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「これからのエリアマネジメントに必要な人材とは?」エリアマネジメント人材開発セッション第1弾開催レポート

1980年代に欧米で始まり、日本でも都市部を中心に導入が進んでいるエリアマネジメント。2016年には全国エリアマネジメントネットワークが設立されるなど、いよいよ国内での普及が本格化しようとしています。ソトノバを読んでいる皆さんも、きっと関心の大きいテーマの一つだと思います。

こうしたエリアマネジメントを進める上で課題の一つとなっているのが、それぞれの地域でエリアマネジメントを担う人材の育成・確保です。

今日は昨年11月に日本都市計画学会のエリアマネジメント人材育成研究会主催で開かれたエリアマネジメント人材開発セッション第1弾「これからのエリアマネジメントに必要な人材とは?」の模様をレポートします。

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会場の法政大学市ヶ谷キャンパスには定員を超える100名近い方々が集まりました。

エリマネ人材育成の知見を共有する

まず冒頭、研究会を代表して法政大学の保井美樹教授からセッション趣旨についての解説。
エリアマネジメントについて3つのキーワードを挙げました。

「作るだけでなくて育てていくまち」

「短期ではなく長期にわたるまちづくり」

「単一の主体ではなくチームで進める事業」

このような考え方を共有する取り組みとして、成果が見えつつある「エリアリノベーション」、柏の葉をはじめ各地で進められている「アーバンデザインセンター」、最後にパブリックスペースにフォーカスした「ソトノバ」があり、それぞれの取り組みに関わる主体やプロセスのありよう、必要な人材やその育成・発掘についてそれぞれの知見を共有することをゴールとしたいと説明し、セッションが始まりました。

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エリアマネジメント人材育成研究会の保井教授からの趣旨説明。

エリアを動かす4つのキャラ

プログラムは基調講演から始まります。登壇したのはOPEN-Aの馬場正尊さん。東京R不動産を各地で展開しており、また近著の「エリアリノベーション」も注目を集めています。

「エリアリノベーション」ではダイナミックで、なおかつ、着実で、継続性が担保されていて、必ずしも行政主導ではない動き、新しい都市計画の動きを感じさせる都市として、セントラルイーストトーキョー(CET)や尾道市(広島県)など6都市での取り組みについて、その変化の構造とエリアならではの特殊解を分析しています。

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いよいよプログラムがスタート。エリマネに求められる人材像を解体できるでしょうか?

そこで、これらの地域の共通点として浮かび上がってきたのが、以下の4つのキャラクターの存在だそう。

1つ目は「不動産キャラ」。ただ仲介をする不動産屋さんではなく、エリア全体の価値をあげることを重視して、町のいろんなことの面倒をみるような不動産屋さん。

2つ目の「建築キャラ」は、ただ今までとは違い絵を描くだけでなく、自分で工事して作ってしまうようなフットワークの軽い建築家。彼らがまちや何かやりたいひとに寄り添っていく。

そして、3つ目が「グラフィックキャラ」です。かっこいいグラフィックがエリアをブランディングしていく。そこにひとが集まり町も変わる。グラフィックには建築には無いスピード感があり、短いピッチでエリアを回していく。

最後が「メディアキャラ」。まちで起きていることを、ソトとナカの両方に情報発信するキャラクター。

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馬場さんが提起した4つのキャラ(CETの場合)。どの都市でもこれが当てはまるそう。

また、こうしたキャラクターは

「自分の職能に固執しない人材の集まりであり、専門的への固執を捨てて、横断的に動ける人間だった」

と馬場さん。それぞれの軸を大事にしながら領域の横断をできることが次の時代では大切になると語りました。

行政と民間をつなぐPPPエージェントが必要

最後に馬場さんが立ち上げたWEBサイト「公共R不動産」や最近関わり始めた、南池袋公園での取り組みを通して感じられたことについて。

特に公共R不動産で各地のパブリックスペースを取り上げる中で、

「(パブリックスペースを)民間に使わせたいと思っている行政と、それを使いたいと思っている民間の間で、言語が全然違う」

ということに気づいたのだそうです。

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お手本としたいパブリックスペースとしてブライアントパークを挙げた馬場さん。

行政と民間の間に入って翻訳するエージェントは、海外ではよくあるそうなのですが、日本にはまだない。行政の代わりに民間と対話するための、PPPエージェントの必要性を強調しました。

また、PPPエージェントの翻訳機能には、①マネジメント、②プランニング、③オペレーション、④コンセンサス、⑤プロモーション、⑥マネタイズ、この6つをバランスよく持つ必要があるとのこと。

