4日間限定のサードプレイス実験!『FLAT PARK』でみえた「まちの居場所」の価値とは?

春の訪れを感じる3月16日(木)〜19日(日)、小田急線本厚木駅から徒歩3分の中町公園に、ちいさな変化が起きていました。 ぽかぽかとした陽気の中、カラフルな椅子とテーブル、人工芝、本棚などが置かれ、子供達の遊ぶ声が響きます。

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3月で気温などが心配されましたが、ソト日和の4日間でした。

『FLAT PARKーあなたがつくる「あつぎ」の居場所ー』(以下、「FLAT PARK」)と名付けられたこの取り組みは、厚木市が実施したサードプレイス実験。 本厚木駅周辺を歩いて楽しいまちにしていくための一歩として、まちなかで居心地のよい時間を過ごせる場所ーサードプレイスーをつくることを目指すプレイスメイキングの試みです。 なんとこの実験、ソトノバも企画実施チームの一員として参画しました! サードプレイスとは、家庭(第1の場所)でも職場(第2の場所)でもない、自分らしく過ごせる場所(第3の場所)のことを指します。詳しくは後日、「ソトノバTABLE#14inあつぎ」のレポートでお伝えします!

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黄色と水色が印象的なテーブルセット。場がぱっと明るくなった。

「FLAT PARK」の主な狙いは以下の3点です。 1.まちなかでゆっくり過ごせる居場所を市民に体感してもらうこと 2.サードプレイス的利用ができる場がまちなかにあることの意義・効果を感じてもらうこと 3.市民にどんなアクティビティの場が求められているのか探ること それでは、当日の様子を振り返ってみたいと思います! まずは、公園のBefore/Afterの様子から。

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Before:普段の中町公園。通り抜け場所として使われている。

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After:「FLAT PARK」として色彩が加わり、人溜まりができることで中町公園の印象が変わった。

公園に仮設の什器や人工芝を置くだけで、ガラリと雰囲気が変わります。毎日設置・撤収する必要があるため、物品は公園内の資材置き場に保管しており、30分以内で設営することができるよう設計しました。

3つの常設プログラムと4つの日替わりプログラムの組み合わせ!

「FLAT PARK」では、仮設設置物に加えて、社会実験では3つの常設プログラムを用意しました。

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現役映画館長と映画について語り合える「映画ライブラリー」

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科学体験やパブリックスペースなど、関連コンテンツに関する本が置かれた「クロスライブラリー」

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まちなかのお気に入りの場所・未来の厚木の姿を想像する2本立て「あつぎらしさを考えるワークショップ」

また、日替わりで科学体験、クラフトワークショップ、移動図書館、ソトノバTABLEなど日替わりで様々な体験ができる場をつくり、子どもも大人も楽しめるプログラムを盛り込みました。 室内ではできない科学体験をしてみたり、青空の下ものづくりをしたり、新鮮なソト体験で参加者の方々にもワクワクを感じてもらえたようです!

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カイロづくりや、バブルロケット実験を通じて身近な化学を体験する「科学体験」

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太陽の下でレザー小物をつくる「クラフトワークショップ」

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厚木中央図書館からやってきた「移動図書館」。その場で本の貸し出しができる。

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厚木のまちのサードプレイスを考え、探しに出かけた「ソトノバTABLE#14inあつぎ」

中町公園は駅と大型商業や複合施設の中間に位置し、使いやすい立地にあるにも関わらず、平常時は憩いの場や遊び場としてとして使っている姿はほとんど見られず、滞留行動よりも通過行動が最も多い場所になっていました。 「FLAT PARK」ができたことで、どんな出来事が起きたのでしょうか?

ここ、使ってもいいのかな? 日本人は遠慮がち?

いつもと違う中町公園。突然現れた空間を通行人は興味深そうに眺めていきます。しかし、椅子に座ったり本を手に取る人は、すぐには現れません。 日が昇り、暖かくなってくると、親子連れが人工芝を見つけて遊び始めました。その姿に引き寄せられるように、だんだんと他の親子連れが遊びはじめ、公園に備え付けのベンチに座って過ごす人もでてきました。

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小さい子どもや子連れのママさんたちに大人気だった人工芝。靴を脱いで遊べる。

筆者が面白いなと思ったのは、まず積極的に使い始めたのは外国人の方だったということ。その後もとても自然に場を使いこなす外国人の方を見かけました。見慣れないものへの警戒心や、遠慮が強いのは、日本人ならではの特徴かもしれません。

多世代、多様なアクティビティが現れた!

