パブリックスペース×ペイント=人がつながる居場所─NPOシティ・リペア主催のペイントパーティで生まれ変わったポートランドの交差点─

みなさんは、「車の通らない道路で広々とランチができたら」など、わくわくするような妄想を膨らませたことはありますか?

「ソトでこんなことしていいんだ!」と日本では思いつかなかったことを実現している、ポートランドのVBC(Village Building Coverage)というペイントパーティに2013年に参加したので、紹介をしたいと思います。

ペイントパーティとは、毎年6月頃に開催される交差点をペイントするパーティです。VBCに参加申し込みをした地域の人たち自身が、VBCを運営するNPO City Repairのサポートを受けながら、仲間集め、ペイントデザインの決定、ペイントの購入等準備を進めていきます。当日は地域の人でない人もペイントに参加することができます。

さて、2013年6月のペイントパーティの様子をご覧ください。こちらはポートランド市ブルックリン地区のとある交差点。

Public Space×ペイント=人がつながる場所@Portland from ソトノバ|sotonoba.place on Vimeo.

いかがでしたか?
家の塗装もしたことがない私は、道路空間をペイントできることにまずわくわくしてしまいました。また、ペイント1つで交差点は地域の人がおしゃべりしたり、子供たちが走ったり、はしゃいだりする居場所に生まれ変わっていくのを見ることができたことは、日本ではまだ経験したことがない感動した瞬間でした。

食事も地域の人でだしあって用意がされていました

食事も地域の人でだしあって用意がされていました

自分たちが欲しい空間は、まず形にしてみて周囲の人に魅せること

では、ペイントパーティはどのように始まったのでしょうか。
VBCは、VBCの運営サポートをするNPO City Repairの創立者マーク・レイクマンさんが、1996年当時、一市民として地域の人たちと交差点をゲリラ的にペイントし、地域交流の居場所へと変えていったことが始まりです。道路空間が車中心で、人との交流や何かしらの体験(ストリートパフォーマンスの鑑賞やベンチに座った休憩など)をできる機会が少ないことに疑問を感じたのがきっかけでした。

自分たちが欲しい空間をつくっていくには、行政や社会に対して誰もが具体的にイメージをもてる空間をつくってみせて説明することが必要だと考えたのです。マークさんによる新たな交差点利用について、ポートランド市長の理解もあり、結果1997年には一定の規則のもとであれば交差点をペイントし地域交流の居場所としていくことが法的に認められたのです。そして2001年から毎年このイベントが開催されるようになり、現在までで約40カ所でこのプロジェクトが行われています。

交差点利用の申請許可がおりれば、占用料に費用はかかりません。ペンキは地域の人達で購入。地元のペンキ屋さんがデイスカウント販売してくれるとのこと。

交差点利用の申請許可がおりれば、占用料に費用はかかりません。ペンキは地域の人達で購入。地元のペンキ屋さんがデイスカウント販売してくれるとのこと。

ペイントを通じて、地域の人がこの街をもっと好きになった

交差点をペイントしたことで、何が変わったのか?2013年に現地を訪れた際、地域の人に話を聞いてみました。

まず、ペイントパーティを通じて、近隣の人とのつながりができたことについて、
「今まで隣人がどんな人かも知らなかったのが、ペイントパーティを通じて知ることができて嬉しい」、「毎年ペイントパーティで地域の人が集まり、音楽や食事をしながらペイントして交流の居場所をつくっていけるのが楽しい」といった声を聞くことができました。また「住む場所に、より居心地の良さを感じられるようになった」という話は、実際に現地を訪れ地域の方の様子をみるだけでも共感ができるお話でした。

ペイントのデザインについては、
「ペイントデザインで出したみんなのアイディアが1つになり、この交差点のデザインに反映されているのが嬉しい」、「交差点に描きたい地域のシンボルや大切なものを考えていけたのが面白かった」、「大好きな木をペイントできて嬉しい(子ども)」という声を聞くことができ、考えやアイディアを共有し、形にすることが、場所や地域の愛着にもつながっているのだと感じました。

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最後に交差点の使われ方の変化についても、
「ペイント交差点ができてから、車のスピードが緩やかになった」、「立ち止まる人やペイントデザインにサイクルや波線があると、線にそって歩いたり、サイクリングする人を見かけるのが楽しい」など、日常の交差点利用も変わったことがわかりました。

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自分たちのほしい居場所は、立派なものをつくらなくても、つくりたい人たちで協力しながらつくっていくことができると思えたイベントでした。何より地域の人たちがこのイベントについて話す表情や現地の雰囲気から、ペイントされた場所が地域の人にとって大切な居場所になっていて、愛されていることがとても印象的でした。

こうした空間が実現された背景には、NPOによるペイントパーティの運営支援と、ペイントといった誰もが参加しやすく、「自分たちの手で居場所はつくれる」と感じられる進め方があったからだと思います。

日本でもこういった取り組みができると良いですね。
ペイントパーティが行われるVBCは毎年6月頃に開催されています。ポートランドにいく際はぜひ立ち寄ってみて下さい。
ペイントパーティの開催場所は、こちらのマップに掲載されています。

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根本 春奈

根本 春奈

マーケティングリサーチ会社勤務 千葉大学大学院園芸学研究科地域計画学研究室修了(修士:農学) 幼少期の体験も含め学生時に、外の場所は「公共空間の使い方」次第で楽しい居場所にもつまらない居場所にもなると強く感じ、次第に「いきいきした公共空間」をどう創出していけるかが自身の研究・ライフテーマとなる。 2011年〜2年間、海外の公共空間の使われ方の事例を見るためシアトルへ留学。うち1年は市民主体の公共空間づくりをサポートをするNPOへのインターンで、アラバマ州で5日間現地の人たちと一緒に公共空間作りを行う。 帰国後、いきいきした公共空間創出のためには、どのように公共空間が使われているのか人々の活動から分析、評価するしくみがあればいいのではと考えるようになり、リサーチ業界へ進む。 現在もいくつかの街を対象に、公共空間における人々の活動についての調査を通じて、いきいきした公共空間創出に取り組んでいる。趣味は、山登りや散歩などアウトドア。