ソト事例

Example

リバー・ウォーターフロント|水辺

沼辺でSUP&ヨガ!手賀沼で住民主体のヌマベリング

4月14日の日曜日に手賀沼のヌマベでパブリックスペースを活用したイベントが行われました。

こどもたちを手賀沼周辺(千葉県我孫子市)で遊ばせたいと集まった「手賀沼まんだら」という団体が主催しています。ヌマベのパブリックスペースを地域の住民たちが積極的に活用した良いヌマベリング事例だと思い、筆者もイベントに参加してきました。

今回は当日の様子と地域住民で構成される「手賀沼まんだら」について興味深い点をインタビューで明らかにしてきたので、レポートします!

どんなイベント?

今回筆者が参加したイベントは、4/14の日曜日に手賀沼親水公園のミニ手賀沼のすぐ近くのヌマベ(沼辺)で行われました。

主催したのは、我孫子市(千葉県)在住の方々が中心になって構成している「手賀沼まんだら」という団体です。「手賀沼まんだら」については後述しますが、こどもと一緒に地域の共有資源である手賀沼を使いこなそうとしているとても魅力的な人たちです。メンバーは子育て中のファミリーが集まり構成しています。

2
テントやタープ、ハンモックで居場所を演出(photo by 手賀沼まんだら)

今回のイベントの内容は、大きく3つありました。

1つ目は、「手賀沼に漕ぎ出そう!SUP体験」。
ソトノバでも既に紹介されているSUP(スタンド・アップ・パドル)を使って、こどもたちと共に手賀沼に漕ぎ出し、普段は入ることの難しい手賀沼の内側から手賀沼の風景、生き物、植物を観察すること。

3
実際に手賀沼の水面にSUPで漕ぎ出す(photo by DAICHI MATSUMOTO)
4
複数人乗れる大きなSUPで安全性も楽しさもUP(photo by 手賀沼まんだら)


2つ目は、「手賀沼の生き物観察&レクチャー」。
手賀沼の内側で見てきた生き物についてのレクチャーです。手賀沼周辺でこどもに向けて教育活動をされている「自愉企画(西廣さん)」から図や写真を用いたわかりやすい説明が行われ、こどもたちも興味津々でした。

5
手賀沼の生き物についてのレクチャーに聞き入るこどもたち(photo by DAICHI MATSUMOTO)
6
自分たちで捕まえた生き物を観察するこどもたち(photo by 手賀沼まんだら)

3つ目は、「沼辺で行う親子ヨガ」。
親子でヌマベの自然に囲まれながらヨガをして、心と体をリフレッシュしようというもの。ソトでのヨガはやはり気持ち良いものです。みんな楽しそう!

7
親子で一緒に楽しむヨガ(photo by 手賀沼まんだら)

他にもヌマベでタープを張って、こどもたちが遊んだり、大人がくつろいだりできるよう上手に居場所づくりが行われていました。

手賀沼まんだらのメンバーの手作りのお菓子屋、ジュース、コーヒーなどが振舞われたり、イベント参加者もふらっと立ち寄った人も楽しそうにソトを楽しめる雰囲気ができていました。

8
イベント会場の入り口サイン(photo by 手賀沼まんだら)

どうやってイベントが可能になった?

誰でもこのように手賀沼のヌマベで楽しくイベントを行うことができるのでしょうか。

筆者の気になる点の1つでもあったので、手賀沼まんだらのメンバーで今回のイベント開催の中心的役割を担っていた澤田直子さんにインタビューをしながら色々と聞かせていただきました。

今回のイベントで許可申請が必要になるのは、ヌマベのパブリックスペースを一時占用して使用することと、SUPやドローン空撮で手賀沼の水面とその上空、またSUPの乗降のために桟橋を利用することでした。

一体どのような許可申請が必要だったのでしょうか。

今回のイベントで許可申請が必要になるのは、ヌマベのパブリックスペースを一時占用して使用することと、SUPで手賀沼に入っていくことでした。

一体どのような許可申請が必要だったのでしょうか。

『公園の占用許可は、我孫子市手賀沼課に申請しました。イベントのプレゼンをして、市が後援になったので、市の広報や手続きはスムーズでした。

手賀沼の水面の空間使用については、SUPとドローンは千葉県(柏土木事務所)に河川一時使用届を申請しました。SUPは2、3艇なら許可不要ですが、イベントで10艇以上が出るので許可が必要とのことでした。

SUPが入る桟橋は我孫子手賀沼漁業協同組合の持ち物ですが、メンテナンスや日常の使用はNPO法人アルバトロスヨットクラブがしており、我孫子手賀沼漁業協同組合とアルバトロスにイベント説明をし、理事会で諮り、許可をもらいました。

また、イベント当日の安全管理として、消防署にイベント内容説明をし、万が一の際の対応について打ち合わせをしました。』

(インタビューより)

