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ストリート|道路空間

白いテープの内側で魅せるまちの表情!岡崎市康生通り・連尺通りの道路空間活用社会実験

ソトノバでは、さいたま市大宮区静岡県沼津市などの道路空間活用の社会実験について、数々の事例を紹介してきました。全国各地で道路空間に対して様々な社会実験が実施されています。

今年の秋に、愛知県岡崎市の「康生通り」、「連尺通り」において、1ヶ月〜2ヶ月の期間にわたり道路空間の社会実験が実施されていました。「康生通り」、「連尺通り」では、昨年にも道路活用社会実験を実施しています。2019年4月の建築ジャーナル「社会実験のつくりかた・つかいかた」では、昨年の連尺通りの社会実験の様子が紹介されています。

今回は、道路空間の中でも特に「歩道空間」に着目し、2つの通りにおける社会実験の様子を紹介するとともに、筆者が感じた道路空間活用の魅力をお伝えしたいと思います!社会実験を検討している方にとって少しでもヒントになれれば幸いです!

執筆にあたり、天野裕さん(NPO法人岡崎まち育てセンター・りた)から社会実験の運営主体である長谷川伸介さん(まちづくり岡崎)、山田高広さん(三河家守舎)、下里杏奈さん(檸檬)をを紹介いただき、お話をお聞きしています。


QURUWA戦略における社会実験の位置づけ

岡崎市では、優れた景観・魅力的な水辺空間を活かした都市空間の創造に関する整備について示した「乙川リバーフロント地区整備基本計画」が2014年度に策定されました。策定以降、「おとがワ!ンダーランド」、「めぐる、QURUWA」等の社会実験を行ってきました。これらの社会実験の成果を踏まえ、平成30年3月には、「QURUWA戦略(乙川リバーフロント地区公民連携まちづくり基本計画)」をとりまとめています。

ソトノバでも、おとがワ!ンダーランドについて現場レポート仕組み・プロセスについて、紹介してきました。

岡崎市が提唱するQURUWA戦略では、中心市街地の乙川を中心としたエリアを「乙川リバーフロント地区」と位置づけ、7つのプロジェクトを推進しています。

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QURUWA戦略における7つのプロジェクト(岡崎市HPより引用)

その1つである道路再構築事業では、乙川リバーフロント地区の回遊性を高めるために岡崎市の集客拠点である「図書館交流プラザ・りぶら」と「籠田公園」をつなぐ3つの通り(康生通り、連尺通り、二七市通り)を位置づけ、岡崎ならではのコンテンツを誘致し、歩いて楽しい沿道景観の形成を目指しています。

今回の「康生通り」「連尺通り」における道路空間活用の社会実験は、道路再構築事業の一環となっています。

この2つ通りは、古くから商店が建ち並び、それぞれの通りには歩道のある道路が整備されています。しかし、現状の自動車交通量、歩行量に対して、当該道路は十分すぎる幅員となっており、社会実験を通して歩道幅員及び車道幅員を縮小し、今の生活やニーズに合う通りのあり方を見直していました。

白いテープの内側に多様な表情を演出!

本社会実験の特徴は、歩道に白いテープで新たな境界を創出し、その内側に多様なまちの表情を演出しているところにあります。

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白いテープで新たな境界を創出 Photo by Takuma OBARA

4m程度ある歩道幅員のうち、2mを最低限の歩行スペースと再定義し、歩道の上に新たに道を作るように白いテープを貼り付けていました。余った部分には商品の溢れ出しや休憩スペース、まちの団欒スペースをつくっていました。

このように、1つの通りの本当に必要な歩行スペースを定義し、通りの賑わいなどに寄与するコンテンツが通りに顔を出していました。

歩道にある白いテープは、社会実験期間中に貼った位置から変わることはありませんが、歩道に創出した溢れ出しは、常時あるわけではなく沿道商店の営業時間やイベント・出店者の有無により位置・内容が毎日柔軟に変化しています。このように白いテープ自体が歩行に支障がなく、社会実験期間中に身の丈にあった改変が可能となっています。

