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プラザ|広場

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まちの主役を歩行者に変えたニューヨーク市「プラザ・プログラム」のこれまで、これから(前編):ニューヨークから学ぶ街路空間のあり方

ニューヨークにすっかりなじんだ広場の風景。

広場といえば、タイムズスクエアに目が向きがちです。だけど、実はこの9年間、その他にも70カ所以上の広場(プラザ)が市内中に創出されています。はなやかな都心だけではなく、生活に寄り添った場所に集いの場をひろげたことで、本当の意味で、まちの主役が歩行者になってきたのです。

こうしたプラザの整備から利活用の一連のながれを支える、ニューヨーク市交通局の「プラザ・プログラム:PLAZA PROGRAM」は、皆さんご存知でしょうか?

この数年間、動向を追ってきた筆者が、この興味深いプログラムと、整備されてきた多様なプラザについて前・後編でご紹介します。

見つけて楽しい!多彩なプラザ

そもそもプラザって、どういう場所なのでしょう?

いくつか例をあげて紹介します。

地域によって、その空間の質は大きく異なります。
それが面白いところなのですが、次に示す4点をおさえておけば、ニューヨークのまちなかで、ふと出会ったプラザを見逃さずに楽しめますよ!

1.車道や駐車空間、交通島を「プラザ」に
公園、駅、文化施設の近くやメインストリートの交差点は要チェック!

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Broadway,Manhattan:ユニオンスクエアに接する1車線をペイント。滞在できる空間へ。

2.「プラザ」の基本要素は、ブライアントパーク型の可動イス、車止めにもなる植栽鉢や大きな石。

Fowler Square

Fowler Square,Brooklyn:元々あった公園、沿道のカフェと一体的空間に

3.地域の住民や事業者が主体的に、利活用・メンテナンスしています

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Broadway,Manhattan:市内で活動するマーケット運営組織と連携。ウッドデッキを張って居場所に。

Whitehall Plaza

Whitehall Plaza,Manhattan :フェリー乗り場の近くのプラザ、ビーチのような設え

4.路面はペイントで簡単に仕上げ。地域の合意が得られたらグレードアップ。

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Albee Square,Brooklyn :フルトン・トランジットモール沿いに整備 ポップなベンダー、沿道建物をまとめるシンプルなデザイン

Myrtle Ave Plaza

Myrtle Ave Plaza,Brooklyn :民族多様性の強いコミュニティにふさわしい,シンボリックなデザインを採用

小粒の空間にこめられた仕掛けとは?

プラザの8割以上は、日本の街区公園面積の下限(2500㎡)よりも小さい、小粒の空間です。ニューヨーク市では申請すれば、「Block Party」と呼ばれる1街区分の歩行者天国が開催可能ですが、それと同じくらいで、地域になじみのある規模感だと言えます。

一方で、この中でマーケットや演奏・ダンス、キオスク・カフェといったベンダーなどの活動・活用が行われることが原則なので、小さいといっても、大半が500㎡以上の面積を確保しています。プラザの約60%がベンダー、約38%がアート作品について設置済みか計画中で、実際に積極的に取り入れられています。

日本でも、小さなオープンスペースとしてポケットパーク整備が盛んになった時期がありました。しかし、民間開発の残余地や歩道上などに整備された300㎡未満のものが多く、空間像は大きく異なります。

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Broadway,Manhattan :地域によってはアート設置の協定を交通局と結んでいる

さらにこうしたプラザが、まちのどこにつくられてきたのか、調べてみました。

まず土地利用についてみると、商業・業務系エリア:約35%,住宅系:約33%,混合用途系:約19%と,特定の用途にかたよることなく、立地していることがわかりました。さらに、9割が商業施設か飲食店に面していて、住宅地に整備する場合も、商店が並ぶ街路を選んでいるといえます。

つまり、プラザはまちの中でも、住民や来街者が利用するポテンシャルが高い立地を選んでいるので利用度が保たれていて、その様子が来街者をひきよせるという相乗効果をもたらしているのです。

交通の観点からみると、およそ4割がメトロ、8割がバス停に隣接し、公共交通へのアクセス性も高いといえます。また、マンハッタンにあるブロードウェイ、ブルックリンのフルトン通り、ブルックリン/クイーンズのマートル通りのような、各行政区を代表するメインストリート沿いに複数のプラザが整備されています。(調査結果は2014年時点)

これは、ニューヨークのメインストリートならではなのですが、碁盤の目の街区にななめに交差しているためにできてしまう、建築・建設には向かない三角敷地を、うまく利用することにつながっています。

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マンハッタンの碁盤の目の街区に、ななめに交差するブロードウェイ(Google map上に作成)