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管理側(行政)と使用側(民間)をつなぐPPPエージェント。

こうした機能、専門性を持った人材が次の時代には必要で、南池袋公園のパークマネジメントを行っているまちづくり会社のネストでもこうした機能をどう配置し、チームアップしていくかということを意識しているそうです。

UDC設立の背景にも人材育成があった

続いては柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)の三牧浩也さん。三牧さんは、副センター長として行政、民間、大学を結びつけながら、柏の葉キャンパス駅を中心としたエリアのまちづくりを推進しています。

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冒頭、アーバンデザインセンター設立時の北沢教授の想いを語る三牧さん。

最初に三牧さんが触れたのが、柏の葉アーバンデザインセンター初代所長である東京大学北沢教授のUDC設立に至るまでの問題意識でした。

「都市計画の研究室を出て社会に出るひとは多くいるけども、本当に専門性を生かして現場で生き生きと働けるような場面がまだまだ日本には足りない」

「アーバンデザインセンターという都市計画に関わる様々な動きの拠点を全国につくって、そうしたひとたちが現場に入りこみながら、責任をもって当事者としての立場を得ながら仕事をしていかなければならない。そのためには、人材も育てなければならないし、働ける場所も展開していきたい」

こんなことを熱く語っていたのだそうです。アーバンデザインセンターが生まれた経緯そのものに、都市づくりに関わる人材の育成という目的があったということですね。

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公民学の間に立って専門性を補完するのがUDC。PPPエージェントとも共通しますね。

UDCスタッフに求められる4つの資質

さて、そんなアーバンデザインセンターを支えるスタッフに大事な資質とは何でしょうか?

三牧さんが挙げたのは次の4点でした。

資質① まちづくりにかかる専門性
⇒建築、都市計画、コミュニティ育成、アートディレクター、イベント企画、広報ディレクター。いろいろな専門性をもったスタッフが集まって議論する。映画をつくるようにまちをつくらなければならない。

資質② まちを総合的にとらえる視点
⇒縦割りのものを横に串刺しする。スタッフ全体がまちを総合的にとらえるように動く。みんなが共有しやすいようにつくる。どういうふうにすればわかりやすいか、編集力や表現力も問われる。

資質③ 公民学のステークホルダーからの信頼
⇒とにかく人付き合い、まちの情報を誰よりも持っている、人とつながっている、人一倍働くということ。

資質④ アイデアと実行力
⇒恵まれた立場を使って、次のステップに向けて取り組むこと。

この4つの資質、まさにエリアマネジメントを地域で推し進める人材にも必要となる資質とも合致しますね。

UDCがまちの人材を育てる

また、柏の葉アーバンデザインセンターで働く中で感じていることとして、UDCのスタッフだけでなく、まちに住まうひとを巻き込みながら育てていくことの重要性も指摘しました。

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UDCというプラットフォームを通じた、行政、企業、市民、大学の育成も重要。

「まちをつくるということは、そこに住んでいる人の暮らしをつくることと相違ないです。ここがある意味で肝になっていくわけですね。彼らがどれだけ共感して一緒に取り組んでくれるか、どれだけ参加してくれるのか。いろんなコミュニティの力を育てることにも注力してきました。」

「フラットにそれぞれが関わり合えるような関係づくり。アーバンデザインセンターはいつまでもあるわけではない。それぞれがそういう意識をもつことが大切であると思う。」

と語り、アーバンデザインセンターという時限的なプラットフォームによって、公民学それぞれの立場のひと、都市に関わる専門家、そして住民がコミュニティを育みながら、自らも成長していくというのがアーバンデザインセンターの目指すところであると締めくくりました。

地域に必要とされるまちの専門家とは?

続いては、ソトノバの泉山塁威さんからの報告です。泉山さんはソトノバの編集長として、「ソトを居場所に、イイバショに!」をコンセプトに、パブリックスペースを楽しく豊かに使いこなすためのアイデアや事例を日々発信しています。

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泉山さん曰く、ソトノバの役割のひとつは実践者を応援すること。

まず泉山さんは池袋・グリーン大通りでの社会実験の経験を交えながら、

「これからはまちづくりが従来のまちのプレイヤーだけではできなくなってくる。その中で(特定の)特技がある人やリサーチャー、そういう人たちといかに関わってまちをつくるかが大切。このようなを流れを仕掛けるのが専門家であり、そのような専門家を地域が必要としている」

