岡崎・おとがわプロジェクトの仕組みとプロセスを聞いてきた!「おとがワ!ンダーランド2016」インタビューレポート!

先日、「おとがワ!ンダーランド2016」現場レポートを公開しましたが、今回はこの社会実験がそもそも始まった経緯や仕組み、今後の展望をお伝えします!

お話を伺ったのは、この社会実験の運営主体「チーム・おとがワ!ンダーランド」のメンバーのおふたり。NPO法人岡崎まち育てセンター・りた事務局長であり岡崎育ちの天野裕さん(写真左)と有限会社ハートビートプラン代表であり水都大阪を進めてきた泉英明さん(写真右)。

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Photo by 遠藤翼

中心市街地の衰退から生まれたリバーフロント構想と公民連携まちづくり!

そもそも、この社会実験が始まった背景には岡崎市の中心市街地の衰退があります。この一帯は第二次世界大戦後、戦災復興区画整理事業が行われ、これまで昭和的な街並みを残しながら岡崎市の中心市街地として栄えてきました。

しかし、近年、中心市街地にあったショッピングセンターは撤退、国道沿いにショッピングモールができ、徐々に衰退が進んでいきました。

岡崎の中心市街地の外に伸びていく国道1号 Photo by 遠藤翼

岡崎の中心市街地の外に伸びていく国道1号 Photo by 遠藤翼

そのような中、2012年に岡崎市長選が行われ、観光産業都市やコンパクトシティの実現を目指す「乙川リバーフロント構想」を公約に掲げた内田康宏氏が当選。一気にリバーフロント地区と呼ばれるこの一帯のまちづくりが動き出します。

2013年に市は「乙川リバーフロント地区整備基本方針」を策定、2014年にかわまちづくり支援制度(※1)等を活用した「乙川リバーフロント地区整備基本計画」を策定後、国の社会資本整備総合交付金(※2)に申請、採択されました。

※1: かわまちづくり支援制度:地域の資源や知恵を活かし、地方公共団体や地域住民との連携のもとで立案された河川や水辺の整備・利用を行う「かわまちづくり」の推進に対して、河川管理者(乙川の河川管理者は愛知県)が支援するもの(乙川リバーフロント地区「かわまちづくり」計画の内容はこちら
※2:  社会資本整備総合交付金:活力創出や市街地整備等の政策目的を実現するために国から交付される交付金。これにより、国土交通省が所管する個別補助金を一つの交付金としてまとめられ、地方公共団体が自由度高く、創意工夫を活かせるようになっている
かわまちづくり支援制度を活用して整備された船着場 Photo by 遠藤翼

かわまちづくり支援制度を活用して整備された船着場 Photo by 遠藤翼

その後、乙川リバーフロント地区整備基本計画のソフト面強化や民間の動きを取り込んでいくため、2015年に民間主導の官民連携まちづくりに方向転換、「おとがわプロジェクト」が始まりました。

このおとがわプロジェクトの全体コーディネートをしているのがNPO法人岡崎まち育てセンター・りた。「りた」は10年程前に岡崎市図書館交流プラザ・リブラを作る際の市民参加ワークショップのコーディネートに携わり、現在は岡崎市地域交流センターの指定管理業務を請負う等、岡崎市のまちづくりに以前から深く関わってきました。

自分自身が栄えていた中心市街地で遊び慣れ親しんだ最後の世代であることもあり、この機会が中心市街地再生のラストチャンスと思って、このプロジェクトに関わっている。

と天野さんは振り返ります。

多くの市民に利用されている岡崎市図書館交流プラザ・リブラ Photo by 遠藤翼

多くの市民に利用されている岡崎市図書館交流プラザ・リブラ Photo by 遠藤翼

その後、市民を巻き込んだワークショップやシンポジウムを行い、2015年度末に「乙川リバーフロント地区まちづくりデザイン基本構想」が策定され、岡崎公園・乙川河川敷・新たな人道橋・中央緑道・籠田公園・リブラなどを中心に街の魅力と回遊性を高めるプロジェクトが複数提案されました。

なかでも、中央緑道・籠田公園周辺ではリノベーションまちづくり、乙川河川敷ではこの社会実験が先行して行われることになりました。

街にある様々な施設や空間を公民連携で整備したり民間投資を誘発することで、リバーフロント地区全体の魅力や回遊性を高めることを狙う「まちづくりデザイン基本構想」の概略イメージ(筆者作成)

