車道を緑と憩いの場に! 和歌山で4年越しに成果積む民主導の公共空間活用

最近、パークレットやオープンカフェなど、道路を活用する取り組みを耳にする機会が多くなってきました。各地で特色ある取り組みが展開される中でも、 「車道を3日間占用」、「天然芝のピクニック広場」、「車道でキャンプ」、「クラウドファンディングで資金調達」 と全国的に類を見ないコンテンツが盛りだくさんの社会実験をご存じですか?

それは、和歌山市を舞台に民間主導で実施する「市駅 “グリーングリーン” プロジェクト」!

リノベーションまちづくりの先進地として名高い和歌山市ですが、公共空間活用の分野でも先駆的な取り組みが展開されています。

なぜこのようなプロジェクトが始まったのか? 誰がどのように実現させたのか? 社会実験の展望は? まちづくりに携わる筆者としては、どうしても気になる!ということで実際に見に行ってきました。社会実験の内容や経緯、主催者のインタビューも交えてご紹介します!

公共空間を楽しもう! 「市駅“グリーングリーン”プロジェクト2017」

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芝生の下には、通常は廃棄される紀州材の樹皮を敷き詰め、天然芝の保湿性・通気性、クッション性を高める工夫も

「市駅 “グリーングリーン” プロジェクト」は、駅前の街路空間からまちの再生を目指す社会実験です。南海電鉄の和歌山市駅に続く車道4車線のうち2車線を3日間占用して「緑と憩いの広場」をつくりました。

取り組みが始まって4年目となる2017年のテーマは、「24時間楽しめる芝生広場」。朝はヨガ、昼はピクニックに音楽・ダンスライブ、夜はトークセッションに地酒・ビアガーデン! スタッフは芝生広場でキャンプしました。車道を占用して行うキャンプは、初めてではないでしょうか?

トークセッションにはソトノバ編集長の泉山塁威さんも登壇しました。

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地元の老舗茶舗のカフェ、芝生ヨガ、公共空間のトークセッション、ストリートキャンプ! 24時間公共空間を楽しむコンテンツが盛りだくさんでした

この他にも、地元の夏祭りや、中心部のぶらくり丁商店街で定期的に開催されるマルシェイベント「ポポロハスマーケット」と連携して開催。まちなか全体の賑わいや回遊性を創出しています。

同時に、和歌山城の旧外堀・市堀川を活用する和歌山市の社会実験「わかやま水辺プロジェクト」とも開催時期を合わせ、市駅前とぶらくり丁商店街を結ぶクルーズ船を運航しました。

さらに!この社会実験はボランティアによって運営していますが、夜間を含めた車両通行止めには、多額の警備費用が必要です。そこで、クラウドファンディングで資金調達を試みたところ、最終的に79人から65万9000円もの支援が集まりました!

支援は和歌山市民だけでなく全国から集まり、共感の輪が広がっています。

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リターンには、和歌山の古地図や南海電鉄の吊り革、地酒の飲み比べ券など、まちの資源を活かしたものが選ばれました

この社会実験は2015年からスタートし、毎年内容を発展させてきました。多くの共感を呼び、他団体との連携も広がっていますが、取り組みの裏には、まちの危機がありました。

まちから賑わいが消えていく

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閑散とする市駅前通り

和歌山市は人口約37万人、かつては全国有数の城下町として栄えた都市です。

現在は、南海和歌山市駅・JR和歌山駅・和歌山城の3地区を核にまちづくりが進められていますが、産業構造の変化による人口流出や郊外開発の煽りでまちなかは空洞化し、活力低下など様々な課題を抱えています。

拠点の1つである和歌山市駅は、ターミナル駅として長年利用されていました。しかし最近は、乗降客数が最盛期の3分の1にまで落ち込み、駅ビルの核テナントであった大手百貨店も撤退。駅もまちも衰退の一途を辿る中で、現在は南海電鉄と和歌山市が再開発事業を進めています。

始まりは地元と大学の連携会議

「駅ビルがリニューアルされても、それだけではまちは再生できない」

2014年10月、まちの現状に危機感を抱いた市駅地区商店街連盟と城北地区7自治会、和歌山大学観光学部永瀬研究室が連携して「市駅まちづくり実行会議」を結成しました。

実行会議では、市駅エリアの未来について話し合うワークショップを定期的に開催。このワークショップで、市駅エリアのまちづくりは歴史性や拠点性、まちなかの空間・文化資源、人々のつながりを活かしながら取り組む必要があるという認識を共有しました。その実践的な試みとして企画したのが「市駅”グリーングリーン”プロジェクト 〜市駅前通りを緑と憩いの広場にする社会実験〜」です。

「市駅”グリーングリーン”プロジェクト」の名称は、2つの「グリーン」の意味を込めています。「拾い集める、少しずつ収集する」を意味するGLEANと、「緑、若々しい、環境にやさしい」を意味するGREEN。くすのき並木の市駅前通りを中心に、市駅エリアの「資源」や「魅力」を集めて「緑あふれる」「人にも環境にもやさしい」まちづくりを目指すことがコンセプトです。