と、まちに必要とされるプロフェッショナルな人材がどのような能力を備えているべきかについて問題提起しました。

ソトノバの活動にもこのような人材が多く関わっているそうですが、さまざまなメディアを通してソトに関する情報発信を行っていることで、その道のプロフェッショナルだけでなく、学生も含めた20代や30代のメンバー(特に女性が多いのだそう)も参加しているのだそう。

最近は国内だけでなく海外の仲間もメンバー入りし、国内や海外の支部のメンバーをつないでウェブ会議を行いソトの場を盛り上げていくための議論しているとのこと。ソトに関わるさまざまな人材が集まるコミュニティができつつあるようです。

やりたい!から始まる価値とは

ソトノバの活動の面白さについては、

「やりたいからやるというのが大事。ソトノバは仕事ではないので好きなところや、研究や実践の中でボトルネックとなるところから攻めることができる。それが活動のモチベーションにつながっている。また、集まって活動しているうちに、メンバー間で知識の共有と連鎖が起きているように感じる。」

そういった意味ではソトノバの活動自体が「タクティカル・アーバニズム」の考え方に通じていると話します。

都市における『余白』が様々な主体がまちに関わる機会を生んでいるのと同じく、

「ソトノバは活動の中に『余白』が多く、関われる場ややりたいこと・やれそうなことを考えやすい状況にある点が大きい。」

「その場への参加を通じて育成されていて、ソトノバというメディアが広い意味での人材育成につながっている」

とまとめました。

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「やりたい」がモチベーションとなり、人材の育成につながる。

シャレットワークショップとは?

また泉山さんは、自らが携わっている建築学会のシャレットワークショップについても触れました。

シャレットワークショップは、建築・都市系学生が全国から一つの場所に公募で30人位集まって行う5日間の集中的な合宿です。

ガイダンスからはじまり、まち歩き、レクチャー、親睦会、グループワーク、ピンナップ、最終発表会、学会講評会となかなかハードなプログラム。

シャレットとは本来はフランス語で「荷馬車」の意味です。

それが、荷馬車に設計課題の図面を積み込んだ学生が、提出日になると学校に駆けつけることから、

「専門家が短時間で活発な意見交換を行い、成果を出すこと」

といった意味合いで使われるようにもなってきたのだそう。

建築学会シャレットワークショップがはじまって13年。OBも400名ほどになり、エリアマネジメントの最前線で活躍しているひとも少なくないそうです。

また、このように多くの人材を輩出しているシャレットですが、

「合宿で議論することで濃密な時間を過ごし、日々の業務では考えもつかないコトが生まれる」

ことが、事務局として関わる中で醍醐味として感じていることなのだとか。

人材育成という面でも非常に重要な側面を持っていて、

「プランの検討を通して、ダイヤグラムや模型などの共通言語をつくる。そういったことが出来るひとが新たな人材としては必要になる。」

と語り、このような時間を集中的に設けることによる能力開発の重要性を指摘しました。

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いかにエリマネ人材を育てるか。それは、いかに新しい領域や事業に挑戦できるか。

新しい事業をつくる、描ける人材が重要

このようなシャレットの考え方はエリアマネジメントの人材育成にも通じるものがあるのだそう。

「参加者にとっては、現場をいったん忘れて専門的な研修をするチャンス。そのようなプログラムを具体的な地域を実践フィールドとしながら取り組むことができるので、よそ者という立場で客観的にものが言うことができる。」

「地域のひとにとってもそれは都合が良く、外から来たひとが提案を受けてそれを地域の活動のなかで育てていく。そして最後にエリアマネジメントに繋げていくことになる。」

と話し、色々な地域でエリアマネジメントを実践している人がおしかけ提案型でやって来ることで、参加者・地域の双方の人材育成にもつながることを指摘。

最後に、新しい事業を構築し、ビジョンを描ける人材が重要であることを付け加えて報告を締めくくりました。

WSも実務者間で密度の濃い議論が展開

そして、プログラムの最後となるのが参加者によるワークショップです。

エリアマネジメントの人材育成に関連して2つのテーマが設定されました。

テーマ①「 エリアマネジメントに必要な人材像」
テーマ②「 人材を得るために必要な機会」

テーブルごとにエリアマネジメントの実務者の皆さんによる意見交換がはじまりました。

議論は白熱し予定時間をオーバーして活発な話し合いが行われました。

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意見交換の前に各々が2つのテーマに向き合う。静かな時間が流れます。

各テーブルの発表内容を簡単にまとめると以下のようになりました。

テーマ①「 エリアマネジメントに必要な人材像」

・旗をかかげ、中心となりまわりを巻き込めるひと
(「大阪のおばちゃんタイプ」というコメントも)

