国立大学助教/同分科会)

セッション2「オープンカフェとアクティビティデザイン」

  • 公共空間活用アイテムデザイン分科会報告:「オープンカフェデザインガイドラインの製作報告」 佐藤春樹(横河建築設計事務所)
  • インスパイア1:「オープンカフェ空間のデザイン」 水代優(グッドモーニングス株式会社代表取締役)
  • インスパイア2:「海外のオープンカフェのケースタディ」 櫻井藍(株式会社タカハ都市科学研究所)
  • コメンテーター(同分科会メンバー):梅村夏子、木村陽一、佐藤春樹、西大條晶子
  • コーディネーター:泉山塁威(明治大学助教/ソトノバ編集長)

セッション3「アクティビティファーストの評価指標」

  • 公共空間評価指標分科会報告:「まちなか広場賞と評価指標」 園田聡(有限会社ハートビートプラン)
  • インスパイア:「HELLO GARDEN」 西山芽衣(株式会社マイキー)
  • コメンテーター(同分科会メンバー):萩野正和、高野哲矢、圓谷彩永子
  • コーディネーター:園田聡(前掲)

プレイス・ドリンクス


All photograph by Tomoyuqui Higuhi

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三谷 繭子

三谷 繭子

ソトノバ副編集長/Groove Designs/修士(デザイン学)/広島県福山市出身 パブリックスペースを媒介としてまちなかで様々な人が居場所を感じられる場と魅力ある都市空間をつくりだすため、地域支援やプレイスメイキングの実践を行う。地元孝行プロジェクト「備後のギフト」事務局。