【ソトノバ・ピープル】「愛される場所」をつくりたいと思う理由──都市計画コンサルタント 三谷繭子さん

「ソトノバはどんな人が、どんな動機でつくっているの?」

パブリックスペースに関心がある有志が集まって発信する、パブリックスペース特化型ウェブマガジン「ソトノバ」。2015年11月の正式オープン以来、200本を超える記事を配信してきました。1周年記念パーティーの開催に向けて、ソトノバを支えるメンバーにスポットを当てて紹介していきます。

3日目の本日は三谷繭子さん。区画整理を主に手掛ける都市計画のコンサルタント会社で、事業完了後も使い続けられるまちにするための仕組みづくりに取り組んでいます。台東区谷中に住み、地域のイベントにも積極的に関わる三谷さん。実は大学に進学するまでは、地元や地域への愛着を感じたことがなかったと振り返ります。

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── 大学では環境デザインを専攻してますね。

三谷さん 最初は建築志望でした。親の仕事が建築関係だったこともあって。筑波大は4年生でようやく専攻が分かれるのですが、当時は学生が提出した研究テーマを見て、先生が選ぶ形式。その結果、渡先生(芸術専門学群 デザイン専攻 環境デザイン領域(当時)の渡和由准教授)の研究室となりました。

── ちなみにその時の研究テーマは?

三谷さん 「気配」に関する研究でした。居心地の良い建築やまちには、人の「気配感」が欠かせないのではないかという視点です。渡研に選ばれたことによって、いつの間にか自分の興味が、人との関係性に向いていたことに気が付きました。論文にするのは大変でしたが(笑)。今でも自分の中での大きなテーマですね。まちづくりへの興味にもつながっています。

── ソトノバには、どういう経緯で加わることになったのでしょうか。

三谷さん 日本都市計画家協会が主催する「まちづくりカレッジ」で、去年の秋にプレイスメイキングをテーマにしたプログラムがあって。渡先生の所にいたので、プレイスメイキングの概念は知っていた。いい機会だから行ってみるかと講座を受けたら、そこに泉山さんがいて。飲み会で「ソトノバのライターやらない?」と言われて、「いいですね」という流れです。

三谷さんのライターデビュー記事は、米国ポートランドのファーマーズマーケットのレポート。州立大学のキャンパスという「ソト」の使われっぷりを、豊富な写真で伝えました。

三谷さんのライターデビュー記事は、米国ポートランドのファーマーズマーケットのレポート。州立大学のキャンパスという「ソト」の使われっぷりを、豊富な写真で伝えました。

── 実際にライターをやってみてどうですか?

三谷さん 今って個人レベルでは、FacebookなどのSNSでいくらでも発信はできる。でもそうじゃなくて、ライターとしての立場で世の中に発信できる窓口があるというのは、すごくありがたいと思っています。都市計画系ではない友達も読んでくれて、感想をもらえたり。プレイスメイキングの記事を書いたときも、「もやもやと考えていたことが、整理されていてスッキリした!」という反響があったりして。伝えていく役割の責任も感じます。

米国PPSのプレイスメイキングの解説を日本語で紹介した記事。多数のアクセスをいただいた人気記事の一つです。

米国PPSのプレイスメイキングの解説を日本語で紹介した記事。多数のアクセスをいただいた人気記事の一つです。

三谷さん プレイスメイキングに限って言えば、言葉自体がキャッチーだから、なんとなく使われていて実態が良く分からない。それはそれである程度の幅があっていいと思いますが、自分としては良い概念だと思っているので、一過性のブームとして消費されたくないという気持ちがあります。

── プレイスメイキングと「気配」とは、どこか通じるものがありますね。

三谷さん 今の仕事にもつながってくる話ですね。居場所をつくる、というのは単に場所を設えるだけでなく、椅子を出し入れしたりとか、運営の手間をかけてキレイに保つことで、「愛され感」が伝わるようになる。いま手掛けている、区画整理の事業地内に整備する公園のパークマネジメントでも、地域の人が主体的に管理できる仕組みをつくろうとしています。まちへの愛着を育て、個人でもアクションを起こしていきやすいように背中を押すことができればいいですね。

同級生の「地元好き」発言に衝撃

── これからソトノバでやってみたい分野があれば。

三谷さん もう少し「ヒト」にフォーカスした記事もやってみたいですね。「ソト」を活用することで地域の課題を楽しみながらクリアしている様子や、どういう場が育っているか。地域から自発的に生まれた取り組みがアドリブ的に広がって、いろんなことが起こる面白さをインタビューで明らかにして、「あ、自分でもできるんだ」とより多くの人に感じてほしいです。

── 都市計画やまちづくり分野の人の中には、いずれは自分の故郷をなんとかしたい、と思っている方も多いです。三谷さんはどうでしょうか?

三谷さん 私は広島県福山市の出身なんですが、そもそも関東の大学への進学を選んだのは、地元がつまんない、寂れているから離れたい、という気持ちがあってのことでした。その大学時代に衝撃を受けたのが、同期の友達がみんな地元が好きだった、ということ。ナチュラルに「地元、好き!」とか言われて「えっ……」って感じで。みんな地元に興味がなくて離れてくるものだと思っていたので、カルチャーショックでした(笑)。

そういう友達の話がきっかけでよくよく見直してみると、地元にもいいものがたくさんあると気が付くようになりました。社会人になってからは、そういったいいものを探してギフトとして紹介する「備後のギフト」の企画に関わったりして、より愛着を意識するようになってますね。自分を育ててくれた土地でもあるし、これからもっと良くしていきたい。

将来、子供ができたら自分の生まれ育ったまちを好きになってほしい。愛されるまちをつくりたいとか、住んでいる人が楽しいと思えるまちづくりをサポートしたいという気持ちも、そういう思いが関連しているのかもしれませんね。

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ソトノバ・ピープルに会える、11/5の1周年記念パーティはこちら。
「1周年記念パーティ!ソトノバとパブリックスペースの1年を振り返る」ソトノバ TABLE#10

Portrait by Tomoyuqui HIGUCHI

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樋口 トモユキ

樋口 トモユキ

ソトノバ副編集長/修士(建設工学, 都市工学) 建築専門誌の記者から転身、ドラマチックに合流する。愛知県名古屋市出身、東京都中野区東中野在住。東大まちづくり大学院1期生。人々が集まり営む都市というものに対する飽くなき好奇心を胸に、新たな発見を求めて夜な夜な街に繰り出す。キューバ渡航歴6回、東京都公認ストリートライブのライセンスを持つラテンパーカッショニスト。座右の銘は「君子豹変す」。