都市の隙間で1日限定カフェ! 身近な場所で起こす小さなアクション#2

近年高まりを見せているオープンスペースの利活用。現在私がパートナーとして所属している「つばめ舎建築設計」および同事務所が入居しているクリエイティブ・シェアオフィス「FUTURE HOUSE lab.」では、メンバーと協力して、定期的に東京・神田を中心とした<都市を遊ぶ>ための実践をしています。

先月に続いて提案するのが、今回の「ポップアップ・カフェ」です。(参考記事:「ストリート・ピクニック」で神田の路地を遊び場に!身近な場所で起こす小さなアクション

1

普段はロープが張られていて立ち入ることができない空地ですが…

いつもは使われていない魅力的な都市の隙間をハック!

空地や空き店舗などに一時的に出店し、一定期間で消えてしまう店舗形態をポップアップ・ストアポップアップ・ショップと呼びます。

再開発が日々進展している都心部には、建て替えのために一時的に空地になっていたり更地になっていたりする土地が数多くあります。そういった<都市の余白>を一時利用する手法として、<ポップアップ>は有効手段の一つだと言えます。

そこで東京都心・千代田区の神田界隈に数多くある空地に注目して、小商いの「場」をつくることを意図しました。

2

空地に突如現れたメキシカン・ポップアップ・カフェ

この「ポップアップ・カフェ」の会場は、FUTURE HOUSE lab.に隣接する空地です。

この土地は長らく駐車場として利用されていましたが、つい最近、再開発用地として一時的に空地となっていました。土地オーナーに一時利用について相談したところ、了承を得られたことから、今回のイベントを実施する運びとなりました。

当時、FUTURE HOUSE lab. 1Fにある「KANDA MUSEUM」でメキシコに関する展示を開催していたことから、それに関連するイベントにしたいという意向がありました。そこで、メキシカンな設えとフードを取り扱うメキシカン・ポップアップ・カフェとしました。

開催日は8月5日。今回も近隣の企業が休みで実施しやすい土曜日を狙いました。

テーマはメキシカン、装飾は不要のサンプルを上手く活用

今回の設えは、イベントに際してスイーツやドリンクの販売をお願いした「DAUGHTER BOUTIQUE」の堀川さんが、10年ほど前にメキシコのメーカーから取り寄せたものの、不要になっていたテキスタイルサンプルを再利用しています。

作成したのは大きくテーブルクロスとガーランドの2点です。

テキスタイルの寸法は、サンプルということもあって、200mm×250mmという日本ではあまり馴染みのないサイズ。切り口がメキシコらしく大変ラフな仕上がりだったので、こちらもあまりディテールにはこだわらず、大雑把に仕上げることにしました。

4

メキシコらしく、カラフルで柄のバリエーションが沢山あるテキスタイル

テーブルクロスに用いたテキスタイルサンプルはどれもカラフル。柄の種類も豊富な可愛らしいデザインだったので、組み合わせを多少考えつつ、あとは裏から養生テープで留めるだけの簡易的な施工にしています。

テーブルクロスのサイズは、今回使用したテーブルの寸法である幅1820mm×奥行き450mmに合わせて、幅2000mm×奥行き600mm(8×3枚分)とし、テーブルから少しはみ出すようにしています。

5

ガーランドが色鮮やかに空間を演出してくれます

ガーランドは、2枚のテキスタイルを裏表になるようにスプレーのりで貼り合わせ、二等辺三角形になるようにカッターで切り落としています。サンプルとしてバインダーに綴じられていたので、始めからちょうどよく2口穴が開いており、そこに麻紐を通して全体を1本の長いガーランドとしています。

設置するにあたっては、木材を安定しているフェンスや配管に結束バンドで固定し、先に麻紐の両端と中央部を木材に架けます。そして全体のバランスを整えつつ、ガーランドの個々の位置を決定してホッチキス止めしました。

このようにして殺風景な都市の隙間に色鮮やかな装飾を施すことで、周囲から非常に目に留まりやすくなります。この空地はFUTURE HOUSE lab.が面する裏路地だけでなく、神田駅前のメイン通りにも面しており、さまざまな方向から人を呼び込むことができるようになっています。