今回のイベントで許可申請が必要となった空間を整理してみます。

1.公園:手賀沼親水広場施設使用等申請(テント設置等)-我孫子市手賀沼課

2.手賀沼水面:河川一時使用届(SUP、ドローン空撮)-千葉県柏土木事務所

3.桟橋:使用許可(SUP乗降)-我孫子手賀沼漁業協同組合(所有者)、NPO法人アルバトロスヨットクラブ(管理者)

やはり行政が管理するパブリックスペースにおいてこのようなイベントを行うには、しっかりと許可申請を行う必要があるようです。水辺は危険が伴いますし、パブリックスペースを占用するので不可欠な手続きだと思います。

ただ、今回の1日のイベントだけでも3つの許可申請が必要だったということは驚きです。多様な管理者がいるヌマベの空間だからこそ、許可申請先も増えてしまうわけです。

澤田さんへのインタビューでは、そういった許可申請をはじめとした企画・運営のお話も伺いました。

『手賀沼のヌマベのパブリックスペースを活用するというのは、今回のイベントが手賀沼まんだらにとって初めてでした。初めてということもあり、手賀沼まんだらの活動について許可申請先にプレゼンをしたり、信頼を頂く必要がありました。いくつかの許可申請が必要でしたが、手続き自体は私の職業上慣れていたこともあり、それほど困ることはありませんでした。しかし、メンバ-は皆、家事や仕事をしている傍らでイベントの企画を行わなければならず、メンバー内での情報共有の難しさやエネルギー・時間を割くことが大変だったという苦労もあります。』

インタビューより

許可申請などの企画・運営のための作業が仕事や家事の合間に活動されている手賀沼まんだらのメンバーの負担になっていたことも事実のようです。手賀沼まんだらには職業上、行政との手続きに慣れている澤田さんのような人材がいることがこのようなイベントを可能にした1つの要因でもあります。他にも、生き物に詳しい方、写真を撮るのが趣味の方など多様な人材がメンバーにいることが手賀沼まんだらの凄いところです!

しかし一方で、行政の後援を得られた手賀沼まんだらだから実現できたイベントとも捉えられます。逆に言えば、行政の後援をとれなければ、ヌマベのパブリックスペース活用はまだ難しいのかもしれません。

このようなヌマベリングが今後増えていくためにはパブリックスペースを管理する行政側に対して、ヌマベリングのような空間活用が公共的なイベントだと示す必要性があるでしょう。さもなければ、行政側もなかなか積極的には動けないのではないでしょうか。

ヌマベのようなパブリックスペースを管理する側と活用する側の関係性については、もう少し議論が必要だと感じます。

「手賀沼まんだら」とは??

今回のイベントの主催者である手賀沼まんだらについて詳しく紹介していきます!

【手賀沼まんだらのポリシー】

『手賀沼まんだらは、子どもが主体の外遊びプロジェクトです。子どもの好奇心が、流域のお宝を見つけてつないでいきます。』

Facebookページより引用)

そのポリシーからも分かるように、手賀沼まんだらは子育てをしていく上で手賀沼を自分たちの住む地域の豊かなあそび場として捉え、様々なソト遊びを行っている団体です。

現在のメンバーは主に我孫子市に住むこどものいる家族で構成されているそうです。

手賀沼まんだらは、ママ友たちの輪から始まる

簡単に手賀沼まんだらができるまでのことをインタビューで聞いてみました。

まずはじめは、両親が共働きなどの理由で休日にこどもをソトに遊びに連れていくことがなかなか難しいと悩んでいた保育園のママ友たちの輪から始まったといいます。

家族の垣根を越えて、みんなでソトにこどもたちを連れていけば、サポートしあいながらそれぞれの家庭の負担も減り、子育てが楽しくなるという思想が共有されているそうです。

たしかにイベント当日も大人全員で家族関係なくみんなのこどもを見守っているという雰囲気があらわれていて、とても良い子育てコミュニティが形成されているなと感じました。

9
仲良くご飯を食べるこどもと大人たち親子で一緒に楽しむヨガ(photo by 手賀沼まんだら)

きっかけはいすみ市へ出かけたアウトドア!

発足当時は「You遊ABIKO」という名前で手賀沼にこだわらず、千葉の他の場所、栃木や茨木など自然豊かなアウトドアが出来る場所へ出かけていたそうです。

しかし、あるきっかけが手賀沼にフォーカスを当てた活動へとシフトチェンジさせたといいます。

それは、千葉県いすみ市へアウトドアで出かけた時です。行政と住民が一体となり都心部からの移住者の誘致などを積極的に行って、1人1人の住民が地域を愛し、小商いなどでまちを楽しみながら暮らしているいすみ市の様子を見たこと。そして、実際にいすみの方から次のような意見をもらったことが大きなきっかけになったそうです。

『どうして手賀沼みたいな立派な地域の共有資源があるのに、他の場所に遊びに来るのか?もっと自分のまちを面白く使えるのでは?』

このアドバイスをもらった時に、自分たちも子育てをしながら、自分の地域の手賀沼を使えばもっと楽しくできるのではないかと感じ、現在の手賀沼まんだらへと変化していったのです。

