石巻のストリートから新たなカルチャーを──「疎」な地から生まれる「密」なコミュニティ

東日本大震災から6年、宮城県石巻市中心市街地。復興公営住宅や再開発ビル、堤防の整備など復興計画に基づいた事業が進み、街には少しずつ人の姿や新たな取り組みが見られるようになってきました。

それでもなお、震災前から疲弊が深刻だった石巻市の中心市街地には、未だ多くの空き地が残っています。震災を乗り越え何とか営業を再開したにもかかわらず、閉店せざるを得ない店舗も少なくありません。そのような中、商店街の空き地・駐車場に変わった屋台村が誕生したのは、2015年4月のこと。

筆者が所属する株式会社街づくりまんぼうが中心となり企画・運営する「橋通りCOMMON(以下、COMMON)」です。鉄板焼きやフレンチトースト専門店など4店舗が屋台で出店しています。

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橋通りCOMMONの店主たち Photo by Hiromi Furusato

「中心市街地に激増した空き地を活用して、人の集まる場をつくりたい」
「震災後ボランティアで石巻を訪れた人たちが今後も石巻で活躍できるよう、チャレンジできる場をつくりたい」

そんな思いから生まれた屋台村は、2017年4月で2周年を迎えました。その記念に4月22日、23日の週末2日間にわたり、COMMONが面する橋通り商店街(といってもCOMMON以外に営業する店舗は2店舗だけ)を歩行者天国にしてイベントを開催しました。普段ほとんど人の往来が見られない橋通りには、2日間で約1500名が訪れました。

通りがステージ、使い手はツテで集めよう

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沖縄の伝統芸能「エイサー」演舞 Photo by Tomohiro Kariya

地元団体によるエイサーの演舞に始まり、続いてよさこいの演舞。決まったステージはないから、みな道路に広がって踊ります。見ていた人も自然と手拍子を始め、中には一緒に中に入って踊り出す人も。

沿道には市内各所からいろいろなツテを頼って集まった、手づくりパン屋さんやクラフトビール屋さんといった名店が1日限りのブースを出店。普段はほとんど店がない橋通りに、色とりどりの店が並びました。

演舞が終わると、次は地元バンドによる音楽ライブがスタート。こちらもステージはないので、通りにスピーカーやらマイクスタンドやらドラムやらをセッティングしての演奏です。

音響を担当するのは、いつもCOMMONを利用している常連さん。事務局である筆者は、そのセッティングにはほとんど関わりません。だって「手伝うっつってもどーせわかんねぇべ」と言われてしまうから。

どのバンドも、みな本当に気持ちよさそうに歌います。決して十分なステージではないし、観客だって多いわけではないのに、です。それなのに、開始のアナウンスも、時にはお店のコマーシャルだって、出演者が進んで引き受けます。

通りはその時だけ1日限定のステージとなり、いつもはお客さんでCOMMONに来ていた人たちが、逆にプレーヤーとなって人を迎えます。一方、通りの端では子どもたちが遊べる場をつくろう!と、これまたいつもCOMMONを利用いただくお客さんのグループが「コモンパーク」を開園。一体誰がお客さんで、誰がスタッフなのか。にわかには掴めない状況が広がります。

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橋通りに突如あらわれた「コモンパーク」 Photo by Tomohiro Kariya

出たとこ勝負!? 人のつながりが生むダイナミズム

「橋通りCOMMONだけに人が来ても意味がない。街を元気にする場所にならなければ」

橋通りが歩行者天国になるのは、2周年イベントが初めてではありません。発端は、屋台村にとって最大の課題である冬季の集客対策でした。何とかCOMMONに人を呼び込みたい。出店者たちが出した結論は、COMMONが面する橋通りを毎月第4日曜日に歩行者天国にすることでした。

お客さんや知り合いを通じて、とにかく橋通りを使っていただける方々を集め、にぎわいをつくろう!と。

2016年11月から毎月開催を重ね、4月の2周年で6回目の歩行者天国。爆発的に人が来るようになったかというとそんなことはありません。店の売り上げだって劇的に増えたわけではありません。イベントがなければ、いつもの静かな町並みのままです。