街にある様々な施設や空間を公民連携で整備したり民間投資を誘発することで、リバーフロント地区全体の魅力や回遊性を高めることを狙う「まちづくりデザイン基本構想」の概略イメージ(筆者作成)

なお、乙川河川敷の活用にあたっては、2015年に愛知県が河川敷地占用許可準則に基づく都市・地域再生等利用区域に指定、乙川リバーフロント地区かわまちづくり協議会が一括して占用することで、河川敷での営業活動ができる体制にしています。

河川敷地占用許可準則に基づいて営業活動ができるようになった乙川河川敷 Photo by 奇天烈写真館

河川敷地占用許可準則に基づいて営業活動ができるようになった乙川河川敷 Photo by 奇天烈写真館

この社会実験から得たい2つの狙いとは?

そのような背景を教えてもらったところで、天野さんに今回の社会実験の狙いを伺いました。それはずばり、「河川敷という公共空間の使いこなし(設営オペレーション)の練習」と「日常的な活用促進に向けた魅力的な空間づくりの練習」!

河川敷は増水時に危険な場所となるので、危険と判断される天候になった際、素早くテントやキッチンカーを片付けなければなりません。これは河川敷を活用するにあたって必須となる設営上の対応になります。

実はすぐ撤去できるようになっている会場の什器 Photo by 奇天烈写真館

実はすぐ撤去できるようになっている会場の什器 Photo by 奇天烈写真館

また、橋上から高低差のある河川敷に道行く人々が降りたくなるような空間づくりも重要です。そこで魅力的な空間づくりの練習として、例えばブルーシートの禁止だったりと、店舗のデザインにいくつかルールを定め、出店する際にはしっかり守ってもらうようお願いしているとのこと。

また、岡崎市の山間部で生産されたヒノキの地産材を空間づくりのひとつのアイテムとして多数活用しており、会場で自由に座ったりできる縁台「乙床 -otodoko-」にも使用しています。

河川敷での設営オペレーションと魅力的な空間づくり。この2つを社会実験を通して、着実に確実にできるようにすることが今回の狙いなんだそう。

ヒノキの地産材を使った縁台「乙床 -otodoko-」。座り心地が最高! Photo by 奇天烈写真館

ヒノキの地産材を使った縁台「乙床 -otodoko-」。座り心地が最高! Photo by 奇天烈写真館

地域の方々を巻き込んでつくる日常的なコンテンツづくり!

また、この社会実験で特に大切だと考えていることについて天野さんはこう語ります。

それは、コンテンツを提供してくれる地域の方々と一緒に会場をつくりあげていくこと。なぜかといえば、地域の方々が中心となり継続して河川敷での日常的なコンテンツを提供していってもらいたいから。

実は今回の募集要項は、事前に地域で活動する団体に相談しながら作成していったんだとか。そのように地域の方々を巻き込み、社会実験の趣旨を理解してもらって、出店したい人にはなるべく出店してもらうようにし、それぞれの出店者が試行錯誤しながらひとつの会場をつくり盛り上げていく形で準備を進めていったとのこと(その結果、全34コンテンツが地域の方によって提供されています!)。

また、乙川の水源地でもある額田地域とのつながりづくりも、出店者や市民団体とのやり取りを通じて、木製ガーランドや薪割り体験といった間伐材の有効活用のアイディアが生まれたそうです。

お話を聞いて、こうして実際に実行できているのは地域交流センターの指定管理業務を請負い、日々地域とのつながりを大切にしている「りた」だからこそと感じました。

ちなみに、出店料は上記の趣旨に則って低めに設定しており、広報・宣伝費1,000円+金銭のやりとりある出店者は1,500円/日、もしくは開催期間中通しで9,000円。飲食店はさらに+歩合5%としているとのこと。これは安い!

地域の方々を巻き込んで継続的な河川敷利用を目指している Photo by 奇天烈写真館

地域の方々を巻き込んで継続的な河川敷利用を目指している Photo by 奇天烈写真館

殿橋テラス設置秘話!なかなか難しい河川敷活用!