・コミュニケーション能力・調整能力の高いひと
(面倒見、笑顔が温かい、輪を乱さない、通訳できる、話術・ボキャブラリーがある)

・チームビルディング能力に長けたひと。ファシリテーター役

・散らかし役と組み立て役。発想するひとと企画を詰めていけるひと
(フットワークが軽く、進んで行動できる)

・専門性、先見性、経営能力のあるひと
(ヒントを得て、長い目でみる。人や物事の本質を見抜ける)

・信念をもっているひと。目標として掲げられるひと。一本筋を通せるひと

・民間から行政に出向経験あるひと

・地元力のあるひと。地域に入っていくことのできるひと。地元愛のあるひと

・阿修羅みたいなドラえもん。色んな友達がいて、必要なときに4次元ポケットから色々ひきだしてくれるひと

・でも、結果的には多彩な人が必要。特徴を持ったひとをバランスよく

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意見交換がはじまると会場内は一気に穏やかなムードに。会話も弾みます。

テーマ②「 人材を得るために必要な機会(どんな機会があったら参加したいか?)」

・いろんな人が集まる場(プラットホーム)をつくる
(いろいろな立場の人と関わることができる意見交換の場)

・現場に出て行って体験すること、能力を磨くのは現場
(いろんなことに挑戦、場数を踏む、出向・経験機会を持つ、失敗から学ぶ)

・経験(成功・失敗事例)をセミナーなどで共有する

・必要な時に必要な人に声をかけることができる体制をつくる

・インターン。短期的なインスパイアをさせて経験

・実践、まちづくりごっこをやってみたい

・能力に合わせて、実践をしていく、そもそもそんな素質がある人をどう見つける?

・エリアマネジメントのテキストがあればよい

・人材能力というよりも、強靭なモチベーションがあると実践の種になる

・高校生からシャレットワークショップのような場をつくる

 

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各テーブルの発表時間は30秒。みなさんコンパクトにまとめるのに必死でした。

最後に3つのポイントでWSを総括

参加者による発表の総括として、馬場さんと三牧さんにエリアマネジメント人材を育てるポイントをまとめてもらいました。

まず、馬場さん。3つのポイントを挙げました。

1つ目は、専門性と現場の往復。どちらかではダメ。何かを経験して戻る。の繰り返し。

2つ目は、チームアップ。キャラクターマップを考えなければならない。

3つ目は、エリアマネジメントをやる人が憧れられる存在になること。エリアマネジメントをバリューに変えなければならない。そういうところからエリアの価値をあげていくことが次に必要なのではないか。

続いて三牧さん。どのような人を採用したいか、という観点から、同じくポイントは3つ。

1つ目は、コミュニケーション能力に加えて、みんなが考えていることを編集して方向づける能力、わかりやすく資料をつくれる能力を持っているひと。

2つ目は、現場に対する真摯な姿勢を持っているひと、経験は浅くても、過去に関わった現場で何を感じたかを聞けば、その方の姿勢はわかる。

3つ目は、なぜか会いたくなるキャラクターを持ったひと。

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馬場さん、三牧さんの総括に皆さん納得のご様子。人材育成の重要性を再認識しました。

専門分野や活動内容、用いる手法は異なりますが、不思議なことに人材育成については3名ともリンクするものがある気がします。

今回は、エリアマネジメントの中でも人材育成という一つのテーマに焦点をあてて議論を行いました。なかなか人材育成に絞って議論する機会はなかなかなかったのではないでしょうか。

今回のセッションを企画したエリアマネジメント人材育成研究会では、各スピーカーからの報告内容や参加者による議論を取りまとめ、エリアマネジメントの現場で活用できるテキストや研修プログラムを検討するとのこと。

3月28日にはさっそく第2弾のセッションが予定されているそうで、今後も活発に活動を行っていくようです。ますます期待が高まります。

Written in collaboration with Haruki Onishi
All Photos by Motoaki Hisada

プログラムは以下の通り。

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■基調講演
「エリアリノベーションに必要な人材像と育成」
馬場正尊 建築家、 株式会社オープン・エー代表取締役、東京R不動産ディレクター

■事例報告①
「UDCKにおける人材育成」
三牧浩也 UDCK副センター長、東京大学講師

■事例報告①
「ソトノバにおける人材育成」
泉山塁威 東京大学先端科学技術研究センター助教

■ワークショップ
「エリアマネジメントに必要な人材と育成」
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