カフェのメニューが盛り上がりのキッカケに

ポップアップ・カフェの目玉はやはり「食」。ふだん見慣れないメキシカンなカフェのメニューが、コミュニケーションのキッカケをつくってくれます。お値段もリーズナブル。

6

当日、屋台を活用して販売していた「DAUGHTER BOUTIQUE」のスイーツ

7

ハマイカやカカオラテといったメキシカンなドリンクたち

8

マフィンを大地に見立てたサボテンスイーツと、メキシコビール

先述の堀川さんは、FUTURE HOUSE lab.のメキシコにある姉妹ラボ、「CASA FUTURO Lab.」が主催するワークショップに昨年参加。その時に現地で培ってきた経験を基につくったのが、今回販売したスイーツやドリンクです。

メキシコの大地をイメージしたサボテンクッキーだけでなく、現地で親しまれているハマイカ(ハイビスカスティー)やカカオラテなど、実際に訪れたことがあるからこそ出せるローカリティを身近に体感できるのも「食」の良さではないでしょうか。この日のためにメキシコから取り寄せたビールやワインが場をさらに盛り上げてくれます。

同日はFUTURE HOUSE lab.の食品衛生責任者が同席し、営業許可を取得している料理店および菓子製造業許可を取得している工房があることから、店舗の店先部分としてカフェのメニューを提供することとしました。

9

太陽の切り絵模様がメキシコらしいガーランド

また、同じく堀川さんが昨年メキシコのティファナという都市の市場で購入した、切り絵のようなガーランドも、すべて異なる模様で大変可愛らしいデザインです。日本とは違った文化やデザインに実際に触れて使ってみるというのは、とても刺激になります。

東京都心の神田というビル群の息苦しさの隙間にメキシカンな風を流すことで、非常に大らかな気持ちになれます。この、どことなくインフォーマルで寛容な雰囲気は、神田とメキシコに通じるものかもしれません。大事なのは、普段とは異なる時間を、日々の生活の合間に味わえることではないでしょうか。

10

都市の「隙間」が、建物と建物の間をつなぐ「場」に変身

駐車場よりも、人が集う小商いの場に

今回、これまでにない試みとしてポップアップ・カフェを実施して、その可能性を大きく感じました。それは神田界隈に点在している数多くの空地が通りをつなぐように空いているということ、そしてそのことによって多方向から人の流れを呼び込むことが出来るということです。そして何より、未利用地の有効活用が可能になります。

今回はあくまでトライアルのために1日だけ借りしましたが、これによって経済効果があることを実証できれば、不動産オーナー側も積極的に活用を働きかけることもできます。暫定的にタイムパーキングにしてしまう事例は枚挙にいとまがないのですが、それらはあくまで自動車のための土地利用であって、人間のための空間ではありません。

これまでのオープンスペースの利活用に関する試みは、ボランタリーで経済性が考慮されていないケースが多かったのではないでしょうか。一方で今回の試みは、不動産オーナーの地域貢献を提示しつつ、利用者には少しの負担をお願いすることで、不動産オーナーにとっても住民にとっても、トータルで駐車場より魅力的な空間をつくりだすことに挑戦しています。

もちろん本格的に実装するためには、営業許可関係がそのつど必要になることや、一時利用における不動産オーナー側の管理運営の手間といった課題もあります。

しかしながら、そのひと手間をお互いにかけ合うことによって、その土地や地域は、どんどん価値あるものになっていくことでしょう。顔の見える人間関係を築くことができれば、そのハードルは次第に下がっていきます。

自己の資産価値を高めるという不動産オーナー側の視点と、もっと都市のなかに人間のための空間を増やしていきたいという住民側の視点が交差するところに、この「ポップアップ・カフェ」という試みが一つの可能性として立ち現れるのではないでしょうか。

The following two tabs change content below.
若林 拓哉

若林 拓哉

建築家/ウミネコアーキ代表/つばめ舎建築設計(パートナー) 1991年神奈川県横浜市生まれ。芝浦工業大学大学院西沢大良研究室にて港湾都市や都市の建築について学び、卒業後すぐにフリーランスとして活動を始める。主に建築設計を行う傍ら、様々なヒト・モノ・コト・バを「島」と捉え、越境的に活動・実践している。