今回は一体誰がライブ出演してくれるのか、誰が出店してくれるのか、誰が音響機材を持ってきてくれるのか──。筆者はこの月1回のイベント、今回開催された2周年イベントも事務局を担ってはいますが、イベントの根幹となる大半を直前まで知りません。

COMMONに出店するお店が、それぞれのお客さんや知り合いを通じて協力者を集めてくるため、事務局である私は、直前まで出演者や出店者が把握できないのです。

「それでは告知ができないじゃないか」と言われれば、その通りです。当日になって突然、「聞いてたのと違う」なんてこともしばしば。関わっていただいた方に、ろくに謝金だってお支払いできていません。ところが、それでも「いいよ」と言って参加してもらえる。

前もって丹念に準備して、当日は静観、何か想定外のことがあれば迅速に対応!がイベント事務局の鉄則だとすれば、当日になってまで何が起こるか分からないなんて、普通であれば付き合っていられないところです。

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幅員8mしかない道路に、楽器が所狭しと並ぶ Photo by Tomohiro Kariya

それも仕方がないと腹をくくっていられるのは、人のつながりが人を呼び、新しいコンテンツが生まれていく様が、楽しくてしょうがないからです。まるで樹形図のように、人のつながりが広がっていく。このダイナミズムはなかなか言葉では表現し難いものがありますが、未来への手応えを感じます。

通りを満たす緩やかなコミュニティ

なぜ何もない通りに、これだけの人たちが興味を持って集まってくれるのか。よく言われるのが「通りで何かやるっていいじゃん」という言葉です。

非日常感か。解放感か。はたまた通り(ストリート)という響きそのものが持つ力か。いろいろと考えた末、筆者は、通りが緩やかなコミュニティ(つながり)で満たされるからではないかと考えるに至りました。

踊りを踊ったり、出店したり、ライブに出演したりする方は、みなCOMMONのお客さんか、お客さんを通じた知り合いです。だから必ず誰か知っている人がいる。たとえ知らない誰かがいたとしても、ほとんどは「知り合いの知り合い」です。ひょんなことがきっかけで、いくらでも紹介し合えるし、つながりは広がっていきます。

この緩やか〜なつながりを感じる雰囲気(コミュニティ)が、COMMONを起点に生まれつつあると筆者は感じています。それが、イベント時に歩行者天国となると、通り(ストリート)という不思議な場の力と相まって、このような状況が広がっているのだと。

ときどき、歩行者天国でない普通の日にも、突然COMMONで音楽ライブが始まることがあります。基本的にほとんどがオープンスペースですから、どこからか音を聞きつけてか、あるいはSNSを通じて知ってか人が集まり、お酒を片手に歌声に聞き入る光景が見られます。

「これはまさに文化だよ」

ライブを聴きながら、とあるお客さんがそう語りました。

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COMMONにある屋外の共有スペースでは、ときどきゲリラライブが繰り広げられる Photo by Tomohiro Kariya

人のつながりをきっかけとした企画がいくつも連なり、重なり合っているCOMMONや橋通りでのイベントの光景は、石巻の文化として認識されつつあります。正に、通り(ストリート)を拠点とした文化(カルチャー)の創生。

何もなくなってしまった「疎」な土地や通りだからこそ、新たな人々や活動が入り込む余地が生まれる。それをコミュニティが使いこなし、広げていく。人の交わる「密」な関係と場をつくっていく。

橋通りCOMMONというチャレンジの場は、2年経った今、新たな石巻の文化を育む装置となりつつあります。今月は何が起こるのか。私もまだわかりませんが(苦笑)、気が向いた方はぜひ橋通りCOMMONのFacebookページでCOMMONの今をチェックしてみてください。

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苅谷 智大

苅谷 智大

株式会社街づくりまんぼう/愛知県出身/東北大学大学院工学研究科博士課程修了/博士(工学)/学部生時に福島県桑折町のまちづくりに参加した後、震災を機に石巻市中心市街地のまちづくりに参加するように。東北大学大学院研究支援員も兼務し、実務学術の両面からまちづくりを追究(求)している。