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白いテープの内側に人工芝・休憩スペースを創出 Photo by Takuma OBARA
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白いテープの内側に商店の溢れ出しを創出 Photo by Peso
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社会実験のルールを丁寧に説明 Photo by Takuma OBARA

まちのリビングを創出!康生通りの社会実験

康生通りは、西側を国道1号線に接続し、多くの車やバスが行き交う玄関口としての性格を有しており、多くの商店が軒を連ねています。

康生通りの道路空間活用社会実験は、約1ヶ月間(2019年10月8日〜11月8日)で、白線での歩道幅員制限以外にもパークレットによる車道幅員制限、空き地活用を同時並行で実施していました。

”将来の康生通りを見据え、康生通りにないものをつくっていきたい”

まちづくり岡崎の長谷川さんは、そう話します。

今の康生通りにない休憩できるスペースを白線の内側につくり、駐輪できるスペースや遊べるスペースとしてパークレットを設置し、多様な空間を創出していました。

社会実験のアプローチの特徴としては、将来の道路空間を体感できるような計画を立案・実行し、まちの様子がガラッと変化していました。期間中には、「沿道商店の荷下ろしのスペースがもう少し必要」、「バスの停車帯へのアプローチがもう少し必要」など、康生通りを取り巻く多様な主体からの意見を真摯に受け止めながら、修正しつつ進めていました。

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パークレットでくつろぐ通行人 Photo by Takuma OBARA

生活の場を少しずつ試行!連尺通りの社会実験

連尺通りは、旧東海道に位置し、古くから続く老舗の商店とリノベーション物件など、新旧が入り混じった商店街となっています。

連尺通りの道路空間活用社会実験は、約2ヶ月間(2019年9月20日〜11月24日)実施しています。

”連尺通りで少しずつ生活がみえる場所を、少しずつ自分の庭をつくっていく”

三河家守舎の山田さん、檸檬の下里さんは、そう話します。

連尺通りでは、小さな椅子・机、小さな看板、ちょっとした遊び場など、小さな生活が歩道上に現れていました。

社会実験の特徴としては、初日からまちの風景を変えていません。期間内にいろんな什器を試し、沿道商店主も道の使い方を徐々に試しながら、連尺通りの生活に合うものはどれかと試行を繰り返していました。最終日に連尺通りの将来像が見ることができるかもしれません。

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歩道の小さな遊び場に夢中な親子 Photo by Takuma OBARA
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歩道に配置した机は談笑の場へ Photo by Peso

道路空間活用社会実験を通して感じた魅力

いかがでしたでしょうか?

康生通りでは、まちの将来像を立案し、沿道を行き交う歩行者に将来の康生通りを体感してもらうようなコンテンツを用意し、試行を繰り返していました。

連尺通りでは、まちの将来像をあえて見せず、沿道を行き交う歩行者と一緒になって歩道での過ごし方を試していました。

同じQURUWA戦略に位置づけている事業の一環として実施していた社会実験ではあるものの、各通りで成り立ち・アプローチが異なっていましたが、社会実験で同様の手法を使用していました。

道路空間活用の社会実験は、道路管理者や警察との協議が必要不可欠であり、歩行や自動車交通が十分に機能する中での取り組みは、乗り越えるハードルが多く、制限も厳しいと筆者は感じていました。ところが、今回の社会実験は「白いテープの内側」という実験のスペースをまちにつくり、休憩・団欒スペース、商店の溢れ出しなどを柔軟に魅せ方を変えながら道路空間・生活空間を変えていることに魅力を感じました。

近年、道路空間における社会実験の事例が増えてきていますが、必ずしも他都市で実施した内容が自分たちのまちにあてはまる訳ではありません。まずは道路に小さく実験スペースをつくって、できることから試してみませんか?

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