「くすのき並木の下に芝生を敷き詰めて、緑と憩いの広場を創出する。市駅前の中心軸である市駅前通りを、歩行者中心のメインストリートとして再生する試みです」

そう説明するのは、取り組みの中心人物である和歌山大学観光学部の准教授、永瀬節治さん。プロジェクトの狙いについて、「まちなかに賑わいをもたらす公共空間の可能性を、実際に多くの市民に体感してもらう。新たな市駅前のまちづくりの方向性を実証的に発信し、実現につなげるためのアクションとして実施しています」と話します。

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ワークショップの検討結果をもとに、市駅エリアの今後の方向性とアクションを示す「市駅まちづくり実現構想2017►2050」も策定しました

市駅前通りを緑と憩いの広場に! プロジェクトがスタート

イベントの初回となった2015年。市駅前通りの2車線を日中のみ占用し、(1) 天然芝を敷き詰めたピクニックエリア、(2) パラソルを広げたオープンカフェエリア、(3) 地場産品などの出店者を集めたマーケットエリア、の3エリアを設置しました。

道路だけでなく、市駅前の空き店舗を活用したギャラリー・ブックカフェや、市堀川のクルーズなど、まちの資源を活かしたコンテンツも盛り込みました。準備段階では「道路に芝生を敷いたところで、人が集まるのか?」といった声もあったようですが、当日は家族連れを中心に、若者からシニア世代まで多くの方が集まり、芝生でのんびりと時間を過ごす姿が見られました。

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ピクニックエリアでは、ピクニックシートを無料で貸し出し。幅広い世代が集まり、思い思いに時間を過ごしました。茶会や読書イベントも大好評!

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まちなかを流れる市堀川では、最先端技術で振動や騒音が少ない「プラグインハイブリット船」を使ったクルーズも。カヌー・サップ体験も同時開催しました

まちの資源を再発見!「市駅まちぐるみミュージアム」

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ピクニックエリアを前年より1.5倍広げ、初の24時間開放を実施しました

2回目となる2016年には、近畿圏で初めて夜間も含めた歩行者天国化を実現しました。

24時間開放した芝生広場では、音楽ライブが開催できる小さなステージを設けるなど、賑わいを演出する新たな企画も。

さらに、これまでの取り組みに加えて「市駅まちぐるみミュージアム」も開催しました。これは、市駅前通りだけでなく、市駅周辺の店舗や公共施設などで特別な体験プログラムを実施するもので、地域の人がまちの様々な魅力に触れ、まちぐるみで市駅エリアを持続的に盛り上げるためのものです。

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和歌山市駅近くの酒造会社「世界一統」の酒蔵見学・試飲会など、34の施設・店舗・団体の協力を得て、45のプログラムを開催しました

3年間の成果とまちの未来

毎年実施しているアンケートによると、多くの来場者が歩行者空間の充実を支持しています。また、2017年は市外から訪れた利用者が大幅に増加しており、他の地域でも認知が高まっていることが伺えます。かく言う筆者も、2017年に初めて訪れました。

実際に訪れた者としては、まるでいつも広場があるような暮らしの風景が広がっていたのが印象的でした。芝生広場で遊ぶ親子、ひなたぼっこしながら本を読む大人。社会実験3年目を迎え、公共空間の使い方が浸透しているのか、場のつくり方がそうさせるのか、きっと両方の成果だと思います。

また、思いきった道路占用にも驚きました。

道路を使うためには、道路管理者の占用許可や警察署の道路使用許可が必要ですが、簡単に許可されるわけではありません。市駅まで続くこの区間は、路線バスの主要ルートです。そんな通りを使う(4車線のうち2車線を! 3日間! しかもキャンプまで!)となれば、影響を受ける人も多いはず。関係者の調整はさぞかし大変だったと思います。

永瀬さんは、この先の展望をこう語ります。「今後の市駅前通りの再整備計画には、社会実験の結果も生かされます。交通動線の再編や、持続的に活用される歩行者空間の実現には、まだまだ多くの検討課題があります。私たちは、これからもまちの再生のために挑戦し続けます」

これまで地域と大学が中心となって実施してきた社会実験は、行政を動かしました。次年度は和歌山市が主体となり、より長期間の社会実験を実施する予定です。まちの再生に向けた公民学連携のアクションは、新たな段階を迎えようとしています。

再開発と並行して、公共空間活用、リノベーションまちづくりと様々な手法でまちの再生に取り組み、変化の兆しがある和歌山市。今後も目が離せません。

All Photos by 市駅 “グリーングリーン” プロジェクト2017実行委員会

【実施概要】

日時 2017年9月8日(金) 16:00〜9月10日(日) 16:00
場所 市駅前通り(和歌山県和歌山市)
主催 市駅 “グリーングリーンプロジェクト” 2017実行委員会
内容 くすのき広場(市駅前通り歩行者天国)、市堀川クルーズ、市駅まちぐるみミュージアム
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光永早織

光永早織

松山市役所/東洋大学大学院経済学研究科公民連携専攻(在学中) 愛媛県松山市出身。市役所の保健福祉部署で働いたのち、研修として国土交通省に出向。国の立場で官民連携のまちづくりに携わる。現在は市役所に戻り、プレイスメイキングなどの社会実験を担当。プライベートでは、社会人大学院でPPPについて研究中。目指すのは、皆が笑顔で暮らせる社会。