プログラム形式のすぐれた点

こうしてみると、「うまくいきやすい」場所に優先的にプラザがつくられていることがわかります。そのために、プログラム形式の施策が適しているのです。

そもそも、プラザ・プログラムはPipeline Plazaと呼ばれる(タイムズ・スクエアも含む)、商業地・業務地でのパイロットプロジェクトの成功を経た上での施策です。Pipeline Plazaの成功を目の当たりにした、その他の地域の民間組織に「わたしたちのコミュニティにもつくりたい!」と手をあげさせることで、成り立っています。

申請するには、交通局(DOT)が公開する書類に必要事項を記入し、提出します。

条件として、地元ステークホルダー最低10者からの支援表明を集める必要があり、これによって、利活用段階での合意形成などで、もめるリスクをおさえています。

審査では、オープンスペースが不足した地域(30点分)と、低所得者居住地(10点分)が優先されるとともに、申請者のこれまでのコミュニティでのイニシアチブ発揮(20点分)、管理運営能力への期待(20点分),地域のコンテクスト反映(20点分)の、計100点で評価・採用しています。

交通局のプログラムなので、もちろん、交通の安全・円滑化もあわせて考慮しています。

プログラム形式にすると、やる気と経験がある地域と、交通局が整備をすすめたい条件の場所のマッチングができるのです。

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via Neighborhood Plaza Partnership

すると、「経験があって地域資源もある都心にプラザが集中してしまうのでは??」という疑問がわきますよね?

しかし、ここもプログラムがよく練られている点なのですが、頼りになるサポーターと組むことで、財源や経験のとぼしいコミュニティも手を挙げることができるのです。

「Neighborhood Plaza Partnership」や「ACE Programs for Homeless」といった職業訓練・人材派遣の専門性をもつ非営利組織によって、プラザの運営に必要なスポンサー、プロモーションやイベントに関するマネージャー、ボランティアの紹介,メンテナンスへの人材派遣などが行われています。

「ストリートの理念を変えたい!」-交通局の決意

「プラザは、ストリートと異なる場としてではなく、ストリートとして実現する必要があった。それはこれまでのストリート空間の理念を変えるためだ。ストリートは地域の真の公共空間として機能すべきだ。」
—交通局ピーターソン氏へのヒアリングより

プラザ・プログラムが実現した背景には、人間中心の街路づくりに舵をきった交通局の強い決意があります。

ブルームバーグ前市長のもと、サディク・カーン女史が交通局長に就任したのをきっかけに、プレイスメイキングあるいはパブリック・ライフ研究の観点をもった人材が交通局に入ってきました。J.ゲール氏らや、さきほど述べたPipeline Plazaができた地域での民間組織など、官-民-学の協働体制も築いていきました。こうした変革の顔として、プラザ・プログラムが形づくられたのです。

プラザでのアクティビティの多様性、多様性を確保するための利活用を可能にする制度上の基盤は、2009年にはじめて作成された「Street Design Manual」で整いました。この中で、道路管理者・交通管理者である交通局が,「地域の中心となる公共空間」としてのストリート空間の理念を示し、地域住民のコミュニティ活動への積極的参加(civic engagement)や、来街者が気軽に滞在できるプラザの意義が明確になっています。

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ニューヨーク市交通局「Street Design Manual」

まちへの「効果」をどう捉えればいいんだろう?

さて、プラザ・プログラムを生んだブルームバーグ前市政は、徹底した「データ実証主義」の方針をとりました。ストリートに対する事業を行うにあたり、70年代のリンゼイ市政下ですすめられた歩行者モール計画までも、さかのぼって学んでいるのです。完成したプラザの効果検証も、即座に行われ、その結果をもとに現在もプログラムを継続しています。

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交通局による、経済効果検証レポート

実際、2年ぶりに筆者がニューヨークを再訪すると、都心のプラザ周辺には新しい店舗が続々とオープンしていました。必ずしも、プラザだけの効果ではないですし、ジェントリフィケーションの観点から批判的にみることも必要ですが、新しい風を地域に運び入れているようです。

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Broadwayにて

交通局としては、自ら示したストリート空間の理念を大切にしており、経済的指標にとらわれているわけではありません。

定量的には測れない、「地域の人々の「気持ち」を良い方向に変えるきっかけとなるような公共空間となっているか」が大事なのです。

コミュニティに、プラザのマネジメントを任せることを通じて、結束が強まることや、まちの運営能力を高めることにつなげてほしい、という想いがあり、対話をつづけながらプログラムを運用しています。

後編では、そうしたマネジメントの現在(いま)もわかる、いくつかのコミュニティでのストーリー、そして交通局プロジェクトの最新動向について紹介します!!

主要参考文献・URL
三浦 詩乃 , 出口 敦 : ニューヨーク市プラザプログラムによる街路利活用とマネジメント, 土木学会論文集D3(土木計画学) 72(2), pp.138-152, 2016
New York City Department of Transportation: Street Design Manual, New York City,2013
New York City Department of Transportation:NYC Plaza ProgramApplication Guidelines2014,2014
Neighborhood Plaza Partnership

 

 

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