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3,500の庭でのティータイムが寄付に!90年続くイギリスのオープンガーデン

こんにちは!こちらイギリスでは、初夏を迎える5-7月が1年で最も過ごしやすい時期です。

この時期、チェルシー・フラワー・ショー(RHS Chelsea Flower Show)をはじめ、美しい花を愛でるイベントが多く開催されているイギリスですが、プライベートガーデン(個人の庭) を有料で一般公開し、その収益を慈善団体に寄付する取り組みがあることを知っていますか?

2017年に開催90周年を迎えた 「National Garden Scheme」。

筆者は、今回実際にスタッフとして参加しました。その様子を紹介したいと思います。

National Garden Schemeとは

「National Garden Scheme」とは、計3,500ものプライベートガーデンを有料で一般開放し、その収益(入場料、飲食代など)を慈善団体に寄付する取り組みです。

その歴史は古く、1927年に The Queen’s Nursing Institute (QNI) のメンバーである エルジー・ワッグによって「個人の庭を公開し、地域の看護事業のための基金に充てる」といったアイデアが提案されたのが始まりです。

1928年に開催された「第1回 National Garden Scheme」 では、609のガーデンが公開され、8,191ポンドを集めました。

現在では、「Macmillan Cancer Support 」や「Marie Curie」 といった大きな慈善団体も参加し、収益金の寄付先となっているほか、チャールズ皇太子もパトロンのひとりです。

これまでに5,500万ポンドもの金額が寄付されており、昨年は過去最高の年間寄付額(310万ポンド)を記録しました。

公開されるガーデンの種類はさまざま!

「National Garden Scheme 」で一般公開されるのは、いわゆる自宅のガーデンのほか、宮殿のガーデン、企業や大学が所有するガーデンなどさまざまです。

こちらは、ヘンリー8世の宮殿「ハンプトン・コート(Hampton Court Palace)」。「National Garden Scheme 」では、夜にプライベートツアーも実施しているのだとか。

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この時期は観光客で大混雑のパレス。夜にゆっくり楽しむのも素敵ですね!
出典:National Garden Scheme HP

公開されている計3,500のガーデンのなかには、「Zen Garden at Japanese Temple 」と名づけられた石庭(!)もあります。

こちらでは、花ではなく小石と苔の静けさを楽しむことができます。まるで日本にいるようです!

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オープンデーでは、Tea celemony demonstration も実施されるとのこと
出典:National Garden Scheme HP

National Garden Scheme に参加するには

「National Garden Scheme 」は年間を通して開催されていますが、5~6月が最も開催が集中する時期です。
計3,500ものガーデンが公開され、「National Garden Scheme」 の公式ホームページで、いつ・どこのガーデンが開催されているかを調べることができます。

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地名もしくは郵便番号を入力
出典:National Garden Scheme HP

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入力した郵便番号から1マイル以内のオープンガーデンがわかります
出典:National Garden Scheme HP

ホームページ以外にも、毎年地域ごとにこのようなパンフレットも発行されています。

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ロンドン版パンフレットphoto by Ai SUZUKI


またこの時期になると、街路樹や商店の掲示板に、近くのオープンガーデンの案内が掲示されています。

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この黄色い案内が目印!photo by Ai SUZUKI


一部のガーデンを除き、特に予約の必要がなく、当日開催時間内にガーデンに行くだけでオッケーです。

オープンデーの様子をリポート!

今回筆者は、自宅の近所で公開されているガーデンにて、スタッフとして参加しました! その様子をリポートしたいと思います。

場所は筆者の自宅近所にある Jane さん宅。大きなおうちに息子さん夫婦と住む Jane さんは、数年前から「National Garden Scheme」に参加し、毎年1回自宅のお庭を公開しています。

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ここでもやはり黄色が目印!photos by Ai SUZUKI

そして、こちらがガーデン。ロンドンにはこのような素敵な大きなお庭を持つ家がまだまだたくさんあります。

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丁寧に手入れされているのがわかります。photo by Ai SUZUKI

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かわいいベンチも設置されていました!photo by Ai SUZUKI

こちらはJane さんとお友だちによる手作りのケーキ!

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レモンケーキやガトーショコラなど。どれもとても美味しそう!photos by Ai SUZUKI

こちらがメニュー。

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紅茶とコーヒーは1ポンド、ケーキは各2.5ポンドです。photo by Ai SUZUKI

なかにはリピーターも!ガーデンはすぐにいっぱいに

この日は気温25度の晴天!まさにオープンガーデン日和です。

普段見ることのできない個人所有の素晴らしいガーデンを楽しみに、たくさんの人たちが集まってきました。

筆者は、お客さんへのガイドやケーキ販売を担当。お客さんのなかには「去年来たとき、ガーデンもケーキも素敵だったので、今年も来ました」「あのベンチの場所がお気に入り」と話すリピーターもいました。

草木や花を眺めたり、お茶を飲みながらおしゃべりしたり、芝生に寝転がったり…楽しみ方は人それぞれ!

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どのお花も素敵ですね。photos by Ai SUZUKI

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晴れた日の芝生は最高!photos by Ai SUZUKI

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愛犬とゆっくりとしたひととき。photos by Ai SUZUKI

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ガーデンだけに、話に「花」が咲く!?photos by Ai SUZUKI

温室前では、植木鉢の販売が行われていました。

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部屋に飾れる小ぶりのものから、玄関前に置くと素敵な大きなものまで!photos by Ai SUZUKI

イギリス人の精神である「チャリティー」と、イギリス人が愛する「ガーデン」、「ティータイム」。その3つが同時に楽しめる場所

イギリスでは、日本と比べてチャリティーがとっても身近。

まちなかにはたくさんのチャリティーショップがあるほか、多くの博物館・美術館では、入場料が無料のである代わりに寄付が推奨されています。また多くのマラソン大会では、収益の一部が慈善団体に寄付されるほか、自分が走ることで家族や友人に寄付を呼びかけるランナーが数多くいます。

また天気に恵まれることが少ないイギリスですが、その分、天気のいい季節、日、時間を、イギリス人は最大限に利用することに長けています。大きな公園は、ロンドンにもまだまだたくさんあり、週末に公園内のオープンカフェでのんびりすることは、まったく珍しいことではなく、イギリス人の日常です。

このように、ソトでの時間を大事にするイギリス人。この考え方は、住まいにもあらわれています。ロンドンは東京と比較すると高層マンションの数はかなり少なく、庭付きの一戸建てがまだまだ人気だそうです。

「National Garden Scheme 」は、イギリス人が大好きなガーデンとティータイム、そのふたつが同時に楽しめるだけでなく、チャリティーにもなる素敵な取り組みだと感じました。

数ポンドでいつもと違った週末を過ごすことができる 「National Garden Scheme」。渡英の際は、ぜひホームページで開催スケジュールをチェックしてみてください!

National Garden Scheme 公式ホームページ: https://www.ngs.org.uk/

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