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プラザ|広場

百年先も輝く日本最古の湯を目指せ! 愛媛・道後の中庭広場が育む新たな温泉文化

湯けむりが立ち込める湯の川を触る子どもたち、椿の花の写真を撮る若い女性、噴水の周りには地元の人、観光客問わず、いつの間にか人が集まっています。

コの字型の建物、2つの公衆浴場に囲まれた、ここは「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)」の中庭広場です。(関連記事「子供からおばあちゃんまで雲の下に座ればわくわく! 市民がつくって運営する広場が松山・道後温泉に誕生」)

(本記事は、ソトノバ・アワード2018応募に伴う応募書類を記事化したものです。)

道後温泉別館 飛鳥乃湯泉、誕生!

愛媛県松山市の道後温泉地区は、日本最古の温泉といわれる歴史や文化性の高い地区で、そのシンボル道後温泉本館は、1994年に公衆浴場として初めて国の重要文化財に指定されました。2009年発行の「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」では最高位の3つ星の評価を獲得、海外からも高く評価されるなど、年間80万人を超える入浴客を誇る松山市の貴重な観光資源です。

一方で、明治の改築から120年以上が経過し、その文化財的価値を維持・継承するため、2019年1月15日から、営業しながらの保存修理工事期間に入っています。

そのような中、2017年12月に、道後に市営では33年ぶりの公衆浴場として「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉」がグランドオープンし、地元住民が待ち望んだ広場が誕生しました。

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「飛鳥乃湯泉」と「椿の湯」のコの字型の建物に囲まれた中庭広場は街路と一体的に整備されており、広々としています

地元が待ち望んだ湯上りにくつろげる空間

道後温泉地区には「道後温泉本館」と、地元住民に愛される「椿の湯」の2つの公衆浴場があり、外湯(そとゆ)と呼ばれる日帰り温泉文化が根付いています。

しかし、シンボル「道後温泉本館」の周辺は道路や商店街、ホテルに囲まれており、湯上りにゆったりくつろげる空間や緑が不足。地元住民は長年、広々とした空間の整備を待ち望んでいました。また本館保存修理工事は、地域経済に大きな影響を与えるものと懸念されることから、行政と民間が協働で道後温泉地区の活性化に取り組む必要がありました。

そのような声を反映した、地元まちづくり団体の構想を受けて、地元観光事業者や学識経験者は、「道後温泉本館」と商店街を結ぶ動線上の「椿の湯」に、新たなにぎわいを生む場を整備することで、これから百年先まで輝き続ける新たな道後のまちを実現するという構想を打ち出しました。その構想を、日本を代表する建築家である内藤廣・東京大学名誉教授の指導・助言の下、深化・具現化し、地元が長年待ち望んだ広場空間を実現しました。

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営業しながらの保存修理工事を控えた道後温泉本館
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地元住民に愛される「椿の湯」が「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉」に隣接する

建物から広場中心の空間へ

新エリアの主役は、新設された公衆浴場「飛鳥乃湯泉」とリニューアルした既存の「椿の湯」のコの字型の建物に囲まれた中庭広場です。その構成は、周囲を巡る道の中心にある「道後温泉本館」の構成に対し、図と地を反転した関係にあります。

多様な活動を受け入れる空間が求められたため、中庭広場と回廊にあえて段差を設け、自由に腰掛けられるベンチとして仕立てます。併せて、中庭を舞台として、新設の公衆浴場「飛鳥乃湯泉」の縁側や回廊を観客席に見立てる設えとなっています。

さらに、中庭の舗装は道路と一体の石張りとし、車道部は色を切り替え、縁石は設けず目地を連続。建物と中庭広場、街路がひとつなぎになった、大らかで広々とした屋外空間を生み出しています。

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周囲を巡る道の中心にあり、建物中心の「道後温泉本館」に対し、「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉」の主役は中庭広場
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中庭広場を舞台、回廊を観客席とした「道後オンセナート2018」のダンスパフォーマンス
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飛鳥時代の建築様式を取り入れた湯屋「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉」
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「飛鳥乃湯泉」の2階縁側。湯上りに涼んだり、中庭広場を眺めたりできる

日本最古の湯の歴史を再現したデザイン

約3000年の歴史を持つといわれる道後温泉。596年に聖徳太子が来浴した際に「神の温泉を囲んで椿が互いに枝を交えてしげりあい、あまたの緞帳(どんちょう)をたれ、きぬがさをさしかざして楽園を荘厳しているようである」と詠み、碑を残したという物語があります。

その物語を受けて中庭広場は、飛鳥時代の歴史・物語の再現をデザインのコンセプトとしました。活動を誘発するしかけとして、伊予の椿など約160本で再現した「椿の森」、温泉を活用し、地中から湧き出る温泉を表現した「湯の川」や「噴水」を配置。飛鳥時代の建築様式を取り入れた湯屋「飛鳥乃湯泉」の建物が中庭広場を取り囲み、一体となることでその歴史感や物語性を高める狙いです。

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聖徳太子の詠んだ句碑の情景を再現
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湯けむりが立ち込める湯の川は「飛鳥乃湯泉」の温泉を活用
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毎日行われる噴水ショーの時間には、老若男女が集まりイベントでも活用

地元が育てる魅力と広がる風景の輪

中庭広場の管理・運営やイベントの企画・開催は、地元旅館組合・商店街組合などから成る組織「道後温泉コンソーシアム」が担っています。

ラジオ体操や商店街で販売する愛媛の伝統工芸品・特産品などの体験&即売会、演奏会やアートフェスティバルなどが多彩な企画を開催。観光客、地元住民、企業、自治体などが集い、これまでにない、新たなコミュニケーションの場となっています。

街路と一体となった中庭空間、憩えるオープンスペースを備えたデザインは、周囲のホテルや旅館が耐震改修工事でリニューアルする際のモデルともなりました。

「百年経ってもよそがまねできないものを作ってこそ、それが初めて物をいう。人が集まってくると町が潤い、子々孫々までの利益になる。」という思いでまちづくりに挑んだ、道後湯之町初代町長・伊佐庭如矢。その思いを引き継ぎ、地域一体となり地区全体へ、広場のある風景の輪を今後も広げていきます。

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夏休みの早朝、ラジオ体操のため付近の旅館の宿泊客や地元住民が集まる
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2018年夏に発生した西日本豪雨の復興応援イベントとして、愛媛県吉田町のみかんの即売会や、付近の商店街で売られている愛媛の伝統工芸品「砥部焼」の絵付け体験会を開催
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シャボン玉と光の演出。アートフェスティバル「道後オンセナート2018」の一場面

テキストおよび写真:松山市

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