1日目、2日目、3日目・・・と、日が経つにつれ、何組かの常連さんが現れました。赤ちゃん連れのお母さん、3世代揃った家族連れ、散歩途中の男性など、初日よりも自然にくつろぎはじめます。その姿に引き寄せられるようにして、たくさんの人が「FLAT PARK」内で思い思いに過ごす姿をみることができました。 テーブルセットで昼寝をする人、その横で本を読む人、人工芝の上ではしゃいだり、寝転ぶ子ども、シャボン玉を楽しむ小学生。知らないお母さん同士にも、子供を介して自然と会話が生まれているようでした。「FLAT PARK」という場に同時多発的にアクティビティがいくつも生まれ、”SPACE”(空間)から”PLACE”(場)に変化したのです。

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携帯電話を触りながら「FLAT PARK」の様子を眺めている人も。

ソトで気持ちよく過ごせる場づくりによって、公園にいる人たちの属性が変わった

「FLAT PARK」の効果として、こんな声を利用者から聞くことができました。

普段といる人が違うわね。いつもはもっと背中を丸めたような・・・ネガティブな雰囲気の人が多いの。こういう雰囲気がいいね。

ひと気があまりなく通過の場所だった時には集まらない属性の人たちが、「FLAT PARK」をきっかけとして集まってきているようでした。

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犬の散歩途中に科学体験に参加する女性、自分で持って来た漫画を読む少年などもいた。

公園での滞在時間が増え、まちや人を見守る場ができた

「FLAT PARK」の設置物やプログラムに積極的に参加するほどではない、という人たちは中町公園に備え付けられた造作ベンチに座る傾向があったように思います。 また、ベンチに座って何をするでもなく「FLAT PARK」の様子を眺めて時間を過ごす人もいました。ソトノバ・ラボと連携し、アクティビティ調査も実施しましたのでその結果は改めてお伝えします。

4日間で見えた「まちの居場所」の価値とは?

「サードプレイス」や「まちの居場所」、言葉で表現するのは簡単ですが、ソトでそう言える場所が日本ではまだまだ少ないのが現状です。今回は実践者、観察者としてその価値について考えてみたいと思います。

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子どもたちに大好評だったシャボン玉体験はコミュニケーションツールとしての役目も果たしていた

1.公園での滞在時間が増え、人やまちを見守る場ができた

誰もが通過・利用する公園に人々が滞在することで、一人一人がまちを見守る目になります。「FLAT PARK」は、公園利用者、通行人などのゆるやかな視線を常に感じる空間となっていました。 誰もいない場所では子供から目を離すのは不安ですが、誰かが特定の空間の中で子供を見守っていてくれていることがわかれば、本棚に本を選びに行く時間やおしゃべりをしている間、お母さんも子供から離れることもできます。

2.目的のない場の共有がコミュニケーションを促す

現代は個々の活動範囲も広がり、個人での活動が主です。そのため、日頃の交友関係以外に人とのコミュニケーションをとる機会が減っています。 「FLAT PARK」には、活動の目的となるコンテンツをあえて多くは用意しませんでした。それもあってか、「FLAT PARK」内では自発的な「会話」や「遊び」を行う利用者が多かったように思います。それによって、見知らぬお母さんや子ども同士が会話をするなどコミュニケーションが生まれていました。

3.多様な人が、多様なアクティビティで過ごせる空間は満足度が高い

経済学の言葉で、「多様性選好」という言葉があります。消費者が何かを選ぶときに、多様な選択肢から何かを選ぶ方が満足度が高いという考え方です。それは都市で活動する人にとっても同じです。「FLAT PARK」では様々な種類の座り場を用意し、利用者がそれぞれの居心地の良い場所を選べるように設えました。 またその光景を眺める人にとっても同様で、本やスマートフォンを触るなど単一の行動をする集団を眺めるより、多様なアクティビティが行われる光景を眺める方が、満足度が高く、そこにいることが心地よいと感じます。「FLAT PARK」のアンケート結果でも、印象的だった事柄として周りの人々についても書かれていました。

4.サードプレイスとして機能する自由な場を守り立てる「人」の重要性

実は今回、スタッフが終日「FLAT PARK」内を見守っていたため、利用者からの質問や使い方のフォローなどを行っていました。極力こちらからの声かけはせず、見守りに徹していたのですが、何かささいなことが起きた時の対応が利用者の安心感に繋がっていたように思います。 また年齢、性別、目的などを限らず使ってほしいという運営者のフラットな心持ちも空間づくりに影響していたように思います。パブリックスペースを守り立てる人の存在は、利用者に安心感をもたらす一つの要因になるのではないでしょうか。 fp16 今回のサードプレイス実験から、いくつかの課題も見つかりました。ひとつは、コーヒーや食べ物があると良いという、飲食に関する要望です。 また、パブリックスペースを市民が使いこなすためには、まずは「使うことに慣れる」ことが必要だということがわかりました。まちに浸透させるためには、このような取り組みを継続することが重要です。そのためには近隣との連携などによる運営の仕組みの構築も必要となります。 今回のサードプレイス実験によるプレイスメイキングは、市民が身近なパブリックスペースの使い方に慣れていくための第一歩。市民のみなさんにとって、厚木の未来を想像するきっかけとなっていればと思います。ぜひ今後も厚木のまちの変化に注目してみてくださいね!

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三谷 繭子

三谷 繭子

ソトノバ副編集長/Groove Designs/修士(デザイン学)/広島県福山市出身 パブリックスペースを媒介としてまちなかで様々な人が居場所を感じられる場と魅力ある都市空間をつくりだすため、地域支援やプレイスメイキングの実践を行う。地元孝行プロジェクト「備後のギフト」事務局。