ヤン・ゲールからの日本の皆さんへのビデオメッセージ【全文書き起こし】

昨日(12月3日)、UR都市機構さんが、youtubeにて、
Jan Gehl(ヤン・ゲール)さんから日本の皆さんへのビデオメッセージを公開しました。

日本の「プレイスメイキング」についてや、
人間中心視点(human oriented perspective)での重要性、
オリンピックに向かう日本の都市づくりについて語っています。

また、近日、ヤン・ゲールの新刊が日本で和訳されることも語っています。

全文書き起こしをしましたので、是非ご覧ください。

2015/12/03 に公開

「人間中心のまちづくり」を提唱し、いま世界中でその思想が改めて評価されている都市­デザイナー、「ヤン・ゲール」。彼が主宰する「ゲール・アーキテクツ(Gehl Architects)」が展開したプロジェクトは、ニューヨークのタイムズスクエア­をはじめ、サンフランシスコ、ロンドン、シドニー、メルボルン、上海など、いずれも街­の表情を一変させました。
このたび、UR都市機構では、「ヤン・ゲール」本人から日本の皆さまにあてたメッセー­ジをお預かりしてきました。
我々日本人がこれから「都市」をどのように考え、どのような視点に立脚していくべきな­のか、改めて気付かされることもあろうかと思います。

※この原稿は、UR都市機構の担当の方から許可を得て、書き起こしをしております。

ーヤン・ゲール ビデオメッセージ 全文書き起こしー

 

「プレイスメイキング」という事象について様々なことが言われています。

「プレイスメイキング」という名前はそうゆう事象にアメリカで付けられたもので、
私は余り気に入っていません。

なぜなら「プレイスメイキング」という言葉自体は
「場所を作る」という「ハード」のことを指しているように聞こえるからです。

私の中でより重要なのは
人々にとって心地の良い居場所を作るだけでなく
生き生きとした使われ方をして
人々がパブリックライフのクオリティを感じられるスペースをつくることなのです。

つまり、人々の「Quolity of Life」を高めること、それが大切であって、
ただ場所を作ることではないのです。

「場所」には補助的な役割はありますが、
それだけで「Quolity of Life」を上げることはできません。

考え方を「ハード」中心から
街や建物の間、内と外の境界で起こっている。

「人々のアクティビティ」中心へと変える必要があります。

重要なのは「考え方を変えること」なのです。

長い間、我々は交通手段や交通量、
建物や場所の人口密度といった
「ハード」面には関心がありましたが、
人々や人々のアクティビティについては見過ごして来ました。

故に人間中心のプランニングは「ハード」中心に比べ
より良いスペースを生み出せるでしょう。

ここまでは「プレイスメイキング」の「概念」と「言葉」の関係です。

私は一つの確信を持っています。
それは私のこれまでの経験に基づき、
日本の街やその使われ方を見ても、
近代的な都市か伝統的な都市かを問わず、
この「人間の街」の中でも主な論点を触れましたが、
「人間にとってより良い環境を作ること」が
我々にとって共通のテーマであるということです。

我々は同じ人類で、アラブ、日本、グリーンランド、オーストラリアなど
住んでいる地域を問わず、
生物として同じ歴史を共有し同じ感覚を持ち、同じ早さで歩き、
人々を見ることが好きなのです。

全ては我々が「人間であること」に関係しています。
人類は地球上様々なところに住んでいますが、
私はある文化圏で行なわれている事が他の文化圏でも通用するのを目にしてきました。

「ヨーロッパ文化はアメリカでは通用しないよ。ヨーロッパとアメリカ人は違うんだから、
ここはマンハッタンで24時間眠らない街、ヨーロッパの考え方は通用しないよ」
という意見を耳にしてきました。

しかし、実際はどうでしょう。

「奇跡だ!」「素晴らしい!」
大きな反響が沸き起こりました。

私は何度も
「それはここでは無理だ。我々は違うんだから」
と耳にしましたが実現してみると、
人々は「無理だ」と言っていたことなど忘れていました。

これから日本の都市にも変化は訪れるでしょう。

世界の至るところで見られるように
世帯人口の減少、余暇時間の増大、高齢化、経済成長、
「都市生活」という言葉は新しい意味を持つでしょう。

私は著書が和訳されてきたことにとても励まされています。
「建物の間のアクティビティ」が出てから二十数年も経ち、
間もなく新刊も出版されますが、
私の最大の関心は「人間」であり、
日本で「人々にとってより良い環境を作ること」
こうした私の関心については、シンポジウムでお話しました。

今、日本の皆さんはオリンピックという一つの目標をお持ちだと思います。
大切なのは、訪れる多くの外国人観光客は、交通ばかりの街を訪れたいのではなく、
文化や季節、街の成り立ちを感じ、素晴らしい人々の触れ合いを楽しみに来るのです。

ご存知のとおり、世界中の数多くの街でオリンピックは、
街のクオリティを上げるきっかけとなりました。
バルセロナが特に有名ですが、
シドニーなど多くの街でも同じことが起きました。

ですから私は皆さんに、日本、とりわけ東京で叡智を集め、
人々のための場所、人間中心のまちづくりを実践して欲しいと思います。
世界中がそれを必要としているのです。

 

2015.10.2
コペンハーゲン市
ヤン・ゲール自邸にて

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泉山 塁威
ソトノバ編集長/明治大学理工学部建築学科助教/一般社団法人パブリック・プレイス・パートナーズ/博士(工学) パブリックスペースとエリアマネジメントを専門とするタクティカル・アーバニスト。リサーチャー・プロジェクトデザイナー。 公開空地や道路占用許可の特例、エリアマネジメントのビジネスモデルの視覚化などの研究や実践プロジェクトを手がける。