アフリカでプレイスメイキング! 急成長のナイロビ、開かれたパブリックスペースを目指して

居心地のいい場所づくりの手法として、日本でも注目度が高まっているプレイスメイキング。アメリカやヨーロッパで盛んなプレイスメイキングの動きが、アフリカでも始まっていることをご存知でしょうか?

急成長する大都市では、居心地のいいパブリックスペースが限られてしまいがちなのが世界共通の現象です。そんな中でプレイスメイキングに何ができるのか。東アフリカを代表する大都市、ケニア共和国の首都ナイロビを舞台にした挑戦から考えます。

今、ナイロビでプレイスメイキングが熱い!

2017年11月16日から19日、ナイロビで「プレイスメイキングウィーク・ナイロビ」が開催されました。昨年に続いて2回目となります。

このイベントは、ナイロビ市のバックアップを受けたプレイスメイキング・ナイロビ実行委員会が、ケニア内外の関係者の協力の下に実践しているもので、ナイロビのパブリックスペースに新たな風を吹きこんでいます。

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普段は車であふれるストリートを閉め切り、ペインティングを施した上でサッカーコートに Photo by Placemaking Nairobi

プレイスメイキングウィークでは、ナイロビ中心市街地の道路の一部を閉め切って、ストリートでのサッカーやヨガ、ペインティングといった実験的なソトづかいのアクティビティを展開しました。

会場となったストリートは普段は自動車であふれており、落ち着ける場所ではありません。プレイスメイキングウィークはこの風景を一変させ、老若男女が思い思いに使えるようにすることで、人々が想像もしなかった新しいパブリックスペースの使い方を提示したのです。

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期間限定でポップアップのストリートファニチャーを設置。歩行者のにぎわいを生み出しました Photo by Placemaking Nairobi

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ナイロビで人気が高まるローラースケート。安心してスケーティングできる場所はごく少ない Photo by Placemaking Nairobi

都市開発と車社会化の中での挑戦

普段のナイロビ中心部の様子と比べると、プレイスメイキングウィークで見られたストリートの使い方は驚きの光景です。なぜなら、ナイロビでは市民が自由に使いやすいパブリックスペースがごく限られているからです。ナイロビのプレイスメイキングは、ここに一石を投じる非常にチャレンジングな取り組みといえます。

アフリカ・ケニアと聞くと真っ先にサバンナのイメージを思い浮かべるかもしれません。しかし人口約400万人を抱えるナイロビでは近代的なビルが建ち並び、建設ラッシュのまっただ中にあります。急速に進む都市開発の中で、十分なパブリックスペースの確保が難しい状況があります。

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急速な都市開発と車社会化がすすむナイロビ市街 Photo by Koichiro TAMURA

人口と車の増加も、パブリックスペースの確保を難しくする要因のひとつです。

ナイロビに本部がある国連居住計画(UN-Habitat)の専門家は、市内の移動のおよそ4割は歩行によるもので、自動車の利用より多いにも関わらず、ストリートの空間が車優先のものになっていく傾向を懸念しています。

さらに、治安の悪さも人々をパブリックスペースから遠ざけています。市内中心地に広々としたウフルパークやセントラルパークがありますが、犯罪が起きやすい場所になっています。旅行ガイドブックでは行かないようにと書かれていますし、地元の人でも利用を避けることがあるほどです。

ナイロビの人々は憩える場所を求めている

しかし、このような限られたパブリックスペースの条件の中でも、人々がソトを楽しく使いたいというニーズを見ることができます。

例えば、ナイロビ中心部のオフィス街にある駐車場は、週末には車の利用がなくなるため、2012年ごろからインフォーマルにローラースケート場として使われるようになりました。これはナイロビでは非常に限られた事例ですが、パブリックスペースが少ない中で、家族や通りすがりの人をふくめ、貴重なレクリエーションの場を生み出しました。また、人々がローラースケートをしに集まって場がにぎわうことで、犯罪の抑止になったともいわれます。

この事例が示すように、パブリックスペースが限られている中でも、ナイロビの人々は憩いのために使えるスペースを見つける工夫をしています。こうした人々の潜在的なニーズが、プレイスメイキングウィークの実現を支えていると考えられます。

国内外のプレイスメイカーが連携

このような課題と背景があるナイロビでソトを楽しめる場をより広めるため、ケニア内外のグループがプレイスメイキングウィークをはじめとした実践に取り組んでいます。今年5月には国外の団体も招いたプレイスメイキングについての会議も開催されています。

ナイロビでのプレイスメイキングには、現地のNGO、都市デザイン事務所、アーティスト、大学などが関わっており、ナイロビ市もバックアップしています。いくつかの都市デザイン事務所はヨーロッパやアメリカとつながりがあり、国外のプレイスメイキング事例をナイロビに持ちこんでいます。

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ケニア内外のグループの協力によって実現したプレイスメイキングウィーク・ナイロビ Photo by Placemaking Nairobi

また、全世界の都市の問題を扱う国連機関であるUN-Habitatがナイロビに本部を置いていることも、ナイロビでのプレイスメイキングの動きを後押ししています。さらに、世界的にプレイスメイキングをリードしている非営利団体のProject for Public Spaces (PPS)も、ナイロビの活動にコラボレーションしています。

このように、国内のグループと世界的な組織との間の活発なネットワークの存在が、ナイロビでプレイスメイキングの動きが加速している背景にあると言えるでしょう。

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多国籍のメンバーによるナイロビでのプレイスメイキングに向けた議論 Photo by Placemaking Nairobi

その一方で、一連の活動をリードしているケニア人プレイスメイカーのマーク・オジャルさんは、「ケニアでプレイスメイキングが浸透するためには時間が必要」と指摘しています。

一部には、プレイスメイキングは外国の考え方で、ケニアの庶民のものではないという反応もあると言います。プレイスメイキングウィークのような実験を重ねて、現地にあったやり方にしていくこと、そして分け隔てなく幅広い階層を受け入れるパブリックスペースを実現することがチャレンジとなっています。

インクルーシブな発展に向けたプレイスメイキング

経済格差が大きいナイロビでは、どのような立場の人でも自由に使えて交流できるパブリックスペースを実現することがテーマとなっています。このようにすべての人を取りこぼさないような都市の発展を目指すことは、UN-Habitatが掲げる「インクルーシブな発展」と呼ばれる考え方にもつながるものです。

ダイナミックに変化するナイロビだからこそ、よりよいソトの空間を実現するためにプレイスメイキングに何ができるか、期待がかかっています。それに応えるため、オジャルさんたちナイロビのプレイスメイキングに関わる面々は、継続した取り組みを模索しています。まだ始まったばかりのアフリカ流のプレイスメイキングに向けた挑戦に、ぜひ注目してみてはいかがでしょうか。

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田村 康一郎

田村 康一郎

フリーランス/プラット・インスティテュート プレイスメイキング専攻/ソトノバ・ニューヨーク支部ライター 交通・都市計画のコンサルタントとして、アフリカ、アジア、中東の20を超える国々でのプロジェクトで活躍。人々がより充実した生活を送れる場をつくることを目指して、現在は米国ニューヨークでプレイスメイキング関係の研究と実践に取り組む。宮崎県都城市出身。