手賀沼に秘められたポテンシャル

実際に手賀沼まんだらとして子育てで手賀沼を面白く使う際に、どうすれば良いのか。

長い間、地域の共有資源であり続けた手賀沼の周辺には、手賀沼の鳥や水生生物、植物や水質保全、漁業などに関連して様々に活動するNPOなどの団体がいるという点にそのヒントがありました。

手賀沼まんだらのメンバーであるこどもたちがNPO団体の活動に参加し、手賀沼のことを考えているたくさんの大人たちと一緒に活動してもらうことで教育かつ、楽しくソト遊びをすることが1つの大きな方針だといいます。

10
手賀沼まんだらの他の活動の様子(photo by 手賀沼まんだら)


地域の既存ストックであり、みんなの共有資源である手賀沼とその周りで活動している様々な地域住民と自分たちのこどもを関わらせることの重要性と可能性を見出して実践していることが手賀沼まんだらの素晴らしさだと思います。

そして、そういった関係性・結びつきを大事にするということが手賀沼まんだらのネーミングに込められた想いでもあるのです。

手賀沼には豊かな自然・水場としてのポテンシャル、地域の人々をつなぎ合わせる共有資源としてのポテンシャルがあるのでしょう。

今回のイベントのようにそのポテンシャルを上手く引き出す活動が住民主体で起こっているというのが非常に重要な点だと思います。

11
我孫子市「水の館」からみた手賀沼(photo by DAICHI MATSUMOTO)

住民主体のヌマベリングにむけて必要なことは?

実は筆者も所属する大学の研究室において、手賀沼のヌマベ活用の社会実験を昨年11月に行いました。(https://sotonoba.place/tegamuma

大きな目的は、長年日本一汚い湖畔として住民との距離が遠ざかっていた手賀沼と住民の距離を近づけて、その魅力を再認識してもらい、手賀沼をまちの共有資源として活用していってほしいということでした。

そういった大学や行政主体の社会実験を伴ったヌマベリングも有意義なものですが、手賀沼まんだらのように住民主体となってヌマベのパブリックスペースを活用するヌマベリングが実現したということは非常に重要なことです。

こどもたちが遊びという点から手賀沼に触れることで自分ゴトとして手賀沼について考え、将来、自分のまちについて考えるきっかけになるのではとメンバーの1人がおっしゃっていたことも印象深く、重要なポイントだと感じました。

子どもたちがヌマベで泳ぐことを目指して

手賀沼まんだらが目指す最終的な理想は、かつてのように手賀沼でこどもたちが泳ぐ光景を取り戻すことだと澤田さんもおっしゃいます。

そのためには、水質の更なる改善や安全性の確保など様々なハードルが待ち受けているでしょう。しかし、そういった夢のような大きな目標をもって、手賀沼まんだらのようにこれから手賀沼のことを考えていくこどもたちを巻き込んで、楽しく手賀沼を活用しようという動きがあることは手賀沼とその周りのまちにとってとても重要です。

まずは、手賀沼はこんなに使って楽しい場所なんだと示すことが大切で、今回のヌマベリングがその一歩になるのではないかと思います。実際に住民が活用しなければ、管理する行政も使いづらいように整備したりしてしまう恐れがあります。そうなってしまうと、ますます手賀沼と住民の距離は離れていってしまう一方です。

12
ヌマベの堤防を使いこなすこどもたち(photo by 手賀沼まんだら)

まずは住民主体の動きや自分ゴトで一緒に考える場から

こどもたちを中心に手賀沼とそのヌマベを使いこなす住民主体の動きが出てきて、まちの人で手賀沼とまちについて考えていくことができるようになるのが最初の目標になるだろうと思います。
しかし、現状ではまだまだ許可申請のハードルが高かったり、そもそも行政はこういったヌマベ活用について消極的だったりします。

周辺に住む住民はもとより、手賀沼を共有する千葉県や孫子市と柏市の行政も手賀沼を活用したまちづくりに積極的な姿勢を見せることもが必要になるでしょう。

手賀沼まんだらは今回のようにヌマベのパブリックスペースを使った取り組みは初めてということでした。許可申請などの手続きや資金繰りなど、手間をとってしまうこともあり、今後も1年に1回くらいのペースで続けられればと澤田さんもおっしゃっていました。

大きな目標をもって持続可能なスケールのイベントを断続的に行い、パブリックスペースを活用するこのような取り組みは、タクティカル・アーバニズムとも読み取れると思いますし、他にもどんどん手賀沼周辺のヌマベを使い倒す住民が出てきたらより面白くなりそうです!

自分たちも関わるまちとして、手賀沼のヌマベには今後も注目していこうと思います。

13
ソトでのインタビューの様子(photo by DAICHI MATSUMOTO)

Twitter

Facebook

Google+