前回の記事で紹介した、橋に付属する形で河川敷に設置されている殿橋テラス。実は、設置にあたって大変な苦労があったんだとか。

河川は治水上、雨水などをしっかりと下流に流し周囲に氾濫しないことが求められており、一部でも河川の断面が現状よりも小さくなることは好ましくありません(つまりどこか一部でも水が流れる量が減ったり流木がひっかかるような障害物ができると、そこがボトルネックになって氾濫を起こすため)。

そのため、殿橋テラスの設置にあたっては、そのような障害物にならないことを専門家に計算してもらいシミュレーションまでして検証しているんだとか!

一番左の足場をコンクリート製の階段と連結させ基礎代わりにしている Photo by 遠藤翼

一番左の足場をコンクリート製の階段と連結させ基礎代わりにしている Photo by 遠藤翼

また、殿橋テラスの基礎は、堤防を掘削して設置すると堤防の強度が落ちてしまうため、コンクリート製の既存の階段護岸にアンカーを打つことでなんとか設置の許可を得ることができたとのこと。

このお話を聞いて、河川敷活用のハードルの高さを感じたとともに、最も街を変えるポテンシャルのあるこの場所をどうにかしたいという運営者の強い気概も同時に感じました。

また、この社会実験の看板は殿橋テラスと一体でつくられているのですが、上記のとおり殿橋テラスの許可申請にそれなりの時間を要したため、なんと看板を支える柱は道路占用許可を得て道路側に先に設置したとのこと!

かわまちづくり支援制度や河川敷占用許可準則があっても、前例もなく可否の判断が難しい河川空間での常設物の設置は、まだまだハードルが高いのが現状のようです。

一番左にある看板用の柱は道路側に設置するようにしてある Photo by 遠藤翼

一番左にある看板用の柱は道路側に設置するようにしてある Photo by 遠藤翼

社会実験をふまえ目指す岡崎と乙川河川敷の未来とは?

今回の社会実験をふまえて、これからどのように乙川の河川敷を活用していくイメージなのでしょうか。

お話によれば、将来的に治水上の安全性と民間での営業行為の有効性が検証されれば、殿橋テラスや水位上昇の影響を受けないような場所に常設の建築物を建て、そこを河川敷全体の管理運営とセットで民間事業者がマネジメントできるようになったらとのこと。まさにパークマネジメントの河川敷版といった感じ!

近い将来、乙川の河川敷が岡崎の魅力として日常的に利用されるようになると想像するとワクワクしますね。

やはりここは圧倒的にポテンシャルのある場所! Photo by 奇天烈写真館

やはりここは圧倒的にポテンシャルのある場所! Photo by 奇天烈写真館

今回のおとが!ワンダーランドへの取材を通して、岡崎の未来に向けた街の大改革の一端を垣間見ることができました。また一方で、河川敷活用のハードルの高さ等、現状の街の空間づくりに関わるステークスホルダーとの合意形成や事業推進の難しさも見えてきました。

全国的な人口減少の時代において、いかに住み続けたくなるような現代的な魅力を街につくっていくか。これは岡崎だけでなく他の地方都市でも当然のようにこれから求められていくことになります。

そのような中でおとが!ワンダーランドは、地方都市での「現代的な魅力」のつくり方をひとつ提示した挑戦的な取組みといえるかもしれません。

Photo by 遠藤翼

Photo by 遠藤翼

【イベント概要】
おとがワ!ンダーランド 2016

期   間: 2016年7月19日 [火] 〜 9月4日 [日]、コア期間:8月21日 [日] 〜 28日 [火]
会   場: 殿橋から岡崎公園の河川敷周辺
出   展: 音楽、飲食、体験&物販、アクティビティなど34実施
プログラム: プログラムによって要事前予約/有料(詳しくはウェブサイトをご覧ください)
主   催: 乙川リバーフロント地区かわまちづくり協議会、岡崎市
運   営: チーム・おとがワ!ンダーランド
(NPO法人岡崎まち育てセンター・りた、有限会社ハートビートプラン)
ウェブサイト: http://otogawonderland.jp
Facebook: https://www.facebook.com/otogawanderland/
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遠藤 翼

遠藤 翼

柏の葉アーバンデザインセンター[UDCK] ディレクター/栃木県出身/自由奔放な家族と自然に囲まれて育つ。大学にて建築学・都市計画を専攻し漁村の空間やコミュニティについて研究。前職では住民参加のまちづくりや公共空間活用を支援、現在はUDCKにて施設企画・地域連携を担当。休日はハンモックとSUPを持ち歩いて、公園や水辺の可能性について模索中(チームメンバー絶賛募集中!)。